あらすじ
華文ミステリーの到達点を示す傑作!
名刑事クワンと弟子のローが挑んだ六つの難事件。
香港警察の「名探偵」と呼ばれた伝説の刑事クワン。2013年、末期がんで余命僅かな彼のもとに、難事件の捜査で行き詰ったかつての部下、ローがやってくる。
クワンが最後の力を振り絞り提案した前代未聞の捜査方法とは――。
戦後香港の現代史と一人の警察官人生を重ねながら、権力者と民衆の相克を描く華文ミステリーの傑作。
綾辻行人氏も絶賛!
最初の「黒と白のあいだの真実」を読んでまず、何と高密度・高レベルの本格ミステリであることか、と驚嘆した。
続く5つの中編も同様で、「本格」の典型からさまざまに逸脱していきながらも、すべてが実に本格ミステリ的な、優れた創意と技巧によってこそ成り立っているのだ。――という点も含めて、『13・67』は大変に感動的な1冊である。
※この電子書籍は2017年9月に文藝春秋より刊行された単行本の文庫版を底本としています。
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
知人にすすめられて読んでみた。警察ミステリ。登場人物を覚えられなくて読むのにかなり時間はかかったけれど一話目から想像していたより面白くてびっくりした。下巻も楽しみである。
Posted by ブクログ
目次
・黒と白のあいだの真実(2013)
・任侠のジレンマ(2003)
・クワンの一番長い日(1997)
なんと楽しい読書だったでしょう。
本来なら読後感が悪いはずなんですが、すごく楽しく読めました。
タイトルの『13・67』というのは2013年から1967年に遡るタイプのクワンという一人の警察官の年代記という意味です。
2013年…これはクワンが余命僅かという状態で病院のベッドに横たわりながら行った、彼の最後の事件となります。
しかしこの捜査方法!
日本なら絶対にアウトです!…って香港でもアウトのようです。
だから『黒と白の間の真実』というタイトルがついているのですね。
2013年、香港は中国に返還され、社会は落ち着きを取り戻しつつありましたが、中国の悪い影響も受けていました。
”「手抜きは努力に勝る」そんなフレーズがたびたび、警部たるローの耳にまで入ってくるようになった。つまり「やればやるほど、叩かれる。何もしなければ、損はない」”
警察官だけではないのだろうけれど、そのような社会で、主人公・クワンのかつての部下ローは、事件を解決するためにあり得ない方法をとる。
”一般市民が白い社会で安心して生きられるように、クワンは白と黒の境界線をずっと歩んできた。”
いや、明らかに黒寄りだと思うが…。
でも、その信念はしっかりとローに受け継がれる。
”なぜなら彼は知っていたから――正義とは言葉でなく、行動なのだと。”
散々書いているように、明らかに黒寄りの捜査をするクワンを主人公にしたこの作品はノワール小説と言えるかもしれない。
いや、もっと単純に警察小説と言ってもいい。
しかし、犯人を推理できるヒントはすべてフェアに記載されているので、本格推理小説と言うこともできる。
何がどうだっていいじゃない。
読んでみ?
面白いから。
Posted by ブクログ
陳浩基『13・67 上』文春文庫。
各種ミステリーランキングで上位に輝いた珍しい華文ミステリー。
香港警察の伝説の刑事クワンを主人公にした連作短編集。上下巻に全6編が収録され、2013年から1967年まで順に時代を遡って香港の激動の時代とクワンの警察官人生とが描かれる。
時系列を逆転させ、終わりから始まる物語というアイディアはなかなか面白い。しかし、最初の1編の『黒と白のあいだの真実』が余りにも衝撃的で、他の2編も面白いのに、やや上の空という感じだった。
『黒と白のあいだの真実』。これは見事。最近ではなかなかお目にかからないレベルのミステリー短編の傑作だ。2013年が舞台。末期の肝臓癌で余命僅かとなり、かつての部下・ローが容疑者一族5人と伴って病床で意識不明の状態にあるクワンの元を訪ねる。眼も開かず、会話も出来ず、指1本さえ動かせないクワンが見せた驚きの推理と意思伝達方法、まさかの事件解決……
『任侠のジレンマ』。如何なる推理を駆使してクワンはマフィアのボスを炙り出そうとするのか……2003年、既に警察を引退し、顧問となったクワンのアドバイスを受けながらローは裏社会を牛耳るマフィアの逮捕に奔走する。事件解決のためには手段を選ばぬクワンの仕掛けた罠とは。
『クワンのいちばん長い日』。これも見事。何と2つの事件を解決してしまう定年退職前のクワン。1997年、香港返還の1ヵ月前、50歳のクワンは翌日に定年退職を控えていた。その最後の1日に護送中のマフィアが脱走し、さらには露店街のビルの上から硫酸を振りまくという凶悪事件が発生する。クワンはローを伴い、独自に捜査を進め、驚愕の推理力を発揮する。
本体価格870円
★★★★★
Posted by ブクログ
第1章から非常にトリッキーで、反道徳的な展開。犯人を捕らえるためなら、違法ぎりぎりの捜査も厭わない。犯人を追い詰める心理戦に罠とトリック。
名探偵と呼ばれた伝説の刑事の人生を遡る。
Posted by ブクログ
短編ながらどの話も濃密で読み応えがある。「名探偵」の鮮やか過ぎる謎解きが痛快な香港ポリスストーリー。上巻は2013年から香港返還の1997年まで。時代を遡る連作という構成が斬新で面白い。“最期”が描かれる第1話は衝撃的です。
Posted by ブクログ
香港への渡航経験はないので、一度訪れた台湾の風景を思い浮かべながら読む。情報量の多さと慣れない人名、地名に読み難さを感じるものの、論理的でトリッキーなミステリーに圧倒される。パズラー小説的な強引さも顔を覗かせるが、その手のジャンルが苦手な私でも楽しめたのは警察小説という作品形態と香港の情景が醸す映画的な雰囲気の賜物だろうか。硬質な作風は横山秀夫さんの県警シリーズを彷彿とさせるが、下巻の帯コメントが正にご本人とは。何より現代から過去へと遡る構成が実に良い。最終的な着地点は香港史と如何にリンクするのだろうか?