天野健太郎のレビュー一覧

  • 自転車泥棒

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    失踪した父と共に消えた自転車はどこへいったのか?そんな棘のように消えない記憶を抱え、古い自転車コレクターとなった作者。そこから始まる台湾自転車史から家族と台湾の歴史の壮大な物語。
    父の自転車が作者の手に戻るまでに経てきた持ち主たち、その過程で知り合う台湾先住民族の青年カメラマンのもう一台の自転車、さらにそのカメラマンの父の自転車と第二次世界大戦における銀輪部隊…と自転車を軸として展開される物語りが素晴らしい。
    「古いものを愛するのは時間を愛すること」、たった一台の自転車からでも人は過去を見出すことができる。

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    2024年01月24日
  • 歩道橋の魔術師

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    ネタバレ

    巨大迷路のような中華市場、屋上には鮮やかなネオン塔が光り、幾つもの棟を結ぶ歩道橋には魔術師が立っている…。昭和レトロならぬ台湾レトロを感じさせてくれる短編集。短編とは言え同時期に中華市場に住む子ども達の話という共通点があり、同じ登場人物が出てきたりでまるで一冊の中編小説を読んでいるよう。魔術師が気まぐれに見せる魔法は子ども達の心に残り続け、成長した後も時に生きる希望となり、時に死の原因となる。
    台湾本国でドラマ化してるんですね、これ。セットで中華市場を完全再現したらしく、すごく観たいんですがローカライズもないし日本で観るのは無理そうで残念。予告編だけでも本書とあわせて観ると雰囲気が味わえていいかと思う。

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    2024年01月06日
  • 自転車泥棒

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    無くなった自転車を探す旅が、時空を超えて様々な語り口で紡がれていく。
    幻想とノスタルジーが心地よく、見たことの無い台湾の風景が浮かんできた。
    たまに何を意味しているのかわからない部分もあったが、それも含めて美しい小説だった。

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    2023年10月20日
  • 13・67 下

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    上巻からどんどん時代を遡っていく。それによって香港を取り巻く環境がどれだけ複雑なのか、警察官の立ち位置がどう変化していったのか、わかってきたところで、最後の章。いやーまいったこれまた上巻から読み返さないとならない。めちゃくちゃ面白かった!

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    2023年08月06日
  • 歩道橋の魔術師

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    遠い台湾の話なのに、なぜか懐かしいノスタルジックな感情、異国情緒、人生の残酷さを同時に味わえる、稀有な作品。
    この本1冊持って、1人で台湾にぶらりと行きたくなる。
    「99階」が特に印象的だった。

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    2023年03月11日
  • 自転車泥棒

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    小説家をしている「ぼく」は、父と一緒に失踪した「幸福」印の自転車を探す。自転車コレクターである「ナツさん」のところで、ついに見つけたその自転車は、父の手を離れたのち、多くの人の手を渡って、「ぼく」のところへと戻ってきた。
    物語は、父の「幸福」印の自転車が巡ってきた人たちの物語をまとめたものである。彼らは、自転車の来歴を知ろうとする「ぼく」に、従軍時代に出会った老人やチョウ捕りの思い出、第二次対戦中の銀輪部隊やビルマの森での戦争の記憶を語る。

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    2023年02月13日
  • 歩道橋の魔術師

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    名作『自転車泥棒』の呉明益。翻訳も同じく、夭折された天野健太郎さん。こちらは短編連作集。失われた商場で過ごした少年時代が描かれる。

