神門善久のレビュー一覧
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2010年6月発行の本。
最近出版された、「日本の農業の真実」(2011年刊行、ちくま新書)は、どちらかといえば大学の先生が数字や諸外国の関係から書いているのに対して、本書は現場レベルの問題点を提起するところから考えていることから、トップ・ダウンではなくボトム・アップ的な思考であると思う。
1章 消えていく農地 (農地の実態や転用の数々)
2章 なぜ農地は無秩序化したか(簡単な歴史)
3章 競争メカニズムの欠如(日本の特徴と政策の数々)
4章 政権交代と日本の農政(小泉改革から民主党政権までの足どり)
5章 日本農業の理想像 (市民参加で復活させたい)
という流れで、日本の狭い国土であり -
Posted by ブクログ
本書では、農業技術を「技能」と「技術」に分けて論じている。
「技能」と「技術」の違いを一口で言えば、「マニュアル化できるか」ということらしい。
譬えるならば、「専門店で板前が握る寿司」と「スーパーで売っているパート労働者が作るパック寿司」の違いということである。
また本書の中では、「名人」と呼ばれるような農家が持つ技術を「技能」と呼び、過去のデータからの分析や、農学等の科学的な手法、演出や宣伝といった小手先のマーケティングを「技術」と呼び、区別している。
本書で「どちらか一方が正しくて他方が間違っているなぞという極論をしようとしているのではない」とあるとおり、本来であれば農業には「技能」 -
Posted by ブクログ
今まで有機栽培に対しての懐疑や、生産者の顔写真についての疑問はあったが、基本的に企業の農業参入や農作物の増産については肯定的に見ていた。
しかし、この本を読んで効率化による増産や企業の参入ではどうにもならない日本農業の問題が理解できたと思う。
それは日本中どこへ言っても変わらない、無秩序な風景と繋がっている。
自分たちの住む地域をどうしたいのか?地域の土地をどう利用するか?という将来を見据えた計画を立てることを、していない事が農地の問題でより深刻に浮き彫りにされている気がする。
私有財産としての土地と地域社会という公共の財産としての土地の概念のすり合わせを、将来を見据えてしていくことが、農業に -
Posted by ブクログ
企業参入が進み、有機栽培がもてはやされ、農業は成長産業と言われているが、実際には技能をもった農業者が減り、マニュアル通りにしか作れない素人農業者が増えているため、日本の農業は衰退しているという話。農業も製造業と同様分業化・機械化が進んでいること、および消費者の舌が鈍化していることがその原因とのこと。内容には極めて同意。品質で勝負できなくなると、日本産の作物は、労働力の安いアジア地域産とどう差別化するのか。日本の売りは、農業・工業ともに技能だ。それは日本人の誇りだ。それが失われつつある。日本が生きていく術について本気で考えていかなくてはいけない。
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Posted by ブクログ
日本農業の崩壊の一因に「味覚の劣化」をあげている点には非常な違和感を覚えるが、基本的には著者の悲憤慷慨と対策案については賛成。
「昔の野菜は美味しかった」とか「現代人は味覚が劣化している」とかは嘘だと思う。以前の日本で美味しい野菜を食べたり味覚を追求できるような食事をしていた人はほんの一握りだし、品種改良や冷蔵配送技術の向上で平均的な水準はあがり美味しい野菜と食事を楽しめてる人の絶対数は増えていると思う。ひと昔前の群馬や長野の食事なんて塩分過剰で現代人には食べられたものでは無いという話もあるし。ずいぶん上の水準か季節限定の旬の時期の農村の話じゃないかね。
あと技能向上が農業の肝だと言われても、