【感想・ネタバレ】ルポ トランプ王国 もう一つのアメリカを行くのレビュー

あらすじ

なぜトランプなのか? ニューヨークではわからない。アパラチア山脈を越え、地方に足を踏み入れると状況が一変した。明日の暮らしを心配する、勤勉なアメリカ人たちの声を聴く。そこには普段は見えない、見ていない、もう一つのアメリカが広がっていた。朝日新聞の人気デジタル連載「トランプ王国を行く」をもとに、緊急出版!

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313P

金成隆一
茨城県出身。2000年朝日新聞入社。2005~09年の大阪社会部ではトラック運転手の同乗ルポや事件の取材に没頭。2009~10年米国留学。2011年に社会部に戻ると、東日本大震災を機に米公文書館に通い、1950年代の米政府の対日本「原子力平和利用」政策を調査報道。その後、教育担当になり、オンライン教育の急速な発展を米国やモンゴル、ドイツで取材。2014~19年ニューヨーク支局員として国連本部や米社会を担当。戦闘部隊の強化など、変容する国連平和維持活動(PKO)をコンゴ民主共和国から報道。2016年大統領選では前年からラストベルトに通い、草の根のトランプ旋風を伝えた。2019~20年は東京経済部で通商政策を担当。2020年3月に機動特派員になり、米大統領選を取材。2021~23年は欧州総局員(在ロンドン)として、ロシアの軍事侵攻を受ける前後のウクライナや英イングランド北部の社会を取材。帰国後の23年9月から2年間は大阪社会部でデスク勤務しました
第36回大平正芳記念賞特別賞(『ルポ トランプ王国』『ルポ トランプ王国2』で)
2018年度ボーン上田記念賞(大統領選など一連のアメリカ報道で)
第21回坂田記念ジャーナリズム賞(「教育のオープン化」報道で)
仕事で大切にしていること
いまいち理解できない現象について、現地取材を通して、自分で考えて、背景や構造を伝える努力を大切にしたいです。

「サイレント・マジョリティーが吐き出す不満  トランプの集会後、会場の外で支持者に話を聞くと、堰を切ったように不満を吐き出した。多くが、日々の暮らしに根差す不満だった。自らの体験に基づいているので真剣そのものだ。  元教師のマリリン・マックウィリアムス( 59)がまず口にしたのは、「壁」への熱い支持だった。  「トランプは壁を建設してくれる。彼の主張がストレートなのが好き。(保守系)フォックスニュースでいつもトランプを見ているけど、見れば見るほど、彼のことが好きになるわ。こんなに大きな国の中で、彼がこの街に来てくれたことがうれしい。テキサスは不法移民問題が深刻なので選んでくれたと思う」  「街でスペイン語が当たり前になっていることが不気味。ここはアメリカなのよ」と憤りも口にした。食料品店に並ぶ商品のスペイン語表示が増えているだけでなく、時にスペイン語の表示の方が英語より大きいことが気に入らない。」

—『ルポ トランプ王国-もう一つのアメリカを行く (岩波新書)』金成 隆一著

「 「彼はポリティカル・コレクトネス(政治的な正しさ)で批判されることを恐れていない。とても強い。経営者として常に判断を迫られてきた。そんな経験が豊富な指導者がこの国には必要なのよ」と語った。ここまではトランプへの前向きな評価と言える。  ところが、ここからは社会への不満一色になった。  「国境を守らないと国が崩壊するわよ。不法移民の流入を食い止めるべきよ。私たちは彼らにあまりにも多くの自由とお金を与えすぎた。福祉に依存するようになり、その重みでアメリカが沈みそうよ。税金を払う人がどんどん減ってきて、自宅のソファで日中からテレビを見る人が増えたら、オシマイでしょ。彼らのフードスタンプ(政府が生活困窮者に発行する食料配給券)を支えているのは、私たち働いているアメリカ人。彼らは一時的な困窮から脱する方法としてではなくて、福祉に依存することをライフスタイルにしていて、生涯それで暮らしていくつもり。それは許されない」」

—『ルポ トランプ王国-もう一つのアメリカを行く (岩波新書)』金成 隆一著

「 「今の政治家は、みんなうさんくさい。代表がヒラリー・クリントンだ。(国務長官時代に公務で私用メールアドレスを使った問題では)すべてのメールを捜査当局に提出したと言いながら、その後にまた別のメールが見つかった。信用できない。でもトランプは全部ホンネだ。彼が言うことは、彼が本当に考えていることだ。時に言い過ぎるけど、それも含めて憎めない」  この街で、最も支持されていたのは、トランプの「壁」だ。ベンジャミンも「普通の政治家はあんなこと言わないけど、このあたりじゃ多くの人が考えていることだよ。壁ができて、不法滞在のメキシコ人を追い出せば、私たちに仕事が戻ってくる。仕事を取り戻せる」」

