デイヴィッド・ゴードンのレビュー一覧
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ネタバレおおいに楽しめる小説だった。まず『二流小説家』という邦題がなんともよろしい。原題では「The Serialist」(連載作家)となっている。主人公であり語り部である「ぼく」は、大衆雑誌にヴァンパイア系小説やポルノ小説を書いたり、バイトで家庭教師をしたりと気ままに暮らす「二流小説家」。その「二流小説家」がある日、連続殺人鬼で死刑が迫る囚人からファンレターを受け、独占の告白本執筆を持ちかけられるが・・・という物語。ミステリー小説なのに私小説風で、最初のうちは「ライ麦畑でつかまえて」のような感触を持ったが、主人公の書く連載作品が微妙な関連性を示唆しつつ並行して挿入され、読んでいるうちに「ぼく」の実在
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「ミステリが読みたい」「このミステリーがすごい」「週刊文春ミステリーベスト10」の海外部門1位との触れ込みも、本国ではあんまり評価が高くないと聞き、ちょっと手を出しにくかった本作。
正月休みに思い切って手を出してみたら・・・大正解!
面白い!
ちょっと自虐的な、皮肉交じりの一人称スタイルは「女王陛下の魔術師」を彷彿とさせる。
(まぁさすがにあっちの方が皮肉屋だけど)
途中で挿入されるハリーの小説もいい雰囲気を作り、もうこのままクレアちゃんとダニエラといちゃいちゃしてればいいんじゃないかと思い始めた中盤から一気に物語が加速する。
そこから最後まではもう目が離せない。
ミステリとしては謎解きはちょ -
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『用心棒』というだけで怪しげな邦題のジョー・ブロディ・シリーズ第二作。『続・用心棒』とは、何だか昔の時代劇映画みたいだ。マカロニ・ウェスタンの『荒野の用心棒』『夕陽のガンマン』が「続」とか「新」とか、まるで別の作品なのに、タイトルで売れっ子俳優クリント・イーストウッドの二番煎じ三番煎じを狙ったという当時の映画界事情が思い浮かぶ。
いかがわしさ満載のこの作品は、あの毒々しい当時の映画看板を思い出させ、何だか汗臭く、昭和っぽく、やたらと懐かしい。ぼくは仕方なく、C・イーストウッドのイメージでジョーを思い描くことにしています。
著者デイヴィッド・ゴードンが、前作『用心棒』で、従来の純文学に -
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デイヴィッド・ゴードンと言えば、あの『二流小説家』で騒然たるデビューを果たした、あの作家。そう思っただけで、この本はポケミスであるにも関わらず、買い控えてしまっていた。当時はこの作家は、賛否両論で読者層を分断していたように思う。純文学への偏向が諸所に見られつつ、娯楽小説としても面白いということで、作品のミステリ部分だけが、何と日本で映画化された。ぼくはどちらも味わってみて、この手の小説は苦手なので、映画の方が面白かったかな、でもそちらも大したことはないか、などと正直うなされていたものだ。
それでも性懲りもなく、第二作『ミステリガール』も読んでしまったが、これまた苦行と言うべき読書体験であ -
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ポルノやSF、伝奇小説等ジャンルを問わずに小説を書いていた売れない作家ハリーの元に1通の手紙が届く。差出人は4人を殺して死刑判決を受けたダリアンだった。その内容は自分の告白本を書いてほしいと言うことであった。
その話にあまり乗り気ではなかったハリーだったが、マネージャを辞任する教え子の女子校生クレアに促され刑務所に向かう。待ち構えていたダリアンはハリーの小説のファンデ、そのために原稿を依頼したいと言うことだった。ただ、一つ条件がありそれは、ダリルにファンレターを送ってくる女性達に会い彼女らを元にしたポルノを書いて自分に読ませてほしいとのことだった。
仕方なしに話を受けたハリーが教えられた女性達 -
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ミステリへの愛に溢れた秀作で、ゴードンの才気溢れる筆致が堪能できる。売れない小説家ハリーを主人公に一攫千金のチャンスを掴みながらも、一筋縄ではいかない壁をどう乗り越えるかという展開がとにかく読ませる。メインプロットとは直接関係ないものの、ハリーが創作したホラーやハードボイルド、SF小説を抜粋して挿入する遊び心も楽しい。人物造型が巧く、特にハリーのビジネスパートナーとなる少女の多感な心の揺れの表現などが見事なのは、著者が普段から繊細な観察力を持つが故にだろう。さらに残忍/狂気性では突出する殺人鬼が登場する点でも忘れがたい印象を残す。時にオフビートな捻りを加えつつも、最後にはミステリとしてきちんと