多田将のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
ブラックホール、ビッグバン、暗黒物質、誰もが一度は聞いたことのある用語を掘り下げながら、宇宙誕生137億年を遡る。面白いのは、著者が宇宙の専門家ではなく、スケールからいえば真逆の素粒子の専門家であること。宇宙にロマンティシズムなど感じていないと言い張る著者の語り口は、いたって平易かつ簡潔、想定する読者と同じ門外漢だからこその説得力に溢れている(しかし物理学においてマクロとミクロはいずれ統一されるべくものではある)。また、"宇宙の歴史"というのは、同時に人類の"理論と実験の歴史"でもある。著者も言うように、"本書は、厳密には「宇宙の本」ではなく、「人類がいかに宇宙を知ろうとしてきたか、その科学的な考え方を描いた本」"に相違ない。科学において、歴史は常に「書き換えられ」続ける。新しい理論、新しい実験の積み重ね。そして、そこにこそ、素粒子、宇宙の隔たりなく自分たちの学ぶべきものが詰まっている。(かのケプラーの師、ティコ・ブラーエのエピードは印象的。彼は、夏と冬で同じ星の見える角度が違う"年周視差"が観測できないことから天動説をとった。しかし、今では、その"年周視差"こそ地球が公転している紛れもない証左となっている。望遠鏡のない時代、彼に0.0001度を観測することは難しかった。彼の理論は間違っていなかったが、まだ技術が追いついていなかったのだ。これは現在にも大いにありうることだろう。)本書は、ある講演を書籍化したものだが、ぜひともライブで聴講したかった。次回あるときや必ず。
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Posted by ブクログ
日本の技術の粋を集めた世界最強の加速器J-PARCと、検出器スーパーカミオカンデ。あらゆる実験装置の中でも、もっとも巨大なこれらは、この世界でもっとも小さなもの、素粒子の研究のために造られた。先代のカミオカンデが、超新星のニュートリノの検出に成功して、ノーベル賞を受賞したことは記憶に新しいが、目下行われているニュートリノ振動(ミューニュートリノ、電子ニュートリノ、タウニュートリノが互いに姿を変えること)の検出も、成功の暁には再びノーベル賞ものだろう。湯川秀樹にはじまり、世界の最先端をひた走る日本の素粒子物理学。その最先端の技術と成果は、それ故に、一般に知られるところ少ないが、素粒子とは何か、それをいかに捕らまえるのか、これほど分かりやすいテキストもあるまい。はじめて興味を持った人、いや、一度挫折したことのある人にこそ、読んでほしい良書。読者を、ドキドキワクワクさせるこの金髪長髪の異端児ただ者ではない。すごい助教。
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Posted by ブクログ
最新の宇宙論への、見取り図をつかむことができる。
たいへん分かりやすく、ありがたい。
おかげで、この本の内容の先にある「量子場理論」についても、Chat GPTで学習してしまった。
これから他の本を読んだりする際の、基礎知識を踏まえることができた気がする。
もちろん、正確にではなく、イメージだけだが、素人なのだから、それで充分である。
以下、そのイメージを備忘録。
温度≒粒子のエネルギー(速度)の平均値≒エネルギーの密度
この極限状態が、ビッグバン。
そこは、超高温・超密度・超エネルギー。
物理学での記述が不可能であるかもしれない。
物質(=素粒子)と、エネルギーは、同じもの。
E=mc2
核兵器が、圧倒的な破壊力を持つ理由。
通常兵器は、化学変化。
宇宙の膨張による温度低下。
CP対称性の破れ。
素粒子、原子…物質の形成が可能に。
電磁力・強い力・弱い力・重量。
四つの力をひとつで記述する、大統一理論の夢。
素粒子とは、電子場・光子場・クォーク場・ヒッグス場など、宇宙全体にあまねく広がった、それぞれ固有の「場」に生じた「励起」である。
複数の「場」の相互作用のあらわれが、物質やエネルギーである。
つまり、わたしの身体も言動も、この世のすべては、「量子場の励起」のあらわれである。
(唯物論的な世界観になる)
さらに、この本の先に向かうとなると、超ひも理論や、多元宇宙論という、現状、確かめようのない理論の世界に入っていく事になるだろう。
そこまで書いてないのは、著者が、理論屋でなく、実験屋だからなのだろうか。
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Posted by ブクログ
お友達から「とてもわかりやすい本ですよ」と聞いて読んでみました。素粒子物理学の話でしたが,確かに〈たとえ〉がうまくて,しかも話し言葉で書かれているので,これまで読んできた本よりもとっつきやすかったと思います。この文章は,高校生を対象として4回にわたり講演した内容がもとになっているので,それくらいの知識があればなんとか分かるでしょう。
