くぼたのぞみのレビュー一覧

  • アメリカーナ 下

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    去年『なにかが首のまわりに』で初めてアディーチェという作家を知り、この『アメリカーナ』で彼女の著作を二作読んだことになります。

    そして思うのは、この人の視点とそれを表現する感性はとても瑞々しくて、読めば読むほど自分の中に新しい風を吹き込んでくれるということです。

    『なにかが首のまわりに』『アメリカーナ』ともに、黒人差別が物語の大きなテーマとなります。黒人差別を描いた小説や映画は、自分も今までいくつか触れてきました。

    そして思うのは、それらの作品は人種差別の悲劇や苦しみや怒り、あるいはそれを乗り越える人間の強さというものを、表現していたということです。

    そうした作品ももちろん素晴らしいの

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    2020年02月07日
  • 男も女もみんなフェミニストでなきゃ

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    ずっと読みたいとは思ってたけど見たことがなくて。実際に見てみたら予想の数倍小さくて読み易くて、よかった!!
    冒頭の、周りがフェミニストとは〇〇の意味だ」というマイナスイメージを彼女に突きつけていくたびに、「わたしは『男嫌いでなく、男性のためではなくて自分のためにリップグロスを塗ってハイヒールを履く、ハッピーなフェミニスト』」ということになっていくくだりが面白くて、笑ってしまった。
    フェミニズム本は時として難しい言葉遣いで性被害の体験を語ったりするものもあって読みにくい物もあるが、これは量も少なく分かり易い言葉で、また被害体験を想起させるような描写も無かったためストレスなく読めた。
    ものすごく初

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    2020年01月14日
  • 半分のぼった黄色い太陽

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    多分この作家は遠からずノーベル文学賞受賞するんじゃないかな。英語で書いているなら、ブッカー賞も…
    オデニボが崩れてゆく様が痛ましい。どこの国でもいざとなると女は強い。カイネネを失っても、オランナはオランナだろう。リチャードはどうだろう。ナイジェリアに残るのか。結局本を書き上げることはできないだろう。恐らく作家になるのはウドウ。ウグウが加害者となった経験が、彼が作家となる糧になるのだろうか。
    欧米人のジャーナリスト、いかにもだな。

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    2019年10月25日
  • 男も女もみんなフェミニストでなきゃ

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    ナイジェリア、レイプ被害者が落ち度ばかり批判されるのも、金を持ってるのは男だと決めつけられて女が無視されるのも、売春の買い手が透明化され女だけが責められるのもみんな日本と全く同じで驚き!

    アメリカでもこのTEDトークが大評判だったってことは世界のどこでもそうなのか?
    女性差別は差別のラスボス、Woman Is the Nigger of the World

    女性差別が文化や伝統ならば、そんな文化は変えていくべき、っていうの、日本人としてその通りだと叫ぶ。我らが生きているのは、救命のために土俵に上がった女性が穢れだと塩を撒かれる国!

    トキシック・マスキュリ二ティーに言及してるのも良かった。

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    2019年10月09日
  • マイケル・K

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    道に 迷ったり
    雑念で 自分を見失いそうになったとき
    きっと 自分を洗い出してくれる 一冊

    極限ハングリーに自由に生きてみること
    農場での溢れるような行動力
    よわっちい現代人の私は見習う点 多々でした

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    2019年09月14日
  • 男も女もみんなフェミニストでなきゃ

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    ネタバレ

    ネットで繰り広げられる攻撃的フェミニストの言説にかなりの違和感があったので、大学でフェミニズムを研究していた妻に話をふったところ紹介されたのがこの本。

    解説にもある通り、実に語り口がしなやかで攻撃的なところが一切ないのが好感がもてる。フェミニズムは過去の歴史的な流れから女性側により多くの抑圧があるということを踏まえた上で、男性も同様に「男性らしくあること」から解放されることが良いという主張はとても説得力がある。

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    2019年07月23日
  • マイケル・K

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    これほど読むのが苦しい本は久しぶりだった。それでもこの苦しさはいったい何なんだ。という思いが高まり続けて、高まったまま読み終わった。
    しかし最後まで読んでも全然、釈然としなくてまだ悶々としてしまう。
    ひとつだけはっきりしているのは、私は、小説を読むということを、あるいは生きるということそのものについて、狭く捉えすぎていたのではないか、前提を取り違えていたのではないか、と思い始めさせられたということ。

