金成隆一のレビュー一覧
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ルポ トランプ王国2 ラストベルト再訪
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Posted by ブクログ
ポピュリズムが愚民政策だと言い切ってしまうのを避けてきたが、自分は政治家とか影響力のある人間ではないので言ってしまう。先進国の中でいまやアメリカ人が最も教育レベルが低く、倫理観の欠如している国民なのではないだろうか?西欧は個人主義つまりミイズムが中心とされてきたが、ここに出てくる人たちはそれを通り越して確実にエゴイズムの化身と化している。オバマケアを批判する言葉が自分は病気ではないのになぜ高い保険料を払わなければいけないのかといった日本でSNSで話すと一発で炎上しそうな言葉を目の当たりにして吐き気を覚えた。アメリカンドリームとは年に一回の家族旅行と車と家なのだそうだ。問題はこのあと10年が経って再びトランプが大統領に返り咲き、このアメリカの赤い地域の人たちは今何を思い何をしているかということに尽きる。当然そのルポは貴重なので続けて読んでいきたい。
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Posted by ブクログ
313P
金成隆一
茨城県出身。2000年朝日新聞入社。2005~09年の大阪社会部ではトラック運転手の同乗ルポや事件の取材に没頭。2009~10年米国留学。2011年に社会部に戻ると、東日本大震災を機に米公文書館に通い、1950年代の米政府の対日本「原子力平和利用」政策を調査報道。その後、教育担当になり、オンライン教育の急速な発展を米国やモンゴル、ドイツで取材。2014~19年ニューヨーク支局員として国連本部や米社会を担当。戦闘部隊の強化など、変容する国連平和維持活動(PKO)をコンゴ民主共和国から報道。2016年大統領選では前年からラストベルトに通い、草の根のトランプ旋風を伝えた。2019~20年は東京経済部で通商政策を担当。2020年3月に機動特派員になり、米大統領選を取材。2021~23年は欧州総局員(在ロンドン)として、ロシアの軍事侵攻を受ける前後のウクライナや英イングランド北部の社会を取材。帰国後の23年9月から2年間は大阪社会部でデスク勤務しました
第36回大平正芳記念賞特別賞(『ルポ トランプ王国』『ルポ トランプ王国2』で)
2018年度ボーン上田記念賞(大統領選など一連のアメリカ報道で)
第21回坂田記念ジャーナリズム賞(「教育のオープン化」報道で)
仕事で大切にしていること
いまいち理解できない現象について、現地取材を通して、自分で考えて、背景や構造を伝える努力を大切にしたいです。
「サイレント・マジョリティーが吐き出す不満 トランプの集会後、会場の外で支持者に話を聞くと、堰を切ったように不満を吐き出した。多くが、日々の暮らしに根差す不満だった。自らの体験に基づいているので真剣そのものだ。 元教師のマリリン・マックウィリアムス( 59)がまず口にしたのは、「壁」への熱い支持だった。 「トランプは壁を建設してくれる。彼の主張がストレートなのが好き。(保守系)フォックスニュースでいつもトランプを見ているけど、見れば見るほど、彼のことが好きになるわ。こんなに大きな国の中で、彼がこの街に来てくれたことがうれしい。テキサスは不法移民問題が深刻なので選んでくれたと思う」 「街でスペイン語が当たり前になっていることが不気味。ここはアメリカなのよ」と憤りも口にした。食料品店に並ぶ商品のスペイン語表示が増えているだけでなく、時にスペイン語の表示の方が英語より大きいことが気に入らない。」
—『ルポ トランプ王国-もう一つのアメリカを行く (岩波新書)』金成 隆一著
「 「彼はポリティカル・コレクトネス(政治的な正しさ)で批判されることを恐れていない。とても強い。経営者として常に判断を迫られてきた。そんな経験が豊富な指導者がこの国には必要なのよ」と語った。ここまではトランプへの前向きな評価と言える。 ところが、ここからは社会への不満一色になった。 「国境を守らないと国が崩壊するわよ。不法移民の流入を食い止めるべきよ。私たちは彼らにあまりにも多くの自由とお金を与えすぎた。福祉に依存するようになり、その重みでアメリカが沈みそうよ。税金を払う人がどんどん減ってきて、自宅のソファで日中からテレビを見る人が増えたら、オシマイでしょ。彼らのフードスタンプ(政府が生活困窮者に発行する食料配給券)を支えているのは、私たち働いているアメリカ人。彼らは一時的な困窮から脱する方法としてではなくて、福祉に依存することをライフスタイルにしていて、生涯それで暮らしていくつもり。それは許されない」」
—『ルポ トランプ王国-もう一つのアメリカを行く (岩波新書)』金成 隆一著
「 「今の政治家は、みんなうさんくさい。代表がヒラリー・クリントンだ。(国務長官時代に公務で私用メールアドレスを使った問題では)すべてのメールを捜査当局に提出したと言いながら、その後にまた別のメールが見つかった。信用できない。でもトランプは全部ホンネだ。彼が言うことは、彼が本当に考えていることだ。時に言い過ぎるけど、それも含めて憎めない」 この街で、最も支持されていたのは、トランプの「壁」だ。ベンジャミンも「普通の政治家はあんなこと言わないけど、このあたりじゃ多くの人が考えていることだよ。壁ができて、不法滞在のメキシコ人を追い出せば、私たちに仕事が戻ってくる。仕事を取り戻せる」」
—『ルポ トランプ王国-もう一つのアメリカを行く (岩波新書)』金成 隆一著
「 「今の政治家は、みんなうさんくさい。代表がヒラリー・クリントンだ。(国務長官時代に公務で私用メールアドレスを使った問題では)すべてのメールを捜査当局に提出したと言いながら、その後にまた別のメールが見つかった。信用できない。でもトランプは全部ホンネだ。彼が言うことは、彼が本当に考えていることだ。時に言い過ぎるけど、それも含めて憎めない」 この街で、最も支持されていたのは、トランプの「壁」だ。ベンジャミンも「普通の政治家はあんなこと言わないけど、このあたりじゃ多くの人が考えていることだよ。壁ができて、不法滞在のメキシコ人を追い出せば、私たちに仕事が戻ってくる。仕事を取り戻せる」 言い回しまで、トランプに似ている。 「キミは知らないと思うけど、ここはホントに不法移民が多い。そして私たちの社会保障制度を利用し、政府から吸血鬼のように金を吸い上げる」 演説会場からどんどん支持者が出てくる。その様子を見てベンジャミンが言う。 「みんなトランプが大好きだ。中には不法移民に家族を殺害された人までいる。不法にアメリカに滞在している人が、社会に負担をかけるのは間違っている。テキサスの人々は、この国の政治家がおかしなことばかりすれば、本気でアメリカからの離脱を主張するからね。トランプが大統領にならなければ、テキサスを独立国にする動きを活発化させたいね」」
