佐藤信夫のレビュー一覧

  • レトリック感覚

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    (p.26)「森羅万象のうち、じつは本名をもたないもののほうがはるかに多く、辞書にのっている単語を辞書の意味どおりに使っただけでは、たかの知れた自分ひとりの気もちを正直に記述することすらできはしない、というわかりきった事実を、私たちはいったい、どうして忘れたのだろう。本当は、人を言い負かすためだけではなく、ことばを飾るためでもなく、私たちの認識をできるだけありのままに表現するためにこそレトリックの技術が必要だったのに。」

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    2025年08月23日
  • レトリック感覚

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    レトリックとは、ことばをたくみにもちい、効果的に表現すること、そしてその技術

    レトリックの目的は、2つ
    ・説得の技術であること
    ・芸術的は、あるいは、文学的な表現の技術であること

    ローマで集大成したレトリックの理論システムは5科目
     ①発想:アイデアを発見する
     ②配置:序論―陳述ー論証ー反論ー結論
     ③修辞:表現方法
     ④記憶:話ことばとしての記憶術
     ⑤発表:発表の仕方、顔、姿勢、手のあげかた、所作
    そのうち、現代のレトリックとは、③の修辞にあたる

    比喩の種類について紹介しました。まとめると以下のようになります。

    直喩:シミリー、シミリーチュード Simile 「~のような」「~み

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    2023年11月17日
  • レトリック感覚

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    これまでレトリックを胡散臭いもの、口のうまい人の武器のようなものと捉えていた。しかし本書によって、従来からある言葉では表しにくいような新しい発見や概念をできるだけ忠実に表現するために発達した技巧である、と捉えることができるようになった。
    よって(遅ればせながら)、今後の読書の楽しみとして文章表現の面白さを味わうという意識を持つことができた。

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    2023年09月17日
  • レトリック感覚

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    (2)猫は猫でない、の修辞について
    *走ることの最も遅いものですら最も速いものによって決して追い着かれないであろう。なぜなら、追うものは、追い着く以前に、逃げるものが走りはじめた点に着かなければならず、したがって、より遅いものは常にいくらかずつ先んじていなければならないからである
    (アリストテレス全集 自然学から引用)

    問.アキレスは亀の何を追いかけているのか。

    ○運動するが変化しない
    どんなにアキレスと亀の間に距離があってもアキレスが最も速いものであり亀が最も遅いものであるのだから、アキレスは亀にいずれ追いつくと仮定する。しかし追いつかれた亀がアキレスの意欲した瞬間のあの亀と同じだとは限

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    2021年12月22日
  • レトリック感覚

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    「言葉と事象は元から1対1で対応しているものだ」という、思い上がりを見事に正してくれる。
    機微な感情も含め、さまざまな物事に対し、如何に文章に落とし込み、かつ相手に同じ感覚として共有できるかを追求しているレトリックは、決して過去の遺物ではなく、現代人にこそ学ぶ点が多いと考える。

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    2021年08月28日
  • レトリック感覚

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    本書によれば、レトリックは決して無駄で冗漫なものではなく、むしろ言語にとって必要不可欠なものだ。ここで取り上げられているのは全体の一部分でしかないということなので、著者の他の本も当たってみたくなる。柔らかな語り口によって、読む者に新たな言語認識を与えてくれる良書。

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    2021年04月04日
  • わざとらしさのレトリック

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    評論なんだけど、佐藤信夫の書きぶりがなんかちょっと変わっていて、バルトを意識しているのか極端な断章形式かつ、砕けた語調に何かと脱線する話題と、読んでいて面白い。

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    2017年04月21日
  • レトリック感覚

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    ネタバレ

     レトリックは、私たちの言語感覚の深いところにひそみ馴染んでいるというのがよく分かる本だった。

     世の中にはいろいろな言葉があるけれど、そうした標準化された既成の言葉を使って、人の数だけある個々の現実、それも時々刻々と変化するものを表現するのは、思っている以上に挑戦的な試みなのだと思わされる。

     新しい認識を聞き手と共有するために比喩表現を用いたり、どう言っても虚偽の混じりそうな言葉をあえて誇張して聞き手の理解を求めてみたり、緩叙法では肯定否定の比較を通して心情の流動性までも表したり。そうした工夫が至る所でごく自然に行われているのだから、驚いてしまう。

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    2015年06月20日
  • レトリック感覚

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    今まで意識することなく使っていた言葉が、どれだけレトリックに、比喩に、暗喩に満ちているものか。

    これまで考えたことのない視点で言葉や文章を捉えられるように解きほぐしてくれるような、著者の取っつきやすい言葉が印象的だ。

    1000円以上する本ではあるが、そして題名だけ見ると難解な本に感じられるが、多少無理をしてでも読んでおくべき本だ。

    言葉への無意識の安定に揺さぶりをかけてくれるような一冊。

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    2013年07月19日
  • レトリック感覚

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    「森羅万象の内、実は本名を持たないもののほうがはるかに多く、辞書に乗っている単語を辞書の意味通りに使っただけでは、多価ノしれた自分一人の気持ちを正直に記述することすら出来はしない、というわかりきった事実を、私達は一体、どうして忘れられたのだろう。本当は、人を言い負かすためだけではなく、言葉を飾るためでもなく、私達の認識をできるだけありのままに表現するためにこそレトリックの技術が必要だったのに。」

