沼田真佑のレビュー一覧

  • 幻日/木山の話

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    「幻日/木山の話」(沼田真佑)を読んだ。

    短編集。

    端正ではあるが少しざらざらした不快ではなくむしろ好ましい文章なのだがしかし前作がそうであったように油断すると前後の時間を見失いいつかのどこかにふと迷いこむクセのある文章でもある。

    八編のどれもがじわじわと沁み込んできて琴線に触れる。
    もはや名人の域にあるか。

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    2024年04月30日
  • 水都眩光 幻想短篇アンソロジー

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    ネタバレ

    •『ラサンドーハ手稿』高原英里
    この作品が最初で良かった。退廃的な世界観、暗い路地裏から話しかけてくる仮面たち、ひょっとして私たちの世界でも起きているかもしれないよと錯覚させるような精神が入れ替わるストーリー。百点満点です。

    •『串』マーサ•ナカムラ
    奇妙なお役目がグロい!
    連綿と続いていくんだなと主人公の微笑みで感じます。なんだか鬱りたくなるのに爽やかで奇妙な読後感。

    •『うなぎ』大木芙沙子
    あーっ、純文学!うなぎが臍から出てくる超自然的現象はさておき、不良と仲良くしているところをいい子ちゃんの家族(になりかけの人と母親)に見られたくないっと顔を背けてしまった…小さなしこりが今も残り続け

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    2024年02月18日
  • 影裏

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     文學界新人賞の受賞作が芥川賞を受賞ということで、公募においてのかつては定番コースだったがこの頃聞かず、久しぶりの王道だなと思って、さて、どんなものだろうか、と特に前評判を聞かずに読んでみたがなかなか良い短篇集だったと思う。
     地の文中心の密度の高い文章で紡がれているが、そう重々しさはない。もっと会話文を増やせば軽妙さも出るだろうと思ったが、このスタイルもこの頃の作家にはあまりないタイプであると思えるから貫いても良いかもしれない。
     作品の八分辺りに山を持ってきて、弛緩して字を追ってきた読み手に張り手を食らわしてシャキッと覚醒させてから余韻を残して終わる、という構成は収録三篇に共通していて、こ

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    2021年07月18日
  • 影裏

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    影裏 沼田真佑 著

    短編が3編。

    #読書好きな人と繋がりたい

    読み終えたあとに、終わってしまったあとの余韻が少しだけ胸騒ぎする、そして時をかけて鎮まる感じの著書でした。

    1.影裏
    東北が舞台です。地方の静かな空気感、自然の音や香りが行間から溢れてきます。

    転勤で住み慣れない男性とその職場の同僚の物語です。
    釣り、酒、互いに間合いがよいと感じる2人ですが、少しずつずれ始めます。
    同僚の互助会への転職、そして東日本大震災が襲います。

    ある時、同僚が津波で死んだと噂を耳にします。
    本当にそうなのか?

    彼は同僚の足跡を尋ねがら考えたことは?
    読者に解釈を委ねる余韻。

    2.廃屋の眺め
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    2020年10月11日
  • 影裏

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    沼田真佑『影裏』文春文庫。

    第157回芥川賞受賞作の『影裏』の他、『廃屋の眺め』『陶片』を収録した短編集。

    味わい深く、様々な思いが心を過る、そんな3編の短編。芥川賞受賞の表題作は見事と言うしかないだろう。『影裏』というタイトルさえも見事である。人間には表と裏があり、光があって影があるのが人生の機微なのかも知れない。

    『影裏』。自分が生まれ育った盛岡、岩手の風景とそこに暮らす優しい人びとが目に浮かぶような短編。後半は一転、まさか東日本大震災が大きな鍵として物語が描かれるとは思わなかった。

    会社の出向で盛岡に移り住んだ主人公は同僚で気の合う釣り仲間の日浅と楽しい日々を謳歌するが、日浅は突

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    2019年09月12日
  • 影裏

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    2017年芥川賞(上半期)受賞作
    ・影裏(えいり)
    ・廃屋の眺め
    ・陶片

    〈影裏〉
    今野と日浅の中年独身男の話
    情景描写は微細に描くも人物描写はそっけない
    早いうちに母を亡くした鬱屈した怠惰な男の話

    〈廃屋の眺め〉
    幼い頃に銀鮒と泥鰌の交配をみて男女の関係に壁があり、悪夢をみる癖がある「私」が
    五十棲から聞いた心中旅行
    友人の堀内の葬儀で知り合ったDV野郎らしい佐尾の話
    50才前非正規男のどこか諦めた、達観

    〈陶片〉
    レズの奈緒子の話
    最初は両親同居の年増が枯れゆく話と思いきや…寿司屋でエムと出会って後、性的な話へ移ってく

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    2025年08月11日
  • 影裏

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    慎重に読むことを強いるような文体に落ち着きを得る。かすかなずれから来る違和感のような居心地の悪さが心地よい。

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    2024年10月20日
  • 影裏

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    私にも覚えがある。友情以上に近い好意を寄せた相手がすり抜けていく感覚。自分の知らない一面に、寂しいけど強がりたいような。苦い気持ちを思い出した。

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    2023年08月07日
  • 影裏

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    芥川賞受賞作品
    生活の中にある人との繋がりが自身にとって、本当に必要なものか、なぜ続くのか考えた。他人の希薄さやそれでも求める人間の弱さ、信じきれない微妙な不安が細かい描写から浮かび上がってくる。

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    2022年04月10日
  • 影裏

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    嫌いでは無いというのが正直な感想。
    3作品とも最後にどうなるのかわからないところも考える楽しみがある。
    LGBTやDVの内容ももっと身近に考えなければならないと感じた。
    沼田真佑さんの他の作品も読んでみたくなった。