—『ルポ トランプ王国-もう一つのアメリカを行く (岩波新書)』金成 隆一著
トランプ支持者は反知性的、田舎の貧乏人ばかり、みたいに思い込んでいる人には、ぜひジャーナリスト金成さんの名著『ルポ トランプ王国』を読んで見て欲しい。取材を照れくさそうに受けるトランプ支持者達のほとんどはごく普通の労働者たちなんよ。
同性婚で盛り上がってるツイッターを見て、トランプ当選前夜のアメリカを取材した名著『ルポ・トランプ王国』でブルーカラー労働者が『政治家たちは俺たち労働者の雇用問題よりもTGがどちらのトイレを使うべきか?といったような話ばかり議論するようになってしまった』と嘆いていたのを思い出した。
「グリーンビルでは「ほとんどの人が失業中」という。「結局は雇用だね、雇用が一番の問題だ。仕事さえあれば、だれもドラッグなんてやらないよ。仕事にいかなきゃならないからね」 「若者は仕事がないと大変なことになる。トランプには海外から入ってくる鉄に高い関税をかけてもらって、競争をフェアなものにしてほしいね」 ディーンは最後に、共和党元大統領のブッシュの批判も口にした。 「この国の最大の問題は、職業政治家の存在だ。業界から献金をもらっていて、庶民よりも業界の利益を優先する。政治家にも、レーサーのような、スポンサーのロゴ入りスーツを着用させるというアイデアはどうだろうか? 一目で、あいつは製薬業界の代弁者、こいつは軍需産業の代弁者とわかるだろ?」 ディーンのアイデアに、周囲のトランプ支持者は「最高のアイデアだ」と盛り上がった。」
—『ルポ トランプ王国-もう一つのアメリカを行く (岩波新書)』金成 隆一著
「 トマスの携帯電話には、職場の写真も保存されていた。人間の背丈の 2倍ぐらいの太さのパイプが写っていた。そこで男性が何やら作業している。トマスが自分の仕事を説明してくれた。 「ここに写っているのがオレだ。ガスの大型パイプラインを屋外で溶接している。きつい仕事だぞ、毎晩、疲労で手を握ることすらできなくなる。こうやってグーにして握れなくなる。手が痛む、毎晩痛む。もうこれ以上、働けないって思って、やっと休暇をとってバルバドスに行った。あのときのオレには、バケーションが必要だったんだ」 これまでパスポート不要のカナダには行ったことがあったが、本格的な海外旅行は 42歳で初めてだった。トマスの話は、いまの暮らしへの不安に移った。 「キミは保険に入っているか? そうか、日本の人はうらやましいな。オレはこんなに働いているのに、勤務先が掛け金を払えないと言い出して、ついに無保険になった。もう 42歳だろ、心配だよ。いつ病気になるか、わからないじゃないか。 42歳にして人生初の無保険だよ」 するとテーブルの反対側に座っていた、酔っぱらった白人の中年男性が話に入ってきた。「オレの勤務先は宅配便の配送センターだが、保険は最高だ。病院に行くことも心配にならない。大企業だから独自の保険を運用しているんだ」 トマスがうらやましがると、男性は肩を落とした。「でも時給は 13ドル(約 1500円)。ここ数年間は上がっていない。保険はいいが、(ほかの仕事にくらべると)時給は低いんだ」」
—『ルポ トランプ王国-もう一つのアメリカを行く (岩波新書)』金成 隆一著
「トマスは、州立大学で経営学の学位を取得したが、「ちっとも活かせていない。もし 20年前に自分の人生を巻き戻せるなら、自動車整備とか溶接とか、もっと自分の手を使ってやる技術を身につけたかった。まさに今、毎日やっていることをきちんと学びたかった」 学費の返済残高は今も 8万ドル( 920万円)。毎月 700ドル(約 8万円)の返済に苦しむ。 「 42歳でまだ、役に立たなかった学位の取得費用の返済に苦しんでいる。子どもの養育費、食費、ガソリン代、時々の飲み代を払うと、手元にほとんど残らない。笑い話じゃないんだ」 「学生は大学に通って、借金をつくり、肥えるのは大学だけ。学位なんてフェイク(偽物)だ」「トランプに何を期待するか? アメリカを再び偉大にしてくれりゃ、それでいいんだ」」
—『ルポ トランプ王国-もう一つのアメリカを行く (岩波新書)』金成 隆一著
「ミシェルの実家は、ヤングスタウンで約 40年続くサンドイッチ屋だ。彼女も高卒後ずっと店で働いてきた。彼女の話は、「学歴社会」への疑問と批判だった。 「祖父がサンドイッチ店を成功させたの。でも実は、彼は大学を追い出されたのよ。成功に学歴なんて関係ないのよね。彼を見ていて「人生っておもしろい」って思い、大学に進むのはやめた。祖父は「大学費用は出す」と言ってくれていたけど断った。スモール・ビジネス(自営業)の一家に育ったから、実業家のトランプに惹かれているのだと思うわ」」
—『ルポ トランプ王国-もう一つのアメリカを行く (岩波新書)』金成 隆一著
「 「アメリカって結局はみんながだまし合っているんじゃないのって思う。ジノの話を聞いたでしょ? 彼も州立大学を卒業しているのに、いまの稼ぎはゼロ。大学なんて若者に借金させてカネ稼ぎしているだけじゃないの? いまの私には何が正しいのかわからないの」」
—『ルポ トランプ王国-もう一つのアメリカを行く (岩波新書)』金成 隆一著
「 「私は、自分がハシゴの下の方の横木 ( the lower rung of the ladder) だと自覚している。なぜ、アメリカの億万長者は、アメリカ人の業者を使わず、さらに安い不法移民を使うんだ。自分の財布のことばかり考え、地域のことなんてちっとも考えていない。ブッシュ家のような、共和党のエスタブリシュメントも同罪だ。不法移民が増えても、銀行員などの高学歴エリートたちは仕事を奪われる心配がないだろうが、オレたちには深刻なんだ」 「私はここで生まれ育ったアメリカ人だ。私は、稼いだカネを、ここで使う。赤ん坊のミルクを買い、子どもの服やおむつを買う。カネは地域に循環する。社会ってのはそんなもんだろ? でも不法移民はため込んで、南の方に送金するばかりだ」」
—『ルポ トランプ王国-もう一つのアメリカを行く (岩波新書)』金成 隆一著
