コルソンホワイトヘッドのレビュー一覧
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Posted by ブクログ
ハヤカワ文庫の80冊に入っていた本作。何気に手に取ったが読んで圧倒された。
19世紀アメリカ、黒人奴隷の少女コーラが自由を求めて逃亡する物語。
もう衝撃的過ぎて驚くばかり。息付く暇が無いほどスリリング。残酷な描写も多くテーマが重い。私は黒人奴隷の歴史を何も知らなかったのだと気づかされた。読んで良かった。
「地下鉄道」とは昔の奴隷逃亡支援組織の名称で架空の物らしい。著者は本作でフィクションとして地下トンネルを走る鉄道を描き、これを利用して逃亡する物語に仕上げている。フィクションにする事でエンターテイメント化し、読者層を広げ、黒人奴隷の歴史を知らしめる事に成功している。(私が読んだぐらいなので) -
Posted by ブクログ
『地下鉄道』でピューリッツァー賞フィクション部門含め様々な文学賞を総嘗めしたコルソン・ホワイトヘッドが、再びピューリッツァー賞フィクション部門を受賞した作品。
『地下鉄道』が強烈な作品だったため、さすがに前作は超えられないんじゃ、と勝手に訝って発売から大分経ってから読んでしまったが、これも力強い傑作だった。
黒人の差別の歴史はずっと続いているが、BLM運動が起きていた発売当時に読んでいたら、もっと印象深い読書体験になっただろうな、と少し後悔した。
本書は実際に起きたドジアー校という更正施設での虐待事件をモチーフにしている。
ニッケル校という少年の更生施設近くの土地から遺体が次々と発見される。 -
Posted by ブクログ
「親が悪党だからって、子も悪党になるわけじゃない。そうだろ?」
ハーレムにある中古家具店で働くアフリカ系アメリカ人のレイ・カーニー。近頃、彼の店にはガラの悪い男たちが出入りしていた。
数々の罪を犯した父親とはちがい、カーニーはまっとうな人生を築くために誠実に働いた。愛する妻と娘もいる。だが、食べていくのは容易じゃない。時には、従弟のフレディがもちこむ盗品も売るしかなかった。
ある日、フレディたちの起こした強盗事件にカーニーは巻き込まれる。そうしてギャングと悪徳警官が、カーニーに目を留めたのだった。
妻子と自分を守るため、カーニーはならず者との裏取引を重ねていく。
結局、自分も悪党なのだろうか -
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綿花農園に数多く囲われている黒人奴隷たち。その農園主からの過酷な体罰から逃れるため、たびたび奴隷たちが逃亡を図るも、一人の女性を除き逃げ落ちた者はいない。そんな逃亡者を母にもつ奴隷少女が一緒なら、逃亡できる運にも恵まれるのではと、奴隷の青年に一緒に逃亡をすることを、少女は持ちかけられます。
見つかれば見せしめとして体罰の末に命を奪われ、その協力者にも残酷な仕打ちが待っています。
逃亡手段は、地下に張り巡らされた秘密の地下鉄道。はたして、それに乗り継いで、南部から脱出することができるのか、というお話し。
過酷な労働、残虐な農園主、自警団、そして執拗に追い詰める奴隷狩りを生業とする白人など、ど -
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黒人奴隷の少女が様々な犠牲を払いつつ逃亡し続ける物語。奴隷逃亡を支援する目的で地下に張り巡らされた鉄道を使って。
これは最高の良書。なぜなら全く眠くならない。アメリカの奴隷制度の歴史というノンフィクションの上に、冒険活劇風のフィクションが乗っている。自分自身、初めて知ったことも沢山。無駄な例えや修飾がないのにリアリティがある。実時間とは無関係にスピード感もあって飽きない。突然小話風に現れる、人物にフォーカスした章など、メリハリもある。
物語と面白いのはもちろん、アメリカの奴隷制度を知る上でも勉強になる。奴隷は人間とは別の生物扱いなのか?でも、性の対象にしてるんだから、やっぱり人間だと思ってるん -
Posted by ブクログ
2016年、アメリカに起きて圧倒的な読者を引き寄せた小説。
著者は、ハーバード大を出た気鋭。
南北戦争勃発から100年を経て生まれた新たなライターだ。
物語は、祖母、母と続くアフリカ出身の奴隷の家系の3代目コーラをヒロインとして始まる。
州境を越え、北へ逃げと推せれば【自由】
その下支えの組織を「地下鉄道」と呼ぶ。「積荷」「車掌」「小屋」という暗号を用い、摘発の目を逃れるべく、暗号と比喩を用いてきた歴史が内容の凄絶さを物語る。
黒人奴隷が自由を求める100年余の歴史を現代の旗手が謳い上げる素晴らしい作品だ。中身の生臭さ、惨さをウェットな感覚でなく、筆者が得意としてきたアメコミ調すら感じさせ -
Posted by ブクログ
アフリカで生まれ、父母を亡くして奴隷商の手に渡り、アメリカ南部の綿花畑で死んだ祖母。10歳の娘を残し、ひとりで農園から逃げた母。そして18になったコーラもまた、残忍な白人が営む農園を飛びだした。逃亡者を待っていたのは、黒人を北部にある自由州まで連れていくため、地下に張り巡らされたトンネルの中を走る蒸気機関車〈地下鉄道〉だった。しかし、農園の〈所有物〉であるコーラを、奴隷狩り人は執念深く追いかけてくる。安寧の地はどこにあるのか、なぜ彼女とその“家族”ばかりが逃げ続けなければならないのか。19世紀の黒人奴隷の目から見たアメリカの姿をデフォルメしつつ、現在も残る差別の心理を描いた歴史エンターテイメン
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Posted by ブクログ
アメリカの黒人差別を描いた名作といわれる小説は、描かれる物語の過酷さに加えて、人間の暗部、そしてアメリカという国の暗部まで切り込むような、凄まじい作品が多いと感じます。
この『地下鉄道』も、そうした作品の系譜を継ぐ凄まじさが伝わってくる。自由を求めたコーラが行き着いた土地の数々から、差別の根の深さ、アメリカという国の抱えた矛盾までも透けて見えてくるようです。
19世紀のアメリカ。南部の農園で奴隷として暮らしていた黒人の少女・コーラは、新入りの奴隷の少年・シーザーから、黒人奴隷を逃す“地下鉄道”を利用した、逃亡計画に誘われる。二人は逃亡を決意するが、奴隷狩り人のリッジウェイが二人の後を追い… -
Posted by ブクログ
著者の代表作『地下鉄道』は歴史改変小説という特殊なジャンルだった。そのためかなかなか世界観に馴染めず、先に実話を基にした本書から取り掛かることに。
読むだけの充実感がある反面、重い…。目に見えない重しがのしかかってきているようで、読み終えた瞬間に思わず息を吐き出した。
史実(それもつい最近明るみになった)とフィクション・過去と現在が巧妙に入り混じり、特に第三部からのストーリーの進め方には度肝を抜かれる。恐らく読後、一部の章を読み直さずにはいられなくなるだろう。
『地下鉄道』よりこちらの方が自分の肌に合っているかも。
「侮辱されるたびに野垂れ死にしそうな気分になっていたら、日々を生きていくこ