    直喩
    隠喩
    換喩
    提喩
    誇張法
    列叙法
    緩叙法

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    2013年02月07日
  • レトリック認識

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    様々な文学書から実例をあげてレトリックの種類を列挙。ああ、そうなってるのか、と目からうろこ。レトリック研究の前からレトリックが存在したように、レトリックを学ばなくなってもレトリックは存在する。レトリックってなんなんだろうなぁ

    黙説あるいは中断
    ためらい
    転喩(古川註:ほのめかし)
    対比
    逆説
    諷喩(比喩の連想)
    反語
    暗示引用

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    2013年01月26日
  • レトリック感覚

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    ーーーアリストテレスによって弁論術・詩学として集成されたレトリックは、言語に説得効果と美的効果を与えようという技術体系であった。著者は、さまざまの具体例によって、日本人の立場で在来の修辞学に検討を加え、「ことばのあや」とも呼ばれるレトリックに、新しい創造的認識のメカニズムを探り当てた。日本人の言語感覚を活性化して、発見的思考への視点をひらく好著。

    ネットでの評判を見て珍しく買ってみた新書

    普段俺たちが何気なく使っているレトリック。
    その比喩や誇張法の類を、古典修辞学書や小説の引用をもちいて機能の解剖を行う。

    中でも1,2章の直喩、隠喩と7章の緩叙法が
    「書かれていること」と「比較されてい

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    2012年09月20日
  • レトリック感覚

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    日本語の世界を覗いてみたい、と思うきっかけになりました。最終的に選んだのは文法の世界でしたが、それでも、私にとってとても大切な本です。

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    2011年07月16日
  • レトリック感覚

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    読みやすいとは言えない文章だが、読み切ることで学びが多い

    発見的認識の造形としてのレトリックを自覚できれば、閃きをただ座して待つことなく、蓄積したリベラルアーツと水平思考を自由に使いこなし、イノベーションを生み出せるのではないだろうか。

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    2025年11月29日
  • レトリック感覚

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     レトリック-言葉の文彩(あや)について、実際の小説の一部をなど参考にしながら、表現のもたらす意味やその役割について考察していく本である。この実例が非常に分かりやすく、軽い気持ちで手に取った人にも納得させてしまうような説明を繰り広げてくれる。加えて、著者の気持ちが伝わってくる軽やかな説明口調が心地よい。

     直喩は、共通認識を確認、隠喩は相手にゲーム性を求めるものである。ゆえに、小説などでは読者はそのゲーム性を楽しんでいるのだ。換喩は、対象の一部をズームして表現すること、提喩は並列・直列(または、および~)の事である。
     誇張法は、文字通り大げさに表現することである。ここでは、相手に間違いを伝

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    2023年07月26日
  • レトリック認識

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    「レトリック感覚」の続編にあたる著作で、こちらも学生の頃に読んで以来の再読。

    読んで初めて知ることよりも、改めて見直すことのほうが多く、普段なんとなく触れ、使う言葉の中の“あや”が再構築される印象を受ける。

    著作を読む、書くためには、書物などによって得られる知識がないと浅くなってしまうという当たり前の事実を再認識した。

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    2023年06月09日
  • レトリック感覚

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    もう20年以上前、国文学部の大学生だった頃、大学院生に薦められて読んだ本を再読。

    当たり前に使っている言葉や何気なく読んでいる文章に潜むレトリックを紐解く。

    言われてみれば納得だけど、普段なかなかそうは思い至らない視点。
    専門書寄りの内容ながら、難しすぎない。

    読むこと以上に書くことに役立つ内容だと思う。

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    2022年09月15日
  • レトリックの記号論

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    ( ..)φメモメモ
    本来のレトリックとは、一般的な人の認識と言語表現の避け難い一面性を自覚した上で、もっと別の視点に立てばもっと別の展望もありえるのではないか、と探求する努力のことでもある。想像力と創造力のいとなみである。
    「コインは円形である、コインは長方形である」
    論理的に、ふたつの面は同格である。

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    2022年03月03日
  • レトリック感覚

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    「レトリック」=「詭弁術」と結びつけて理解していたが、それは単に自らの言説を飾り立てるための方法のことではなかった。この世界に出来するあらゆる現象を、限られた言語で表現しようとする際、どうすればより効果的に他者に伝えることができるかという言語表現法のことなのである。

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    2020年07月13日
  • レトリック感覚

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     ヨーロッパの伝統的な表現作法、演説の話法、文章の書き方。そこから解説は始まる。佐藤信夫という哲学者が、ひょいと差し出して、ぼくだけではない、多くの人が目からうろこを落とした。
     国語の先生とかしたいと思っている学生さんには是非お読みいただきたい、古びない名著。

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    2019年03月23日