「ここから現職の政治家の批判と自分の宣伝に切り替わる。ライバル候補のクリントン批判も続く。クリントンは「現状維持」、自分は「変化」の象徴である、という単純な構図だ。 「数百万人の労働者たちが貧困と苦悩の中に置き去りになっているのに、政治家は何もしませんでした。私たちの仕事がなくなり、高い失業率に苦しんでいるというのに、彼らは何年もの間、傍観してきました」 「多くの地域では今も回復の兆しはありませんし、今後も回復しないでしょう。私が大統領にならない限りは。私が大統領になれば、すぐに回復します。政治家は私たちの生活手段を奪いました。愛する仕事が何千マイルも遠くに送られていくのを眺めていました。ペンシルベニア州の多くの街々はかつて栄えましたが、グローバリゼーションはミドルクラスを全滅させました。まだ取り返せます。しかもすぐに」 「しかし本当の変革を目指すなら、威圧的な政治家や政治の王朝は拒絶せねばなりません。彼らは現状を維持させるためには何でもやります。システムを不正に操る人間はクリントンを支持します。彼らは、クリントンが政権に就けば、現状を維持できることを知っているからです。街は貧しいまま、工場も閉鎖されたまま、そして国境は開きっぱなしになります。クリントンとグローバルな金融業界にいるクリントンのとりまきたちはアメリカ人が夢を描くことを断念させ、より良い未来のために一票を投じることを阻もうとしているのです」」
—『ルポ トランプ王国-もう一つのアメリカを行く (岩波新書)』金成 隆一著
「 「アメリカニズムよりもグローバリズムを崇拝した指導者たちのせいです。今こそ、経済的独立を宣言するときです。それはドナルド・トランプに一票を投じるということです」」
—『ルポ トランプ王国-もう一つのアメリカを行く (岩波新書)』金成 隆一著
「公立学校で聖書を読む。そんなキリスト教の信仰を基盤とする、白人中心のアメリカ社会が当たり前だった世代にとっては、「白人のマイノリティー化」が予測されるまでに至った、今のアメリカはまるで別の社会に見えているのだろう。」
—『ルポ トランプ王国-もう一つのアメリカを行く (岩波新書)』金成 隆一著
「オバマを一般論としては支持するけど、今のアメリカには「変化」が必要です。 アメリカには途方もなく裕福な人々がいる。それなのに税金をほとんど払っていない富裕層がいるって本当でしょうか? 私がもし富裕層になれたなら、きちんと納税して社会に貢献するけど。今の社会はバランスが悪い。あまりに不公平がまかり通っている気がします。」
—『ルポ トランプ王国-もう一つのアメリカを行く (岩波新書)』金成 隆一著
「 実はオバマケア(医療保険制度改革)の負担が苦しい。保険の仕組みは複雑でよくわからないけど、私の身に起きている影響については、自分でよくわかっています。思っていた以上にオバマケアは負担額が大きかった。オバマケアが導入される以前に戻して欲しい。私たちには一定の(オバマケアに入る、入らないという)選択肢があるべきだと思う。みんなが社会保険に入るべきだとも思っていたけど、あまりに負担が大きすぎる。今の私は健康で、保険を必要としていない。それでも高いお金を負担しないといけない。 今のアメリカは生活費も高すぎます。サービスも食料も、何でも高い。月末にお金が残らない。私はきちんと働いているというのに、普通の暮らしを営むことも難しい、もう 3年間もバケーション(長期休暇)で家族旅行にも出られない。昔は 1年に 1度、 1週間ぐらい太陽の近くに行っていた、(南の方の)暖かい地域へ。ここニューハンプシャーは寒いでしょ。少しずつお金をためてね。でもそれが難しくなっている。パンの値段も上がっている、食料品が高い。最近安くなったのは、ガス代ぐらい。でも、それが元に戻ったらどうなるのよ?」
—『ルポ トランプ王国-もう一つのアメリカを行く (岩波新書)』金成 隆一著
「 私はアランにも同じ質問をした。「自分をミドルクラスと思いますか?」 アランは笑って否定した。 「答えはノー。ミドルクラスは消滅しかかっている。十分な収入を得て、子どもを育てて学校に送り出すことができないんだから。ウェストバージニアはアメリカの貧しい地域だ。この街の人はバーニーやトランプに惹かれる。私にとってのミドルクラスとは、アメリカン・ドリームを信じて生きられることだ。有力者や企業経営者が富の大半を持って行ってしまう社会では、アメリカン・ドリームも死に絶えている。まじめに働けば、まっとうな暮らしを送れることを望んでいるだけなのに」」
—『ルポ トランプ王国-もう一つのアメリカを行く (岩波新書)』金成 隆一著
「 なぜ、アメリカでは社会主義が支持されないのか。ドイツの社会学者ヴェルナー・ゾンバルトは 1906年の著書で、アメリカの労働者たちが社会主義に傾倒するには裕福すぎる点を以下のように指摘した。 「次に述べることは間違いがない。アメリカ人の労働者は心地の良い環境で暮らしている。概して彼らは抑圧的なまでに劣悪な住環境というものに縁がない」「男性は紳士のように、女性は淑女のように身なりを整えているため、自分たちと支配階級を隔てるギャップに外見上は気づかない」 「こういった状況では、特に快適な生活水準が永久に続くと明確に保障され、また今日に至るまでこの生活水準が変わらないと確信できてきたのであれば、「既存の社会秩序」への不満が労働者の心の中に宿らないことも何ら不思議ではない」 そしてゾンバルトは有名な結論を導く。「全ての社会主義の理想も、ローストビーフとアップルパイの前では失敗に終わるのである」」
—『ルポ トランプ王国-もう一つのアメリカを行く (岩波新書)』金成 隆一著
「何よりもトランプの強みになったのは、おかしな話だが、その暴言と傲慢なキャラクターを最初から前面に押し出したことにある。よく知られているように、立候補の演説でメキシコ移民を「(アメリカに)麻薬と犯罪を持ってくる強姦者」と呼んだ。その後もイスラム教徒の入国の一時禁止など暴言を連発。連邦地裁判事がメキシコ系であることを理由に「私の訴訟を担当するべきではない」と真顔で主張した時には、「アメリカは多民族国家だぞ」などと批判を越えて呆れる声が相次いだ。 私はこれらの暴言には、トランプが意図的に吐いていたものもあるのではないかと感じている。主要メディアから批判され、注目を一身に集める。「エスタブリッシュメント」の1つと見られているメディアから批判されてもトランプは困らない。むしろ批判の嵐の中で平然と振る舞うことで、抵抗勢力に立ち向える改革者という演出を図ったのではないか。彼にとって、エリートや主流派からの逆風は、長期飛行のための「浮力」のようなものだった。 何よりも暴言を吐き続けることで、支持者は慣れていった。「トランプがまたおかしなことを言っている」と笑って受け流す人が少なくなかった。もちろん眉をひそめる支持者もいたが、だからといって支持が、「エスタブリッシュメントの代表」というイメージが定着してしまったクリントンに流れる様子はなかった。 トランプは振る舞いも巧みだった。人前で慌てない。ステージではゆっくり歩く。どんな質問を受けても、ふんぞり返っている。知識のない分野でも、まるで熟知しているような口調で語る。集会では「私は軍幹部より「イスラム国( I S)」を知っている」と言い放った。 全米が注目する候補者討論会では、終了後に記者の囲み取材が発生し、テレビ局が生中継する。そのため主流派の多くの陣営は「失言」を恐れてか、候補者本人ではなく側近を出していた。しかしトランプは大勢の記者の目の前に堂々と姿を見せ、質問も受けていた。主流派の候補者たちが失言に怯える中、連日のようにインタビューにも応じる。こんなことが可能だった背景には、長年のテレビ出演で鍛えた即興でのやりとりの能力に加え、いまさら何をいっても失言にならないという究極のリスク管理があったと思う。」
