天野健太郎のレビュー一覧

  • 13・67 上

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    タイトルの意味を察した時にこの面白さが深まる。横山秀夫的といえばそうだけど、ハードボイルドな空気感とどこか飄々としたムードが楽しめた。

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    2021年11月28日
  • 歩道橋の魔術師

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    台北に1961年から1992年まで存在した長さ1kmのショッピングモール「中華商場」を舞台にし,そこで暮らす子供たちを主人公とした10の短篇(と1編のオマケ)からなる.多くの話に「歩道橋の魔術師」が狂言回しとして登場し,また,ある話の主人公は別の話にエキストラとして登場する.
    日本に売り込む際には「三丁目のマジックリアリズム」というコードネームだったと書かれているが,確かに南米の作家のような不思議な味わいがある.ただ我々と同じ東アジアが舞台であり,不思議な味わいである一方で,描かれる光景が身近に感じられる.
    自分より下の世代にはピンとこないかもしれないが,台湾では1987年まで戒厳令が敷かれ,政治活動や言論の自由は厳しく制限され,市民の逮捕・投獄が横行していた(戒厳令が解除された,というニュースはリアルタイムで見た).本書で死が頻繁に登場するのは,そういった時代の空気が描かれているのかもしれない.

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    2021年11月23日
  • 自転車泥棒

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    自転車、家族、戦争、ゾウ、チョウ。
    古い自転車を探すことと、歴史を学び直すこと。
    自転車を探すことと、誰かの人生を追いかけること。
    アジア現代史を背景に様々なことを想起しつつ、幻想文学として読んだ。

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    2021年11月07日
  • 自転車泥棒

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    不思議な小説だ.
    主人公は古い台湾製の自転車の収集マニアである.彼が自転車に執着するのは,どうやら父親の失踪に関係するようだ.父とともに失われた自転車を追い求める物語なのだが,自転車は不思議な運命を辿り,それを追い求める過程で出会う多くの人々の自転車をめぐる物語が積み重ねられる大河小説である.
    「百年の孤独」のようだ,というのは言いすぎかもしれないが,大傑作である.

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    2021年10月22日
  • 13・67 下

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    これは面白かった。

    香港を舞台にした警察小説。
    6つの短編が収録され、全体で一つの物語となっている。
    最初は、シャーロックホームズの劣化コピーかと思われたんだけど、いやいや、読み進めていくうちにどんどん面白くなってくる。
    また、ストーリーも現代から過去に遡っていくという展開で、なかなか意表をつく。

    主人公は香港警察の伝説の刑事『クアン』。
    彼を主人公として彼が携わった6つ事件を解決していくというものだ。

    ちなみに、この本の題名『13.67』ってなんなんだろうと思っていたのだが、読み進めていってやっと分かった。
       「13」は「2013年」
       「67」は「1967年」
    を意味しているんだね。そして2013年から1967年に遡っていくという意味の題名なのだ。

    香港がイギリスから中国に返還されるという香港の激動の時代を見事に描き切り、そこに香港警察の一警察官の人生を投影させながらストーリーを展開させていく。

    香港の歴史や地理をもっとよく知っていればさらに楽しめるのだけれど、僕のようなあまり香港の歴史を知らない人間にも十分に楽しめたり、本格推理小説としても及第点以上だろう。

    中華文学はいままで読んできたことはなかったが、『三体』や本書などを読むと、今後チェックすべき作家が結構いるのだと思い知らされる。

    いやはや、読書人の世界は深くて広すぎるなぁ(笑)。

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    2020年10月04日
  • 13・67 下

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    陳浩基『13・67 下』文春文庫。

    各種ミステリーランキングで上位に輝いた珍しい華文ミステリー。

    香港警察の伝説の刑事クワンを主人公にした連作短編集。上下巻に全6編が収録されている。2013年を舞台にした上巻の最初の短編でクワンの警察人生最後の仕事が描かれるが、その後1967年まで順に時代を遡るという特殊な構成の物語。香港の歴史を背景にクワンが解決した数々の事件が描かれる。

    英国の植民地時代から中国への返還という特異な歴史に翻弄された香港は、1960年代の反英の嵐が吹き荒れる時代から、少しずつ中国とは異なる強固な柱を造り続けて来たように見える。中国に返還された今となっては、この強固な柱を完全に壊すのはなかなか難しいことなのだろう。今度は民主化の嵐が吹き荒れる香港。時代は変わり、人びとも変わり、警官も変わる。

