コルソンホワイトヘッドのレビュー一覧

  • 地下鉄道

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    ハヤカワ文庫の80冊に入っていた本作。何気に手に取ったが読んで圧倒された。
    19世紀アメリカ、黒人奴隷の少女コーラが自由を求めて逃亡する物語。
    もう衝撃的過ぎて驚くばかり。息付く暇が無いほどスリリング。残酷な描写も多くテーマが重い。私は黒人奴隷の歴史を何も知らなかったのだと気づかされた。読んで良かった。

    「地下鉄道」とは昔の奴隷逃亡支援組織の名称で架空の物らしい。著者は本作でフィクションとして地下トンネルを走る鉄道を描き、これを利用して逃亡する物語に仕上げている。フィクションにする事でエンターテイメント化し、読者層を広げ、黒人奴隷の歴史を知らしめる事に成功している。(私が読んだぐらいなので)

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    2025年10月04日
  • 地下鉄道

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    米国で「ブラック・ライヴズ・マター」の主張が声高に叫ばれていた時に目を通して以来、四年ぶりの再読。黒人奴隷逃亡介助の役割を担う秘密結社として実在した「地下鉄道」を汽車の路線網に結び付けると云う大胆な発想のもと史実と虚構を巧みに融合し、物語性の高い作品を創造した手腕は見事。奴隷狩り商人リッジウェイが捕獲対象たるコーラに少なからずシンパシーを感じている部分は興味深かった。結びも安易に感傷的にならず良い

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    2024年09月04日
  • ニッケル・ボーイズ

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    『地下鉄道』でピューリッツァー賞フィクション部門含め様々な文学賞を総嘗めしたコルソン・ホワイトヘッドが、再びピューリッツァー賞フィクション部門を受賞した作品。
    『地下鉄道』が強烈な作品だったため、さすがに前作は超えられないんじゃ、と勝手に訝って発売から大分経ってから読んでしまったが、これも力強い傑作だった。
    黒人の差別の歴史はずっと続いているが、BLM運動が起きていた発売当時に読んでいたら、もっと印象深い読書体験になっただろうな、と少し後悔した。

    本書は実際に起きたドジアー校という更正施設での虐待事件をモチーフにしている。
    ニッケル校という少年の更生施設近くの土地から遺体が次々と発見される。

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    2024年02月20日
  • ハーレム・シャッフル

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    「親が悪党だからって、子も悪党になるわけじゃない。そうだろ?」
    ハーレムにある中古家具店で働くアフリカ系アメリカ人のレイ・カーニー。近頃、彼の店にはガラの悪い男たちが出入りしていた。
    数々の罪を犯した父親とはちがい、カーニーはまっとうな人生を築くために誠実に働いた。愛する妻と娘もいる。だが、食べていくのは容易じゃない。時には、従弟のフレディがもちこむ盗品も売るしかなかった。
    ある日、フレディたちの起こした強盗事件にカーニーは巻き込まれる。そうしてギャングと悪徳警官が、カーニーに目を留めたのだった。
    妻子と自分を守るため、カーニーはならず者との裏取引を重ねていく。 
    結局、自分も悪党なのだろうか

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    2024年01月14日
  • 地下鉄道

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    綿花農園に数多く囲われている黒人奴隷たち。その農園主からの過酷な体罰から逃れるため、たびたび奴隷たちが逃亡を図るも、一人の女性を除き逃げ落ちた者はいない。そんな逃亡者を母にもつ奴隷少女が一緒なら、逃亡できる運にも恵まれるのではと、奴隷の青年に一緒に逃亡をすることを、少女は持ちかけられます。

    見つかれば見せしめとして体罰の末に命を奪われ、その協力者にも残酷な仕打ちが待っています。
    逃亡手段は、地下に張り巡らされた秘密の地下鉄道。はたして、それに乗り継いで、南部から脱出することができるのか、というお話し。