—『ルポ トランプ王国-もう一つのアメリカを行く (岩波新書)』金成 隆一著
「 「オバマは、スピーチは美しいがね、製造業のために成果を出せたかな? いいかげん、ワシントンを揺さぶる候補者が必要だ。」」
—『ルポ トランプ王国-もう一つのアメリカを行く (岩波新書)』金成 隆一著
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ルポ トランプ王国2 ラストベルト再訪
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2016年の大統領選挙でトランプが当選し、その後、トランプが就任して1年ぐらい経った頃のルポルタージュです。
アメリカはニューヨークやサンフランシスコのような大都市とはまったく違うところがある、というのを前作と同じく実感しました。
ベトナム戦争や湾岸戦争の帰還兵に話を聞く章が印象に残りました。この本の主題とは関係ないですが、戦争で精神を病んでしまい、今も苦しんでいる人の話、体験が書かれていて、戦争は絶対にやってはいけないと思いました。
アメリカにも、トランプが大統領になって恥ずかしい、と思っている人がいることも書いてあって、ほっとしました。
インタビューされた人たちの多くは高齢者ですが、レーガン大統領、サッチャー首相になってから社会がはっきりとかわったと感じている人が多くいることが印象的でした。
今のトランプ大統領についてのルポルタージュもあったら読んでみたいです。 -
ルポ トランプ王国2 ラストベルト再訪
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トランプ関連書籍を読み始めてこれが4冊目になりますが、これまでの3冊と比較すると圧倒的に質が高いと感じました(その他の3冊の書評については私のレビューをご参照ください)。大統領選挙の1年ほど前からトランプ候補の支持者が多い地域への足で稼いだ生情報、非常に参考になりました。日本のテレビだけを見ていると、トランプを支持している女性なんて1人もいないかのような報道ぶりでしたが、現実は米国女性の41%はトランプを支持している。しかも本書に登場するトランプ支持者の女性は、変人でもなんでもなく、実直に働いてきた人々、という印象を受けました。より正確には「トランプ」という個人が支持されているわけではなく、これまでの既存政治家、エスタブリッシュメントへの反感がいかに大きいか、自分自身の生活をなんとかしてくれ、という強い思いを本書から感じました。
本書の最後にも著者が問いかけていますが、これは米国の民主主義の終わりの始まりなのでしょうか。この問いは本当に難しく、トランプ政権の誕生は行きすぎた資本主義に対する民主主義の逆襲という見方もできるわけですが、その結果として選ばれたトランプが民主主義を弱体化させるかもしれない、という皮肉な結果も十分ありうるわけです。つまり民主主義的な手続きを経て、民主主義を衰退させる指導者が選ばれてしまった、という可能性です。日本の将来を考える際にも非常に示唆が多い良書だと思います。 -
ルポ トランプ王国2 ラストベルト再訪
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トランプがなぜあの時勝ったのか。既に今のアメリカはトランプが1期やってバイデンになってさらに中間選挙が終わったところ。トランプを積極的でも消去法でも応援、投票した人々の顔がくっきりと見える。
『貧困になるのは「働かない人だけだ」「教育を受けなかった人だけだ」と。全部私には当てはまらない。両親や国家から、やるべきだと言われたことを私は全てやった。私は働き、学び、軍隊にも入った。それでなぜ、私は空腹なの?なんで借金返済ができないの?』
この人はトランプを応援している人ではない。オバマからトランプの間もずっと生活に苦しんでいる。そして自分の声を届けてくれると信じた候補者のために活動している。
選挙の時に活動するということがどういうことなのかもまた、彼らに教えられる。 -
Posted by ブクログ
朝日新聞記者によるトランプのアメリカのルポ。トランプが大統領になった直後のアメリカの現場の声といった感じ。
それにしてもアメリカの地方の実態は相当に悪く、記者も脅されているがアジア人なんかが近づこうものなら、すぐに犯罪に巻き込まれてしまうぐらい、薬物汚染にまみれ、仕事がない人が溢れている。
しかし、こんな状況だからこそ、トランプを支持する理由は理解できるわけで、要は普通の政治家を選んでいては彼らの生活は変わらないだろうことが予想できるからだ。だからといって、トランプでいいのか、という話なんだけども、、、。
トランプは結局金持ちで彼らと酒は飲まないし、彼らの生活を改善するための政策は打たないわけで、ただ不満のはけ口になるような言葉をろうしているだけなわけで、本当の意味で彼らのためにはならない。
だからこそ、他の政治家が気概をみせるべきなんだけど、常識的に振る舞うと大して何もできずに終わるということなんだろう。
1月6日の連邦議会襲撃事件を経てこのルポの時点よりアメリカの分断は進んでいてかなり手詰まり感が出てきていると思うし、2024年にトランプ再選になったらアメリカだけでなく、世界はどうなってしまうんだろうと思うほどに、絶望的な話ではある。 -
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トランプさんを支持する人はどういう理由かを迫った書籍です。
現地の人の訴えが分かるため、貴重な本です。
ラストベルトの人々の訴えは日本と全く同じだと思い、危機感を感じます。
