天野健太郎のレビュー一覧

  • 自転車泥棒

    Posted by ブクログ

    自転車、家族、戦争、ゾウ、チョウ。
    古い自転車を探すことと、歴史を学び直すこと。
    自転車を探すことと、誰かの人生を追いかけること。
    アジア現代史を背景に様々なことを想起しつつ、幻想文学として読んだ。

    0
    2021年11月07日
  • 自転車泥棒

    Posted by ブクログ

    不思議な小説だ.
    主人公は古い台湾製の自転車の収集マニアである.彼が自転車に執着するのは,どうやら父親の失踪に関係するようだ.父とともに失われた自転車を追い求める物語なのだが,自転車は不思議な運命を辿り,それを追い求める過程で出会う多くの人々の自転車をめぐる物語が積み重ねられる大河小説である.
    「百年の孤独」のようだ,というのは言いすぎかもしれないが,大傑作である.

    0
    2021年10月22日
  • 13・67 下

    Posted by ブクログ

    これは面白かった。

    香港を舞台にした警察小説。
    6つの短編が収録され、全体で一つの物語となっている。
    最初は、シャーロックホームズの劣化コピーかと思われたんだけど、いやいや、読み進めていくうちにどんどん面白くなってくる。
    また、ストーリーも現代から過去に遡っていくという展開で、なかなか意表をつく。

    主人公は香港警察の伝説の刑事『クアン』。
    彼を主人公として彼が携わった6つ事件を解決していくというものだ。

    ちなみに、この本の題名『13.67』ってなんなんだろうと思っていたのだが、読み進めていってやっと分かった。
       「13」は「2013年」
       「67」は「1967年」
    を意味している

    0
    2020年10月04日
  • 13・67 下

    Posted by ブクログ

    陳浩基『13・67 下』文春文庫。

    各種ミステリーランキングで上位に輝いた珍しい華文ミステリー。

    香港警察の伝説の刑事クワンを主人公にした連作短編集。上下巻に全6編が収録されている。2013年を舞台にした上巻の最初の短編でクワンの警察人生最後の仕事が描かれるが、その後1967年まで順に時代を遡るという特殊な構成の物語。香港の歴史を背景にクワンが解決した数々の事件が描かれる。

    英国の植民地時代から中国への返還という特異な歴史に翻弄された香港は、1960年代の反英の嵐が吹き荒れる時代から、少しずつ中国とは異なる強固な柱を造り続けて来たように見える。中国に返還された今となっては、この強固な柱を

    0
    2020年09月18日
  • 13・67 上

    Posted by ブクログ

    陳浩基『13・67 上』文春文庫。

    各種ミステリーランキングで上位に輝いた珍しい華文ミステリー。

    香港警察の伝説の刑事クワンを主人公にした連作短編集。上下巻に全6編が収録され、2013年から1967年まで順に時代を遡って香港の激動の時代とクワンの警察官人生とが描かれる。

    時系列を逆転させ、終わりから始まる物語というアイディアはなかなか面白い。しかし、最初の1編の『黒と白のあいだの真実』が余りにも衝撃的で、他の2編も面白いのに、やや上の空という感じだった。

    『黒と白のあいだの真実』。これは見事。最近ではなかなかお目にかからないレベルのミステリー短編の傑作だ。2013年が舞台。末期の肝臓癌

    0
    2020年09月16日
  • 歩道橋の魔術師

    Posted by ブクログ

    今はない、台湾の市場を舞台にした連作短編集。
    行ったことも見たことも、それこそ生まれた時くらいに無くなった場所なのに、強烈なノスタルジーがある。
    架空のノスタルジーを楽しめる本。

    0
    2025年09月21日
  • 歩道橋の魔術師

    Posted by ブクログ

    ノスタルジーは懐かしさとともに、常に少しの喪失感と痛みを伴ってやってくる。
    商場はそういったものの代名詞になっているのだと思った。そこで描かれるマジシャンは、曖昧な記憶を夢と不可分にする怪しさを象徴しているように思う。

