郷原信郎のレビュー一覧
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官製談合などを引き合いに、立法事実を軽視した法運用がいかに社会にマイナスに作用するか、また昨今の企業不祥事で散見される、無自覚な「法令遵守」だけをして本質的な原因追求をしないために、類例が何度も繰り返されているのではないかと警鐘を鳴らしています。
また、本質を見失ってしまうのは、官僚やマスコミの行動が弊害になっているからという指摘は同感ですが、根拠についての記述がいささか弱かったかなという印象です。
「法令遵守」=「コンプライアンス」ではないという説明に著者の主張が凝縮されており、「コンプライアンス」の真の意味を問い直すのに、一読の価値ありでしょう。 -
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ネタバレ日本社会に蔓延る「法令遵守」そのものの自己目的化、絶対化の影響について論じた本。当書では不二家など食品会社の不祥事、耐震偽装、ライブドア事件などの経済司法、裁判員制度、社会保険庁の「宙に浮いた年金記録」、マスメディアの報道問題など多岐に渡ってこの問題を扱っている。
全体的に言えるのは、「法令違反だから」という理由で猛烈にバッシングしておきながら、真相が明らかになる頃には皆無関心を決め込む、バッシングのみに関心が集中して本来の問題が忘れられるという傾向が日本に見られることである。
それはマンションの耐震偽装については、1981年の建築基準法改正前に立てられた物件の中には、偽装物件より耐 -
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2009年刊行の本なので取り上げられている事例は伊藤ハム、不二家、耐震強度偽装、村上ファンド、ブルドックソース、秋田連続自動殺害事件、厚生年金記録改ざん問題など、やや古い話題ですが、これらの問題の根底にある状況に対する著者の指摘は昨今の検査不正・認証不正問題などにもそのまま当てはまる気がします。
「法令」は例えるならアメリカ社会では普段使いの「文化包丁」であるのに対して日本社会では「伝家の宝刀」(最終手段)であったところにアメリカ流に何でもかんでも「遵守」という姿勢が持ち込まれたために社会が思考停止状態になってしまっているという著者の例えには首肯せざるを得ません…。 -
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法令と社会的要請との間にズレがあるのに、企業が法令規則の方ばかり見て、その背後にどんな社会的要請があるかということを考えずに対応すると、法令は遵守しているけれども社会的要請には反している、ということが生じる。社会的要請に応えていくことこそがコンプライアンスである。確かにそう思う。
「社会的要請」という言葉は勉強になった。
確かに合法か違法か、ということにばかり注目が集まるが本質はそこではない。事例の中に、合法ではないが社会的要請には応えている、というものが数多くあり、一方で社会的要請に応えていない法律が今だに残っていることは驚きだ。本質よりも形式を重んじる風潮は滅びゆく日本の兆しなのかもしれな -
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先日、社内会議の席で「思考停止」というフレーズを
連発するヒトがいて、なかなか面白い表現をするなぁ
と思っていたところ、本書を書店で見つけた。
そこで、すかさず購入。
食品企業の不祥事や、年金記録の改ざん問題、裁判員
制度などを取り上げて、「法令遵守」という「思考停止」
に警笛を鳴らしている一冊。
不二家の信頼回復対策会議の議長を務めた郷原さんの
論理展開は実に明晰で、説得力も十分。
(不二家のところは少し甘い気もするが。)
法曹界の方には必読の書、と言ってもいいほどの内容と
思う。
ただ、マスメディアを斬った章はやや物足りなかった。
本書で取り上げられている「 -
Posted by ブクログ
"多くの人に読んでもらいたい本の一つだと感じた。たまたま私は、伊藤ハムの事件について、従業員の声も聞けたし、柏市の保健所の立場の声も聞けた。概ね本書に記載の通りである。中核市になった柏市が保健所を自主運営する最初の仕事が伊藤ハムの水質問題になった。本書に記載の通り、見誤った対応のすえ、何ら食品に問題がない商品の回収をせざるを得なくなった企業の風評被害は甚大であり、従業員たちの苦労も聞いているだけに、正しい報道をすることのないマスコミには憤りを感じる。
同様に、本書のTBSと日テレの対応の違いとその後の処分の違いに、また怒りすら感じてきてしまう。
いずれにしろ、風説に惑わされずにしっか