基本的には、移民問題による雇用の減少がテーマとなっております。著者は統計データに基づき、トランプへの疑問や反対意見も挙げてますが、賛同できるところとできないところがありました。ですが、そこも含めて良いです。
私は、この本の反対意見も踏まえた上でトランプさんを支持しています。
この本で取材に応じておる現地の人々が、日本人より人情が溢れている感じがして、凄い好感を持てました。
現地の人の声で、「テレビが伝えるアメリカはエスタブリッシュメントばかりだ」「映画で見るアメリカはニューヨークやロサンゼルスばかりだ」という言葉には、確かにそうだと胸を打たれました。移民問題や人種差別問題が多く取り上げられ、少しずつ改善はしていってますが、裏では忘れ去られた白人の人々が貧困になっていることは見向きもされません。
あと、アメリカ国民の政治への関心がとても強いです。私の周りでは選挙に行かなきゃだめだとという考えを持っている人は多いですが、政治についての関心は他国と比べて本当に低いと思います。テレビやネットを見てなんとなく投票するでなく、国の命運をかけているという自覚を持ち、できる限り勉強をして投票をしてほしいです。
もしアメリカに行く機会があれば、この本で登場をした人々の街を旅行して地域貢献をしたいです。 -
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ネタバレルポ トランプ王国――もう一つのアメリカを行く (岩波新書) 新書 – 2017/2/4
アメリカン・ドリームが死んだ先にあるものは現状への怒りだ
2017年5月20日記述
金成隆一(かなりりゅういち)氏による著作。
現在、朝日新聞ニューヨーク支局員。
1976年生まれ。慶應義塾大学法学部政治学科卒。
(大学の恩師は久保文明氏)
2000年朝日新聞社入社。
大阪社会部、米ハーバード大学日米関係プログラム研究員、国際報道部などを経て、ニューヨーク特派員。
教育担当時代に「教育のオープン化」をめぐる一連の報道で第21回坂田記念ジャーナリズム賞(国際交流・貢献報道)受賞。
好物は黒ビールとタコス。
他の著書に『ルポMOOC革命―無料オンライン授業の衝撃』がある。
2015年11月~2016年11月まで
アメリカの特にラストベルト周辺、アパラチア山脈の人々へのインタビュー、連載記事をまとめた本。
TVの特集などでトランプ支持者について何となくわかった気になっていたけれども、本書を読んで問題はより根深く深刻であることがわかった。
トランプが強かったのはバーニーサンダース上院議員に人気があったのとつながっていた。
本書では第6章でサンダース支持者について紹介している。
可能であればサンダース支持に関してもより深く取材し記事を読んでみたかった。
著者はプロローグにあるように米大手メディアのトランプ番記者にトランプが大きく伸びる理由を教えられた。
このことが大きな示唆として取材のはずみになったに違いない。
しかしこの番記者、トランプの遊説先を地図に落としてみるなど分析に優れている。
本書を読むとウォール街、シリコンバレーなど一部の地域しか1990年代の好景気の恩恵を受けていなかったことが分かる。
野口悠紀雄氏が指摘するような米は日本と違い新産業が生まれ新しい経済構造があるという指摘を読んだりすることもある。
しかしそれはあくまで米の一部に過ぎないのだ。
むしろ大半の州はそうではなかった。
本書を読んでいてまるでバブル崩壊後の日本の不況と大差が無いではないか。
あくまでアメリカはアメリカ合衆国であり多くの国の連合体だということを再認識した次第である。
増えない給料、老朽化するインフラ、工場移転で地場産業が無くなり孫世代の就職先が無い。
白人中年層の寿命が短くなっていること。
広がる薬物汚染。
インタビューしていた3人組女子大生の内、1人が夢は学費を返済することだと返答していたのには驚いた。
アメリカン・ドリームは完全に死んでいる。
ミドルクラスの象徴でもあった長期休暇を取って家族旅行に行くことも出来なくなっている。
多くのミドルクラスが貧困層に陥る中、企業献金に頼らず労働者、生活者、有権者の為の政治を求めている。
トランプの行った敵意を焚き付ける方法は正しいとは思わない。
それでもトランプ躍進、サンダース躍進の背景問題が解決に向かわない限り、既存政治の延長線はあり得ないだろう。
それは次のアメリカ大統領選挙でも同様だろう。
その辺りを踏まえた政策が民主党にも求められているのではないか。
とは言っても著者の指摘するように製造業や石炭産業の復活などあり得ないとは思う。
メキシコ国境沿いの壁建設も資金面で
難しいかもしれない。ただ人々は簡単には国境を越えれないし簡単に転居出来る訳でもない。
(逆に言うと転居を厭わず動ける人の強みも見えた気がした)
非常に難しい問題だ。またそれは日本にも当てはまる問題だ。
夢を失った地域は活力を失う。
夢を喪失せず希望を見いだせる社会を築く為には
何が出来るのだろう。
放置して時間が解決する問題ではない。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ記者、ラストベルトに住む —— トランプ王国、冷めぬ熱狂 単行本 – 2018/10/19
自国優先主義の根っこにあるにはアメリカの地方の衰退
2019年9月16日記述
金成隆一(かなり・りゅういち)氏による著作。
2018年10月30日第1刷発行
1976年生まれ。慶應義塾大学法学部政治学科卒。
(大学の恩師は久保文明氏)
2000年朝日新聞社入社。
大阪社会部、米ハーバード大学日米関係プログラム研究員、国際報道部などを経て、2014年9月からニューヨーク特派員。
教育担当時代に「教育のオープン化」をめぐる一連の報道で第21回坂田記念ジャーナリズム賞(国際交流・貢献報道)受賞。
好物は黒ビールとタコス。
他の著書に「ルポ トランプ王国➖もう一つのアメリカを行く」
『ルポMOOC革命―無料オンライン授業の衝撃』がある。
著者のTwitterを確認すると現在、日本に帰国しているようだ。
2014年9月~2019年3月までニューヨーク支局員として
国連や米社会を取材。
経済部員、経済産業省の担当をしている模様。
金成氏の前回の著作であるルポ トランプ王国が面白かった為本書も読んでみた。
紙面(新書)の都合上掲載しきれなかったこと。
現地に滞在することでより深く取材できた事を記載している。
新聞記者の書いたものはやはり読みやすい。
本は書き手の力量次第で読みやすくも読みにくくもなるのだと改めて思った所だ。
トランプ王国にはなかったトランプへの批判、
白人至上主義者への取材などが入っている。