    0
    2025年07月26日
  • 歩道橋の魔術師

    Posted by ブクログ

    台湾で育ったわけでもないのに不思議と懐かしい気分になる。子供の頃の不思議な記憶を独特な雰囲気で、そして様々な人物の目線で描かれている。世界が住んでいる場所近辺までだったり、不思議なことを信じて疑わず、それを体験していたり。初めての台湾文学作品だったが、台湾好きにとてもオススメ。

    0
    2025年05月11日
  • 歩道橋の魔術師

    Posted by ブクログ

    魔術師に出会った人々は現実と もう一つ別の世界をみる

    ゴシキドリ シマキンパラなど見たことのない鳥に出会えて 不思議な気持ちになった

    0
    2025年05月02日
  • 自転車泥棒

    Posted by ブクログ

    商場、蝶、象、戦争、家族

    父とともに消えた自転車を巡る数奇な物語

    読むのに時間がかかったけど、長文とか読みづらいとかではなく、一文一文噛み締めるように読みたい、そんな本

    0
    2025年02月13日
  • 歩道橋の魔術師

    Posted by ブクログ

    今はなくなった台北「中華商場」という場所を舞台にした短編小説。子供時代体験したであろう色々な出来事の不思議さ、昂揚感、心がしめつけられる悲しみみたいなものを小説で見事に表しているなあと感じた。そんな色んな子どもたちの共通の記憶として「歩道橋の魔術師」がいて、各物語に影響を与えている。
    面白かったので「自転車泥棒」「複眼人」なども読んでみたいなと思った。

    村上春樹っぽい言い回しもところどころ見られる。ちょっと気になり調べてみると、とあるインタビュー記事に「ねじまき鳥クロニクル」を読んだことがあると話しておられた(作中にも村上春樹の名前が一度出てきた)。
    p.246 彼女の完璧な耳たぶに注意を引

    0
    2024年06月12日
  • 自転車泥棒

    Posted by ブクログ

    失踪した父と共に消えた自転車はどこへいったのか?そんな棘のように消えない記憶を抱え、古い自転車コレクターとなった作者。そこから始まる台湾自転車史から家族と台湾の歴史の壮大な物語。
    父の自転車が作者の手に戻るまでに経てきた持ち主たち、その過程で知り合う台湾先住民族の青年カメラマンのもう一台の自転車、さらにそのカメラマンの父の自転車と第二次世界大戦における銀輪部隊…と自転車を軸として展開される物語りが素晴らしい。
    「古いものを愛するのは時間を愛すること」、たった一台の自転車からでも人は過去を見出すことができる。

    0
    2024年01月24日
  • 歩道橋の魔術師

    Posted by ブクログ

    ネタバレ

    巨大迷路のような中華市場、屋上には鮮やかなネオン塔が光り、幾つもの棟を結ぶ歩道橋には魔術師が立っている…。昭和レトロならぬ台湾レトロを感じさせてくれる短編集。短編とは言え同時期に中華市場に住む子ども達の話という共通点があり、同じ登場人物が出てきたりでまるで一冊の中編小説を読んでいるよう。魔術師が気まぐれに見せる魔法は子ども達の心に残り続け、成長した後も時に生きる希望となり、時に死の原因となる。
    台湾本国でドラマ化してるんですね、これ。セットで中華市場を完全再現したらしく、すごく観たいんですがローカライズもないし日本で観るのは無理そうで残念。予告編だけでも本書とあわせて観ると雰囲気が味わえていい

    0
    2024年01月06日
  • 自転車泥棒

    Posted by ブクログ

    無くなった自転車を探す旅が、時空を超えて様々な語り口で紡がれていく。
    幻想とノスタルジーが心地よく、見たことの無い台湾の風景が浮かんできた。
    たまに何を意味しているのかわからない部分もあったが、それも含めて美しい小説だった。

    0
    2023年10月20日
  • 13・67 下

    Posted by ブクログ

    上巻からどんどん時代を遡っていく。それによって香港を取り巻く環境がどれだけ複雑なのか、警察官の立ち位置がどう変化していったのか、わかってきたところで、最後の章。いやーまいったこれまた上巻から読み返さないとならない。めちゃくちゃ面白かった!

