郷原信郎のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
ネタバレ本書のテーマはコンプライアンスである。90年代の末か国家公務員倫理法制定により、官僚の実社会との隔絶が広がり、法令を遵守するだけでは、社会的要請に応えられなくなって来ているという問題意識が存在する。
例えば、談合について、高度経済成長期には社会的要請としての富の再配分としてのシステムが存在しており、雇用の確保、中小企業を通した地域振興、天下りの受け皿、技術革新などの多面的役割があった。刑法の談合規定も適用されず、談合は公然化していた。しかし、低成長時代、弊害が多く出始めたので会社法上の規定と公正取独禁法の見直しにより、談合に課徴金を課し、談合コストを高める事で談合=犯罪のイメージは定着した。90年代以降の規制緩和の流れの中で、一方で競争システムを助長する事で、消費者の利益に資する反面、受注実績に制限を掛けなければ安全、良質という社会的要請には応えられない。談合を巡る問題で、結果的に談合は「不正の温床」というイメージは出来たが、なぜ談合が必要とされていたのか社会的実態を問う事をしなかったため、談合=悪論が目的化し、手抜き工事や有望ななどの問題が出始めている。
上記のように、時代とともに法令と社会的要請にはズレが生じ、拡大して来ている。法令遵守する事がメディアや規制緩和の事後チェック型の流れで求められるが、社会の要請に基づかなければ法律だけ守っても問題の解決にはならない。そこで法と実態社会のギャップの拡大を食い止める為に、どうすれば良いかは述べられていない。ただ、おそらく法令が完全に社会の要請に応える事は困難であろう。筆者はコンプライアンスを「組織が社会的要請に適応すること」と定義し、組織が法の趣旨に照らし社会的要請に応えるための組織改革が必要だと言う。ただ、当たり前の事のようにも思え、多くの企業が生き残るべく実施しているのではないかとも思える。むしろ、官僚という組織について知りたいので、他の書にあたろうと思う。 -
Posted by ブクログ
[ 内容 ]
理学部出身、鉱山会社を辞めて独学で司法試験に合格した「変わり種」が、さしたる動機も思い入れもなく、無理やり引きずり込まれた検察の世界。
そこで目にしたのは、刑事司法の「正義」を独占してきた検察が社会・経済の構造変革から大きく立ち後れている姿だった。
談合事件やゼネコン汚職などで「組織の論理」への違和感に悩んだ末に辿り着いた自民党長崎県連事件。
中小地検捜査の常識を超える「長崎の奇跡」だった。
こうした経験から、政治資金問題、被害者・遺族との関係、裁判員制度、検察審査会議決による起訴強制などで今大きく揺れ動く「検察の正義」を問い直す。異色の検察OBによる渾身の書。
[ 目次 ]
序章 私にとって検察とは
第1章 私が見てきた検察
第2章 日本的刑事司法の構造と検察
第3章 経済検察への展開と「迷走」
第4章 政治資金捜査の行きづまり
第5章 揺らぐ「検察の正義」
終章 「長崎の奇跡」
[ POP ]
[ おすすめ度 ]
☆☆☆☆☆☆☆ おすすめ度
☆☆☆☆☆☆☆ 文章
☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー
☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性
☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性
☆☆☆☆☆☆☆ 読後の個人的な満足度
共感度(空振り三振・一部・参った!)
読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ)
[ 関連図書 ]
[ 参考となる書評 ] -
Posted by ブクログ
なんかあると審査、検査を強化しよう、となる。また間接業務が増える。いまに間接業務だけになってしまうのではないだろうか?著者の言われるとおり「日本の建築物の安全性を支えてきた」のは「会社の信用と技術者の倫理」(p.80)なんですよね。文系の間接業務じゃない。
まあそうはいっても信用だの倫理というのは文明だから、なかなか一朝一夕には対策が取れない。そこで、本書も背後にある社会の要請ってものをよく考えろ、というメッセージになっている。「常識が大事だよ、常識が…」というわけだ。著者は「本来、人間が持っているはずのセンシティビティ」(p.103)という表現をされている。まあ要するに、よく考えろよ、ということなんですね。だけどよく考えても報われないんだよね。それでも考えろ、と。そういうわけだ。
読みどころはやはり実例が書いてあるところ。バカヤローという表現はとっていないが、困ったことがありますよ、という実例を使った文脈が面白いです。
専門家のバカヤローという文脈がある。法律家ってのは生活にはたいして役にもたたない。そういう専門家だから、面倒なことは法律家に丸投げしていた。それでよかったし、法律家も少ないから偉かった、重宝された、というわけだ。win-winですね。著者は「巫女のようなもの」(p.130)だったとしておられます。
縦割りのバカヤローという文脈もある。法律は個々にあるけれども、背後の価値観ってのはつながっているんだから、「タコツボの中に入ってでてきません」(p.138)というのは困りますよ、というわけだ。例えば企業法にしたって「企業に関する法全体を体系化して『面』でとらえるということ」(p.139)が大事とのこと。その通りですね。専門家ってのはその専門のオブジェクトのほうをキーに考えるんだよな。それをあてはめる相手の側の体系にあてはめないんだよなあ、と思いました。このくだりは賛同しました。しかし、面で捉えるには実体経済に近づかなければならないですよね。そこがイヤなんでしょうね。専門家の人は。そもそも実体経済がイヤだから専門家になった人が多いんじゃないのか?これは私の邪推。
すぐ間接業務に持ち込むっていうところで、法令遵守ってのも、これもまた、わが国を覆う文系の禍いの一つだな、と解釈しました。 -
Posted by ブクログ
発売当初に購入して中途半端なままだったので、読み返してみたんですが、改めて再読すると新たな発見というものがあります。視点が変わったり、気付かなかったところが浮き彫りになったり。読書自体が自分の成長の目安になったりするんでしょうね。
(+)
・『会社法と労働法の関係』P135
会社は株主のものという考え方が一般的に認知されだした現在、労働者(つまり社員)はその利益獲得に必要な労働用益であり、その労働契約の相手方であるという考え方。会社はだれのものかという前提にたった「会社法」と雇用や労働者保護を目的とする「労働法」は相互に密接に関連している
・『法の背後に何があるのか?〜社会的要請と法令遵守〜』P100
法の背後にある社会的要請と、法令遵守の精神で締め上げた自らの守備範囲への意識の歪みがいわゆるテキサスヒットが生まれてしまう原因になってしまう。
→自分がかつてそうだったと反省。意識するあまり、潜在的に法令遵守がインプリンティングされることによって、手がでなくなる可能性がある。
(−)
途中からコンプライアンス論からマスコミを暗に批判しているような内容にも見える。またフルセットコンプライアンスについては、どうしても5W1Hのような漠然とした話に終始して、実態例にそぐわない気がしてならない。
【「法令遵守」が日本を滅ぼす】
郷原 信郎 (著)
出版社: 新潮社 (2007/1/16)
ISBN-10: 4106101971
ISBN-13: 978-4106101977
発売日: 2007/1/16