無料マンガ・ラノベなど、豊富なラインナップで201万冊以上配信中!
※アプリの閲覧環境は最新バージョンのものです。
Posted by ブクログ
この著者らしい、人間の心理の綾の奥を密かに覗き見るような一作。刑事と女中の語りで進みミステリー仕立てで牽引力を持たせながら、中年の語り手2人の所々で差し込まれる人生観やそれぞれの登場人物達のものの見方が丁寧に描かれて、昭和三十年代の東京に生きた庶民の息づかいを感じさせる。昨今流行りの「人生を切り開く」「エンパワーメント」系の小説とは真逆の作品だが、ひっそりと傍観者として生きる人々の中にある侮れない芯の部分が陰画のように浮かび上がる筆の運びがとても印象に残った。
堀江敏幸による解説は小説家ならではの視点で読み落としがちなポイントに触れていて、久々に解説らしい解説を読んだ気がした。
Posted by ブクログ
作品紹介を読むと、ガス中毒死による死が事故か自殺か、それとも他殺か、という謎を解き明かしていくものかと思える。
主要な登場人物は、主人と妾、二人の間の子、その家庭教師、三人の女中の7人である。
捜査に当たる刑事と、一人の女中の語りが交差し、少しずつ事実が明らかになっていき、全体は起、承、転、結と進んでいく。
真相は一応明らかになるが、死亡した妾(おくさま)の人物像が、どれだけ彼女と関わりのあった各人から語られても、明確に焦点を結ぶことはないので、わだかまるものが残る。
本作は語り体であり、作者の文章は決して分かりづらいものではないのだが、特に女中の語りは、物事からちょっと引いたスタンスからの冷たい視点を窺わせるもので、作者は一種独特な雰囲気を醸し出して描いている。その雰囲気に酔いしれながら読んでいくのが楽しいのではないだろうか。
※アプリの閲覧環境は最新バージョンのものです。