【感想・ネタバレ】二度死んだ女のレビュー

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Posted by ブクログ

ベックストレーム警部シリーズの最新刊。警部と同じアパートに住む少年が、キャンプ先で見つけた銃弾の残った女性の頭骨から始まる事件。頭骨から取り出したDNAの照合から、その女性がすでに別の場所で死に、埋葬されていたことがわかる。果たして、その女性は誰なのか。。。

著者の書き方なのだろうが、ベックストレーム警部と彼を取り巻く登場人物たちの言動の賑やかさに比べ、捜査の進展も犯人と目される人物の行動も淡々と語られる。そのため、捜査を仕切るサボりの常習者である警部の役立たずぶりや、周りの人たちの細かな言動の描写の多くが、あまり事件解決にリンクしない。悪く言えば無駄な描写が多いのだが、これにより主要な登場人物たちのキャラ立ちには大きく貢献しているのだ。ストーリーが進むにつれて事件は大きな国際犯罪の姿を見せてくるのだが、その重い場面はサラッと語られることで、エンタメの要素が前面に出てくる。このストーリー展開の2面性が、本書の魅力の核となっていると言える。

後書きにあるが、著者が高齢でシリーズの続刊は出ない見通しのよう。何らかのシリーズの決着が欲しいところだが、さてさて。。。

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2024年05月19日

Posted by ブクログ

『許されざる者』が良かったので新作が出るたびに読んではいたが、ベックストレームのキャラクターが苦手で今ひとつ…という印象だった。のだが、今回のベックストレームは少年とのやり取りも素敵で、他の登場人物たちの会話のやり取りもテンポ良く、丁寧に事件を解決していく様も読んでいて楽しかった。

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2023年09月05日

Posted by ブクログ

ネタバレ

ほどよく複雑で、スウェーデン警察ものらしいチームプレーも心地よく、今回は変人警部の毒も薄めで大変に読みやすく心地よい…と思ったらいきなり最終回ですか。
『許されざる者』とはどうやら別シリーズとして扱うことになったのかな?それが正しい区分かと思います。

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2023年08月07日

Posted by ブクログ

ベックストレーム警部の最終回?
色々物騒がせな警部だし、彼程品行の悪い警部は他にいない位の独特の警部だけど、今回は100パーの思いで彼を応援したかった。彼と一緒に美味しい食事をしたかった。こんなにベックストレームを好きになる日が来るなんて(><)

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2023年07月23日

Posted by ブクログ

 北欧ミステリーのジャンルの広さを示すようなベックストレーム四部作の完結編。当初、ガラスの鍵賞を獲得した『許されざる者』でこの作家が気に入ったものの、本書のベックストレーム警部は、腕利きではあるものの酒と美女をこよなく愛するモラルの少し欠如したお笑い系キャラクターである。

 ちなみに『許されざる者』はふざけたところなど一切ない心打つ傑作であり、その主人公ヨハンソンのキャラクターは、忘れ難い。しかも同名の名作映画もぼくは好きである。バート・ランカスター&オードリー・ヘップバーンの1960年版の映画は特に。クリント・イーストウッド監督主演の1992年のもの、それを開拓期の北海道を舞台にリメイクした李相日監督の渡辺謙主演版日本映画作品も、それぞれ忘れ難い映画である。ペーションの日本デビュー作品は、それらとは同名にして全く異なるシックな警察小説であった。

 しかし本シリーズは、ミステリを主体にした警察小説でありながら、ベックストレームという経験豊富な警部による、実に快楽主義的な生活の日々と、優れた捜査感覚という相いれない二つの特性を持つ主人公を据え、それにも増した個性豊かな捜査スタッフたちによる執念の捜査が実を結んでゆくコミカルかつ熱心な模様が軽妙と重厚をクロスさせてなお面白い。何だか趣味じゃないなあと思いつつも、とうとう全四作読まされてしまったリーダビリティと、小説の核となるミステリ部分が優れているところがこの作家の個性である。

 何を隠そうペーションという独自なこの作家は、長年に渡りリアルな捜査畑にいた経験豊富な警察人生の後半より作家デビューした人である。なので捜査のリアリティ、捜査チームの持つ活気のような独特な気配をこの作家は活き活きと描くのだ。

 さて本書では、少年が無人島で見つけた古い頭蓋骨を警察署に持ち込むところから始まる。ベックストレームはふざけたなまけ癖のある男でありながら、周囲の人間に好かれるところがあり、少年との交流シーンや、真剣に頭蓋骨の主を捜査しようという姿勢にはとても好感が持てる。頭蓋骨を調べるうちに、タイのプーケットの大津波で犠牲になった女性のものであることがわかる。

 プーケットに旅行に出ようとした矢先に津波の情報を得て腰を抜かしていた元の職場の同僚の顔をぼくは想い出した。悲惨な津波による被害者は少なくなく、あの時の犠牲者が北欧ミステリーに登場するなんて思いもよらないことである。でもリアリズムとユーモアを混然とさせるこの老練な元警部であり実績のある作家ペーションの筆でその不思議な頭蓋骨の正体を探ってゆく、本作の骨格は驚くほどしっかりしている。地道な捜査による地味な本で、ベックストレームという特異なキャラを描くための寄り道も多い小説であるが、何となく読まされてしまうのだ。

 時にはにやりと苦笑いを交えながら、老練なユーモアと考え抜かれたミステリーという骨子に支えられたこの物語は、ぼくの日常に交錯する奇妙な香辛料のように、印象的に刺さってくるのだった。

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2023年10月03日

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