沼田真佑のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
主人公の木山も作家で作品が映画化されている設定なので私小説っぽく感じた。
鬱を熊と呼び、熊に食われないよう様々な術で日々を暮らしている。その様子は興味深く、共感する部分もあった。
幻想文学と現代文学のミックス的なつくり。
時間をかけて書いている、つまりは丁寧な仕事、というのが伝わる。
でも、私にはちょっと読みにくかった。
集中しないとまるで入ってこないし、うっかりするとすぐに目蓋が落ちてしまう。
8つの話の中で「カタリナ」が良かった。
幻覚とかが出てこないから分かりやすくて、自然な文章で読みやすい。
あと、装丁がとても美しい。
すごく好き。 -
Posted by ブクログ
同僚であり唯一の親友であった湯浅。主人公は、突然姿を消した彼の、自分が知らない暗い一面を知ることとなる。
収録されている三つの短編のどれも、複雑な感情をリアルに、どこか暗くて、レトリックに溢れている。少し回りくどいと感じる表現もあるが、ふっとよぎるものの認識すらしていなかった感情をピンポイントで示す鋭さもあり、そこがこの著者の魅力的な部分なのかも?
「浜にはわたしのほかに、人影があったりなかったりするが、暗闇の彼方に先客がいるのが目に入ると、なぜだかそれが、残忍極まる人物のように感じられ、回れ右をしてさっさと帰途に就くこともある。一方で、言葉を交わすことさえできたなら、生涯の共になれそうな -
Posted by ブクログ
出向で移り住んだ岩手で、慣れない環境に孤独を感じていた今野。唯一心を許した同僚の日浅と、釣りや酒を楽しむ日々。そんな中、日浅は突然仕事を辞め今野の前から姿を消した。
二度目に日浅が姿を消した後、311で彼が行方不明になっていることを知る。
それをきっかけに、次々と知らなかった日浅の人柄が暴かれていく....。
「廃屋の眺め」
友人の葬儀の席で知り合った、私と佐尾。
冴えない者同士、三年ほど飲み仲間として過ごしていた。温泉旅行を計画し、佐尾の妻と三人で向かうが、佐尾に急な仕事が入り、佐尾の妻と二人きりで過ごすこととなる。
混浴に入った私が見たものは、身体中に痣を作った佐尾の妻だった。
「陶片」