リチャード・ブローティガンのレビュー一覧
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Posted by ブクログ
死を身近に感じる度に手にとる作品。
通夜、葬儀に続いて故人の家に空き巣が入り、寝る場所もなく近所の銭湯にある大広間のハンモックで1夜を過ごした。そこで夜通し読んだ思い出深い1冊。
私たちが住む現実世界と似てはいても何か決定的に違っている世界、穏やかな憂鬱に包まれたiDEATH。
そこに属す全てのものが死の沈黙、平穏に何となく惹かれているような雰囲気で魅力的。
死者たちは永遠の明るさの中にいる。
足をかけていた枝から足をはずした。
そのあとの彼女は、空気の上にひとりで立っていた。
こんな表現があるんだと思った。音もなく静かで美しいと思えてしまう。 -
Posted by ブクログ
44歳になった作家が、第二次世界大戦終戦頃、1940年代にアメリカ・オレゴン州で過した少年時代を振り返る。
ブローティガンの自伝的な、生前最後の幻想小説。
旧題「ハンバーガー殺人事件」。
アメリカの土埃の向こうに霞んで見える、風に吹き払われて消えてしまいそうな少年時代の日常。
貧困生活。気晴らし。遊び。帰還兵。後悔。
乾いた、埃っぽい少年時代。すべて一歩離れた場所から見ているかのような感覚。とんでもないことをしてしまった時の焦りと困惑、生涯引きずる後悔も、全部なんとなく私にも覚えがあってノスタルジーに満たされる。
娯楽がNetflixやSNSなどの「与えられる」刺激と違って、自分の想像力で作り出す刺激だった時代だったのが、とても良く解る。
私にはそれがとても羨ましく、まぶしい気持ちで読んだ。 -
Posted by ブクログ
どこまでもどこまでも物語の行末が気になって、気持ちがふわふわして落ち着きがない。それでいて哀しみに溢れているこの世界(小説)に浸っていたくなる。正直に書こうと思うとそんな感想になる。
少年の気持ちがストレートに表現されそれは嘘偽りないように思えるし、そこに起こる出来事はどこか幻想的で掴みどころがなく土埃のように舞い上がり消えていくようだ。
ブローティガンの生前最後の小説である『ハンバーガー殺人事件』を改題し新訳で筑摩書房より発行された(訳者は変わらないが新しい解釈で)。
このような手に取りやすい状況にしてくれて、本当にありがたいと思わせてくれた作品です。 -
Posted by ブクログ
ネタバレカウンターカルチャーに多大な影響を与えた著者の生前最後の作品かつ自伝的小説。
1979年の夏、44歳の主人公が1940年代後半のオレゴン州で過ごした少年時代を回想する形で物語は進み、読者は否応なく戦後間もないアメリカの片田舎にタイムスリップさせられる。
ビールの空き瓶を集めたこと、近所の葬式を覗き見したこと、ヘンテコな人々との会話等、断片的な記憶を飾り気のない少年目線で語り、貧困の中で生きる人々の営みを温かな眼差しで描いている。
それと同時に、序盤から「主人公のふとした選択」(ハンバーガーではなく22口径の銃弾を買ったこと)による悲劇が言及され、作中全体を通して死の匂いと暗い影が漂っている。
「ハンバーガー殺人事件」以降、主人公がハンバーガーに取り憑かれてレストランの料理人にインタビューする描写に爆笑した。
ラストでは、池の側でソファに座って釣りをする夫婦の描写にただただ心が温まる。
そんな夫婦を「おとぎ話」と例えながら、著者自身が古き良きアメリカ(失われた時代)への郷愁に浸るp.178-179の文章がとても良かった。
「第二次世界大戦直後のアメリカのゴシック時代には、こんなおとぎ話も生きていた。
やがてテレビがアメリカ中の想像力を破壊していく。人々は家に閉じこもり、尊厳をもって自らのファンタジーを生きることをやめてしまう。
あの時代、人は自分の想像力を自分でつくりあげていた。自分が食べるものを自分で料理するのと同じだ。いま、夢といえばまるで全国チェーンのレストランが立ちならぶアメリカの町並みと変わらない。」
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テレビをスマホと読み替えれば、完全に現代のドパガキ達と重なる。いつの時代も、大量消費コンテンツは人の想像力を奪ってしまうのだ。
透明感のある詩的な文体の中で、「風に吹きはらわれてしまいそうな」人間の儚さを、ノスタルジーとエモさたっぷりに描く傑作。 -
Posted by ブクログ
ネタバレハンバーガーを買うか、銃弾を買うか迷う。葬式をただ興味深い変な儀式として見る。社会通念や知識といった文脈なしに「ただ」見る、「ただ」感じる。少年時代の無邪気で危うい感覚が読んでいて面白かった。
ハンバーガー屋から漏れる美味しそうな匂いがたまたま途切れる。そんな偶然としか言いようのないことで銃弾を買うことになる。人生が変わってしまう。その後狂気的にハンバーガーの歴史や物語を収集することに躍起になる主人公、面白かった(過去の罪からの防衛反応と考えると辛さも感じるけど)
ある友人には嘘をついて偉そうにするし、ある友人には愛想をつかされないように下手に出る。大人的な意図がない子供ならではの感覚も思い出した。
果樹園での事件(事故)が冒頭から仄めかされているのも小説として面白く読めた。
もっと果樹園での事件は狂気的なものかとも思ったが、子供の感覚で描かれる風景や事象の延長で人を殺めてしまったという描写はたしかに恐ろしいし、人生を振り返る上で大きな転換点となる出来事だったことは確か。
戦後のアメリカの風景を知らないが、どこか荒涼と殺伐としている仄暗い雰囲気を感じた。過去を振り返るという形式によるものかもしれないが。
ガレージでただビールを飲み続ける退役軍人、池に家具一式を運んで釣りをする夫婦。出てくる人物が全員一風変わっていて、無邪気な少年との会話それ自体も面白かった。全員、思考が過去に向いた訳ありな雰囲気をもっていたのも、物語全体の雰囲気に繋がっていそう。 -
Posted by ブクログ
初ブローティガン。印象的なタイトルで気になっていた作品でした。
詩的で幻想的な小説。ジャンルは違うし時代も少し前だけどブラッドベリの『火星年代記』を想起しながら読みました。なんというか古き良きアメリカと言われる時代にはこういう幻想的な世界を描き、味わう文化というか感性があったんだろうなぁと、少しメタに外れた感想を持ってしまった。
アイデス(I Death)を始めネーミングや関係性、登場人物の言動、語られる歴史などさまざまなものが当時の社会のメタファーになっているのではないか、著者が現代社会に近いと感じていたコミュニティや関係性はむしろアイデス以外の方にあるのではないかと、色々な想像が生まれましたが、そのように噛んで味わっても良いし、詩的なリズムと言葉選びで描かれる西瓜糖と世界を眺めるだけでも良いし、いずれにせよ楽しい読書体験です。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ西瓜糖の日々
小川洋子さんのやっているラジオ番組で取り上げられていて興味を持ちました。
はじめてのブローディガン。
iDeathというコミューンとそれに隣接している忘れられた世界。静かな毎日の中に不穏な空気があり、だんだんと破綻に向かっていく。
ヒッピームーブメントやコミューンの流行の最中の小説家と思いきや、その前の小説ということでびっくり。時代の先を感じる作者の感性のなせる技なのか?
人と人が関わるところには必ず現れる関わり合いの澱のような不安定さも良く描けていると思います。
今、ブローディガンが小説を書いたら、どんな未来を予見してくれるんだろう?とふと思いました。
竹蔵