    とにかくいつもながら、センチメンタルすぎて読んでいて死にそうになる。この短編集でも、複数の動物たちが描かれる。これまた、切なくて、倒れそうである。

    しかし、魅力があって読むのがやめられない。

    表題作はやはりとても印象に残るが、僕が好きなのは『ギター弾きの恋』と『唐さんの仕立て屋』。

    台湾に久しぶりに行ってみたくなるなあ。

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    2022年11月07日
  • 自転車泥棒

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    ネタバレ

    ぼくの父は、兄の高校の合格発表の時、ぼくを小児科に連れて行った時と自転車を無くし、最後は幸福印の自転車と共に失踪した。古い自転車を集め、部品を集めて修理するぼくは、失踪した父の自転車と再会する。その持ち主にたどり着くまでの人々の歴史、その人々と自転車との歴史は、チョウを工芸品にして生きる人々と、ビルマやマレーシアでの太平洋戦争でジャングルの中を彷徨う人々と、戦争に巻き込まれるゾウや動物たちと動物を愛する人々と、話がつながっていく。
    話が広がりすぎて、誰が誰と繋がっているのか追うのが大変だったので、人物関係を整理しながら読み直したい。ものすごく広がった物語が関連しあって収束していく、物語の回収の仕方がすごい。
    キーワードは「時間」だと思う。古い自転車を塗り直し新しいものに変えてしまうのは、その自転車の時間の継承を断ち切るものだ、とナツさんは言う。廃品やゴミのようなものを回収する古道具のコレクターのアブーも、はるか昔にバスアが埋めた自転車を抱き込んで大樹となったガジュマルも、時間の積み重ねを大事にしている。ガジュマルのまわりには人の魂が寄ってくると沖縄で聞いた気がするが、一つのものに込められた人の魂、歴史、思いを、掬い上げる小説、と言う気がした。「哀悼さえ許されぬ時代」に。ゆっくり読み返したい。

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    2022年08月27日
  • 歩道橋の魔術師

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    台湾作家による幻想文学。
    作者はガルシア=マルケスが好きなようで本の最初に言葉が引用されている。

    この短編集は、実際に台湾にあった「中華商場」という商業施設にに住む人々の人生の喜怒哀楽が書き記されている。商場には八つの棟があり、歩道橋で繋がっていた。歩道橋にはマジックを見せていた「歩道橋の魔術師」がいた。
    ここに出てくる登場人物たちの現実はなかなか厳しい。死んだり事故にあったりする人も多い。そんな現実にふと摩訶不思議が顕れる。あまりにもさりげないので不思議とも感じないような不思議。もうなくなった商場に、もう会わなくなった人々。
    色々なものが人生を通り過ぎたが、今は自分は歩いている、厳しいような寂しいような印象がする。

    『歩道橋の魔術師』
    商場には八つの棟があり、歩道橋で繋がっていた。
    ぼくは子供の頃に歩道橋で商売をしていた。ぼくの斜め前で商売していたのが「魔術師」だ。
    人の心を読み、無いところからものを取り出し、あるものを消してしまう。
    でも一番素晴らしかったのは、黒い紙を切り取った小人が命を吹き込まれて踊りだすことだった!

    『九十九階』
    子供のころトムとマークは親友だった。ある時マークが消えた。
    数ヶ月後、消えたときと同じようにいきなり戻ってきたマークはトムにだけ秘密を教える。
    …これはなんとも目に浮かぶような幻術的な。
    <世界はこんなに美しい。でもあのころのふたりはそれを知らなかった。世界はこんなに悲しい。でもあのころの二人はそれを知らなかった。P32>

    『石獅子は覚えている』
    お宮の石獅子の口に手を入れた従兄弟のいたずら小僧は死んでしまった。
    ではぼくはなぜ生きているのだろう?石獅子はぼくの夢に訪ねてきたというのに。

    『ギラギラと照りつける道にゾウがいた』
    アルバイトのきぐるみのゾウを着ていると、知っている人が次々現れるんだ。
    ぼくの顔はゾウだから相手にはわからない。でもぼくにはわかるんだ。

    『ギター弾きの恋』
    ぼくは子供の頃に、近所のお姉さんと、そのボーイフレンドの間を取り持っていたんだ。
    ぼくもお姉さんに憧れていたから跡をつけるのは自分の興味でもあったけどね。
    二人は死んだ。商場のみんな見てきたような噂を流すんだ。

    『金魚』
    人との関わりを避けていたが、娼婦の百合のことはなんだか気に入った。
    彼女のところに通っていたら、商場のころに付き合いのあったテレサと再会した。
    テレサ。大人びて虐められていたテレサ。急に姿を消したテレサ。
    <ぼくのくだらない、いい加減な人生の中で、やっと一つ残すものを見つけた、たとえ氷のように溶けてしまっても、それはきっと水となって、どこかに残り続けるだろう。P138>

