レイフ・GW・ペーションのレビュー一覧
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Posted by ブクログ
退職した警官が過去の事件の調査を依頼され‥
スウェーデンの人気シリーズの最終作。
ガラスの鍵賞など、各賞総嘗めにした作品です。
警官と言っても、このラーシュ・ヨハンソン、ただの警官じゃない。
凄腕で知られる、国家犯罪捜査局の長官だったのです。
退職後のある日、脳梗塞で倒れます。
入院先の担当医の女性から、父親が気にしていたという、昔の事件を調べてほしいと頼まれます。
牧師だった父が、犯人を知っているという懺悔を聞いたというのです。
懺悔は本来秘匿すべきものなので、犯人の名前まではわからないのですが。
すでに時効になった、25年も前の未解決殺人事件。
かっての部下にも連絡を取り、少しずつ調べるうちにのめり込んでいきます。
不自由な身となり命の危険を感じつつ、生への執念を燃やすように。
ヨハンソンは兄との共同の事業でも成功しているし、年の離れた美人の妻もいる幸せ者。
頑固なヨハンソンのもとへ、見た目が派手な若い女性の介護士が来たり、ヨハンソンを上回って押しが強い兄が心配して送り込んだ屈強な若い男性が傍に付き従ったり。
思わぬ闘病&安楽椅子探偵生活を描く筆致はユーモラスです。
当初は雲をつかむような話だった昔の事情が、微妙に違った角度で見え始める。
部下たちが全幅の信頼を寄せている様子も微笑ましい。
さぞ豪胆で頼りになる上司だったんだろうな、と。
しかし倒れたというのに、好きなものを食べるのを全然やめないの、この男。
引退したとはいえ、時効とはいえ事件を抱えているのだから、もう少し健康に気を配ったほうが!という気はしますが。
最終作なのでオールスターキャストなのでしょう。
この作品からの翻訳で、これっきり?なのかどうか。
ちょっと、惜しいですねえ。
次はどの作品が翻訳されるか?楽しみにしてますよ。 -
Posted by ブクログ
北欧ミステリーのジャンルの広さを示すようなベックストレーム四部作の完結編。当初、ガラスの鍵賞を獲得した『許されざる者』でこの作家が気に入ったものの、本書のベックストレーム警部は、腕利きではあるものの酒と美女をこよなく愛するモラルの少し欠如したお笑い系キャラクターである。
ちなみに『許されざる者』はふざけたところなど一切ない心打つ傑作であり、その主人公ヨハンソンのキャラクターは、忘れ難い。しかも同名の名作映画もぼくは好きである。バート・ランカスター&オードリー・ヘップバーンの1960年版の映画は特に。クリント・イーストウッド監督主演の1992年のもの、それを開拓期の北海道を舞台にリメイクした李相日監督の渡辺謙主演版日本映画作品も、それぞれ忘れ難い映画である。ペーションの日本デビュー作品は、それらとは同名にして全く異なるシックな警察小説であった。
しかし本シリーズは、ミステリを主体にした警察小説でありながら、ベックストレームという経験豊富な警部による、実に快楽主義的な生活の日々と、優れた捜査感覚という相いれない二つの特性を持つ主人公を据え、それにも増した個性豊かな捜査スタッフたちによる執念の捜査が実を結んでゆくコミカルかつ熱心な模様が軽妙と重厚をクロスさせてなお面白い。何だか趣味じゃないなあと思いつつも、とうとう全四作読まされてしまったリーダビリティと、小説の核となるミステリ部分が優れているところがこの作家の個性である。
何を隠そうペーションという独自なこの作家は、長年に渡りリアルな捜査畑にいた経験豊富な警察人生の後半より作家デビューした人である。なので捜査のリアリティ、捜査チームの持つ活気のような独特な気配をこの作家は活き活きと描くのだ。
さて本書では、少年が無人島で見つけた古い頭蓋骨を警察署に持ち込むところから始まる。ベックストレームはふざけたなまけ癖のある男でありながら、周囲の人間に好かれるところがあり、少年との交流シーンや、真剣に頭蓋骨の主を捜査しようという姿勢にはとても好感が持てる。頭蓋骨を調べるうちに、タイのプーケットの大津波で犠牲になった女性のものであることがわかる。
