郷原信郎のレビュー一覧
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「法例遵守」することで、大丈夫だと思っている日本人に向けて、それが問題の解決にはならないことを指摘する良書。
談合が非公式のシステムとして認められたことであること、公正取引委員会が歴史的には非常に難しい立場であったこと、ライブドア、村上ファンド、耐震強度偽装事件、パロマ事件などを例に挙げて、官とマスコミがそれを後押ししていると指摘している。
日本の法律は元々、実態にあっていく慣習法ではなく、大陸成文法であるとともに、学者の研究も経済活動などとは無縁で、法学のタコつぼにとじこもって、主に、民法、刑法、行政法が研究対象になる。このような中で、フルセット・コンプライアンスの考え方が有効であると指 -
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理系出身で就職後、司法試験に合格して検事になったという変わり種の著者が、検察の正義がうまくきのうしていたものが、機能しにくくになっている現状を鋭く指摘している書。
内容は、検事になった理由から始まり、日常の仕事や人々の関わり、検事が多くの権利を有していることを説明している、また、問題となっている、経済検察としてライブドア、村上ファンドの問題、政治家の献金として小沢事件を取り上げて、どちらも不発であり、刑事事件の巨悪を退治するという昔ながらの公式に幻想を抱き、現代の複雑で多様化している社会に対応できなくなりつつあることを指摘している。
検察の内部からの告発はなかなか少ないとは思うが、社会に適 -
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検察問題を入り口に,コンプライアンス≠法令遵守という持論を展開。フルセットコンプライアンス,リスクマネジメントとクライシスマネジメント,などなど,非常に予防法務的な立論です。コンプライアンスを社会の要請に応えるという意味だと強調すればする程,法律家の専売特許ではなくなるような気もしますが,修羅場をくぐってると言う意味では,コンプライアンスもしくはリスク・クライシスマネジメントの専門化の供給源としては有力であり続けるのでしょう。
ビジネス書的な側面も強い本ですが,検察と法務省,法務大臣ととの関係など,検察論としても実務経験のある法律家らしい分析がされています。 -
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ネタバレ『法令遵守が日本を滅ぼす』。なんだかタイトルもあざといし、新潮新書なのであまり期待しない方がいいかな(←出版社差別)と思いながら読んでみたのですが、思ったよりも面白く読み応えのある本でした。
法律と企業倫理のこれまでの関係と、そのこれからあるべき関係が述べられています。具体例や歴史的経緯、それに日本人の法感覚などに照らし合わせながら論述が進められていくので、本の厚さに対して情報量も相当なものです。
まあ大まかな作者の主張はタイトルの通りで、最近は法令遵守ということがよく言われるけれどそれだけではダメだ、ということです。
規則を無視するのも、規則を無批判に遵守するだけの態度も、どちらも間違 -
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ネタバレ著者は東京地検特捜部、法務省法務総合研究所総括研究官等を経た、日本における組織のコンプライアンスの第一人者(巻末の著者紹介より)。
コンプライアンスを単に「法令遵守」ではなく、「社会の要請に応える」という観点で取り組むべきと解説する。
自分は現状「法令順守」を推進する部署に所属しているが、思考を停止して形式的な「法令順守」を振りかざし、クライシスマネジメントにあたらないようにしなければならないという教訓となった。
<取上げられた事件>
・郵便不正事件(証拠改竄)
・筋論クレーマーへの対応
・年金改竄問題
・医療過誤問題
・「あるある」の「納豆ダイエット」
・「朝ズバ」の「不二家パッシング -
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とかくコンプライアンス=「法令順守」と考えられがちであるが、その考え方が組織を萎縮させ、思考停止を起こし、問題が発生した場合に間違った対処を行って取り返しのつかない結果を引き起こすと説明する。コンプライアンスは、「社会の要請に応えること」であり、組織の目的・存在理由を念頭に置いておくこと、それを感じ取るセンシティビティーが重要であるとする。単に法律を守るということは枝葉末節に過ぎず、そこに拘ってしまい危機管理対応を間違った具体例(年金改竄、医療過誤、マスコミの捏造問題等)を挙げて実証していく。著者の出自である検察の郵政不正事件についても頁を割いて解説する。社会は何を求めているのか・・・。
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[ 内容 ]
「申し訳ございません。違法行為を二度と起こさないよう、コンプライアンスを徹底いたします」とは、不祥事を起こした際の謝罪会見での常套句。
だが、こうした「コンプライアンスとは単に法を守ること」と考える法令遵守原理主義そのものが、会社はおろか、この国の根幹をも深く着実に蝕んでいるのだ。
世の中に蔓延する「コンプライアンス病」の弊害を取り上げ、法治国家とは名ばかりの日本の実情を明らかにする。
[ 目次 ]
第1章 日本は法治国家か
第2章 「法令遵守」が企業をダメにする
第3章 官とマスコミが弊害を助長する
第4章 日本の法律は象徴に過ぎない
第5章 「フルセット・コンプライアンス」 -
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ネタバレコンプライアンス、法令遵守でさえ、所詮は「手段」に過ぎないんだと認識した。どんなことでも大切なのは、やはり「目的」そのもの。「手段」としてのコンプライアンスが「目的」化するから、おかしくなる。
コンプライアンス、法令遵守の「自己目的化」が、さまざまな弊害を生んでる。確かに、そのとおり!!
自分たちで作りだしたルールに、盲目的に縛られているばかり。だったらそれを変えればいいのに、そうしようとする力・アクションが湧き出してこない。だから、ますます上意下達は強化され、一方で現場のモチベーションは下がるばかり。
どうすれば、現場から上を突き動かすことができるようになるのか?それが課題。
・法令・ -
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事実を不公平なく伝えられないマスメディアへの批判
●不二家や伊東ハム・姉歯建築・消えた年金問題の真相 マスコミの報道との齟齬
また「虚偽を正したものへのあまりに厳しい制裁」「うやむやなままにしておいた方が非難されない」という社会の有り様に言及。
社会の風潮に多大な影響を与えるマスコミの問題点など。
マスコミ(テレビ番組)の報道内容を批判しているが、すべての問題は「法」の問題に帰結する。
(郷原さんは法律家なので。)
社会問題とマスコミの関わりについて述べながら、法の望ましいあり方を論じています。
日本の法令は実際の生活になじんでいない。徒に権力を振り回す法ではなく、より国民の生活を支える