    過酷な労働、残虐な農園主、自警団、そして執拗に追い詰める奴隷狩りを生業とする白人など、ど

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    2023年12月09日
  • 地下鉄道

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    黒人奴隷の少女が様々な犠牲を払いつつ逃亡し続ける物語。奴隷逃亡を支援する目的で地下に張り巡らされた鉄道を使って。
    これは最高の良書。なぜなら全く眠くならない。アメリカの奴隷制度の歴史というノンフィクションの上に、冒険活劇風のフィクションが乗っている。自分自身、初めて知ったことも沢山。無駄な例えや修飾がないのにリアリティがある。実時間とは無関係にスピード感もあって飽きない。突然小話風に現れる、人物にフォーカスした章など、メリハリもある。
    物語と面白いのはもちろん、アメリカの奴隷制度を知る上でも勉強になる。奴隷は人間とは別の生物扱いなのか?でも、性の対象にしてるんだから、やっぱり人間だと思ってるん

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    2022年04月13日
  • ニッケル・ボーイズ

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    前作『地下鉄道』と比べて、地味な話だなと思い、読むのが遅くなったが、そうではなかった。ネタばれになるので書かないが『地下鉄道』と同じくらいか、リアリズムの分だけ本書の方がくるものがある。アメリカの人種差別問題がモチーフになっているがそれを超えて人間というものを問いかけてくる。

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    2021年05月09日
  • 地下鉄道

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    2016年、アメリカに起きて圧倒的な読者を引き寄せた小説。
    著者は、ハーバード大を出た気鋭。

    南北戦争勃発から100年を経て生まれた新たなライターだ。
    物語は、祖母、母と続くアフリカ出身の奴隷の家系の3代目コーラをヒロインとして始まる。
    州境を越え、北へ逃げと推せれば【自由】
    その下支えの組織を「地下鉄道」と呼ぶ。「積荷」「車掌」「小屋」という暗号を用い、摘発の目を逃れるべく、暗号と比喩を用いてきた歴史が内容の凄絶さを物語る。

    黒人奴隷が自由を求める100年余の歴史を現代の旗手が謳い上げる素晴らしい作品だ。中身の生臭さ、惨さをウェットな感覚でなく、筆者が得意としてきたアメコミ調すら感じさせ

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    2021年02月08日
  • ニッケル・ボーイズ

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    ネタバレ

    ハッピーエンドではなくて、悲しい結末だが、救いない結幕ではない。暗いないようなので、新年に読むには、しんどかった。翻訳はとてもよい。

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    2021年01月02日
  • ニッケル・ボーイズ

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    真面目に前向きに暮らしていた少年が、不運によって人種差別が色濃く漂う劣悪な少年院に放り込まれる。
    実話をベースにしたフィクション。
    だが、この物語のような話はいくらでも存在したのだろう。

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    2020年12月25日
  • 地下鉄道

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    奴隷として暮らすコーラ。
    仲間と地獄のような農場から脱走を図る。
    奴隷狩人の追跡に怯え、息を詰め、理解者との束の間の安息にささやかな生を得る。
    どこまでもつらい物語。
    だが、比類な物語性を持つ。
    今年読んだ中で断トツの作品。

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    2020年12月10日
  • ニッケル・ボーイズ

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    『ニッケル・ボーイズ』コルソン・ホワイトヘッド著、藤井光訳(早川書房)エルウッドの人生から見える米国の構造的人種差別。実在した「エルウッド」たちの叫び。「究極の良識が、あらゆる人の心に息づいていると信頼すること」が公民権運動のメッセージ。(p.216)読んでいて身体が強張り震えた。#読書 #coltonwhitehead #翻訳 #藤井光

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    2020年12月07日
  • 地下鉄道

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    アフリカで生まれ、父母を亡くして奴隷商の手に渡り、アメリカ南部の綿花畑で死んだ祖母。10歳の娘を残し、ひとりで農園から逃げた母。そして18になったコーラもまた、残忍な白人が営む農園を飛びだした。逃亡者を待っていたのは、黒人を北部にある自由州まで連れていくため、地下に張り巡らされたトンネルの中を走る蒸気機関車〈地下鉄道〉だった。しかし、農園の〈所有物〉であるコーラを、奴隷狩り人は執念深く追いかけてくる。安寧の地はどこにあるのか、なぜ彼女とその“家族”ばかりが逃げ続けなければならないのか。19世紀の黒人奴隷の目から見たアメリカの姿をデフォルメしつつ、現在も残る差別の心理を描いた歴史エンターテイメン

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    2020年11月02日
  • 地下鉄道

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    アメリカの黒人差別を描いた名作といわれる小説は、描かれる物語の過酷さに加えて、人間の暗部、そしてアメリカという国の暗部まで切り込むような、凄まじい作品が多いと感じます。