よく野口悠紀雄氏の著作ではアメリカは新産業が生まれ経済は成長を続けていると解説される。
ただそれは東海岸や西海岸などのアメリカの一部に過ぎない。
結局アメリカ合衆国で新しい産業、高度サービス産業に従事しその恩恵を受けている層は極一部に限られていること。
そして大半の人の収入は昔よりも減っているのだ。
読んでいてバブル経済崩壊後の日本と同じかそれ以上の苦境だと思わざるを得なかった。
(アメリカはインフレで物価が昔よりも高い)
多くの低技能移民がいる為、その層と仕事の奪い合いも起こる。
結果さらに所得が減っていく。
悪循環に陥っている。
有効な打開策が見つかっているとは言い難い。
トランプ氏支持層の判断が急に変わるとも考えにくい。
大統領選挙に限らず、選挙は現職有利だ。
あれだけバッシングを受けたブッシュJrですら勝利したのだからトランプも当然再選されるだろう。
もしどうしても民主党が政権を取り戻すのなら
本書で示された問題をいかに解決するかを考えなくてはならない。
印象に残った部分を紹介すると
大陸の真ん中が真のアメリカだ。(中略)もはやオレたちはかつてのようなミドルクラス(中流階級)ではなくなり、貧困に転落する寸前だ。
今回は、真ん中の勝利だ。
他の先進国でも、米国内の他の人種や年齢層でも、医療の進化などで死亡率は落ちているのに、米国の白人の中年(45歳~54歳)だけは死亡率が高まっている、というのだ。
死亡率の上昇の原因は、心臓病や糖尿病という典型的な疾病ではなく、自殺や薬物乱用に起因するものだった。
アメリカの地方を取材していて、よく耳にする言葉が「ハンズオン」という言葉だ。
「両手を動かしてする仕事」「手に職をつける」
ぐらいの意味だが、共通の理解としては、わざわざ借金して大学を出なくても、少しずつ経験を積むことで素人にはできないことをできるようになり、食べていける仕事というニュアンスがある。
具体的には、大工や調理師、配管工、溶接工、ヘアスタイリストなどで高学年になると在学中に職業訓練をするコースを選べる公立高校もある。
アメリカが世界で郡を抜いて裕福な時代に海外援助で先頭に立つのは許容できた。
でも目の前の道路すら整備できなくなった時代に、
なぜ他国を支援し続けないといけないのか。
しばらくはアメリカの地方の惨状を改善するため、「アメリカ第一主義」を前面に掲げたっていいんじゃないか。
そんな主張だ。
私の2年半に及ぶ取材を通じても、このエリアの高齢者の思いが凝縮されたような話だ。
ここに「自国優先主義」の根っこがある。
かつて常識だった時給20ドルほどの職場はなくなり、街全体から活気が失われ、前後して薬物の蔓延も始まった。
薬物の過剰摂取で若者が搬送されるのは日常茶飯事だ。
オレたちの時代は、今の感覚でも時給20~25ドルは当たり前に稼いでいた。
1つの工場に行くだろ?解雇されるかもしれないけど、
そうなれば隣の工場に行くだけだ。
翌日には隣の工場が雇ってくれる。
それほど仕事があふれていて、勤労倫理が街全体に浸透していた時代だった。
当時は高卒の18歳で働き始め、30年間働き、48歳で引退する人が多かった時代だよ。
それが普通の時代だった。
みんな「30年働き、去る(You got 30 years in,you can leave.)」
と言っていた。
私もそうしたわけだ。
それで十分な貯蓄ができたし、社会保障も年金も十分にもらえるからね。
とてもよい仕事がこの街にはたくさんあったが、
今では全部なくなってしまったね。
米国内で「オピオイド(Opioid)」と呼ばれる薬物の過剰摂取が社会問題となっている。
オピオイドそのものは医療用鎮痛剤として
使われてきたが、常習性が強く、依存症が広がった。
さらにヘロインなどの過剰摂取に陥るケースも多い。
薬物の過剰摂取とオピオイド関連の死者が米国で増え続けている。
薬物の過剰摂取による死者のうち、6割以上にオピオイドが関係している。
2016年にオピオイドが関連した死者(ヘロインを含む)は1999年比で5倍に増えた。
1999年~2016年に全米で63万人以上が薬物の過剰摂取で死亡した
2016年の死者は全米で6万3千人以上。
毎日172人が死亡している計算だ。
アメリカの地方を車で走っていると、どこも風景が似ている。
同じ道を以前通ったような錯覚を覚える。
フランチャイズのファーストフード店、コンビニ、ガソリンスタンド、モーテル、「1ドル均一ショップ」が並んでいることが理由だ。
(個人的な感想だが、これは日本国内も殆ど似た感じだと思う)
トランプが「おぞましいフロリダの銃撃の被害者とそのご家族に祈りと哀悼の意をささげます。生徒、先生、その他、誰であれ、アメリカの学校で危険を感じるべきではありません」とTwitterで
発信したところ、生徒から「哀悼の意などいらない」
「何人もの私の級友が死んだのた」
「祈る代わりに何かやれ(Do something instead of sending prayers.)」
「祈りは問題を解決しないが、銃規制は事件の発生を防ぐだろう」
との反発が相次ぎ、それらが瞬く間に拡散した。
特に「祈る代わりに何かやれ」とのメッセージは、おそらく多くの人が以前から感じていたのだろう、その後の集会でも盛んに掲げられるようになった。
せっかく仕事を覚え、技術を身につけても、工場そのものがなくなってしまえば、どんな積み重ねも無意味だよ
アメリカの製造業はいずれ海外に出て行く運命にある。
そう思い知り、2度目の解雇の後は長距離トラックの運転手になった。
勤務は過酷だった。
シカゴ-カリフォルニア間の3500キロをレタスなど野菜を満載にした大型トラックで毎週往復した。
1度自宅を出ると2ヶ月間は車内での暮らしが続く。
自宅に戻れない。
「ずっとトラックと自宅だけ。(孤独が)きつかった。子供の成長にも立ち会えない。クリスマス休暇も留守なので、妻が私のために食事をオハイオの自宅からシカゴまではるばる運転して届けてくれた」
オハイオからシカゴまでは640キロあり、車で片道7時間かかる。
家族との暮らしを犠牲にしても週給600ドルほどだった。
年収に換算して3万ドル(330万円)。
ジャーメインは、長距離トラックの仕事は自らあきらめた。
すでに30歳代半ば、なかなか思うように仕事が見つからない。
やっと知人が営む建設会社で雇ってもらえた。
それが今の仕事で、そろそろ丸2年になる。
ジャーマインは高卒後の20年間の年収を振り返った。
製鉄工場とアルミニウム工場で働いていた時は年収5万ドル(550万円)あったが、トラック運転手で3万ドルに落ちた。
「そして40歳目前の今、最低賃金で働いている。