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    2019年06月15日
  • マイケル・K

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    身体的にも、家庭的にも、生きている地域としても恵まれてはいない主人公が、ごくあたりまえに自由な生活を目指す。難民キャンプでは毎日労働に出ていくのが当たり前とされているが、自分は働きたい時だけ働く、と。脱走。主人公の頭の中は特段変人とは思えず共感できるのだが、自由に暮らすために孤独を極めていく。

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    2018年09月25日
  • 半分のぼった黄色い太陽

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    ナイジェリア1960年代の話。
    60年代前半と後半で分けて話は進む。
    壊れてしまった幸せな日々を思い出すような構成になっていて、読んでいて胸がヒリヒリする。

    翻訳本は苦手な人にも一気に読める作品だと思う。

    引用P.137
    カイネネ「愛が他のものの入る余地を残さないとあなたが考えるなら、それは間違いよ。何かを愛しながら、それを見下すことも可能なんだから。」

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    2017年06月12日
  • マイケル・K

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    ネタバレ

    本書が書かれた80年代の南アといえば、アパルトヘイト政策に対する非難による国際的な孤立と内戦という、国民にとっては大変厳しい時代だったのだろうと想像する。本書にも随所に戦争が色濃く表現されているけれども、主人公が直接戦争に関わっているという訳ではない。主人公は兵士でなく通常の市民だが、そこに描かれているのは主人公の闘いであり、主人公が求めているのはごく普通の自由なのだ。しかしどうしても自由を得ることができない主人公は衰弱していく。それでも、死ぬ自由さえ得ることができないのだ。このような主人公の姿が気高く、美しく感じられるのは何故なのだろうか。

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    2015年12月06日
  • 半分のぼった黄色い太陽

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    物語の語り手の三人もバランスがよい。みんななにかしらの意味で「観察者」だよね。特に序盤はそれぞれアフリカハイクラスの、アフリカ庶民の、アフリカ社会の、観察者と行った具合に。だから前提が理解しやすい。中盤からはどんどん当事者になっていって、彼らの行く末が気になった。途中ちょっとダレたけど。
    アフリカとして一般に語られがちな貧困や紛争は数ある要素の一つだと語る小説。それでも一般に語られる要素の重さも感じられる小説。面白かったです。

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    2012年09月30日
  • 半分のぼった黄色い太陽

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    3人の視点から語られる、愛であり、一族の歴史であり、戦争であり、貧困、搾取、あらゆるものが大きな流れの中に組み込まれている。言葉も的確で、風景が広がるような感じがあった。
    ことさらに、ビアフラ戦争を非難している訳ではないが、世界中で起きている戦争も大なり小なりこのような図式であることが、本当によく分かる。そして、何より大切なことは、生き延びることだ。

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    2011年01月05日
  • 半分のぼった黄色い太陽

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    1960年代に起きたナイジェリア内のピアラフ戦争を題材とした作品。タイトルの「半分のぼった黄色い太陽」は旧ビアラフ共和国の国旗の絵柄。
    戦争に伴う民族紛争や虐殺の悲惨さを描きながらも、本来的テーマは家族や恋人や姉妹のドラマである。なので戦争部分はファクトベースながらフィクションを織り交ぜる。後半は生々しい残酷な描写が続くものの、アフリカの独特な文化背景と米国留学経験の長い著者の欧米的感覚が絶妙なバランスとなり、小気味よいリズミカルな文章を生み出している。
    日常的な出来事に対する心の脆さと戦争という異常事態のなかでのカイネネやウグウの強さや適応性という矛盾を違和感なく両立させ、人間そのものを巧く

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    2025年12月10日
  • なにかが首のまわりに

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    ナイジェリアの女性たちを主題にした短編集。表題と同じ短編では、完璧なアメリカ人の恋人(すごくいい人)とのちょっとしたやりとりに、「オレは君と君のバックグラウンドを理解しているしそんな君をそのまま受け入れてるよ」が透けて見えてしまい、違和感とかすかな苛立ちを覚えるあたりにとても共感。どんなに素晴らしい人でも、「わかってる」感を出した途端にちょっとムッとくるよね。彼だってまだ若くて未熟だし、今現在の彼の背景を考えれば、十分過ぎるほど寄り添ってくれてるのに、どうしてもひっかかってしまうのが切ない。全編に渡って、言語化できない思いや感情を、そのままの空気を吸い込むように感じさせる話運びが素晴らしい。最

