津野海太郎のレビュー一覧
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80歳まぎわ。視力、体力、脳力(とくに記憶力)の衰えを感じながら、本を読む日々。それにまつわる17章の連続エッセイ。とくに、瀬田貞二、山田稔、メー・サートンが登場する章が印象に残った。
視力の章では、津野自身が編集した伝説の雑誌『ワンダーランド』の話が出てくる。当時はカッコよいと思い、小さな活字をぎっしり詰めた紙面にした。ところがいま読もうとしたら読めず、高齢者のことをまったく考えていなかったと反省している。そうなの?と思った私。『ワンダーランド』創刊号をトランクルームから引っ張り出してきてみた。あらま、ほんとうだ、紙面が霞にしか見えない!!
津野が子どもの頃に身につけたのは、歩きながら本を読 -
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津野海太郎の力作
日本に読書史がないはまさにその通りで、活字離れを調べていると科学的または歴史的な文献が少ないことがよくわかると思います。この本に出会うまで日本人がなぜ識字率の高い民族として成り立ってきたのか、そもそも日本人で本が読まれたのっていつからといった起源に関することまでわからない人が多いのが現実だと思います。
それらを文献を辿り調べるにあたり、たとえエッセイであったとしても、形にするのにどれだけの時間がかかっただろうかと考えると途轍もない力作であっただろうと感じます。
これを書いた作者、津野海太郎にはただただ感謝します。
ぜひ時間をかけて読んでいただきたいです。 -
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「出版と権力」を読んだ後、同じ本を読んだ友人から「なぜ、いま若い人は本を読まないのだろう?」という、おっさん臭い質問をされ、若い人=本を読まない、って決めつけについて異議申し立てをして、お互い主観的な噛み合ないディベートになったのですが、そういえば、NHK Eテレのswitchインタビュー、鈴木敏夫×津野海太郎の回で紹介されていた本書、積読のままだったな、と思い出して開いたら、まさにジャストミートでした。「出版と権力」も講談社110年の歴史で出版という産業を語る大きなモノサシでしたが、この本は九世紀の初めの菅原道真の「書斎記」、そして13歳の少女が「源氏物語」を読みふける様を記した十一世紀の「
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「読書」という文化が日本においてどのように育ってきたのかがよくわかる。
文字は昔から中国でも貴族階級の特権であったが、日本もそのご多分に漏れず、読書はほとんど江戸時代までは貴族や武士のみで全てであった。
一般大衆においては識字率字体は低く、働いて生きることで精一杯だったのだ。読書というのは、やはりある程度の余裕がないとできないようだ。
そのうち下層武士や農民でも裕福な者や村を管理するような立場にある者にも読書が普及しはじめ、江戸時代からは民衆にも次第に読書が広がっていった。
武士階級では「素読」といって音読をし、寺子屋の普及によってなどで、貧しい者でも勉学することで身を立てることができる -
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読書と名付けられた営みの変遷について、土岐は平安時代「源氏物語」「更級日記」といったあたりからさかのぼり、現代そして未来にいたるまでを述べた一冊。
ここまで日本人による読書の方法論と日本の読書の歴史について、詳しく述べられた本はないのではないかと思う。
はじめに、平安時代あたりの読書の方法として実際に読み上げながら文字を追い、意味の解釈を加えないという、いわゆる素読と呼ばれる方法による読書が主流であったことを知った。そこから、明治維新などにより時代は近代に向かうことで、教養的読書として、人々は本を読むようになる。そこから、部屋で一人本を読むというスタイルが確立されたという。しかし、このスタイル