ニュートリノやクオークという粒子(波)の話,カミオカンデやJ-PARCという超大型実験施設の話など,飽きずに教えてくれます。
著者が最後に語った「これらの実験って何の役に立つの?」という問いに関する答えがステキです。
科学の世界っていうのは,まずいきなり,この携帯電話を作ろうと思って,その技術を開発しようとしても無理なんです。非常に複雑な機械ですからね。だからまずは各々の学者なり技術者が自分の専門の何かを研究します。そして,「それが何の役に立つか?」は,とりあえず置いといて,その研究成果を発表するわけです。この「研究成果を発表する」ということが,すなわち,「ハンズの棚に商品を並べること」なんです。いろんな学者が,棚にどんどん並べていくわけです。
そしたら,次の世代の学者がハンズにやって来て,棚を見て,自分の役に立つものをピックアップしていきます。そうして作り上げたもの―それがこの携帯電話なんです。(本書p.315)
あとがきの次の部分もステキです。
成功した技術など,お金を出せばいくらでも買うことができます。しかし,失敗した経験は,どんなにお金を積んでも手に入れることができない,実際にやった者だけが手にすることができる,貴重な財産なのです。(p.320)
もちろん,成功したことがあるからこんなことを言えるのだろうけれども,最初のカミオカンデでの実験の失敗があったからこそ,ノーベル賞につながるニュートリノの発見があったのですからね。 -
Posted by ブクログ
多田将
ニュートリノ 入門書
ニュートリノ振動理論 を中心として、ニュートリノの性質を わかりやすく説明している。ニュートリノの物理学的な偉業や性質は理解できた
現代社会や産業への功績がなく、未来社会に何をもたらすのか未知数であるなかで、ノーベル賞を受賞していることに、無用の用としてのニュートリノの凄さを感じる
この本では例示されていないが、ニュートリノの使われ方は ガン治療、新エネルギー開発、新たな情報通信網、宇宙移動手段のほか、核兵器を無効化する新兵器の開発とか ではないか?
反物質、対消滅は SF的で面白い〜物質と反物質が対消滅する場合、エネルギー保存法則により 両者のエネルギーが残り、光として現れる
原子の構造が 太陽系と同じというのが ロマンがある〜太陽に相当する核(原子核)があり、周りを惑星に相当するもの(電子)が回っている
ニュートリノ振動理論
ニュートリノは時間とともに別のニュートリノに変化する〜素粒子の種類が時間とともに変わる。ニュートリノ振動が起きていれば、ニュートリノの質量に差がある
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Posted by ブクログ
素粒子物理学の専門家により、素粒子について、特に素粒子の実験についてわかりやすく説明した本。素人向けの講演で使用した資料が基になっており、わかりやすい。絵も独特で面白い。役立った。
「今、僕がこのようにiphoneを持つことができるのは、僕の手の表面の原子を覆う電子と、このiphoneの表面を覆う電子が、電子同士で反発しあっているからです。もしこの反発しあう力がなければ、僕の手もiphoneも本来はすかすかなので、僕はiphoneを持つことができないのです。世の中の物質がこの形を保っているのは、実は、電子がもつ力、電磁力のおかげなのです」p20
「皆さんが中高生の頃に物理学の授業で力学を学んだ際、抗力や張力、応力、摩擦力など、様々な力が登場したことと思いますが、それらは、本を正せば、重力を除いて、すべて電磁気力だったのです」p20
「陽子の崩壊を観測する目的で、カミオカンデはつくられました。つまり、当初はニュートリノの検出器ではなかったのです。結局、カミオカンデでは陽子の崩壊は観測されず、実験は失敗に終わり、カミオカンデはその役割を終えようとしていました。そのとき、1987年2月23日1635分、大マゼラン星雲内で起こった超新星で発生し地球にやってきたニュートリノを、カミオカンデが捉えたのです。これにより、日本はニュートリノ研究の主役へと躍り出て、カミオカンデの実験グループを率いていた小柴先生は、この功績によりノーベル賞を受賞されました。今でもニュートリノ研究において日本が世界をリードしているのも、この超新星の観測がそのすべての始まりだったのです」p102
「(梶田)ノーベル賞受賞の際の日本での報道を見ていると「ニュートリノに質量があることがわかった」ことばかりが強調されますが、これは副産物のようなもので、本質的に重要なことは、ニュートリノが、時間とともに他の種類のニュートリノに変化する、ということなのです」p125
「2010年1月から2013年5月までの期間の実験で、ミューニュートリノから電子ニュートリノへの変化という、それまで人類が誰も見たことがなかった現象を、世界で初めて発見するという快挙を成し遂げました」p148