くぼたのぞみのレビュー一覧
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ネタバレ愛の物語であるとともに、
主人公の成長、
すなわちアイデンティティの確立が語られる物語。
なぜ二人は外国に行かなければならなかったのか。
純粋に愛し合い、魂も美しいというのに。
それは、国内にいたままでは
自分で立つことができるほどの力はなく、
やがてナイジェリアに飲み込まれてしまうことになっただろうから。
それぞれが異文化の中で生きることで、
外国の醜さを感じつつも、
アメリカやイギリスという「個人」で生きることに触れて、彼らの魂も「自分自身」を形作っていくのだ。
やがて彼らは母国へと帰ることになるのだが、
それは敗北や逃避、あるいはただの郷愁ではない。
なぜなら帰国しても違和感を覚え続け -
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男にも女にも知っておいてほしいことが、わかりやすく書いてある。例えば、著者の祖母の話。彼女はフェミニストという言葉を知らなくても、性別に拘らず男女が平等に扱われることが大切であると直感で知っていて、それを行動に移した。他にも、一歳差の男女の兄妹は、妹だけが母親に「兄にラーメンを作ってあげてね」と言われたという。しかし、料理のスキルを身につけることは、性別にかかわらず生きていくうえで重要となるスキルだ。なぜ、女だからという理由だけで料理の担当を強いられるのか。これは私も同じ立場でずっと疑問に思っていたことだったので、非常に共感できた。
フェミニストは何も、女だけがなるものではない。そもそもフェ -
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チママンダ・ンゴズィ・アディーチェ。「なにかが首のまわりに」で初めて知った、舌を噛むようなこの名前。今はアディーチェさんと気楽に言える。
現代の世界文学界のスター的な「女性」作家です。2013年に『アメリカーナ』で全米批評家協会賞を受賞。1977年生まれだから現在は未だ43歳か。これは2012年のTEDの講演記録。
非常に短くて直ぐに読めるが、ジェンダー問題の核心を突いて説得力がある。この講演があったから『82年生まれ、キム・ジヨン』が生まれたのか?と思えるくらい日常のさりげない性差別をキチンと突いている。
「何かをくり返しやっているうちに、それは当たり前のことになります。何かをくり返し -
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フェミニズムを語る人は正直苦手でした。
たまたま自分の目に触れた人だけかもしれないけど、テレビや新聞でフェミニズムを語る人は、どこか攻撃的だったり、ヒステリックな印象が強く、ネットはもっとひどい。で、そのフェミニズムに異を唱えるネット上の意見も、大概はフェミニズムを嘲ったりバカにしたようなニュアンスが入っているから、もうどうしようもない。
言っていることは分かるけど、言い方や議論の仕方がどうしても受け付けなくて、とりあえず距離を置く。それが自分のフェミニズムやジェンダー論に対するスタンスでした。
それが変わってきたのが、たぶん昨年にチママンダ・ンゴズィ・アディーチェという作家の作品を読ん -
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ナイジェリア出身の作家で、近年では『男も女もみんなフェミニストでなきゃ』などのスピーチでオピニオンリーダーとしても注目されているチママンダ・ンゴズィ・アディーチェの短編集。
軽やかなユーモアとペーソスを交えながら、描かれているのは人種、歴史、ジェンダーをめぐる問題で、なかなか打ちのめされる迫力です。
私のほとんど知らないアフリカの政治的混乱、植民地としての歴史。それゆえの貧困。アメリカに暮らすアフリカ人としての違和感。
「アフリカ」ってひとことで言ってしまってますが、ジャマイカ人だと思われたり、サファリに行ってみたいと言われた経験が作品の中に出てきて、それがひとつの人種差別であることも感 -
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上手く口には出せない思い。表に出ることのない感情。そうしたものを可視化して、たくさんの人に伝えることが出来るのが、小説や文学の強みかな、と思います。
そして、その強みを存分に発揮している作家の一人が、このチママンダ・ンゴズィ・アディーチェ。彼女の描く”ナイジェリア人”から見たアメリカの姿は、社会や文化、そして生活に埋め込めまれ、意識されることすらなくなっているかもしれない、偏見や差別、アメリカに住むアフリカ系の人々の苦悩を映し出します。
上巻で主に描かれるのは、イフェメルというナイジェリア出身の女性。主に彼女が留学するまで、そして留学後のアメリカでの生活が描かれます。
希望を抱いてアメリ -
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とても短く、シンプルで読みやすい1冊
(もともとTEDでのスピーチ?トーク?であったものに
加筆したとのことで、本を読んでいるというより
講演会などで話を聞いているようなわかりやすさもある)
母ひとりに育てられ、
フルタイムで懸命に働いても
同等の仕事をしても
同じだけのお給料や肩書きを与えられることがなかった
女性を身近で見てきたし、
それが自身の学習環境にも影響した私にとって、
ジェンダーはとても大切な社会問題だし、
リアルにさまざまなことを感じている。
それでも私は男嫌いではないし、
友人には男性も女性も同じくらいいる。
性別では分けられない立場にある人も。
それは私が友人を選ぶこと -
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赤、黒、緑の3色の真ん中に半分のぼった黄色い太陽の図柄。
これは、1967-70年に存在したビアフラ共和国の国旗である。
あるクーデターから端を発し、イボ人に対する虐殺などが度々起こった結果、イボ人は結束して、「ビアフラ」として、ナイジェリアからの独立を宣言した。
しかし、彼らの持つ石油を連邦政府が手放すわけはなく、戦争へと突入していく。
この1960年代前半〜後半にかけての物語が3人の視点で語られる。
田舎から、スッカという大学町にハウスボーイとしてやってきた少年、ウグウ。
彼のご主人、オデニボは若き数学者で、毎週末には同僚たちが彼の家に集まりサロンのようになる。
オデニボの恋人 -
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1960年代のナイジェリア内乱を舞台にした作品。
恥ずかしながらナイジェリアのことをほとんど知らないまま読んだけど、主人公のひとり・ウグウはまさに何も知らない田舎育ちの少年で、彼の目を通して語られる描写ですんなりと作品に入っていける。
作中で白人は黒人を差別しているけど、黒人も白人を差別しており、黒人の中でもまた民族差別がある。民族差別こそが内乱の一因。
戦争が進むにつれ、リベラルなインテリだったはずのウグウの主人・オデニボでさえ差別的な発言をする場面があり、衝撃だったが、長引く戦争で登場人物たちの精神状態が少しずつ少しずつおかしくなっていくのがよくわかった。
日本の戦争文学を読んでもいつ -
Posted by ブクログ
冬休みに読むのを楽しみにしてた本。お腹の膨れた子どもたちのイメージを世界に流通させた1960年代のビアフラ戦争を背景に、2組のカップルとひとりの少年の、約10年にわたる関係を描く。
ウグウがやがて綴ることになる本のタイトル「私たちが死んだとき世界は沈黙していた」が示すように、作家は、戦争を引き起こし支えた、国際社会の植民地主義と人種主義、民族ナショナリズム、権力者の腐敗、虐殺の対象となったイボ人の側にもあった疑心や差別、暴力に対する鋭い批判と怒りを抱いているが、それは慎重に抑制されて、5人の間の愛憎に焦点をあてた繊細な物語を支える力強い基盤となっている。
5人の中でもっとも魅力的な人物は、皮肉 -