藤本和子のレビュー一覧

  • 西瓜糖の日々

    Posted by ブクログ

    僕らの住む世界の遠く、西瓜糖の世界での物語。

    要するに幻想、あるいはSF小説のようにこの世界とはぼんやりと差異のある世界での物語でありそこに暮らす人々の物語である。調べると村上春樹が影響を受けているのではないかという記事も出てくるがなるほど納得の現実と幻想の中間、半目で夢を見ているような物語。村上春樹ほどハキハキと物語が切り替わっていくわけではないのでこの世界に浸れるかどうかで読後の感想も違うと思うが個人的にはこのほんのりと甘い世界が心地よくぬるま湯に浸かっているような物語だった。

    0
    2026年01月14日
  • 西瓜糖の日々

    Posted by ブクログ

    『鱒釣り』や『芝生の復讐』といった短編とは異なり、章ごとに独立はしながらもまとまった緩やかな時間が流れていく感じがする。全体的に穏やかで農村的で、しかしディテールが鮮明に思い浮かぶことはない霞がかった世界。みんな謎の仕事をしている。

    「​──そのことを話してあげよう。
     そう、なにもかも、西瓜糖の言葉で話してあげることになるだろう。」(p.11)

    0
    2026年01月03日
  • 西瓜糖の日々

    Posted by ブクログ

    ネタバレ

    西瓜糖の日々

    小川洋子さんのやっているラジオ番組で取り上げられていて興味を持ちました。
    はじめてのブローディガン。
    iDeathというコミューンとそれに隣接している忘れられた世界。静かな毎日の中に不穏な空気があり、だんだんと破綻に向かっていく。
    ヒッピームーブメントやコミューンの流行の最中の小説家と思いきや、その前の小説ということでびっくり。時代の先を感じる作者の感性のなせる技なのか?
    人と人が関わるところには必ず現れる関わり合いの澱のような不安定さも良く描けていると思います。
    今、ブローディガンが小説を書いたら、どんな未来を予見してくれるんだろう?とふと思いました。

    竹蔵

    0
    2025年10月19日
  • 新装版ペルーからきた私の娘

    Posted by ブクログ

    女性翻訳者による1984年に刊行されたエッセイ

    養子と過ごす一瞬一瞬のことを、「借りた時間」から差し引かれる一瞬一瞬であると表現する繊細さ

    自分を研究者や代弁者や解説者にはしてくれない体験、
    声の大きなひとに埋もれる小さな声、
    物語性のない話。

    0
    2025年10月04日
  • 西瓜糖の日々

    Posted by ブクログ

    死後の世界ってこと?長老鱒?西瓜糖でできた何もかもって何?忘れられた世界?いろんなことが意味ありげに出てくるけど、結局何かはわからない。でも主人公は彼女に飽きて新しい女を作ったり、セックスしたり俗っぽいというか行動がリアルで、そのアンバランスさが面白い。
    これは1960年代のヒッピーコミューンのこと?と思いながら進めたものの、解説だとそうでもないみたい、、。
    晴れた日に永遠が見えた、ピーウィーの大冒険、去年マリエンバートでを思い出した。

    0
    2025年09月27日
  • イリノイ遠景近景

    Posted by ブクログ

    日本を離れても似たような会話をしてる人たちがいるんだなぁと微笑ましいエピソードが続くのかと思っていたら、ユダヤ人の迫害やアメリカ先住民族の話といった、重たいけれどその真っ只中の人々の話をしっかり聞き、そして違和感なく翻訳してくださっている。
    この方自身、とても面白い方なんだろうなと感じる。他のも読んでみよう。

    0
    2025年07月05日
  • 西瓜糖の日々

    Posted by ブクログ

    西瓜糖、アイデス(iDEATH)、忘れられた世界、鱒の養殖場、歌う虎、川に沈む棺…
    魅力的で妖しい言葉の数々が、穏やかで閉じた世界を描き出す幻想小説。
    物語をあるがままに受け取ることが得意な人、物語の筋書きより手ざわりを愛しむ人には、たまらない一冊だと思う。