20歳代の頃より半分ぐらいにまで稼ぎが落ちている。今、工場の仕事を見つけても時給8~9ドルでのスタートだ。危険な重労働でもファーストフード店と変わらない。あんまりだろ?悲しいだろ?会社が稼いだ金はどこに消える?この地域で今も時給20ドルを払っているのはGMだけになった。GMには今も組合がある。とはいえ、まもなくそれも終わるだろう。GMが組合の排除に成功すれば、ほかの工場と同じ水準まで落ちる。なんで時給20ドルも払う?メキシコなら5ドルじゃないか となるわけだ。組合がなくなれば、車の製造ラインで働くのも、みんな非正規労働者になるだろう。オレが働いていた製鉄工場もアルミ工場も当初は組合がしっかりしていたが、組合が一層されたとたんに会社が買収された、社名が変わると聞かされ、労働者がクビになり、運良く残れても労働条件が下がった。周囲からも同じパターンの話ばかりが聞こえてきた。やっている仕事はほとんど変わらないのに」
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ルポ トランプ王国2 ラストベルト再訪
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Posted by ブクログ
ネタバレルポ トランプ王国2: ラストベルト再訪 (岩波新書) 新書 – 2019/9/21
もう私達の知っていたアメリカ合衆国は無くなった
2020年5月31日記述
ルポ トランプ王国2 ラストベルト再訪
金成隆一氏による著作。
2019年9月20日第1刷発行。
1976年生まれ。慶應義塾大学法学部政治学科卒。
(大学の恩師は久保文明氏)
2000年朝日新聞社入社。
大阪社会部、米ハーバード大学日米関係プログラム研究員、国際報道部などを経て、2014年9月からニューヨーク特派員。教育担当時代に「教育のオープン化」をめぐる一連の報道で第21回坂田記念ジャーナリズム賞(国際交流・貢献報道)受賞。
好物は黒ビールとタコス。
他の著書に「ルポ トランプ王国 もう一つのアメリカを行く」
『ルポMOOC革命―無料オンライン授業の衝撃』がある。
トランプ大統領を支持、不支持をしたアメリカの市井の人々の話を取材しまとめた本。
回答した人々の顔写真もついていて良い。
とのトランプ王国2は前著に比べるとあまりヒットしていないようだ。
しかし、未来に当時アメリカの人々は何を思っていたのかという
第1級の資料になる事は間違いないと言える。
いつインタビューしたのか西暦、年月日が入っている点も良い。
今コロナウィルスの影響で2000万人もの失業者が出たアメリカ。
本書で出てきた人々にも多大な影響が出ていると思う。
そういった中で果たしてトランプ再選がなるのかどうか・・・
バーニー・サンダースが民主党候補として今回も出てこれない。
バイデン氏で果たしてトランプに勝てるのか・・・・
現職有利であることは間違いない。
ただ分からない要素が多い。
今回はどのメディアもまだ勝敗予想とかを出していないように思う。
相当に変数が多くて難しいという事だろう。
また別件で意外だったのが、ベトナム戦争時に
アメリカ兵が地上にいたにも関わらず枯葉剤をまいていた事だ。
ベトナム人だけではなくアメリカ兵も犠牲になっていた。
関税を引き下げて自由貿易を推進することで互いの国々が交易の利益を得ると経済学では解説される。
しかし現実社会ではそれは難しいというという実例をこれでもかと紹介された思いがする。
結局そこに人間が介在している以上は簡単にはいかない。
ただ同時に同じ仕事をずっと続けることができるほど幸福な時代はもう過ぎ去ってしまったということも言えるだろう。
常に勉強や努力を(方向性を大きく間違えず)続ける。
可能ならば住居地も動くことができる。
そんな生き方を模索するしかない。
ただ全員が全員そうは動くことも出来ない。
大変に難しい問題だと思う。
印象に残った点を下に列挙していきたい。
ラストベルトの労働者たちは、一般的に労働組合に属し、民主党を支持する傾向が強かった。彼らに「そもそもなぜ民主党支持だったのか?」
と質問しても、「そんなこと考えたこともない」
「この街で生まれ育てば、親の代から、みんな民主党支持だた」などと答える人が多い。
同じ街で暮らしていると昔の人間関係が戻ってしまうのね。小さな街だから。
後で調べると、ティモシーの「オバマフォン」発言は間違いだった。
「オバマフォン」とは、実際は連邦通信委員会が共和党レーガン政権下の1985年に始めた低所得者向けの制度「ライフライン」で、通話や通信を提供する。月額9ドル25セントで「無料」でもない。
ワシントン・ポストによると、オバマが就任した2009年ごろから、誤った情報が匿名メールなどで拡散し、ラジオ番組は「オバマがマイノリティや
貧困層を選挙に動員する道具として無料配布中」という陰謀論まで流していたという。
私はオバマフォンを理由にオバマ政権や民主党を批判する人に多く出会ってきた。
シンプルな偽情報は広がりやすく、何年経っても修正されない。
そんな典型例のように感じた。
トランプは「雇用を戻す」と連呼してきた。
この日の集会でも「出て行った仕事は「全て」戻ってくる」と言い切っていた。
ただマークもジョーも、それが無理なことは「わかっている」という。
非現実的と批判されることが多いトランプの言葉を、彼らはそのまま信じているわけではない。
ここにトランプ政権が一定の支持率を維持できている理由がある気がした。
↓
トランプが約束の1割でもやれば十分だよ
溶鉱炉の建設には膨大な資金が必要で戻ってくるわけがない。
そんなことはわかっている。トランプには環境規制の緩和やインフラ整備などでビジネスを刺激し、若い世代に少しでも仕事をつくってもらいたい。
地元の民主党トップ、デビッド・ベトラス
トランプのヤングスタウン集会の評価
私(著者)はこの民主党委員長ほど、この地方の実情を的確に説明する人を知らない。
彼は、アメリカの都市と地方の分断を皮膚感覚で理解している人物だと思う。
「あの演説の最大の見せ場は、「家を売るな」です。この意味がわかりますか?
この地域の労働者たちは、地元から仕事がなくなってしまったから、
価値の下がった自宅を二束三文で売り払って、どこかに引っ越すべきかと悩んできたわけです。
知ってか知らずか、トランプは「家を売るな」
「私が仕事を取り戻す」と言った。つまり、「私が仕事を取り戻すから、皆さんは大切にしてきたコミュニティにとどまって下さい」という
メッセージです。みんなそんな言葉を待っていた。
だから彼の演説に夢中になるんです」
オハイオ州などラストベルト諸州で連勝し、トランプ大統領が就任して半年。
民主党は敗北から立ち直れていますか?
