リチャード・パワーズのレビュー一覧

  • 舞踏会へ向かう三人の農夫 下

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    題名と表紙に釣られてジャケ買い。
    1914年に撮影された一枚の写真を元に、往時と現在(しかも現在の登場人物は二人)を話が錯綜する。
    話の終着点が見えず、手探りで読み進める感覚は久しぶりであった。
    作者のある種衒学的なところが多分に含まれているが、語られる、人から人へ伝えられる「物語」とはどのようにして成り立つのかを考えさせられる作品。

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    2022年04月13日
  • オーバーストーリー

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    樹木と何らかの関わりを持ち、樹木をそれぞれのやり方で大事に思うようになる人々個別の物語が最初にある。短編集のようになっている。
    中盤以降は、彼らの物語が一つに絡み合い大きな流れとなっていく。

    木自体ですでに多くの生態系を抱える環境になっており、地球規模の視点で環境を見ても木は重要な役割を果たしている。極端に言ってしまえば人間は邪魔者でしかないが、さすがにそこまで言わずとも、そのことを認識しながらもっと謙虚な生き方を人間はすべきだろうと考える。
    木になったつもりで、木の視点で世界を見てみる。千年生きる木の時間からすれば、その周りを動き回る人間など、人間の周りで目にも留まらぬ速さで動き回る小虫の

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    2021年02月22日
  • オーバーストーリー

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    読みごたえあった。7月から約半年かかって読んだ。総じて言えば木と人間の話。壮大。壮大すぎて理解不能な文章が並ぶ。聖書のよう。よくもまぁこんなに脈略があるのかないのかわからない文章をツラツラ書けるな。しかし脈略がないようであるのが木で、あるようでないのが人間、なのかもしれない。

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    2020年12月30日
  • オーバーストーリー

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    圧倒された。また時を経て読み返したい。読んだ後の世界が違って見えると訳者の後書きにも出ていたが、本当にそんな感じ。情報量も揺さぶられる感情の量も多い。じっくり噛み締めて咀嚼したい。

    ‪I felt a difference of 2 cultures. Due to Shintoism, Japanese find a divinity in nature. We have certain respect for old big trees. ‬Although with this religion originated in Japan, we cut many trees, destr

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    2020年02月08日
  • オーバーストーリー

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    まず、ジャケットが出色。巨木の根元に陽が指している写真の上にゴールドで大きく書かれた原語のタイトルがまるで洋書のよう。角度を変えるとタイトル文字だけが浮かび上がる。最近目にした本の中では最高の出来である。表紙、背、裏表紙を広げるとカリフォルニアの朝の森にいるような気がしてくる。そうなると、バーコードの白抜き部分が邪魔だ。折り返し部分に印字するとか、帯に印刷するとか。他に方法はないものだろうか。

    前置きはこれくらいにして中身に入ろう。カバーの写真が直截に示す通り、木の話である。写真にある木はおそらくレッドウッド(セコイア)。樹齢二千年を超えるものもある、ウディ・ガスリーの『わが祖国 This

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    2019年11月29日
  • オーバーストーリー

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    なんらかの社会的な問題を小説で扱おうとすると、えてして、説明的になったり啓蒙になったり説教臭くなったりして、物語やうねりやスピードをそがれることが多い気がするが、これは始めの、木を巡る8人のストーリーからして面白く、ぐいぐい来る。
    環境問題、森林伐採、エコロジーの運動などを取り込んで、こんな小説が出来るとは!

    パトリシアについては、あ、これペーター・ヴォールレーベン『樹木たちの知られざる生活』じゃ…?と思って読んでいたら、やっぱりそうだよね、訳者後書きにて言及されていた。

    分厚いけど、どんどん読めた。面白かった。
    ジョン・ミューアやソローも読みたくなる。

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    2019年11月25日
  • 舞踏会へ向かう三人の農夫 上

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    上巻の途中でこの物語についていけるか不安になって、高橋源一郎らが作品について話しているものを読んで、よし大丈夫、となんとか読み通す。
    下巻に入って、ラストに向かうにつれてよく言う伏線が見事に回収されていく様に声を上げてしまった。すごいな。

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    2019年01月21日
  • オルフェオ

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    主に20世紀の音楽の変容を感じることができます。この小説の翻訳を引き受けた新潮社の勇気には感謝しますが、これは売れないでしょう。読む人に相当な努力を要求する小説です。リチャード・パワーズですもんね、毎度ですよね。すごく読み応えのある本でした。YouTubeのおかげで登場する知らない音楽の多くを知ることができる、そんな時代だからこそ生まれた本なのかもしれません。