プーケットに旅行に出ようとした矢先に津波の情報を得て腰を抜かしていた元の職場の同僚の顔をぼくは想い出した。悲惨な津波による被害者は少なくなく、あの時の犠牲者が北欧ミステリーに登場するなんて思いもよらないことである。でもリアリズムとユーモアを混然とさせるこの老練な元警部であり実績のある作家ペーションの筆でその不思議な頭蓋骨の正体を探ってゆく、本作の骨格は驚くほどしっかりしている。地道な捜査による地味な本で、ベックストレームという特異なキャラを描くための寄り道も多い小説であるが、何となく読まされてしまうのだ。
時にはにやりと苦笑いを交えながら、老練なユーモアと考え抜かれたミステリーという骨子に支えられたこの物語は、ぼくの日常に交錯する奇妙な香辛料のように、印象的に刺さってくるのだった。 -
Posted by ブクログ
この作家を読み始めたきっかけは『許されざる者』だったが、その作品はヨハンソンという警察長官のシリーズ主人公であり、しかもシリーズ最終作だった。物凄くシリアスで読み応えのある感動作だったのでかなり気になる作家となって記憶に刻まれた。
同じ作家の別シリーズである本書ベックストレーム警部シリーズが今や、次々と翻訳されているので、期待して読んでいるのだが、このシリーズは、実はユーモア・ミステリー。誰が見てもアンチヒーローな助平ジジイイなベックストレーム警部だけが、喜劇役者のような主人公を演じる。生前のヨハンソンが顔を出してくれるシーンでは、複雑な想いとともにこの別シリーズのヒーローの個性の強さに改めて感銘を受けたりもした。
ベックストリーム警部は、ヨハンソンと同じ地平にいるくせに、かなり際どい類いの主人公である。悪徳警官とは言わないまでも、私腹をこやし、女性を性の道具として利用、それ自体性差別なのだが、人種差別を含め、あらゆる差別の亡者でもある。
それでいて彼を取り巻く警察組織の各部署のキャラクターは生真面目な普通の警察小説の地味眼な主人公たち。あくまで捜査責任者であるベックストレームだけが、エロじじいであり、アル中であり、昼寝大好きであり、私腹をこやすための努力を惜しまないダーティ極まりない漫画チックな主人公なのである。
この手のミステリーで有名なのは、セクハラやパワハラも共通するワーカホリック警部として一世を風靡したあのR.D.ウィングフィールド描くシリーズ主人公であるフロストであろう。どちらも中年の下品男、それでいて事件解決能力の高い主役刑事をヒーローにしたミステリーの双璧と言えるのではないだろうか。
フロストがどちらかと言えば、一気に沢山の事件を解決してゆくモジュラー型小説とすれば、本編のベックストレームは一つの事件の裏に重なる分厚い謎を運よく、結果的に解いてしまい、最終的に美味しいところをものにしてゆくという皮肉型主人公であるように思う。
本書でもベックストレームの下品さや強欲さは全開極まりなく、ストーリーはオートマティックに進んでゆくのだが、スウェーデンらしく歴史の世界に入り込んでゆくエピソードの長さには、聞き役であるベックストレーム同様、読者としてもやたら退屈させられた。また歴史上の人物相関図が及ぼす現代の事件への難解度が半端じゃなく、これまでのシリーズ作としては最も長い、と言われる部分がこれのせいだったか、と思うと、ミステリー読者としては辛すぎる構成と感じた。
作者が、犯罪学教授で、国家警察委員会顧問などの肩書を持っているとのことなので、ともすればストーリーテリングよりも楽屋落ちに近い蘊蓄方面に語りが入ると厄介、という印象がないでもない。
このシリーズを読み続けるべきか否かを問われるぼくにとっては分岐点的作品である。中盤で100ページ余を費やしての面倒くさいエピソードの集積さえなければ、あれよあれよと解決に雪崩れ込む展開は魅力だ。何よりベックストレームの日常に関わるストーリーテリングの楽しさと、事件の時空スケールの退屈な奥深い語り口を秤にかけると、結論に至らずというのが、現在の私的心境である。あなたはこの怪作を如何、ご判断されるだろうか? -
Posted by ブクログ
この作家を読み始めたきっかけは『許されざる者』だったが、その作品はヨハンソンという警察長官のシリーズ主人公であり、しかもシリーズ最終作だった。物凄くシリアスで読み応えのある感動作だったのでかなり気になる作家となって記憶に刻まれた。
