郷原信郎のレビュー一覧
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郷原信郎弁護士がその活動のテーマを一冊の本に仕立てたもの。
彼の主張はYouTubeで聴いているので、違和感なく読むことができた。
そのテーマとは
第一章 刑事司法が「普通の市民」に牙をむくとき~日本の刑事司法制度で被告の訴えは届くか
第二章 「日本の政治」がダメな本当の理由~「公選法」「政治資金規正法」の限界と選挙買収の実態
第三章 東電旧経営陣への一三兆円賠償命令という「異常な判決」~「原子力損害賠償請求法」とガバナンスなき電力会社
第四章 「消費税は預り金」という“虚構”が日本経済を蝕んでいる~転嫁困難な中小企業が置かれた厳しい環境
第五章 交通事故の加害者が“つくり出される”とき~「 -
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”思考停止”とは、一体何が止まっているのか。
まさに、考えることが止まっている。
与えられた情報や、指示された事を、全く無批判に受け入れ、従い、行動している。
誰か(どこの誰かも知らない)が、テレビやネットを通じて垂れ流している情報が、あたかも真実であり、重要であるかのように伝えられ、信じ込まされている。
それらに対して、何らかの疑問や、対抗する意見を持ち得ない事の危うさ。
”思考停止”状態にある自分に気づかせてくれる一冊だった。
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著者の関わってきた具体的な事例を交え、そこに潜む矛盾や欺瞞、意図的な策謀を含めた解説が、それらの報道を見て、聞いて、受け止めてきた自分に突き刺さる。
自分もまた -
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【ゴーン氏の事件のように、役員報酬の記載が有価証券報告書虚偽記載の犯罪として摘発された例はなかったのに、「未払いの役員報酬」の問題でいきなり経営トップを逮捕・起訴するというような、経済社会の常識に反する検察のやり方がまかり通るのであれば、検察が、上場企業の経営権の帰趨を左右することになる。それはコーポレートガバナンスにとって重大な脅威になりかねない】(文中より引用)
突然の逮捕から世界中の度肝を抜いた日本脱出に至るまで、一連の疑惑の中で注目を浴び続けたカルロス・ゴーン。その渦中の人物に複数回のインタビューを行い、「検察の論理」を知り尽くした人物が迫る事件の「深層」とは......。著者は、東 -
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細かい条文がどうなっているなどということを考える前に、人間としての常識にしたがって行動すること。そうすれば、社会的要請にこたえられる。
本来人間がもっているはずのセンシティビティというものを逆に削いでしまっている、失わせてしまっているのが、今の法令遵守の世界
組織が社会の要請にこたえるためには
1 社会的要請を的確に把握し、その要請にこたえていくための組織としての方針を具体的に明らかにすること
2 その方針に従いバランスよくこたえていくための組織体制を構築すること
3 組織全体を方針実現に向けて機能させていくこと
4 方針に反する行為が行われた事実が明らかになったりその疑いが生じたりしたとき -
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組織、コンプライアンスを軸に検察から一般企業のあり方を勉強させられます。
「厚労省の冤罪をめぐり検察の問題点を指摘する本」と、勝手に思い込んで読み始めた私が、本書の真意を理解するまでには正直時間がかかりました。また、頭を回転させながらでないと内容理解できないので、気楽に読み始めて暫くはなかなか先に進めず、実は一時中断していました。しかし、今は読んで良かったと思っています。
ネット(ツイッター、ニコニコ等)での郷原氏の発言に共感するところが多かったので読んだのですが、別の作品も読んでみようと思います。読み終えたときの達成感はほかの本の数倍あります。 -
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ネタバレ日本人が、本質、大局を見ずマスコミの指し示す方向に突っ走り、社会が悪い方へ悪い方へ行っていることを指摘する。社会のその性向は、太平洋開戦から何も進歩がないと。
東京地検特捜部を経験した著者は、日本の裁判所、検察が、恐ろしい状態にあり、経済状態にも本質的な悪影響を及ぼしていることを指摘する。司法が閉じた世界で、他の分野の専門家を導き入れることもなく、他国とは比較できない悪制度の裁判員制度を導き入れ、その問題点を指摘する道も封じていることも。
不二家「事件」、伊藤ハム「事件」、実情を伝えようとしないマスコミによって作られた虚像を信じこまされていたようだ、と感じることができた。
不二家が TBS -
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さすが理系学部卒の検事出身、しかもコンプライアンス関係のアドバイザリ経験豊富な弁護士といった作者の書いたものだけあって、およそ「組織コンプライアンス」を論じたもののなかで、ダントツに説得力のある内容だと思いました。
法令「遵守」ではなく、目的指向の「ルールの創造・修正」こそがコンプライアンスだというのは、僕自身の経験から言ってもまったく賛成。ただ、それを実際に実現するには、トップの強力なリーダーシップと実務能力に長けたサポートスタッフの存在が必要で、なかなか簡単ではないことも確かなのですが。
ともあれ、組織に属する人間としては、一読の価値ある本だと思います。 -
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九州電力「やらせメール」問題の深層という副題が示すとおり、九州電力の玄海原子力発電所の運転再開をめぐるメール問題などを調査した第三者委員会委員長が書き綴った詳細な調査にかかわる人間模様である。
また、最近の組織の不祥事で設置された第三者委員会と九州電力との対比も書かれている。
あとがきでは、検察という組織が「組織としての一体性」が崩壊し、統制が働かなくなっているとの指摘もある。
人間社会は、多様なステークホルダーの調和により成り立っている。
なかんずく、公益という価値に携わる組織においては、高邁な理念哲学を保有するトップの存在が重要である。
プリンシプル、プリミティブな正義感、ノブレ