    0
    2025年05月29日
  • ブルースだってただの唄 ――黒人女性の仕事と生活

    Posted by ブクログ

    美しく率直な文章で、その場(話をしている場)にいるような臨場感もある。知性…。
    時代も国も違うとはいえ、実際の生活の様子を聞くとやはり驚くな。

    0
    2024年02月01日
  • 西瓜糖の日々

    Posted by ブクログ

    村上春樹以前の村上春樹的世界とでもいえばいいのか。
    並行現実のしずかな営みにある、狂気。だれもが自分が正しい。

    0
    2023年12月22日
  • 西瓜糖の日々

    Posted by ブクログ

    ネタバレ

    初ブローティガン。
    原題”In Watermelon Sugar”。
    全88断章が連なる、寓話。
    「西瓜糖の世界で」「インボイル」「マーガレット」の3チャプター。
    寓意は簡単に判りそうな気も、する。
    時間と、忘却と、生と死と、無関心と、自己欺瞞と……。
    が、あまり茫漠としすぎていて、全然判らないという気も、する。
    つまり村上春樹っぽい。
    影響関係でいえば逆なのだが。
    (また、高橋源一郎、小川洋子、柴田元幸、岸本佐知子、etc...)
    SFではないが、ユートピア≒ディストピア、の系列。
    また、地図を描きたくなる。
    アイデス : 忘れられた世界
    あるいは忘れられた世界の中に孤島のようにアイデスがあり、アイデスの住人の住居はその辺縁にある?
    人々(わたし、チャーリー、ポーリーン)(マーガレット→) : インボイル
    という構図か。
    清教徒的・小市民的生活と、対立。
    時系列的にヒッピーから生まれた文芸では決してないらしいが、やはりヒッピーとの親近性はありそう。
    語り手の「わたし」がむしろ阻害「する」側で、インボイルやマーガレットのほうが読者に近い。はず。人間っぽい。
    語り手が実は鼻持ちならない側、というのも、春樹っぽい。

    連想。
    タイガー立石「とらのゆめ」。
    虎と西瓜から。
    ドラッギーなところとか。

    連想2。
    突飛かもしれないが、「マインクラフト」。
    世界の素材が西瓜糖、というところから。

    藤本和子の文体、好き。
    訳書をいくつか読んでから「塩を食う女たち――聞書・北米の黒人女性」を読みたい。

    0
    2023年12月12日
  • ブルースだってただの唄 ――黒人女性の仕事と生活

    Posted by ブクログ

    現実から目を背けず、強く生きている姿に感銘をうける。多様性の時代と言われるが、同化では意味がない。多様性を多様性のままいかに受け止めていけるのだろう。

    0
    2023年02月19日
  • イリノイ遠景近景

    Posted by ブクログ

    読むにつれどんどん深くなっていった。
    聞く力がすごい。聞いて理解してさらに掘り下げて、と。こちらもついうんうんと頷いてしまう。

    0
    2023年01月05日
  • タール・ベイビー

    Posted by ブクログ

    ネタバレ

    そもそも恋愛とは、異文化のすり合わせとも言える。
    生まれた場所も価値観も、培ってきたものも異なる2人が出会い、それをすり合わせる。互いの文化を受け入れてより良い関係になっていくか、それとも受け入れられずに別の道を行くことになるか。それは国や肌の色が同じだろうが違っていようが、必ず起こってくる。
    しかし、白人の富豪の庇護のもとソルボンヌ大を卒業してモデルをしている娘ジャディーンと、黒人だけの小さな町で育ったサンとの文化の違いは、乗り越えることが出来るのだろうか。

    帯の「別世界で育った男女の、激しい恋のゆくえ」というフレーズに誘われて読むと、手痛いしっぺ返しをくらう。激しく燃える甘々の恋愛小説をイメージしてはいけない。そんな生ぬるいものではない。2人の関係は、そして越えなければならないものは、激しく、強く、切なく、苦しい。

