あらすじ
華文ミステリーの到達点を示す傑作!
巨匠ウォン・カーウァイ監督のもとで映像化進行中。
1989年、新人刑事のローは凶悪犯罪捜査係に配属され、多くの犠牲者を出した九龍の銃撃戦の意外な黒幕を知ることになる――。
60年代に文化大革命の煽りで始まった反英暴動、2010年代に起きた雨傘革命とも呼ばれる市民運動。
香港を象徴する二つの“反政府の時代”が時空を越えて繋がる壮大な社会派ミステリー。
横山秀夫氏も絶賛!
ヤワなミステリーは道をあけよ!
本書は、時代が織りなす警察の信と疑を車窓に映しつつ、ロジックのハンドルさばきも鮮やかに、香港現代史の発火点をタイムトラベルしてみせる無双の緊急捜査車両である。
解説・佳多山大地
※この電子書籍は2017年9月に文藝春秋より刊行された単行本の文庫版を底本としています。
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
文句なしの★5つ。
チャイナ小説は初めて読みましたが、おもしろかった、いや、おもしろすぎました。
香港を舞台にしたミステリーなのですが、
最初の「黒と白のあいだの真実」で死亡するクワン刑事が主人公。
2013年の事件を皮切りに、天眼とも言われる名推理を行う彼が若い警察官だった1967年まで順を追って遡る形式が取られています。
どれも精度の高いミステリーとして楽しめますが、1967年の事件の最後の4行には驚かされました。
こんな風に繋げるの!?と。
イギリスの植民地だった時代まで遡るため、香港の歴史を知ることもでき、とても興味深く読むことができました。
このおもしろさは、作者の腕だけではなく翻訳の上手さも理由の1つだと思います。
翻訳されたミステリーってちょっと苦手だったのですが、イメージが覆りました。
人におすすめしたい一冊です。
出会えてよかった。
2018年12冊目
Posted by ブクログ
これは面白かった。
香港を舞台にした警察小説。
6つの短編が収録され、全体で一つの物語となっている。
最初は、シャーロックホームズの劣化コピーかと思われたんだけど、いやいや、読み進めていくうちにどんどん面白くなってくる。
また、ストーリーも現代から過去に遡っていくという展開で、なかなか意表をつく。
主人公は香港警察の伝説の刑事『クアン』。
彼を主人公として彼が携わった6つ事件を解決していくというものだ。
ちなみに、この本の題名『13.67』ってなんなんだろうと思っていたのだが、読み進めていってやっと分かった。
「13」は「2013年」
「67」は「1967年」
を意味しているんだね。そして2013年から1967年に遡っていくという意味の題名なのだ。
香港がイギリスから中国に返還されるという香港の激動の時代を見事に描き切り、そこに香港警察の一警察官の人生を投影させながらストーリーを展開させていく。
香港の歴史や地理をもっとよく知っていればさらに楽しめるのだけれど、僕のようなあまり香港の歴史を知らない人間にも十分に楽しめたり、本格推理小説としても及第点以上だろう。
中華文学はいままで読んできたことはなかったが、『三体』や本書などを読むと、今後チェックすべき作家が結構いるのだと思い知らされる。
いやはや、読書人の世界は深くて広すぎるなぁ(笑)。
Posted by ブクログ
陳浩基『13・67 下』文春文庫。
各種ミステリーランキングで上位に輝いた珍しい華文ミステリー。
香港警察の伝説の刑事クワンを主人公にした連作短編集。上下巻に全6編が収録されている。2013年を舞台にした上巻の最初の短編でクワンの警察人生最後の仕事が描かれるが、その後1967年まで順に時代を遡るという特殊な構成の物語。香港の歴史を背景にクワンが解決した数々の事件が描かれる。
