日影丈吉のレビュー一覧

  • 女の家

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    この著者らしい、人間の心理の綾の奥を密かに覗き見るような一作。刑事と女中の語りで進みミステリー仕立てで牽引力を持たせながら、中年の語り手2人の所々で差し込まれる人生観やそれぞれの登場人物達のものの見方が丁寧に描かれて、昭和三十年代の東京に生きた庶民の息づかいを感じさせる。昨今流行りの「人生を切り開く」「エンパワーメント」系の小説とは真逆の作品だが、ひっそりと傍観者として生きる人々の中にある侮れない芯の部分が陰画のように浮かび上がる筆の運びがとても印象に残った。
    堀江敏幸による解説は小説家ならではの視点で読み落としがちなポイントに触れていて、久々に解説らしい解説を読んだ気がした。

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    2025年07月06日
  • 応家の人々

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    結構前に書かれたもので文体も古さを感じるけど、すぐ引き込まれた。舞台となった台南の大耳降街は、実際は大目降街と呼ばれ、今は新化老街というところらしい。行ってみたい。

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    2024年08月16日
  • 真赤な子犬 <新装版>

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    何なん?みたいなストーリーです。
    ステーキに毒をふりかけて自殺しようとした守男から始まるドダバタミステリー。
    こういうのも楽しくていいですね。
    ドロドロしたものもなくて、1人調子ハズレな真規もいい味出してました。

    ずいぶん前のものですが、面白かった。

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    2023年12月09日
  • 応家の人々

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    ネタバレ

    正体不明の秘密結社やらが湧いて出る、事件の推移は混乱気味で、取って付けたような謎解きはなされるものの、どことなく腑に落ちない。もとから明快な結末を付ける気は作者にはなく、純粋にミステリとして評価するといい点は付けられない。まだ戦争が始まったばかりで、弛緩した空気の漂う、戦前の台湾の風俗を愉しめるかどうかで、評価は決まる感じ。迂生は楽しんだけどね。ただ結末は、うまいオチを思いつかなかっただけにも思える。

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    2021年03月03日
  • 真赤な子犬 <新装版>

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    ネタバレ

    まあまあ。解説氏にしては珍しくネタバレの箇所が。第2の殺人の真相は「なんじゃこりゃ」な内容で興醒めした。

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    2019年01月13日
  • 内部の真実

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    ネタバレ

    ミステリー小説には違いないが、日本統治下の台湾が舞台ということもあってか、非常に文学的な香りのする作品である。台湾語(中国語?)が随所に出てくるがゆえの読みにくさはあるが、情景描写などはとても緻密で、ときにミステリー小説を読んでいたことをわすれてしまいそうになる。
    一方、ミステリーとして用意された舞台は、きわめて骨太だ。日本人の軍人同士での決闘騒ぎ。片方が撃たれて死ぬが、撃ったとおぼしき銃には銃弾は装填されておらず、撃った形跡も認められない。あまつさえ、現場に残された二挺の銃は、いずれも指紋が拭きとられている。このシチュエーションから同じ隊の軍人が事件の検証をするが、真相にたどり着いたと思いき

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    2018年12月12日
  • ハイカラ右京探偵全集

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    古き時代のミステリーです。
    著者の作品の特徴といったら
    まさに右京は「ひねくれもの」と言う言葉が
    よく似合うということ。
    しかもそれの犠牲者が約1名。
    かわいそうなものです。

    事件は基本的に時代背景のせいなのか
    エロ・グロものが多いですが
    物語中にはあるとんでもない男が関わってきます。
    まさに「黒」と言う言葉が似合う男。
    間違いなくそいつを見たら
    はっ倒してやろうと思いますよ。

    そこそこ面白いのではありますが
    勧善懲悪ではないものが多いのが
    マイナスですね。

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    2012年03月05日
  • ミステリー食事学

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    古今東西のミステリーに絡めたグルメ文化史的なエッセイ。
    料理の話も面白いんだけど私にはミステリーの知識が足りない…元ネタがわからないのが悔しい…

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    2025年08月06日
  • 内部の真実

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    基本的には短編作家で長編では代表作と呼べる作品がないような事をどこかの解説で読んで気がするが、長編も充分に楽しめた。文庫の解説にある通りアラ探しすれば、おかしな所もあるけれどガチガチのトリックより雰囲気優先の方が作品としては楽しめるし。日本統治下の台湾でしかも日本軍を舞台にした娯楽ミステリーなんて、今後描かれる事なさそうだし貴重な作品です。

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    2024年08月04日
  • ミステリー食事学

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    怪談について語ったりメグレ警視シリーズに登場する料理を紹介したり幅広いエッセイで面白い!日影丈吉作品、もっと読もう…

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    2024年07月09日
  • 女の家

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    怪死があり、警察の捜査も(意外? な真相も)あるのだが、ミステリと言うより、風俗小説の味わい。捜査のディテールも、事件に巻き込まれた人々の心理の機微も、社会派よりもリアルに描写される。ミステリとして読めば、不満も出るが、こう言う物だと思って読めば、案外楽しいかも知れない。

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    2021年09月08日
  • 女の家

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     作品紹介を読むと、ガス中毒死による死が事故か自殺か、それとも他殺か、という謎を解き明かしていくものかと思える。

     主要な登場人物は、主人と妾、二人の間の子、その家庭教師、三人の女中の7人である。
     捜査に当たる刑事と、一人の女中の語りが交差し、少しずつ事実が明らかになっていき、全体は起、承、転、結と進んでいく。

     真相は一応明らかになるが、死亡した妾(おくさま)の人物像が、どれだけ彼女と関わりのあった各人から語られても、明確に焦点を結ぶことはないので、わだかまるものが残る。
     
     本作は語り体であり、作者の文章は決して分かりづらいものではないのだが、特に女中の語りは、物事からちょっと引

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    2020年09月28日
  • 真赤な子犬 <新装版>

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    世をはかなんで毒入りステーキを食べて自殺しようとする若社長はじめとして、随所に散りばめられた作者の本格モノ的ユーモアと、雪の別荘での足跡に細工された形跡のある殺人事件など不可能犯罪の風味も含まれてて(作中に、セイヤーズとカーが扱われてるあたり、この作品の趣味の方向性が分かるかと…)、テンポ良く話が展開して、グイグイと引かれながらもさらっと読ませる作品でした。
    読者の視点では、ある程度事件の経緯は冒頭から見えてはいるのですがその中では解明されない謎をチラつかせ、刑事は社会派のように堅実に捜査を行い、事件現場に居合わせた政治家秘書の悪戦苦闘ぶりを倒叙的に楽しみつつ…と一粒で複数のテイストを楽しんだ

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    2018年08月22日