民主党全国委員会はまだ敗因を十分に理解していない。
党の将来を全く楽観していません。
まず、トランプの言動一つ一つを
非難することをやめることが重要です。
非難ばかりしていると、
それが当たり前になり、誰も聞かなくなる。
民主党は失敗を今も繰り返している。
トランプや支持者を、人種差別主義者や
外国人嫌い、バカなどと侮辱すれば、彼らは二度と民主党に戻らない。
怒りにまかせての批判をやめないといけない。
批判は(自身への)支持にはならない。
有権者に響く方向性を示し、
メッセージそのもので勝たないといけない。
選挙期間中、街中にはトランプの看板があふれていました。
公式の看板だけでなく、手作り看板も多かった。
支持者が自宅ガレージで気持ちを込めてトランプ支持を呼び掛ける看板やポスター、バッジを作っていたのです。
あれは本物の支持者ですよ。
クリントンのメッセージが労働者に響いていないことは明白でした。
同じことは、ミシガンやペンシルベニアなど
他州の労働者にも起きているはずだ、と思ったのです。
製造業の流出に拍車をかけた自由貿易協定や貿易赤字などの争点で、立場を変えたクリントンは信頼されていなかった。
労働者の立場から声高に一貫して自由貿易を批判したのはトランプだけだった。
彼は黄金の便座に腰掛けながらラストベルトの労働者に
「皆さんはだまされたのです」
「私がワシントンに乗り込み、既成政治家の
問題を一掃してきましょう」とツイートを送り続けた。
彼には執事もメイドも調理人もついているでしょう。
アメリカ人の普通の暮らしがどんなものかも知らないはずだ。
そんな候補者に我々は負けたのです(頭を抱え込む)。
民主党は今後、どう変わるべきですか?
配管工、美容師、大工、屋根ふき、タイル職人、工場労働者など、
両手を汚して働いている人に敬意を伝えるべきです。
重労働の価値を認め、仕事の前ではなく、
後に(汗を流す)シャワーを
浴びる労働者の仕事に価値を認めるべきです。
彼らは自らの仕事に誇りを持っている。
しかし、民主党の姿勢には敬意が感じられない。
「もう両手を使う仕事では食べていけない。教育プログラムを受け、学位を取りなさい。パソコンを使って仕事をしなければダメだ」。
そんな言葉にウンザリなんです。
労働者たちに民主党は自らを「労働者、庶民の党」と伝えてきたが、民主党や反トランプ派はメディアを通じて(性的少数派の人々が)
男性用、女性用どっちのトイレを使うべきか、
そんな議論ばかりしているように見えた。
私が選挙中に聞かされたのは
「民主党は、私の雇用より、誰か(性的少数派の人々)の便所の話ばかりしている。」という不満だったのです。
そもそも、この地域で民主党支持だった労働者の多くは自らをリベラルとは認識していない。
リベラル派の争点は、彼らにとって最重要ではないからです。
労働者の関心は、よい仕事があるか、きちんと家族を養えるか、子供の誕生日にパイを用意できるか、教育を用意できるか、十分な休暇を取れるか、
自分の仕事に誇りを持って引退できるかなのです。
かつての製造業をラストベルトに戻すのは容易ではないと多くの人が言います。
そんな言葉は候補者の口から聞きたくないんです。
労働者の再教育という訴えも何度も聞かされた。
40歳代や50歳代になってプログラミングなんて出来ませんよ。
そんなメッセージは響かない。
なぜ労働者のための政策を実施すると訴えないのか。
インフラ整備は代表例。
古びた橋や道路を補修すれば多くの雇用になる。
彼らは汗を流して自分の腕で稼ぎたがっているんです。
トランプはそれがわかっていた。
労働者には、彼がワシントンに乗り込み、
既成政治家や利益団体と闘うファイターにうつった。
その気概がうれしかったのです。
具体例を挙げましょう。
トランプは就任前から工場移転に介入し、
「1千人超の雇用を守った」と誇った。
でもね、そのとき民主党側は
「ウソだ、守られたのは500人だ」と反発した。
必死でした。
それを聞いて、私は再び頭を抱え込んだ。
500人でも守られればプラスじゃないか、と。
その500人の雇用を本来守るのが民主党の仕事ではなかったのかと言いたかった。
今の左派の振る舞いは、保守派の思うつぼだ。
ICE廃止を掲げる政治家なんてアメリカ大陸の真ん中では信用されない。
最もマヌケな政策だ、頼むから黙っていてくれ
懸念するのは、保守派メディアが民主党の左派の主張をあたかも民主党を代表するものであるかのように報じ、警戒心をあおるからだ。
代表格がFOXニュース。オカシオコルテスの映像を流し、
「極左」「彼女は全米の人々が自分と同じ考えだと思っている」と伝えてきた。
アメリカ人の大半は、警察官や消防士ら最前線で法律を執行する人々に敬意を払う。
公務中に命を落とすなど危険な職務だ。
一翼を担うICEの廃止を掲げることには反発が起きやすい。
都市部で歓迎されても、地方では党内の候補者の足を引っ張る、という懸念だ。
大学の同級生は、みんなハイパーリベラルだ。
ところがここに帰省すると(ペンシルベニア州ルザーン群)
周囲はトランプ支持者になり、超保守的になる。
僕は明らかに同級生の中では保守派。
でも、移民を悪く言うトランプには完全に反対で、
そんなことを言うのは心が閉じているからだと残念に思う。
ところが、ハイパーリベラルの側も、異なる意見を持つ相手に「間違っている!」と非難するばかりで、まったく聞く耳を持っていない。
僕は、2つの「心の狭い」人々に挟まれていて、ちくしょう!という気分だよ」
帰還兵は一般に比べてトランプ政権を高く評価しているようだ。
公共放送PBSによると、2018年の中間選挙で投票した人のうち、
帰還兵の男性の58%が政権を「支持」していた。
これは一度も軍隊に属したことのない男性の46%に比べて高かったという。
一方、帰還兵の女性の58%は「支持していない」と答えており、
これは軍隊に属したことのない女性の61%と大きな違いはなかった。
全体では、帰還兵と軍人の56%が大統領トランプの仕事ぶりを「支持」しており、
43%が「不支持」だった。
一度も軍隊に属したことのない人の間では
「不支持」(58%)が「支持」(42%)を上回ったという。 -
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本作は、トランプが大統領になった後の取材をもとにしたものです。
トランプ支持者(大統領になる前は支持していた人)への取材がメインですが、著者はトランプ支持者という訳ではなく、なぜトランプなのかというような立場であり、トランプの発言の誤りや支持者の誤解も適宜指摘しているため、バランスのいい構成になっていると思いました。
前作と本作を読んだことで、アメリカ大統領選挙関連のニュースや記事の捉え方も大きく変わりました。
色々論点はあるでしょうが、福祉制度や雇用創出といった課題に対する政策に注目していきたいなと思いました。
トランプは移民排除や貿易協定の見直し、オバマケアの廃止などをアピールしていましたが、今回の大統領選挙はどうなるのでしょうか。 -
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