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    2025年11月08日
  • なにかが首のまわりに

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    ナイジェリアの女性作家の短編集。様々な世代、立場のアフリカ人(イボ人)女性の心理、アメリカとアフリカの対比がわかりやすく描かれているので、現代アフリカ文学の入門としてオススメ。
    ストーリーの作り方がうまい。アフリカの人名に慣れていないせいで、出だしは入りにくいけれど、最後は「この先が読みたい」(しかし短編なので終わってしまう)と思う作品が多い。

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    2025年06月08日
  • 男も女もみんなフェミニストでなきゃ

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    煌めく陽光に向かって掌をまっすぐに伸ばしたときのような。 清々しい風のそよぎを胸いっぱいに吸い込んで深く呼吸したときのような。
    アディーチェの軽やかな言葉に鼓舞されて、心が晴れやかになってくる。


    フェミニズム論における「男性の特権や無自覚な加害性」を、僕は認めざるを得ない。
    それは単純に、男として利益を享受していることに身に覚えがあるから。
    それと同時に、ジェンダー論の「男性であることの生き辛さや期待される男らしさからの解放」についても、ちゃっかりと都合よく支持している。
    残念ながら「フェミニスト」と名乗れるかと問われても、言ってしまえばレディーファーストであろうとする自分や、妻に日々感謝

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    2025年05月04日
  • なにかが首のまわりに

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    ナイジェリアで生まれ育った著者が、男女、民族、貧富、宗教など異なる世界を持つ人が交わるときに生まれるささやかな違和感を穏やかに描いた短編12編。


    自分たちの国を民族を文化をまったく理解していない人に人生の舵を取られる屈辱。『象牙製品のようにエキゾチックな戦利品のように品定めされる』感覚。傲慢な西欧化の波にさらわれる戸惑い。

    アフリカが辿ってきた歴史を思うととても同列に語ることなんてできないけれど、女性として、アジア人として、少し心当たりのある感覚でもあります。

    自分の中にある無知と傲慢について考える機会になりました。出会えてよかった本。
    「なにかが首のまわりに」
    チママンダ・ンゴズィ・

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    2025年01月21日
  • マイケル・K

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    クッツェーの作品は、いつも読後に何かが残る。
    長いわけでも、読みにくいわけでもないのに、読むのに時間がかかった。意味の理解できない一文で立ち止まったり、見たことのない南アフリカの砂漠の風景を思い浮かべたりしながら少しずつ進んだ。
    一人で野菜を育てながら、時間の感覚を失って段々と夢と現実が混ざり合っていくシーンが印象的だった。

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    2024年11月10日
  • なにかが首のまわりに

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    この感想を書いてるのは読んでから1年以上経ってからのことです。
    12の短編全てを思い出すことは出来ないので12タイトルは他の方の読書感想からコピペしてきた。
    おそらく多くの方のベストは「ジャンピングモンキーヒル」か表題の「なにかが首のまわりに」もしくは「震え」とかでしょうか。
    私も読んだ直後はそうだったかも知れない。でも思い出せない。
    今は「イミテーション」のあらすじだけが残ってる。
    不思議。

    セル・ワン
    イミテーション
    ひそかな経験
    ゴースト
    先週の月曜日に
    ジャンピング・モンキー・ヒル
    なにかが首のまわりに
    アメリカ大使館
    震え
    結婚の世話人
    明日は遠すぎて
    がんこな歴史家

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    2024年05月12日
  • アメリカーナ 下

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    ナイジェリアに住んでいるイフェメルとオビンゼの夢は、英米に留学すること。そんな二人は高校生時代からの恋人同士だが、イフェメルだけがアメリカに留学することになると二人の中にも溝ができて…。イフェメルはアメリカに留学してからというもの日々カルチャーショックに見舞われていく。その最大とも言えるのが、人種のるつぼとも言えるアメリカで自分が「黒人」であるということを発見していくことだった。やがてイフェメルは「非アメリカ系」黒人として、自分の思いをブログに綴っていく。オビンゼとの関係も断絶し、恋人もでき、順風満帆に見えた時、イフェメルは突然恋人を捨てナイジェリアに帰る決意をする。昔の恋人オビンゼに会うため

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    2024年04月12日