【感想・ネタバレ】内部の真実のレビュー

あらすじ

本島人鉄工業者の邸の庭で起きた、日本軍人の決闘騒ぎ。一方は銃殺され、一方は頭部を殴られ意識不明の状態で発見された。最初は単純な事件と思われたが、現場に残された二挺の拳銃はどちらも指紋が拭われており、相手を殺したと目される男の側に落ちていた拳銃は弾が未装填だったことが判明する……。推理と恋と幻想が混然一体となった名匠の最高傑作。/解説=新保博久

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Posted by ブクログ

ネタバレ

ミステリー小説には違いないが、日本統治下の台湾が舞台ということもあってか、非常に文学的な香りのする作品である。台湾語(中国語?)が随所に出てくるがゆえの読みにくさはあるが、情景描写などはとても緻密で、ときにミステリー小説を読んでいたことをわすれてしまいそうになる。
一方、ミステリーとして用意された舞台は、きわめて骨太だ。日本人の軍人同士での決闘騒ぎ。片方が撃たれて死ぬが、撃ったとおぼしき銃には銃弾は装填されておらず、撃った形跡も認められない。あまつさえ、現場に残された二挺の銃は、いずれも指紋が拭きとられている。このシチュエーションから同じ隊の軍人が事件の検証をするが、真相にたどり着いたと思いきや、別の矛盾が生じる。正しいと思われた仮説が、新たな謎を生む。パズルのようなストーリーに、読み手もおぼつかない足場の上を歩かされるような、迷宮の中を彷徨うような感覚に捉われるだろう。
日影丈吉の作品は初めて読んだが、単なる犯人当てや謎解きといった既定の枠にとどまらない、その意味で文学性の高い作品を書く作家であった。パズルのような物語は、完全に理解するためには再読が必要なのかもしれない。だが、それ以上にストーリーテラーとしての日影丈吉を楽しんだように思う。
いずれ再読するかもしれないが、今は、良質な物語を読み終えたあとの余韻にしばし浸っていたいと思う。

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2018年12月12日

Posted by ブクログ

基本的には短編作家で長編では代表作と呼べる作品がないような事をどこかの解説で読んで気がするが、長編も充分に楽しめた。文庫の解説にある通りアラ探しすれば、おかしな所もあるけれどガチガチのトリックより雰囲気優先の方が作品としては楽しめるし。日本統治下の台湾でしかも日本軍を舞台にした娯楽ミステリーなんて、今後描かれる事なさそうだし貴重な作品です。

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2024年08月04日

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