同じ作家の別シリーズである本書ベックストレーム警部シリーズが今や、次々と翻訳されているので、期待して読んでいるのだが、このシリーズは、実はユーモア・ミステリー。誰が見てもアンチヒーローな助平ジジイイなベックストレーム警部だけが、喜劇役者のような主人公を演じる。生前のヨハンソンが顔を出してくれるシーンでは、複雑な想いとともにこの別シリーズのヒーローの個性の強さに改めて感銘を受けたりもした。
ベックストリーム警部は、ヨハンソンと同じ地平にいるくせに、かなり際どい類いの主人公である。悪徳警官とは言わないまでも、私腹をこやし、女性を性の道具として利用、それ自体性差別なのだが、人種差別を含め、あらゆる差別の亡者でもある。
それでいて彼を取り巻く警察組織の各部署のキャラクターは生真面目な普通の警察小説の地味眼な主人公たち。あくまで捜査責任者であるベックストレームだけが、エロじじいであり、アル中であり、昼寝大好きであり、私腹をこやすための努力を惜しまないダーティ極まりない漫画チックな主人公なのである。
この手のミステリーで有名なのは、セクハラやパワハラも共通するワーカホリック警部として一世を風靡したあのR.D.ウィングフィールド描くシリーズ主人公であるフロストであろう。どちらも中年の下品男、それでいて事件解決能力の高い主役刑事をヒーローにしたミステリーの双璧と言えるのではないだろうか。
フロストがどちらかと言えば、一気に沢山の事件を解決してゆくモジュラー型小説とすれば、本編のベックストレームは一つの事件の裏に重なる分厚い謎を運よく、結果的に解いてしまい、最終的に美味しいところをものにしてゆくという皮肉型主人公であるように思う。
本書でもベックストレームの下品さや強欲さは全開極まりなく、ストーリーはオートマティックに進んでゆくのだが、スウェーデンらしく歴史の世界に入り込んでゆくエピソードの長さには、聞き役であるベックストレーム同様、読者としてもやたら退屈させられた。また歴史上の人物相関図が及ぼす現代の事件への難解度が半端じゃなく、これまでのシリーズ作としては最も長い、と言われる部分がこれのせいだったか、と思うと、ミステリー読者としては辛すぎる構成と感じた。
作者が、犯罪学教授で、国家警察委員会顧問などの肩書を持っているとのことなので、ともすればストーリーテリングよりも楽屋落ちに近い蘊蓄方面に語りが入ると厄介、という印象がないでもない。
このシリーズを読み続けるべきか否かを問われるぼくにとっては分岐点的作品である。中盤で100ページ余を費やしての面倒くさいエピソードの集積さえなければ、あれよあれよと解決に雪崩れ込む展開は魅力だ。何よりベックストレームの日常に関わるストーリーテリングの楽しさと、事件の時空スケールの退屈な奥深い語り口を秤にかけると、結論に至らずというのが、現在の私的心境である。あなたはこの怪作を如何、ご判断されるだろうか? -
Posted by ブクログ
ネタバレ国家犯罪捜査局の元凄腕長官ヨハンソン67歳。
引退して悠悠自適だが脳梗塞で倒れ、後遺症の麻痺が残る。
入院中に女医から過去の迷宮入り事件を相談される。
女医の父は牧師で、懺悔で25年前の未解決事件の犯人について聞いていたというのだ。でも誰の懺悔か?誰を指したのかもわからず。
9歳の少女が強姦されて無残に殺された事件だが、時効になっていた。
ラーシュは相棒だった元刑事、義弟、介護士、兄から送られたボディガードらを手足に、事件を調べ直す。
長編だが一気に読んでしまった。
解説を読むと、このヨハンソンはシリーズ物らしくて、これが最終巻とのこと。
なんでこれが一番初めに訳されて出版されるのか?
些細な証拠から犯行現場を推測して、そこから地道に捜査をする。
自分は動けないので周りの者を手足にして犯人にたどり着く。
さて、そこからどうするか?時効によって刑事責任は問えない。
1.このまま放置する。
2.殴り殺す。
3.マスコミにばらす。
4.被害者の父親にばらす(父親は米国で成功した有力者)
5.犯人に悔い改めて自ら刑務所に行く選択を与える。
ここから何を選択するのか?
長い割に物語自体は割ととんとん拍子に進むので飽きは無い。
面白かったのは、ミレニアムの登場人物の名前が結構出てくる。
名探偵カッレ君とか(これは登場人物ではないけど)
ラーシュが介護士にネットは使えるか?と聞くと「リスベット・サランデルほどじゃないけどね」とか。
最近読む小説の主人公が高齢者(戻り船の伝二郎は68歳)が続くが、皮肉屋で台詞「」の後に、自分の本音がはさまって、なかなか愉快。
もっと邦訳が出て欲しい作家。