    最悪とも言える出会いであったのに、「その男の眼の周りには大きな空間があるような気がした」のが、もしかしたら、ジャディーンのスイッチだったのかもしれない。彼の美しさに気づき、彼に惹かれていく。
    しかしジャディーンはあくまで白人の庇護下にあり、白人と食事をし、白人の価値観の中で暮らしている。サンにはそれが迎合のように見えたとしても不思議はない。
    互いの大事にしてきたものを認め合えるのか。違う文化に適応出来るのか。それを越える恋愛はあり得るのか。

    白人夫婦のヴァレリアンとマーガレットの関係もどこか空虚で孤独であり、後で明かされてくるマーガレットの抱え込んできた秘密にも驚かされる。
    ヴァレリアン、マーガレット夫妻と、使用人夫婦のシドニー、オンディーンとの関係も、思惑に齟齬があるように感じられる。信頼しあっているように見える30年にも渡る主従の関係も、強固な勘違いの上に成り立っている、ということなのか。

    正直なところ、最初の100ページくらいは入りにくくて難儀した。でもいつの間にか藤本和子の訳文に導かれ、恋のゆくえと激しい人間関係との渦にぐるぐると巻き込まれてしまった。美しい表現もキラリと随所にあって、たまらなく切なくなる。

    ビターで濃いこの物語を、最後まで読めてよかったなと思う。

    0
    2022年11月19日
  • ブルースだってただの唄 ――黒人女性の仕事と生活

    Posted by ブクログ

    リチャード・ブローティガンの訳者・藤本和子によるアメリカ黒人女性への聞き書き集。彼女たちは、アメリカで、黒人であること、女性であることにより二重にしたゲラれているという。ウィスコンシン州の刑務所でカウンセラーをしているジュリエット・マーティンを中心に、その同僚や受刑者たちに聞いた話がまとめられてる。どの話も個人的で、かつ普遍性があった。公民権運動などを経て黒人の状況も改善されているのではという質問にジュリエットが答えた「戦いなんて、まだ始まってもいない」という言葉が印象的だ。

    0
    2021年10月22日
  • ブルースだってただの唄 ――黒人女性の仕事と生活

    Posted by ブクログ

    これはもうタイトルにやられた。かなり前(1980)に出た作品みたいなのだが最近になって文庫化されたようで店頭でタイトル見たら読んでみたくなった。翻訳を生業とし当時アメリカで暮らしていた作者が何人かの黒人女性にインタビューを行ったもの。黒人であり女性であるということは二重に抑圧された存在である、という切り口で刑務所の心理学者、ケーブルテレビ局のオーナー、ソーシャルワーカー、囚人、街で暮らす百歳を超えた老婆、などに対する聞き書き。どういう生い立ちでどういう酷い目にあってそれをどう跳ね返したのか、または、跳ね返せなかったのか、が綴られている。特定の人種と性別にのみ焦点を当てた作品で今なら逆に世に出せないのでは、とも思った。自分たちが少し前までは奴隷であったために劣った存在と思っていたのだがジェームス・ブラウンに代表されるムーブメントでいかに勇気をもらったか、など非常に興味深く読んだ。タイトルにもなっているフレーズは心理学者が昔たまたま耳にして忘れられない言葉ということで少し長いけども引用する。果たしてこんな逞しさが自分にはあるだろうか。非常に興味深い作品。おすすめです。
    「ブルースなんてただの唄。かわいそうなあたし、みじめなあたし。いつでも、そう歌っていたら、気がすむ? こんな目にあわされたあたし、おいてきぼりのあたし。ちがう。わたしたちはわたしたち自身のもので、ちがう唄だってうたえる。ちがう唄うたってよみがえる。」