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    2022年02月27日
  • 影裏

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    読書開始日:2021年7月4日
    読書終了日:2021年7月4日
    所感
    これぞ純文学といった作品に思えた。
    主人公目線で、日浅、主人公のことが淡々と語られる。
    日浅の心情、主人公の心情もそれぞれそこはかとなく描かれていて、日常で相手の心情を図ろうとする力と同じ程度の力で推測しながら進めることが出来た。
    文章がとても綺麗で、かっこいいと思った。津波の「ついに顎の先が迫り来る巨大な水の壁に触れる」描写には震えた。
    主人公は、友として、そして恋人として、日浅に惚れていたのだと思う。
    最後まで日浅の圧倒的な味方でいて、最後のシーンも日浅を追いかけていた。
    終の住処の雰囲気に似ている。
    好きな作品。

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    2021年07月04日
  • 影裏

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    岩手出身です。
    他県の人が岩手に移り住んだらこんなイメージなんだ、という感じですね。盛岡を綺麗に描写してくれて嬉しい。方言の使い方も上手。
    人の捉え方は表裏一体。だから影裏。
    映画はまだみてません。映画館通り行きたいなぁ。川徳を冷やかしてフェザンで買い物したい。一階のタリーズはまだあるのかな。

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    2021年06月04日
  • 影裏

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    映画「影裏」は小説では書ききっていないところまで描写しているのね。ということが分かった。
    「陶片」の、「…世界は臆病者で溢れている」という一文のためだけに読んで良かったと思う。

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    2020年07月23日
  • 影裏

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    芥川賞作品。
    盛岡の自然描写の表現が見事。
    丁寧でとても美しい。
    人間の弱さ、生き辛さが大袈裟でなく描かれている。

    他の2篇もマイノリティの心情が良く伝わってきて、面白かった。

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    2020年03月28日
  • 影裏

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    岩手を舞台に、疎遠になった同僚に思いをはせる表題作ほか、2編を収録した短編集。

    芥川賞受賞作は初めて読む作家であることが多く、手に取るときには新たな作家に出会える期待と少しの緊張が伴って、背筋が伸びる。
    この「影裏」も同様で、ひとつ深呼吸してから読み始める。
    冒頭から、情景描写に魅了された。こんなふうに丁寧に言葉を紡いでいく作品は、読んでいて心地よい。その落ち着いた雰囲気から、途中まで主人公は中高年かと思っていたら、もっと若かったのが意外。
    さらには、同性愛者であることが見え隠れしてからは、友人に対する言動も異なったものに見えてきて、ぱらぱらと読み直した。

    「陶片」は、女性が主人公の性的マ

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    2020年03月24日
  • 影裏

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    ネタバレ

    様々なマイノリティーと共に身近な人間関係が描かれていく三編。‬

    ‪美しく豊富な言葉と、静かにスッと突き刺さる文章で構成されていた。‬
    ‪三編の主人公に共通した生きづらさのようなものに感情を刺激される。特に『陶片』の最後の数ページにグラグラと揺さぶられて夢中になった。‬

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    2020年02月06日
  • 影裏

    ネタバレ 購入済み

    謎が残る

    芥川賞受賞、映画化等で興味を持ち、読みました。短編集なのですぐ読み進める事が出来ますが…。表題作に関しては、主人公の妹の結婚のあたりから、最初の疑問が生じ…というのは、主人公の性別が、男性だと思っていたけど男性と付き合っていて別れたと思われる描写があったからです。さらに、読み進めると震災が起こり親友が失踪したのを知った主人公が、親友の父親を訪ねて捜索願を出すよう頼みに行くと、親友がしていた不正や裏切りを知るというところで、真相は明らかにされず物語は、終わってしまいます。読者の解釈に任せるということでしょうか?私が思うのは、親友は、不正はしたかもしれないけど、親がお金を脅し取られる謂れはないとい

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    2020年02月06日
  • 影裏

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    岩手では年末から映画「影裏」のCMがガンガン流れていて、CMの最後でふるふると震えて泣いている綾野剛が、笑えてくるくらいなのだけれど、この本を読んで、もう冒頭で文章の美しさに衝撃を受けてしまった。言葉が豊富、そしてリズムが良く読んでいて気持ちが良い。
    「影裏」はまだ続きがありそうな感じで終わってしまう。その先まで読みたかった。共に収録されている「廃屋の眺め」「陶片」も、よくありそうな日常の風景なのだけれど、夢の中のような世界観で、とにかく文章が美しくて、今後ぜひ長編を描いてほしい。

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    2020年01月25日
  • 影裏

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    森の濃い香りが漂ってきそうな 丁寧な風景描写が印象的な表題作。著者のことは存じ上げなかったのですが、映画化、芥川賞受賞作ということで手に取ってみました。読後、幸せとは? 普通とは? 常識とは? 揺さぶられて不安な気持ちになりました。

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    2019年11月08日
  • 影裏

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    意識が深化していく。記憶を辿るたびに文章は深みへ向かう、深まるほどに時間や空間という軸の制限が取れていきなり視点が飛躍する、我に返る、繰り返し。深い内面描写とともに今目に映る光景の描写もまた枝葉の端まで見つめようとしている。まさに影の裏までを見ようとする静謐で貪欲な文章。

    でも個人的には表題作「影裏」よりも最後の「陶片」がいちばん好き。この本の小説の主人公の一人称は一貫して「わたし」でどれも冒頭読んだ程度ではこの人が男性か女性かわからない、そもそも性別にあまり「こう」だと思っていないところがいいなと思った。でもフラットなんだけど、情念がすごい。

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    2019年10月30日