宮下紘のレビュー一覧
-
-
-
Posted by ブクログ
9・11以降、テロ防止の名目で広がった全世界の市民を対象にして広がった監視体制。アメリカの実態を告発したスノーデン氏が、今起きている深刻な事態(日本も的確に指摘)や権力を監視するための方向を明快に解説し、さらに監視社会の問題に詳しい日米の精鋭がシンポジウムで議論を多角的に深めるという2部構成となっている新書です。
スノーデン氏が告発した内容をよく知らなかったので、この本を通じてその一部を知ることができたと思います。プライバシーは個人の権利であるはずなのに、ネット検索履歴(グーグルで検索した言葉がそのまま残っている)やメール、位置情報にいたるまでの膨大な監視を当たり前としているという事実に大き -
Posted by ブクログ
プライバシーについて非常にわかりやすくまとめられた本だと思いました。
この本では少し触れられていた、「防犯カメラ」についていえば、個人的には、よくテレビなどの犯罪に関する報道で、「防犯カメラに映っていた犯人の映像」などと言っているけど、よく考えるとそのカメラは、その犯罪の防止そのものには役に立っていないわけで・・・。「防犯カメラ」というなら、カメラがその犯罪を行っている人に対して「ちょっとちょっと、そんな悪いことするんじゃないよ」という声がけぐらいして欲しいと思う(笑)。「防犯カメラ」になってないんだから、メディアもいさぎよく「監視カメラ」と言えばいいのにと思ってしまったのでした。 -
Posted by ブクログ
2021年頃時点での、プライバシーに関する法的・社会的論点について国内外の動向を整理しており、読みやすい。2022年4月に施行される改正個人情報保護法についても、主要な論点をカバーしているように思われた。
1〜3章では、「害悪に基づくアプローチ」を採用する米国と、「権利基底アプローチ」を採用する欧州(特にドイツ)でプライバシー保護に関する捉え方が異なること、また、日本においては、法律上「プライバシー」の保護は明文化されていないものの、他の様々な権利と関連するかたちでの保護が考えられていることに言及している。
4章以降はより具体的に、GDPRと日本の個人情報保護法の内容を中心に、プライバシー -
-
-
Posted by ブクログ
2016年6月4日に東大で開初めて催された監視をテーマにしたシンポジウムの記録。
2013年6月に、エドワード・スノーデンがアメリカ政府の監視活動の実態に関する隠されてきた情報を、メディアを通してこの世にさらしてから3年後の話。
今私がこの話を読んでいる今に至るまでは、そこからさらに3年が経っている。
「自由を享受できる社会は市民が主役になって初めて実現される」
政府に勤めながら一市民として行動をとることを恐れなかったスノーデンの力強いメッセージ。
自分の生きる社会の在り方に関心を抱くこと、受け身にならないこと、いくためには一人一人が社会の構成員として能動的に考え行動することが民主主義社会に -
Posted by ブクログ
2013年にスノーデンがアメリカの監視体制を暴露したことを映画で初めて知り、そのときから興味を持ち始めた。今の技術を使えば、スマホやパソコンのカメラやマイクなどあらゆるデバイスを通して情報を政府が管理することが容易に可能である。アメリカの実態から考えると、公開はされていないが日本でもすでにされていると考える方が普通であるとスノーデン氏は言っている。実際にスノーデン・リークからアメリカではそういった情報の取り扱いについてメディアなどが声をあげて監視体制を敷く政府と戦い、国民(アメリカ人)においては監視の対象外になる法律を成立させるまでに至っている。
この国民のみ監視の対象から外れることは重要で日 -
Posted by ブクログ
アメリカの情報機関による無差別監視の実態を暴露した元情報局員
エドワード・スノーデン氏が参加し、2016年に東京大学で行われた
シンポジウムの書籍化である。
2013年に問題が公になった時、アメリカの情報機関が同盟国である
ドイツ・メルケル首相の携帯電話を盗聴していたことが問題になり、
日本国内では安倍晋三首相の携帯電話はどうなのかと話題になっ
たが、本質はそこではない。
テクノロジーの進歩と共に進む、監視社会の問題であり。政府がどこ
まで個人の情報を掴んでいるかである。
公安警察が日本国内のムスリムの人たちを監視していた資料が何者
かによって流出した事件があった。警 -
-
-
-
Posted by ブクログ
プライバシーと言っても、ドイツを中心としたEU圏とアメリカでは守るべき規範が大きく異なっている、ということを本書で初めて知りました。
日本には、「個人情報保護法」はあるけれど、その法律により守られることが期待されている「プライバシーの権利」については規定されていない、ということも。
ドイツは個人情報にうるさいらしい、と漫然と思っていたことについて、その思想の背景も理解することができましたし、何故海外でフェイスブックがこんなに厳しく批判されているのか、とか、ビッグデータの保存サーバをどの国に置くかが問われる理由等、漠然と抱いていた疑問が、プライバシーの権利やその国際動向を知ることにより、理解で -
Posted by ブクログ
なぜ、プライバシーは保護されなければならないのか?情報法に通じた専門家が、人格形成や民主主義にも関わる問題である、権利としてのプライバシーを論じる書籍。
プライバシーの保護は、各人の私秘性を保ち、公共性を維持する上で重要である。
それを示す象徴的な出来事が、ケンブリッジ・アナリティカ事件だ。フェイスブック上の膨大な個人データが米大統領選などに利用されたこの事件は「個人データの搾取による民主主義への挑戦」として捉えられた。
プライバシーとは「恥」を隠し、品位を保つための営為である。他方、電話などを無断で聞かれると、羞恥感情はなくともプライバシーを侵害されたと感じる。それは、各人に関する情報は -
Posted by ブクログ
大学准教授である著者が最近起きたプライバシーに関する事件やアメリカ、ヨーロッパでの考え方など自身の知見などを元に解説した一冊。
プライバシーという曖昧な概念を日本での歴史と捉え方、アメリカとヨーロッパでのプライバシーの考え方の違いなどをプライバシーをめぐる事件などから知ることができ勉強になりました。
また、ベネッセの名簿売買やリクナビの個人データ販売の問題、新型コロナウイルスにおける接触確認アプリなど最近の事例から法律としてある個人情報保護法とプライバシーの権利の関係や違いやインターネットにおける忘れられる権利など読んでいて考えさせられることも多くありました。
そんな本書の中でも義務の章典