    『テミスの天秤』。中国とは全く別の国だった頃の香港の世相を舞台に、現役バリバリのクワンの活躍が描かれる。1989年、雑居ビルに潜む凶悪犯たちと香港警察の警官との銃撃戦。犯人は全員射殺されたものの、ビル内にあるホテルに居た一般市民は全員が犯人に射殺され、何人かの警官も負傷する。事件の直後に偶然、事件現場を訪れたクワンが見出だした事件の恐るべき真相とは……

    『借りた場所に』。パズルを解くような理路整然としたクワンの推理が光る秀作。1977年、まだ香港警察に賄賂などの汚職が蔓延る時代。そんな警察の堕落に目を光らせる司法執行員のヒルの一人息子が誘拐された。ヒルが頼ったのはロンドン警察時代の教え子、クワンだった。子供の誘拐事件なのに何故か醒めた態度のクワン。事件の背後に隠された真実とは……

    『借りた時間に』。反英の嵐が吹き荒れる1967年の香港。主人公は雑貨店に働く『私』である。ある日『私』が隣に住む男と労働組合の仲間が爆弾テロの打合せを聞き、顔馴染みの警官アチャに伝える。なかなか登場しないクワン……ラストに明かされた事実には非常に驚いた。

    本体価格870円
    ★★★★★

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    2020年09月18日
  • 13・67 上

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    陳浩基『13・67 上』文春文庫。

    各種ミステリーランキングで上位に輝いた珍しい華文ミステリー。

    香港警察の伝説の刑事クワンを主人公にした連作短編集。上下巻に全6編が収録され、2013年から1967年まで順に時代を遡って香港の激動の時代とクワンの警察官人生とが描かれる。

    時系列を逆転させ、終わりから始まる物語というアイディアはなかなか面白い。しかし、最初の1編の『黒と白のあいだの真実』が余りにも衝撃的で、他の2編も面白いのに、やや上の空という感じだった。

    『黒と白のあいだの真実』。これは見事。最近ではなかなかお目にかからないレベルのミステリー短編の傑作だ。2013年が舞台。末期の肝臓癌で余命僅かとなり、かつての部下・ローが容疑者一族5人と伴って病床で意識不明の状態にあるクワンの元を訪ねる。眼も開かず、会話も出来ず、指1本さえ動かせないクワンが見せた驚きの推理と意思伝達方法、まさかの事件解決……

    『任侠のジレンマ』。如何なる推理を駆使してクワンはマフィアのボスを炙り出そうとするのか……2003年、既に警察を引退し、顧問となったクワンのアドバイスを受けながらローは裏社会を牛耳るマフィアの逮捕に奔走する。事件解決のためには手段を選ばぬクワンの仕掛けた罠とは。

    『クワンのいちばん長い日』。これも見事。何と2つの事件を解決してしまう定年退職前のクワン。1997年、香港返還の1ヵ月前、50歳のクワンは翌日に定年退職を控えていた。その最後の1日に護送中のマフィアが脱走し、さらには露店街のビルの上から硫酸を振りまくという凶悪事件が発生する。クワンはローを伴い、独自に捜査を進め、驚愕の推理力を発揮する。

    本体価格870円
    ★★★★★

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    2020年09月16日
  • 13・67 下

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    ネタバレ

    結末を読んで、空を見上げてしまう。
    1967年に2人はそれぞれの道を進み、2013年にまた運命が交わるのか。
    それぞれの話もよかったけれど、この結末はすごかった。

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    2026年09月20日
  • 歩道橋の魔術師

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    台湾に実在した商業施設にまつわる記憶を持った者たちの短編集。この世の者なのか疑いたくなる魔術師、親しい者に忍び寄る運命、大切なものを突然失う無力感など、全体的に生と死の境界線を感じる。時代的にもモノクロっぽい。翻訳の本は日本語に違和感があってあまり読まないけど、訳が自然という作家さんのおすすめ通り、翻訳であることを忘れて読める。

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    2026年07月19日
  • 自転車泥棒

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    むかしよく町で見かけたゴツくて頑丈で重たい自転車。本屋をやっていた親戚のおじさんが配達で使っていた。懐かしい。

    そういう何気なく目にしていた古いものの見方が変わる小説。どうやって作られ、誰が使ったのか。もうほとんど見向きもされないそれらにも、色んな人の想いや生き様が交錯しているんだろうと気付かせてくれる。そういえば、自分の親がどんな人生を辿ってきたのかさえ、ほとんど知らない。

    緩やかにリンクしているので、歩道橋の魔術師も、もう一度読んでみようかな。

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    2026年04月06日
  • 歩道橋の魔術師

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    80年代の台湾が舞台の短編集で、全体として小説も恋と死が身近だった。恐らく日本人でも70年代生まれの人であれば小波のように押し寄せるノスタルジーに心震わせるんだろうと思う。
    模型作りの友人の話がどんより心に残って面白かった