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    2015年12月29日
  • オルフェオ

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    愛犬フィデリオの異変にあわてたピーター・エルズは緊急サービスに電話した。それが事をややこしくしてしまった。やってきた二人組の刑事は、大量の本やCDで埋まった書棚、犬の死体、素人には不似合いな化学実験器具から何かを察知したのか、翌日別の二人組が現れ、実験器具やありふれた細菌である培養中のセラチナなどが没収される。帰宅途中、自宅に立ち入り禁止のテープが巻かれているのを車から見たエルズはとっさにその場を離れた。どうやらエルズにバイオ・テロの疑いがかけられたらしい。

    引退した音楽教師であるエルズは、もともと化学専攻だった。不眠症対策も兼ねてネットで購入した実験器具や試薬を使いDNAの塩基配列を操作す

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    2015年09月16日
  • オルフェオ

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    バイオテロ、過剰警戒な社会、冤罪、このあたりはとても現代的なというか、パワーズエラいこと流行りに乗ったな、という印象は否めない。まぁ別に現代的なテーマで流行りに乗った小説やからアカンってことはないけども。で、オイラに音楽の素養というか教養というか知識がないので、そういうのがあればもっと色々ピンと来るんだろうな、という残念感もあり。音楽ではないけれども、作中にドイツ農民戦争の際のミュンスターのヤンの話が出てきて「これ、「Q」に出てきた話か!」とつながってスゴい楽しかったので、たぶんもっと色々な仕掛けを(特に音楽中心に)オイラの知識の無さで見落としてるんだろうな、という…

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    2015年09月01日
  • オーバーストーリー

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    な、長い。訳者の癖なのか、原作がそうなのか、淡々とした現在形の短文が延々と連なっている。
    読むと世界が違ってみえるらしいという誘惑で読み切った。確かに、木がお互いにシグナルを送り合い、世界はすべて繋がっている。という感覚(これをネットゲームで再現できるとしている)ははっとしたかなぁ。ドクターパトリシアのターンだけ読むのが楽しかった。
    訳者後書きで年輪のような物語の構成になっているとのこと、それ自体が面白いのかな…。過激なエコテロリズムについては内的動機が強すぎてあまり理解ができなかった。
    直近で読んだ、4000年前の狩猟採取民族が主人公のファンタジーの方が環境問題を考える契機になりそう。そして

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    2025年02月06日
  • オーバーストーリー

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    アメリカの原生林を主題にした長い物語。植物の驚くべき生態について詳述され、アメリカ入植以来の歴史や生命史など壮大な内容になっている。しかもピューリッツァー賞を取っていて高評価を得ているようだ。「不都合な真実」の小説みたいな感じのイメージ。しかし私見ではフィクションの部分に物足りなさを感じてしまった。エコテロリストを主軸にした物語で、様々な引用も素晴らしいのだが、植物的な知識や情報にエネルギーが割かれすぎていて、肝心なフィクションの内容には結局たいした展開も発想も感じさせなかった。登録人物が繋がるきっかけも微妙だし、もっとうまくシナリオを組み上げればすごく良い本になるのでは… 

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    2024年05月31日
  • オーバーストーリー

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    短編としても成立する序章が寄り集まり、長編に移行する構成はなるほど樹木。ただし森林開発にまつわる現実がそうであるように、愉快な物語ではなかった。ひとつの「お話」として落ちをつけてはくれないため、また読みたいとはとても思えない。

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    2020年07月01日
  • 舞踏会へ向かう三人の農夫 下

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    下巻でようやく内容が掴めてきて、楽しめた。
    「写真」とはというところから、掘り下げられた、壮大な話になっていた。
    しかし、魅力的な写真だ。

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    2020年03月08日
  • 舞踏会へ向かう三人の農夫 上

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    なかなか読むのが難しい。
    最後の方でようやく登場人物をつかみかけてきた程度。
    とりあえず、表紙カバーが気を引く。

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    2020年03月05日
  • オルフェオ

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    音楽家の苦悩を感じつつ、音楽を分子生物学に持ち込もうとする発想に驚愕の叫びを発したくなるストーリー。
    現在の主人公に起きている出来事、主人公の生涯、二十世紀音楽史という3つのストーリーラインを精妙かつ緊密に編んでいて、もう少し音楽に詳しければより楽しめたと後悔をしながら読みました…

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    2015年11月01日
  • オルフェオ

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    音楽を文字で表す試みや作曲・音楽の歴史の部分は難しく苦手だが、日曜遺伝子工学で細菌に手を加えたことからテロリストに疑われた作曲家の、音楽という芸術に対する探求と人生のフーガ(遁走曲)は面白い。

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    2015年09月22日