多田将のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
宇宙の専門家ではなく、ニュートリノの研究をしている著者の宇宙に関する講義を本にしたらしい。
結果よりもそこに至る過程に重点をおいて面白く解説されてる。
過去の失敗が数百年の時を経て別の形で理論に組み込まれたりとか。
同じ事象の観測や実験でも、その時代においての最先端の科学技術の差で別の結果になるんだねぇ。
そりゃ肉眼より望遠鏡。望遠鏡より大気圏外で観測できる望遠鏡ってな具合。
これがあるならそれが出来る過程でこんな現象が起こってこんな物質があるんじゃね?って理論で、実験してくのは面白いね。
後書きで講義の段階では正しいとされていた数値が、本に起こしている最中に書き換わったってのがあ -
Posted by ブクログ
『すごい実験』 や『すごい宇宙講義』など、素粒子物理や宇宙論を分かりやすく説明する多田さんが原子力発電や核兵器の原理について説明したもの。はっきりいってとてもよく分かる。
原子力発電や核兵器が現在ある形である理由がよくわかる。天然に含まれる同位体の崩壊のしやすさや物質の中性子の吸収のしやすさなどが制約条件となり、そのために原子力発電所にせよ核兵器にせよ多大な科学的・工学的努力とコストをかけて作られていることが分かる。
たとえば、原子力発電なり核兵器のコアとしては、ある程度資源として安定して存在し、あとは中性子を与えるだけで分裂するくらいに適度な不安定さを持った元素である必要がある。この条件 -
Posted by ブクログ
素粒子物理学者による,核分裂・核融合とその暴走,それを実現する仕組みの解説。広島に落とされたリトルボーイから,洗練された水爆W88まで,譬喩を交えつつ明快に説いていく。
イニシエーターはどうやって中性子を解き放ち,核分裂を起爆するのか,コアを包むタンパーが,中性子をいかにして閉じ込めるのか,燃焼速度の異なる火薬を使った爆縮レンズの仕組みはどんなものか,ガンバレル型はなぜ安全性や反応効率が悪く,現在では爆縮型のみ採用されているのか,ウラン濃縮にはどんな手法があるか(化学的手法があるとは知らなかった),重水炉や黒鉛炉でいかにしてプルトニウムを生産するか,核分裂爆弾には出力の上限があり,熱核爆弾には -
Posted by ブクログ
日本では世界一の加速器技術で、世界最大のニュートリノの実験が行われている!
ポイント①ニュートリノは発見されているいちばん小さい物質
ポイント②宇宙からたくさん降り注いでいる。
ポイント③素粒子の解明は宇宙の解明につながる。
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日本の加速器技術が世界一のものであることがわかるだけでなく、なぜ世界一なのか、加速器でなにを研究しているのか、ニュートリノがなんであるのかが非常にわかりやすく書かれている。
現時点で最小の物質であるニュートリノの話から、宇宙の始まりにまで至り、自分が宇宙の一部であることがイメージされて鳥肌がたつほど。
科学技術の世界は1番じゃないと意味がない、という言 -
Posted by ブクログ
なんておもしろい本だろう。KEK助教の方が語る素粒子物理実験。普段から日常的に素粒子をいじっている、素粒子とお友達な人ならではの手に取るような素粒子物理の解説。物理学の入門書としてもとても良いと思います。
”クォークは重いエネルギーのスープに浮かんでいる”といったイメージを喚起するわかりやすい説明が多数。中性子の重さは940Mev。一方、中性子を構成するアップクォーク1つとダウンクォークを2つ足しても15Mevにしかならない。その差分はエネルギーである。クォークは強い力というバネに引っ張られながらも振動している...おもしろい。陽子や中性子ってほとんどがエネルギーなんですね。
こういう話を -
Posted by ブクログ
ブラックホール、ビッグバン、暗黒物質、誰もが一度は聞いたことのある用語を掘り下げながら、宇宙誕生137億年を遡る。面白いのは、著者が宇宙の専門家ではなく、スケールからいえば真逆の素粒子の専門家であること。宇宙にロマンティシズムなど感じていないと言い張る著者の語り口は、いたって平易かつ簡潔、想定する読者と同じ門外漢だからこその説得力に溢れている(しかし物理学においてマクロとミクロはいずれ統一されるべくものではある)。また、"宇宙の歴史"というのは、同時に人類の"理論と実験の歴史"でもある。著者も言うように、"本書は、厳密には「宇宙の本」ではなく、