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    2026年03月23日
  • 自転車泥棒

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    世界文学を味わった。

    村上春樹「羊をめぐる冒険」をより複雑に重層的に歴史的に構築した作品、といった印象だ。

    台湾じゃなければ書けない。この年代の、この作家でしか書けない。きわめて個人的でありながら、普遍的でもあって、これぞ小説だ、物語だ、と感じさせる。スケールも大きい。

    とても充実した読書体験だった。

    後記「哀悼さえ許されぬ時代を」の締めくくりが良かったので、記しておきたい。

    ”
    この小説は「なつかしい」という感傷のためではなく、自分が経験していない時代とやり直しのできぬ人生への敬意によって書かれた。自転車を探すうち、意外な時間の流れに巻き込まれてしまう物語を通して、読者のみなさんが本のなかの人物と心をふれあわせ、ペダルを踏むリズムや汗の臭い、乱れる呼吸、涙を流す(あるいは流さない)ほどの悲しみを、互いに感じとってほしい。
    ”p458

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    2026年03月09日
  • 自転車泥棒

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    オブラートに包まず、直接的で目を覆いたくなる部分も多々ありましたが、悲しく苦しく切ないながらも美しい文章に引き込まれます。
    がしかし、とてつもなく想像力のいる本だと思います。そこから見えてくるものが儚く、そして美しいです。
    それから、こんなにも父のことを考えたことがあったかなと思うほどに父の姿が浮かんできました。
    決して癒されないし、解決もしないけれど、大きな漠然とした余韻に包まれます。
    私にとって大切な本になりました。

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    2025年12月24日
  • 歩道橋の魔術師

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    初めて読んだ台湾の小説!台北の広大なショッピングモール“中華商場”。そこにはマジシャンがいた。決して豊かではなく、その日その日を生きる人々に少し不思議な事が起きる、短編集。マジックリアリズムって言うのかな。人熱、生活臭、空気感が漂ってくるような文体。

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    2025年12月01日
  • 歩道橋の魔術師

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    今はない、台湾の市場を舞台にした連作短編集。
    行ったことも見たことも、それこそ生まれた時くらいに無くなった場所なのに、強烈なノスタルジーがある。
    架空のノスタルジーを楽しめる本。

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    2025年09月21日
  • 歩道橋の魔術師

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    ノスタルジーは懐かしさとともに、常に少しの喪失感と痛みを伴ってやってくる。
    商場はそういったものの代名詞になっているのだと思った。そこで描かれるマジシャンは、曖昧な記憶を夢と不可分にする怪しさを象徴しているように思う。

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    2025年07月26日
  • 歩道橋の魔術師

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    台湾で育ったわけでもないのに不思議と懐かしい気分になる。子供の頃の不思議な記憶を独特な雰囲気で、そして様々な人物の目線で描かれている。世界が住んでいる場所近辺までだったり、不思議なことを信じて疑わず、それを体験していたり。初めての台湾文学作品だったが、台湾好きにとてもオススメ。

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    2025年05月11日
  • 歩道橋の魔術師

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    魔術師に出会った人々は現実と もう一つ別の世界をみる

    ゴシキドリ シマキンパラなど見たことのない鳥に出会えて 不思議な気持ちになった

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    2025年05月02日
  • 自転車泥棒

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    商場、蝶、象、戦争、家族

    父とともに消えた自転車を巡る数奇な物語

    読むのに時間がかかったけど、長文とか読みづらいとかではなく、一文一文噛み締めるように読みたい、そんな本

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    2025年02月13日
  • 歩道橋の魔術師

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    今はなくなった台北「中華商場」という場所を舞台にした短編小説。子供時代体験したであろう色々な出来事の不思議さ、昂揚感、心がしめつけられる悲しみみたいなものを小説で見事に表しているなあと感じた。そんな色んな子どもたちの共通の記憶として「歩道橋の魔術師」がいて、各物語に影響を与えている。
    面白かったので「自転車泥棒」「複眼人」なども読んでみたいなと思った。

    村上春樹っぽい言い回しもところどころ見られる。ちょっと気になり調べてみると、とあるインタビュー記事に「ねじまき鳥クロニクル」を読んだことがあると話しておられた(作中にも村上春樹の名前が一度出てきた)。
    p.246 彼女の完璧な耳たぶに注意を引かれた。←これ春樹じゃん!とか一人で興奮してました。

    個人的に好きなお話は『光は流れる水のように』。

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    2024年06月12日