    『鳥を飼う』
    鳥を飼いたかったの。お母さんに内緒でこっそり買った小鳥はネズミにかじられてしまったし、そのあと飼った小鳥たちも猫やネズミにやられてしまった。
    私は泣いて泣いて泣いて。そんな時に歩道橋の魔術師のマジックを見たの。時を止めて、戻して、先に進めるマジックを。

    『唐さんの仕立て屋』
    兄貴の店の屋根裏に猫が住み着いたらしい。兄貴には懐いているが、同じ声の僕には姿を見せない。
    僕は兄貴に聞いた。仕立て屋の唐さんの家に住み着いていた猫の事を覚えている?

    『光は流れる水のように』
    この題名はガルシア=マルケスの短編「光は水のよう」からとったのでしょうか。
    ここで書かれた幻想は、この短編集の不思議のなかでもひときわ印象的で美しく刹那的です。

    『レインツリーの魔術師』
    ラオスに出張に行ったときに、紙の黒い小人を操る男を見た。君は魔術師かい?
    ぼくは子供の頃に商場にいた魔術師のことを思い出す。昔の友達にあって彼のことを聞いた。
    もう商場は解体されて無くなった。死んだり出ていったりした人たちもたくさんいる。しかし彼らの昔語りの中にはあの頃自分が過ごした商場があった。
    そしてぼくにも魔術師の思い出があるんだ。

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    2022年07月23日
  • 歩道橋の魔術師

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     歩道橋といっても日本で普通に見る、あのただの立体横断歩道とは異なる。
    台湾の台北市・中華路には1961年から92年代まで「中華商場」という大型商業施設があった。それは鉄筋コンクリート三階建の建物が南北に台北駅の手前から愛国西路まで1キロにわたって立ち並び、それぞれの棟に〈忠〉〈孝〉〈仁〉〈愛〉〈信〉〈義〉〈和〉〈平〉という名前がついていた。商場は中華路の車道の真ん中に建てられていたため、中華商場の建物を南北に結び、同時に車道と鉄道を東西に跨ぐ歩道橋が中華商場各棟の二階で直結し、幅も広く、沢山の露店商で賑わったらしい。
     これは短編集であるが、それぞれの話の主人公たちは皆、子供のころ商場で育ち(みな商場のお店の子供)、大人になって回顧するという設定だ。そして記憶の中の共通項が、歩道橋の露店でマジックを行っていた“魔術師”だ。
     商場の住人達は商場の中に店兼住居を構え、そこの子供たちの行動範囲は殆ど商場の中ばかり。各店(家)にトイレはなく、汚い共同トイレを使用している。外で親に秘密の行動したいときは「う○こ行ってくる」と言って家を出る。
     占いやさんとか筆耕やさんとか本を雑に積み上げただけの古本屋さんとか、古切手やさんとか味は絶品だけどいつも店の親父が丼鉢に親指を突っ込んで品を差し出す牛麺やさんとか…清潔ではないが古き良き活気に満ちた台湾の「商場」が描かれている。
     反面、物悲しさに溢れている。主人公の商場の子供達の家庭はだいたい不幸なのだ。初めは商売が上手くいっていたのに、お父さんが飲んだくれになって、そのお父さんを探しに行ったお兄さんが電車に轢かれ、そのショックでお母さんまで早死してしまったり、母親が父親にDVを受けるのを見てられなくて、家出してしまったり、何かの事情で両親が居なくて親戚の家で遠慮しながら暮らしていたり…。商売が振るわないから、子供に歩道橋で露店を出させる親もいる。
     魔術師は歩道橋の屋上に寝泊まりしていて、普段はキットさえあれば誰でも真似出来るような安っぽいマジックを披露しているのだけれど、たまにゾワッとするような“魔術”を行う。ある時、母親にDVばかりする父親に耐えかねて家を出た少年に言う。「女子トイレの一番奥の個室の壁に描かれているボタンを押してごらん。」そのとおりにすると、トイレの個室がエレベーターに変わって、あるはずのない99階にたどりつき、それから3ヶ月くらい、その少年は透明人間になった。家族の店の前に立っていても全く気づかれず、家族は血眼になって彼を探し続けていた。結局、家族の所に戻ってきたのだが、その“魔術”はその後の彼の悲しい運命を予言していたのだと、40歳を過ぎた同窓会の後で分かる。
     何なのだろう。この、行ったことも見たこともないのに(もしかしたら映画か何かで見たことぐらいあるかもだけど)、懐かしい感じ。確かに主人公たちと私は、ドンピシャで同じ世代なのだけれど、当時の台湾と日本では大分違う。
     魔術師は言った。
    「世界にはずっと誰にも知られないままのことだってあるんだ。人の目で見たものが絶対とは限らない。」
    「ときに、死ぬまで覚えていることは、目で見たことじゃないからだ。」
     目で見てなくても、私は中華商場を“覚えている”のかもしれない。