    この『地下鉄道』も、そうした作品の系譜を継ぐ凄まじさが伝わってくる。自由を求めたコーラが行き着いた土地の数々から、差別の根の深さ、アメリカという国の抱えた矛盾までも透けて見えてくるようです。

    19世紀のアメリカ。南部の農園で奴隷として暮らしていた黒人の少女・コーラは、新入りの奴隷の少年・シーザーから、黒人奴隷を逃す“地下鉄道”を利用した、逃亡計画に誘われる。二人は逃亡を決意するが、奴隷狩り人のリッジウェイが二人の後を追い…

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    2020年10月23日
  • 地下鉄道

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    「地下鉄道」とは、19世紀アメリカ南部で黒人奴隷を北部に逃がすために発達した草の根の活動と、その逃走ルートのこと。実際の鉄道ではなくて、当局に見つからないための裏のネットワークのこと。でもこの本ではそれを実際の鉄道として描いている。かっこいいけど最初混乱した!

    見つかったら全てが終わる、極限状態は、コテンラジオのナチスドイツのホロコースト回を思い出した。あと、これを読めばPS4のデトロイトビカムヒューマンでカーラがカナダに逃げようとするのが完全に地下鉄道(現実の)のオマージュだとわかる。そういえば名前も一緒だ。

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    2025年11月27日
  • ニッケル・ボーイズ

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    新たに大学で夢に向かって行こうとするエルウッドに差別という冤罪がおこる
    5セント(ニッケル)ぐらいの価値しかないと暴力により肯定され、人生を否定されてきたエルウッド
    キング牧師の言葉を胸に暴力でどん底な人生から自分を欺くのをやめてもう一度自分の人生を取り戻すために戦う
    エルウッドと共にニッケル校で親しくなったターナーと一緒に新たな人生に向かって生きていこうとするが…
    否定され続けた人がどうすれば人生を歩き直せるのかを知ることが出来る

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    2025年03月27日
  • ニッケル・ボーイズ

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    いちど徹底的に尊厳を奪われた人間が自分の価値を取り戻すのがどれほど困難か。
    鞭の痛みがどれほどの苦痛を与えてその恐怖が思考に組み込まされるか、鞭打たれたことのない私達には絶対に想像できない。だがその想像を超えた痛みを植え付けられたニッケル・ボーイズを動かせたのは紛れもなくエルウッドの魂だった。蟹工船の森本がそうであったように。

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    2024年09月03日
  • ニッケル・ボーイズ

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    著者の代表作『地下鉄道』は歴史改変小説という特殊なジャンルだった。そのためかなかなか世界観に馴染めず、先に実話を基にした本書から取り掛かることに。

    読むだけの充実感がある反面、重い…。目に見えない重しがのしかかってきているようで、読み終えた瞬間に思わず息を吐き出した。
    史実(それもつい最近明るみになった)とフィクション・過去と現在が巧妙に入り混じり、特に第三部からのストーリーの進め方には度肝を抜かれる。恐らく読後、一部の章を読み直さずにはいられなくなるだろう。
    『地下鉄道』よりこちらの方が自分の肌に合っているかも。

    「侮辱されるたびに野垂れ死にしそうな気分になっていたら、日々を生きていくこ

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    2024年03月09日
  • 地下鉄道

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    奴隷制度の残るアメリカ南部。
    奴隷が逃げ出すために、地下に鉄道が作られていた、という設定。
    地下鉄には駅があって、それぞれの駅から地上に出るごとに全然違う場面に転換する。今っぽい視覚的効果だし、各場面の残虐さもネットドラマみたいな印象は拭えない。
    それでも、奴隷制度の残酷さや理不尽さは十分に伝わるし、自由を求めて進んでいく主人公と、途中で命を落とす仲間達や支援者達に、胸が痛む。

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    2024年02月26日
  • 地下鉄道

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    過酷な人生、なんていう言葉が甘っちょろく感じてしまう。
    逃げるという行為には、残虐な仕打ちがついてくる。
    協力者にもおよぶ、そのいたぶるような残忍さ。
    それらを目の当たりにしながらも前へ進むコーラ。
    読んでいてヒリヒリとした感覚に包まれた。
    虐げる側も虐げられる側も、とがった部分をもっていないと生きてゆけないのかもしれない。

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    2023年11月19日