多田将のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
宇宙の専門家ではなく、ニュートリノの研究をしている著者の宇宙に関する講義を本にしたらしい。
結果よりもそこに至る過程に重点をおいて面白く解説されてる。
過去の失敗が数百年の時を経て別の形で理論に組み込まれたりとか。
同じ事象の観測や実験でも、その時代においての最先端の科学技術の差で別の結果になるんだねぇ。
そりゃ肉眼より望遠鏡。望遠鏡より大気圏外で観測できる望遠鏡ってな具合。
これがあるならそれが出来る過程でこんな現象が起こってこんな物質があるんじゃね?って理論で、実験してくのは面白いね。
後書きで講義の段階では正しいとされていた数値が、本に起こしている最中に書き換わったってのがあったけど、この本が出版された2013年にはまだ検出されていなかった重力波が2016年には検出されていて、2017年10月に俺が手に取る少し前にはノーベル物理学賞を受賞してたってのもタイムリーですげぇってなったw
この分野の進歩は目覚ましいね。 -
Posted by ブクログ
『すごい実験』 や『すごい宇宙講義』など、素粒子物理や宇宙論を分かりやすく説明する多田さんが原子力発電や核兵器の原理について説明したもの。はっきりいってとてもよく分かる。
原子力発電や核兵器が現在ある形である理由がよくわかる。天然に含まれる同位体の崩壊のしやすさや物質の中性子の吸収のしやすさなどが制約条件となり、そのために原子力発電所にせよ核兵器にせよ多大な科学的・工学的努力とコストをかけて作られていることが分かる。
たとえば、原子力発電なり核兵器のコアとしては、ある程度資源として安定して存在し、あとは中性子を与えるだけで分裂するくらいに適度な不安定さを持った元素である必要がある。この条件に合致するものは、天然ではウラン235、人工的に製造することができるものでもウラン233、プルトニウム239、プルトニウム241しかないと。ウラン233はトリウムサイクルで利用されるが、プルトニウム240は分裂しやすすぎるとか。
連鎖反応の必要条件は中性子によって引き起こされた反応で、引鉄となった中性子よりも多くの数の中性子を放出することである。そして、臨界状態とは中性子1個に対して1個の中性子が放出されるに至った状態をいう。この放出される中性子は、速い方がいいのかと思ったら、遅い方が反応しやすいらしい。この反応速度を、制御棒やホウ酸などで吸収をすることで制御する。チェルノブイリの事故では、この制御棒の操作の失敗が原因だった。また臨界に達したという点では、福島の事故とは違うらしい。
最後は、原子力発電の話から核兵器の話になり、ウラン燃料を用いた原子力発電からプルトニウムが生産でき、これが核兵器に使うことができるという。実はウランを核兵器に使えるくらい濃縮するのは大変で、プルトニウムを作る方が簡単だという。実際、長崎で使用されたプルトニウム型はロスアラモスの砂漠での実験で使用されたが、広島のウラン型は濃縮ウランがもったいないので、爆発実験は行わず実戦で初めて爆発させたのだということを初めて知った。
原子力発電所内で核兵器に使えるプルトニウム239を効率的に作るためには、中性子を吸収しにくい材料を使う重水炉や黒鉛炉の方が好ましく、これらの炉を持っていると核兵器開発が疑われるという。チェルノブイリも黒鉛炉であった。そのため、原子力発電所を建設する場合は核拡散を防止するため軽水炉を勧めるのだと。この辺りの話、北朝鮮やイランで出てきたような気がするが、初めて腑に落ちた。
ついでに、天然のウラン238からたくさんプルトニウム239を作るための高速増殖炉の話にも触れられていた。日本のもんじゅはどうもダメだったが、ロシアでは臨界も実現して、2020年に稼働させるらしい。
福島の事故以来原子力についてはいろいろな言説が生み出されたが、どうもよく分からなかった原子力発電を持つことが、核兵器開発の能力を持つこととつながっているといった話が論理的にやっと分かった気がする。講義がベースになっているようだが、この人分かりやすく説明するのがうまいんだなと改めて思った。 -
Posted by ブクログ
素粒子物理学者による,核分裂・核融合とその暴走,それを実現する仕組みの解説。広島に落とされたリトルボーイから,洗練された水爆W88まで,譬喩を交えつつ明快に説いていく。
イニシエーターはどうやって中性子を解き放ち,核分裂を起爆するのか,コアを包むタンパーが,中性子をいかにして閉じ込めるのか,燃焼速度の異なる火薬を使った爆縮レンズの仕組みはどんなものか,ガンバレル型はなぜ安全性や反応効率が悪く,現在では爆縮型のみ採用されているのか,ウラン濃縮にはどんな手法があるか(化学的手法があるとは知らなかった),重水炉や黒鉛炉でいかにしてプルトニウムを生産するか,核分裂爆弾には出力の上限があり,熱核爆弾には上限がないのはなぜか。こういった素朴な疑問が氷解するはずだ。一般向けの講演をもとにして基礎から説き起こしているので特別な前提知識は要らない。この分量でこれほど核兵器の核心に迫れるのは,この本を措いて他にないだろう。(あったら教えてください) -
Posted by ブクログ
日本では世界一の加速器技術で、世界最大のニュートリノの実験が行われている!
ポイント①ニュートリノは発見されているいちばん小さい物質
ポイント②宇宙からたくさん降り注いでいる。
ポイント③素粒子の解明は宇宙の解明につながる。
-----
日本の加速器技術が世界一のものであることがわかるだけでなく、なぜ世界一なのか、加速器でなにを研究しているのか、ニュートリノがなんであるのかが非常にわかりやすく書かれている。
現時点で最小の物質であるニュートリノの話から、宇宙の始まりにまで至り、自分が宇宙の一部であることがイメージされて鳥肌がたつほど。
科学技術の世界は1番じゃないと意味がない、という言葉に重みを感じた。
この壮大で矮小な世界をこんなにドラマティックに話せる多田さんのイメージ力と話術に敬服します。 -
Posted by ブクログ
なんておもしろい本だろう。KEK助教の方が語る素粒子物理実験。普段から日常的に素粒子をいじっている、素粒子とお友達な人ならではの手に取るような素粒子物理の解説。物理学の入門書としてもとても良いと思います。
”クォークは重いエネルギーのスープに浮かんでいる”といったイメージを喚起するわかりやすい説明が多数。中性子の重さは940Mev。一方、中性子を構成するアップクォーク1つとダウンクォークを2つ足しても15Mevにしかならない。その差分はエネルギーである。クォークは強い力というバネに引っ張られながらも振動している...おもしろい。陽子や中性子ってほとんどがエネルギーなんですね。
こういう話を聞くと、素粒子物理なんてまだないような時代にe=mc^2を導き、こうしたエネルギーと質量の等価性を述べたアインシュタインって天才だな、と改めて思います。