     

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    2022年07月03日
  • 歩道橋の魔術師

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    20世紀末に取り壊された台北の巨大商業施設・中華商場。その棟と棟をつなぐ歩道橋には、不思議な黒い小人を見せる魔術師がいた。かつて商場で育った子どもたちは、そこで過ごした日々のなかに確かにあった魔法の瞬間を語り始める。記憶と物語の距離をめぐる連作短篇集。


    すっきりした語り口で完成度の高い作品。『自転車泥棒』の煩雑な文体とも、『雨の島』の静謐さとも異なる。芥川賞ノミニーのような空気感があるので、現代日本の文芸作品に親しんでいる人はこの小説から呉作品に入るのが読みやすそう。
    中華商場という空間が象徴する子ども時代とその喪失。主題を整理すると左のようになるが、ジュブナイルのノスタルジーを甘く描いているわけではない。人の死の影が全篇を覆い、その筆致はひんやりとしている。登場人物のひとりが印象的な死を迎える「九十九階」は、えっこの小説で人死にがでるの?と驚いたが、その後も失踪や事故、火事などが相次ぐ。語り手たちはその先触れのように魔術師と出会い、彼が見せた魔法を思いだして心がざわめく。解説の東山彰良が言う通り、魔術師が操るのは因果ではなくて世界の位相を少しだけずらしてみせることだったのだろう。
    商店を営む人たちの生活の場でもあった商場のガヤガヤした往年の姿を知れるのも楽しい。なにしろ約1kmに渡って千軒以上の商店が連なる3階建てのモールだっていうんだからすごい。マークのお母さんが「小さい頃のおねしょの匂いを覚えている」と言い、商場のトイレを嗅いで行方不明の息子を探し回った、なんていうことがさらっと書いてあり、暴走した母性って感じでとても頭に残った(笑)。大陸からの移住者である仕立て屋の唐さんと猫のエピソードは『自転車泥棒』のラオゾウと小鳥のヤツガシラの結びつきにも似て、切なくも美しい。
    呉明益は、今は失われた中華商場という場所そのものを記憶装置に変えた。歩道橋の魔術師は記憶という幻影のなかで過去と現在をつないでいる。「レインツリーの魔術師」の語り手がカンボジアで黒い小人の種明かしを追求せずにやめてしまうのは、単に幻滅するのが怖いわけではないだろう。記憶にかけられた魔法を現在において確かめることにもはや意味などないと、作家になった大人の「ぼく」はわかっているのだ。

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    2022年02月19日
  • 自転車泥棒

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    まず、翻訳が大変こなれていて、つっかえることなくすらすら読める。
    過去と現在、様々な場所と時代を行き来する。
    戦争の記述は、村上春樹のノモンハンの文章を思い出した。

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    2022年02月10日
  • 自転車泥棒

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    ネタバレ

    重厚で濃密。
    戦争と自転車、ゾウと戦争、チョウの話…知らないことが多すぎて、いろんな目が開かされた。

    そして、アジア史は日本が敵なのか味方なのかがコロコロ変わるので、頭の切り替えが難しい。

    でも、読み進めざるを得ない圧倒的な力を感じた。いつか再読して、きちんと理解したい。

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    2022年01月20日
  • 歩道橋の魔術師

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    Twitter文学賞で知ってからずっと気になっていた作品。これはまるで台湾の村上春樹ではないか。とても読みやすく佳作揃いだった。現実と空想の世界が、魔術師の姿を介して交差する。マジックリアリズムの世界がひと昔前の台湾の商場で繰り広げられる意外性がとても新鮮。
    魔術師はまるで空想の存在のようだが、紛れもない現実の存在である。どの作品にも必ず「死」が登場するが、むしろそっちが空想の出来事のように思えてしまう。

