藤本和子のレビュー一覧

  • タール・ベイビー
    女性ノーベル賞作家の四作目。
    白人の庇護を受けて育った娘と、黒人だけに囲まれて育った青年。男女の心の葛藤が良く表現されている恋物語…などという単純なものではなかったです。

    文化的に異なる環境で育ったが故に、娘は相手を辛辣な言葉で非難したり蔑んだりしてしまいます。相手にも育ってきた環境や世界観がある...続きを読む
  • 西瓜糖の日々
    「そういうのはずるしてる、というのじゃないのかな」

    「風が起こって、窓がかすかに震えた。風で、脆そうに半開きになった砂糖」
    綺麗すぎるイメージ

    「わたしたちが恋人同士になると、かの女は夜の長い散歩をやめた、でも、わたしはいまでも散歩する。夜、長い散歩をすることが、わたしは好きなのだ。」
    怖い

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  • 西瓜糖の日々
    牧歌的、といって良いだろうガジェットの中で行き交う現在はフィクショナルで至極自足している、かに見えるが、その円やかな事物の間隙から立ち上がってくる哀惜のノイズ、その鳴りが美しいような物語でした。冴えた月の円かさであるような。ソフトな手触りなのだが、明らかに、幽かに、かなしみを籠めてザラついている。か...続きを読む
  • 西瓜糖の日々
    発熱した状態で読むには非常に適した小説だった。筋らしい筋はほとんどない。ひたすらブローディガンの夢幻的世界観が詩のような文体で綴られている。何よりもページ数が少ないのが良かった。解説にもあったが、これを単にヒッピー文学として理解してはいけない。ことさらに提示されるのは楽園の中にあるかすかな不安であり...続きを読む
  • 西瓜糖の日々
    夢と現実の狭間を漂うような不思議な世界観。 みんな色々な感情に溢れ、今ここにいる人にもいなくなった人にも囲まれ、生と死、光と闇の中を行ったり来たりしながら生きている。よく分からないけど惹き込まれる。
  • 西瓜糖の日々
    「西瓜糖」と「鱒の孵化場」など暗喩のような言葉がちりばめられた幻想的な本。

    「ずっと以前、さいごの虎が殺されその場で焼かれたすぐあとで、アイデスに鱒の孵化場が造られた」
    その虎はあたしたちと同じ言葉を話すし、算数もできる。
  • 西瓜糖の日々
    ・アイデスと忘れられた世界、、
    アイデスはわたしの夢の中、空想の世界で、忘れられた世界がリアルな世界、現実世界。わたしは夢の中に逃避してポーリーンたちに会っているんではと思った。わたしにとってもはや現実世界は失われていて、アイデスこそが真にリアリティのある世界。

    ・アイデスは村上春樹さんのハードボ...続きを読む
  • 西瓜糖の日々

    ひんやりと、冷たい。つめたくて、寂しい。なのにぼんやりとした黄色いひだまりが感じられる。
    ここは、どこなんだろう。私は誰なんだろう。そんなことは時にまかせて。あなたが呼んだままに。
    時の流れは無常で、流れるだけで、とまらない。
    ここで構築された世界を私は忘れたくないと思う。
  • 西瓜糖の日々
    氷砂糖のような言葉の世界だった。掴んだと思ったら味わううちに溶けてしまう。皆慈悲深く、穏やかで、とてもひんやりとした冷たさを持っている。
    忘れられた世界のイメージ、血のイメージがありありと迫る。
  • 西瓜糖の日々
    西瓜糖のことばで綴られているので
    私にはすーっと入ってきた。
    入ってこない人もたくさんいると思いますが。。

    悲しみは淡々と、
    日々のちいさな幸せは、ポーリーンみたいに愛おしく描かれている。
    辛いことを葬り去ってしまうようなこわさ
    のあるお話しでもあった。

    わたしの名前

    _誰かがあなたに質問をし...続きを読む
  • 西瓜糖の日々
    もしかしたらかつて〈忘れられた〉別の時代があって、いろんな思惑や策略のために、一度めちゃめちゃになった後にできたのが西瓜糖の世界なのかもしれない。
    支配したり、裁いたりする存在がいない世界は、わたしたちのそれより、ほんのちょっと甘く、やさしい。
  • 西瓜糖の日々
    西瓜糖世界に住む人たちの日常を淡々と描くお話。きれいなイメージだなーと読みはじめて、その架空の世界がすごく好きになった。いろんなものが西瓜糖で作られている<アイデス>と、少し離れた<忘れられた世界>。人と同じ言葉を話す虎。静かで優しくて残酷な西瓜糖の日々。
  • 西瓜糖の日々
    村上春樹以前の村上春樹的世界とでもいえばいいのか。
    並行現実のしずかな営みにある、狂気。だれもが自分が正しい。
  • 西瓜糖の日々
    初ブローティガン。
    原題”In Watermelon Sugar”。
    全88断章が連なる、寓話。
    「西瓜糖の世界で」「インボイル」「マーガレット」の3チャプター。
    寓意は簡単に判りそうな気も、する。
    時間と、忘却と、生と死と、無関心と、自己欺瞞と……。
    が、あまり茫漠としすぎていて、全然判らないとい...続きを読む
  • 西瓜糖の日々
    西瓜島,アイデス,忘れられた世界,虎,鱒の孵化場.わたしの住む世界はゆるい時間の流れの中で,決められた毎日が単調に過ぎゆく.そして時に挟み込まれる剥き出しの暴力.断片が積み重なり,不可解で秩序のあるようなないような世界が漂っている.
  • タール・ベイビー
    そもそも恋愛とは、異文化のすり合わせとも言える。
    生まれた場所も価値観も、培ってきたものも異なる2人が出会い、それをすり合わせる。互いの文化を受け入れてより良い関係になっていくか、それとも受け入れられずに別の道を行くことになるか。それは国や肌の色が同じだろうが違っていようが、必ず起こってくる。
    しか...続きを読む
  • 西瓜糖の日々
    借金玉さんが折に触れてすすめてるやつ

    浮遊感?のある不思議な文体

    ちびちび読んでいるけど「西瓜糖」が何なのかよくわからない。(村で採れる作物で、食用のほか建物の材料になったりしてる。

    桃源郷ものぽくもあり、とはいえソロ隠者ではないので『ヘンリ・ライクロフトの私記』ほどひねくれてもいない。


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  • 西瓜糖の日々
    アイデスでなじめない人間が行くところが忘れられた世界であるような感じで読めるが、実際にはその逆なんだろうと思います。

    前作「アメリカの鱒釣り」は楽しい感じでしたが、今作は一転物悲しい感じとなっています。
  • 西瓜糖の日々
    多くのものが西瓜糖で作られている世界。
    死後を思わせるような、<過剰でない>平穏な人々。
    詩的な幻想ながら、藤本和子さんの翻訳が見事で読みやすかった。
    なんとなく、長野まゆみさんを思い出す。もしかしかたらブローティガンがお好きなのかもしれない。
    『ビッグ・サーの南軍将軍』もいつか読みたい。
  • 西瓜糖の日々
    "たえず変化している。だから、素敵なんだ。"(p.30)


    "わたしの好きな物、わたしの気に入りの物で造られた橋は、わたしの足の下で、いい感じだった。"(p.124)