英国の植民地時代から中国への返還という特異な歴史に翻弄された香港は、1960年代の反英の嵐が吹き荒れる時代から、少しずつ中国とは異なる強固な柱を造り続けて来たように見える。中国に返還された今となっては、この強固な柱を完全に壊すのはなかなか難しいことなのだろう。今度は民主化の嵐が吹き荒れる香港。時代は変わり、人びとも変わり、警官も変わる。
『テミスの天秤』。中国とは全く別の国だった頃の香港の世相を舞台に、現役バリバリのクワンの活躍が描かれる。1989年、雑居ビルに潜む凶悪犯たちと香港警察の警官との銃撃戦。犯人は全員射殺されたものの、ビル内にあるホテルに居た一般市民は全員が犯人に射殺され、何人かの警官も負傷する。事件の直後に偶然、事件現場を訪れたクワンが見出だした事件の恐るべき真相とは……
『借りた場所に』。パズルを解くような理路整然としたクワンの推理が光る秀作。1977年、まだ香港警察に賄賂などの汚職が蔓延る時代。そんな警察の堕落に目を光らせる司法執行員のヒルの一人息子が誘拐された。ヒルが頼ったのはロンドン警察時代の教え子、クワンだった。子供の誘拐事件なのに何故か醒めた態度のクワン。事件の背後に隠された真実とは……
『借りた時間に』。反英の嵐が吹き荒れる1967年の香港。主人公は雑貨店に働く『私』である。ある日『私』が隣に住む男と労働組合の仲間が爆弾テロの打合せを聞き、顔馴染みの警官アチャに伝える。なかなか登場しないクワン……ラストに明かされた事実には非常に驚いた。
本体価格870円
★★★★★
Posted by ブクログ
上巻からどんどん時代を遡っていく。それによって香港を取り巻く環境がどれだけ複雑なのか、警察官の立ち位置がどう変化していったのか、わかってきたところで、最後の章。いやーまいったこれまた上巻から読み返さないとならない。めちゃくちゃ面白かった!
Posted by ブクログ
2013年は、雨傘運動の前年
2003年は、国家安全条例反対デモ
1997年は、香港返還
1989年は、天安門事件
1977年は、文化大革命終結
1967年は、文化大革命
香港にとって大きな事件があり、香港警察も変わらざるを得なかったであろう状況ので中で、市民を守るため、体制に背いてでも、犯罪者を追い詰めるため知恵を絞る。名探偵クワンの警察人生と香港の反政府運動の歴史が重ねられる。
最後に明かされたことは、安易な予想を裏切り、それぞれが激動の香港を知恵と努力で生きたのだと知らされる。
Posted by ブクログ
このミス海外編2018年版2位、本屋大賞翻訳小説部門2018年2位。連作中編集。日本の売れ筋警察小説っぽい。香港警察の生ける伝説、クワン警視が死ぬときに始まって、駆け出しの刑事の時まで時代をさかのぼりながらの6作が入ってる。論理的に推理とあっと言わせる意外な展開が心地良い。最後のやつは主役の人が前作にも関係してるみたいだけど、読み直すの面倒なのでイマイチわかってません。とても良くできた小説なんだけど、残念なことに、漢字の人名や地名がとても分かりにくく、読み進めるのはとてもしんどかった。ジャッキー・チェンの映画のような派手なカーチェイスとかもあって飽きさせない作りにはなってると思います。
Posted by ブクログ
警察の腐敗、横暴がはびこる時代を遡る下巻。最終話最後の数行で(未来の)第1話につなげる構成は見事です。「逆年代記」にした意味はここにあったのかと納得。今大きく揺れ動く香港を知るのにもちょうど良い。この作家の他作品も読んでみたくなりました。ウォン・カーウァイによる映画化も期待が膨らみます。
Posted by ブクログ
著者の後書きにもあるが、本格派と社会派の結合や、短編と時代の遡りから浮かび上がってくるところの効果など、技がとにかく噛み合っている。
そしてもちろん最後のカタルシスが素晴らしい。
民衆の敵が守護者に代わり、かつての友が敵になる。面白かったし、興味深かった。