    0
    2021年07月16日
  • ブルースだってただの唄 ――黒人女性の仕事と生活

    Posted by ブクログ

    アメリカの黒人差別について、あまりにも無知だ。私の知識はせいぜい映画からのもの。今もまだ続いていることは看過できないと思うものの、やはり遠い。アメリカも遠いし、黒人も遠い。
    黒人であり、女性であるということはどれだけの差別の中で生きていくことになるのか。特に、刑務所の2人、その中でもウィルマの話が印象に残った。ウィルマの語りをそのまま聞いているつもりになっているが、英語で聞き、語られたことが日本語に訳されていると思うと、藤本和子という人はすごい人だなと思う。
    弱い立場、苦しんでいる人たちの話を聞いて本にしてくださる方々にありがたさを感じる。
    過酷な人生でも強く生きていく、とにかく生きる、死ぬまで生きる、そのこと自体に意味があるのかとしみじみ思う。でもやはり、差別問題に関してはなくす方向に進めないと行けないし、ボンヤリしているわけにはいかない。当事者も遠くに感じている私たちも。

    0
    2021年06月13日
  • ブルースだってただの唄 ――黒人女性の仕事と生活

    Posted by ブクログ

    強烈な現実
    そして変わらない現実
    藤本和子さんを通して伝わってくる現実
    解説に書かれている通り
    「語り手だけでなく、聞き手の何かどくどくとこちらの血管に注ぎ込まれるような…」リアリティ!

    0
    2021年04月30日
  • ブルースだってただの唄 ――黒人女性の仕事と生活

    Posted by ブクログ

    教育は歓迎するが、白人文化への同化は望まない、という女性の言葉が印象的だった。
    国や地域に文化があるなら、女独自の文化を保ったままでいいんじゃないのか?ことさらに男性への同化を自他に求めなくとも、やっていけるんじゃないのか?男たちが勝手に作ったヒエラルキーを内面化してあげなくても、もう、いいんじゃないのか?

    本書を読みながらしきりに「崖」(石垣りん)の一節が思い出されてならなかった。

     戦争の終り、
     サイパン島の崖の上から
     次々に身を投げた女たち。
     
     美徳やら義理やら体裁やら
     何やら。
     火だの男だのに追いつめられて。
     
     とばなければならないからとびこんだ。
     ゆき場のないゆき場所。
     (崖はいつも女をまっさかさまにする)
     
     それがねえ
     まだ一人も海にとどかないのだ。
     十五年もたつというのに
     どうしたんだろう。
     あの、
     女。        

    女たちが落ちる「崖」に、ここまで、という終わりはない。
    20年も経つのに。
    そろそろ80年も経とうというのに。

    当時インタビューを受けた女性たちは、今、60代、70代を迎えている。アジア人女性が黒人男性に路上で殴り倒される自分たちの国を見て、どんな思いでいるのだろう?

    0
    2021年04月15日
  • ブルースだってただの唄 ――黒人女性の仕事と生活

    Posted by ブクログ

    人種差別を生きた黒人女性の聞き取り。
    13で家を出た人の話が印象的、つらい生活でも、
    こんなものと生きて来た。神を信じて。
    豊かな日本人には、耐えられない。
    人間は、いかなる状況でも生きていかれるのか?

    0
    2021年04月15日
  • ブルースだってただの唄 ――黒人女性の仕事と生活

    Posted by ブクログ

    生きていく上で、

    男の子と女の子にとるべき態度を別々に教えなくてはいけなかったということ、

    暴力がとても近くにあったこと、

    いわゆる授業の教材で使うような本(to kill a mockingbird, the bluest eyeなど)の描写と変わらない状況に置かれていたこと、

    などなど、

    生の言葉とそのまま出会って、たった少しではあるけど黒人の女性の置かれてきた環境、そのまわりの空気を知ることができました。

    情報として、人種差別と戦うために、黒人男性がやってきたことや、代表的な女性の発言などがアクセスしやすいところにあったので目にしていたけど、

    いち女性の人生を紡ぐ言葉は、とても心に入ってきました。

    0
    2021年03月22日