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    2021年12月11日
  • 歩道橋の魔術師

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    中華商場というのは1961年から約30年ほどのあいだ台湾の台北市にあった商業施設。と言っても今のモールとは異なり、3階建てのビルが8棟連なり、2キロほどの長さになり、そこに店舗とその店を営業する家族の居住空間があったというから、商店街のようなものに近いのかもしれない。
    各棟の2階には連絡するための広い歩道橋があり、そこにも露天商が並んでいたそうだ。
    この短編集はその商場に住んでいた人たちが、少年時代にそこで起きたことを回想して語る物語。そして、棟を繋ぐ歩道橋でマジックをして見せていた魔術師が各話で語り手になんらかの転機をもたらす。
    少年時代の記憶にはえてして記憶違いや、夢と記憶が混ざりあって、どこまでが記憶でどこまでが夢や空想なのか判然としないものがないだろうか。ここで語られる話はまさにその記憶と夢が混ざり合った、しかし、当人にとっては、確実な記憶として、その後を変えた記憶として心に残っているものとして語られる。
    ノスタルジーとまとめてしまうのは容易いが、ノスタルジーというのは往々にして溶けやすい砂糖のようなもので、水に混ぜればするりと溶け消えて、飲み下す時には甘みが心地よいが、飲み下してしまうと何も残らない。
    しかし、ここで語られる物語には何か口の中に、喉の奥に残って、いったいこれは何なんだろうと考えに耽ってしまうような感覚が残る。

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    2021年11月25日
  • 自転車泥棒

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    父の盗まれた自転車から、ストーリーが広がっていく。登場人物が多いので、ところどころページを戻りながら読んだ。

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    2021年09月15日
  • 自転車泥棒

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    盗まれた父の自転車が辿った道を追うなかで語られるイメージと物語の奔流。

    溺れるくらいだ、すげえ。

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    2021年09月10日
  • 13・67 下

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    2013年は、雨傘運動の前年
    2003年は、国家安全条例反対デモ
    1997年は、香港返還
    1989年は、天安門事件
    1977年は、文化大革命終結
    1967年は、文化大革命

    香港にとって大きな事件があり、香港警察も変わらざるを得なかったであろう状況ので中で、市民を守るため、体制に背いてでも、犯罪者を追い詰めるため知恵を絞る。名探偵クワンの警察人生と香港の反政府運動の歴史が重ねられる。

    最後に明かされたことは、安易な予想を裏切り、それぞれが激動の香港を知恵と努力で生きたのだと知らされる。

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    2021年08月29日
  • 13・67 上

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    第1章から非常にトリッキーで、反道徳的な展開。犯人を捕らえるためなら、違法ぎりぎりの捜査も厭わない。犯人を追い詰める心理戦に罠とトリック。
    名探偵と呼ばれた伝説の刑事の人生を遡る。

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    2021年08月29日
  • 13・67 下

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    このミス海外編2018年版2位、本屋大賞翻訳小説部門2018年2位。連作中編集。日本の売れ筋警察小説っぽい。香港警察の生ける伝説、クワン警視が死ぬときに始まって、駆け出しの刑事の時まで時代をさかのぼりながらの6作が入ってる。論理的に推理とあっと言わせる意外な展開が心地良い。最後のやつは主役の人が前作にも関係してるみたいだけど、読み直すの面倒なのでイマイチわかってません。とても良くできた小説なんだけど、残念なことに、漢字の人名や地名がとても分かりにくく、読み進めるのはとてもしんどかった。ジャッキー・チェンの映画のような派手なカーチェイスとかもあって飽きさせない作りにはなってると思います。

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    2021年07月19日