コルソンホワイトヘッドのレビュー一覧
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繰り返し、世界の発信されてきて、今なお光が見いだせていない黒人差別。「地下鉄道」と同じ筆者?と感じる程に抑制された文体の謎が巻末説明で納得できた。圧倒されるのは、その抑えた空気故に地下で炸裂して迸るエネルギー。リアルという事実に勝るものはない。
ホワイトヘッド50歳半ば、藤井氏40歳半ば、何れもアブラギッシュの人物が取り上げて世に問うているものはあった!
アフリカにれてきて、今なお光が見いだせていない黒人差別。「地下鉄道」と同じ筆者?と感じる程に抑制された文体の謎が巻末説明で納得できた。圧倒されるのは、その抑えた空気故に地下で炸裂して迸るエネルギー。リアルという事実に勝るものはない。
ホ -
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19世紀アメリカ。現実にあった〈地下鉄道〉という黒人奴隷解放支援組織を実際の鉄道に置き換えてジョージアの奴隷少女コーラの逃亡劇を描いたフィクション。ファンタジーのような設定だがそんな甘い話ではない。逃げるコーラを追いかける奴隷狩人リッジウェイ。コーラと共に逃げる仲間は捕まり、彼女を助けた白人も殺され、コーラも捕まり、しかしまた地下鉄道に乗って逃げる。希望を感じさせるラストだが当時の黒人に真の希望はあったのか。どこまで行けば逃げ切れるのか?トンネルの中を逃げるように、漠然と北部に逃げるしかないのだ。しかしそれでも時代から逃げないと本当の安心はできないのだ。ユダヤ人にとってのホロコーストと同じでは
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ゴールのないマラソンの話。
19世紀のアメリカで黒人奴隷の亡命を手助けした組織『地下鉄道』が、組織名や逃亡路ではなく実際に"地下鉄道"だったら、という虚構を一つ入れるだけで広がる世界と現実感。
黒人奴隷を題材にしてるので当たり前に残酷な事が再三起こるけど、エンターテイメント性もありさらりとした文章で、翻訳本としての読みにくさも感じなかった。
「真実とは目抜き通りのショーウインドウのようなものだ。
目を逸した隙に並べ替えられ、うっとりと魅力的だが手は届かない。」
「自身を束縛する手足の鎖に不完全な部分を見つけ出すのだ。ひとつひとつを見ていけば鎖の各部はちいさなものだ。
でも周囲の -
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大傑作。
南部奴隷を逃す組織を「地下鉄道」と呼んだそうだが、それが本当に地下を走る機関車だったら?というアイデアを挿入、あとはかなり史実に忠実に描かれた、少女の逃亡譚。
『風と共に去りぬ』が正当な注釈がつくまで配信停止となったとき、ファンの私は「いやー、オハラ農園に仕えたマミーをはじめとする人々のように、奴隷だって(比較的)幸せな人生もあったのでは?」とか思ったけど、奴隷制をまるで理解してなかった。奴隷が何かをわかってなかった。ひとが何もかも奪われて生きる地獄を。
それでもこうして、どんな残酷な罰が待とうと、自由と尊厳を求める勇気を大勢が奮い、死んでいったことを知ろうとしていなかった。
教えて -
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アフリカ系アメリカ人のエルウッドは、ホテルの下働きをしている祖母に育てられた。従業員たちに可愛がられ、勉強もでき、先生から黒人が無償で学ぶことのできる大学への進学を勧められる。大学へ行くためにヒッチハイクした車は盗難車だった事から、共犯者として少年院に送られてしまう。そこはニッケルスクールという名前だったが、スクールとは名ばかり、虐待のまかり通る過酷な少年院だった。
後年、閉校になったスクールから傷だらけの白骨が掘り出された事から、当時の院生に話題が集まる。
スクールでの悲惨な日常と、不正を外部に知らせようとするエルウッドと、大人になった院生とが交互に描かれる。はたしてエルウッドはどうなった -
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1960年代前半、公民権運動が徐々に活性化しつつあったアメリカを舞台に、優秀な学力を持つ黒人の高校生は無実の罪で少年院に送られる。そこは管理者である白人たちが物資の横流しで儲け、少しでも反抗する黒人少年を撲殺して無かったこととする地獄であった。
この恐ろしい筋書きは空想のものではない。フロリダに存在し、100名以上の行方不明者を出したドジャー少年院がモデルになっている。施設が老朽化のために閉鎖され、暴力の痕跡も歴史に埋もれようとしていた中、ハリケーン後の敷地清掃で27名もの正体不明の遺骨が発見されたことによって、この少年院での恐ろしい暴力の実態が明るみに出ることとなった。
本作『ニッケル・ -
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多数の受賞が本作の評価を確固たるものとしている。それでも、黒人奴隷の歴史に馴染みのない日本人の私にとって、読書中の没入感は今ひとつだった。いや、ひょっとすると、その原因は題材ではなく、重要な登場人物の心の1人である奴隷狩人の心の機微に首を傾げながら読んだからかも知れない。制度の瑕疵と評する逃亡奴隷の娘に対し、自分の心情を吐露しながら長々と興味深く会話ができるのかどうか。報酬をふいにしても自分の手で殺したくなるのではないか。
主人公は逃亡中に地下鉄道の関係者に匿われる。「見えない鎖」に自由の意味を自問する場面がある。毎日、満員電車に揺られながら会社に通うサラリーマン諸氏にとって、格別新しい問い -
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先にドラマを見ていたから、その場面を思い出しながら読んだけど、映像よりもおぞましく感じる表現もあり、先がわかっていても、いやわかっているからこそか、すごく怖かった。
コーラの母のエピソードは、ドラマでもかなり辛かっらけど、小説はまた違った悲しさがあった。
逃げられたかと思えば、追ってに追いつかれ、黒人が自由に暮らせているかと思えば、それを許さない白人たちに襲撃され…。
自分の肌の色や生まれた土地によって奴隷にさせられたり、命を狙われたり、非人間的な扱いをされることが本当に怖いことだと思った。
勝手に連れ去られて、奴隷にさせられるて、鞭で打たれて…この歴史は本当に恐ろしい。
そう感じながらもスリ