    0
    2023年08月06日
  • 歩道橋の魔術師

    Posted by ブクログ

    遠い台湾の話なのに、なぜか懐かしいノスタルジックな感情、異国情緒、人生の残酷さを同時に味わえる、稀有な作品。
    この本1冊持って、1人で台湾にぶらりと行きたくなる。
    「99階」が特に印象的だった。

    0
    2023年03月11日
  • 自転車泥棒

    Posted by ブクログ

    小説家をしている「ぼく」は、父と一緒に失踪した「幸福」印の自転車を探す。自転車コレクターである「ナツさん」のところで、ついに見つけたその自転車は、父の手を離れたのち、多くの人の手を渡って、「ぼく」のところへと戻ってきた。
    物語は、父の「幸福」印の自転車が巡ってきた人たちの物語をまとめたものである。彼らは、自転車の来歴を知ろうとする「ぼく」に、従軍時代に出会った老人やチョウ捕りの思い出、第二次対戦中の銀輪部隊やビルマの森での戦争の記憶を語る。

    0
    2023年02月13日
  • 歩道橋の魔術師

    Posted by ブクログ

    名作『自転車泥棒』の呉明益。翻訳も同じく、夭折された天野健太郎さん。こちらは短編連作集。失われた商場で過ごした少年時代が描かれる。

    とにかくいつもながら、センチメンタルすぎて読んでいて死にそうになる。この短編集でも、複数の動物たちが描かれる。これまた、切なくて、倒れそうである。

    しかし、魅力があって読むのがやめられない。

    表題作はやはりとても印象に残るが、僕が好きなのは『ギター弾きの恋』と『唐さんの仕立て屋』。

    台湾に久しぶりに行ってみたくなるなあ。

    0
    2022年11月07日
  • 自転車泥棒

    Posted by ブクログ

    ネタバレ

    ぼくの父は、兄の高校の合格発表の時、ぼくを小児科に連れて行った時と自転車を無くし、最後は幸福印の自転車と共に失踪した。古い自転車を集め、部品を集めて修理するぼくは、失踪した父の自転車と再会する。その持ち主にたどり着くまでの人々の歴史、その人々と自転車との歴史は、チョウを工芸品にして生きる人々と、ビルマやマレーシアでの太平洋戦争でジャングルの中を彷徨う人々と、戦争に巻き込まれるゾウや動物たちと動物を愛する人々と、話がつながっていく。
    話が広がりすぎて、誰が誰と繋がっているのか追うのが大変だったので、人物関係を整理しながら読み直したい。ものすごく広がった物語が関連しあって収束していく、物語の回収の

    0
    2022年08月27日
  • 歩道橋の魔術師

    Posted by ブクログ

    台湾作家による幻想文学。
    作者はガルシア=マルケスが好きなようで本の最初に言葉が引用されている。

    この短編集は、実際に台湾にあった「中華商場」という商業施設にに住む人々の人生の喜怒哀楽が書き記されている。商場には八つの棟があり、歩道橋で繋がっていた。歩道橋にはマジックを見せていた「歩道橋の魔術師」がいた。
    ここに出てくる登場人物たちの現実はなかなか厳しい。死んだり事故にあったりする人も多い。そんな現実にふと摩訶不思議が顕れる。あまりにもさりげないので不思議とも感じないような不思議。もうなくなった商場に、もう会わなくなった人々。
    色々なものが人生を通り過ぎたが、今は自分は歩いている、厳しいよう

    0
    2022年07月23日