—『ルポ トランプ王国-もう一つのアメリカを行く (岩波新書)』金成 隆一著

「 「今の政治家は、みんなうさんくさい。代表がヒラリー・クリントンだ。(国務長官時代に公務で私用メールアドレスを使った問題では)すべてのメールを捜査当局に提出したと言いながら、その後にまた別のメールが見つかった。信用できない。でもトランプは全部ホンネだ。彼が言うことは、彼が本当に考えていることだ。時に言い過ぎるけど、それも含めて憎めない」  この街で、最も支持されていたのは、トランプの「壁」だ。ベンジャミンも「普通の政治家はあんなこと言わないけど、このあたりじゃ多くの人が考えていることだよ。壁ができて、不法滞在のメキシコ人を追い出せば、私たちに仕事が戻ってくる。仕事を取り戻せる」  言い回しまで、トランプに似ている。  「キミは知らないと思うけど、ここはホントに不法移民が多い。そして私たちの社会保障制度を利用し、政府から吸血鬼のように金を吸い上げる」  演説会場からどんどん支持者が出てくる。その様子を見てベンジャミンが言う。  「みんなトランプが大好きだ。中には不法移民に家族を殺害された人までいる。不法にアメリカに滞在している人が、社会に負担をかけるのは間違っている。テキサスの人々は、この国の政治家がおかしなことばかりすれば、本気でアメリカからの離脱を主張するからね。トランプが大統領にならなければ、テキサスを独立国にする動きを活発化させたいね」」

—『ルポ トランプ王国-もう一つのアメリカを行く (岩波新書)』金成 隆一著

トランプ支持者は反知性的、田舎の貧乏人ばかり、みたいに思い込んでいる人には、ぜひジャーナリスト金成さんの名著『ルポ トランプ王国』を読んで見て欲しい。取材を照れくさそうに受けるトランプ支持者達のほとんどはごく普通の労働者たちなんよ。

同性婚で盛り上がってるツイッターを見て、トランプ当選前夜のアメリカを取材した名著『ルポ・トランプ王国』でブルーカラー労働者が『政治家たちは俺たち労働者の雇用問題よりもTGがどちらのトイレを使うべきか?といったような話ばかり議論するようになってしまった』と嘆いていたのを思い出した。

「グリーンビルでは「ほとんどの人が失業中」という。「結局は雇用だね、雇用が一番の問題だ。仕事さえあれば、だれもドラッグなんてやらないよ。仕事にいかなきゃならないからね」  「若者は仕事がないと大変なことになる。トランプには海外から入ってくる鉄に高い関税をかけてもらって、競争をフェアなものにしてほしいね」  ディーンは最後に、共和党元大統領のブッシュの批判も口にした。  「この国の最大の問題は、職業政治家の存在だ。業界から献金をもらっていて、庶民よりも業界の利益を優先する。政治家にも、レーサーのような、スポンサーのロゴ入りスーツを着用させるというアイデアはどうだろうか?  一目で、あいつは製薬業界の代弁者、こいつは軍需産業の代弁者とわかるだろ?」  ディーンのアイデアに、周囲のトランプ支持者は「最高のアイデアだ」と盛り上がった。」

—『ルポ トランプ王国-もう一つのアメリカを行く (岩波新書)』金成 隆一著

「 トマスの携帯電話には、職場の写真も保存されていた。人間の背丈の 2倍ぐらいの太さのパイプが写っていた。そこで男性が何やら作業している。トマスが自分の仕事を説明してくれた。  「ここに写っているのがオレだ。ガスの大型パイプラインを屋外で溶接している。きつい仕事だぞ、毎晩、疲労で手を握ることすらできなくなる。こうやってグーにして握れなくなる。手が痛む、毎晩痛む。もうこれ以上、働けないって思って、やっと休暇をとってバルバドスに行った。あのときのオレには、バケーションが必要だったんだ」  これまでパスポート不要のカナダには行ったことがあったが、本格的な海外旅行は 42歳で初めてだった。トマスの話は、いまの暮らしへの不安に移った。  「キミは保険に入っているか?  そうか、日本の人はうらやましいな。オレはこんなに働いているのに、勤務先が掛け金を払えないと言い出して、ついに無保険になった。もう 42歳だろ、心配だよ。いつ病気になるか、わからないじゃないか。 42歳にして人生初の無保険だよ」  するとテーブルの反対側に座っていた、酔っぱらった白人の中年男性が話に入ってきた。「オレの勤務先は宅配便の配送センターだが、保険は最高だ。病院に行くことも心配にならない。大企業だから独自の保険を運用しているんだ」  トマスがうらやましがると、男性は肩を落とした。「でも時給は 13ドル(約 1500円)。ここ数年間は上がっていない。保険はいいが、(ほかの仕事にくらべると)時給は低いんだ」」

—『ルポ トランプ王国-もう一つのアメリカを行く (岩波新書)』金成 隆一著

「トマスは、州立大学で経営学の学位を取得したが、「ちっとも活かせていない。もし 20年前に自分の人生を巻き戻せるなら、自動車整備とか溶接とか、もっと自分の手を使ってやる技術を身につけたかった。まさに今、毎日やっていることをきちんと学びたかった」  学費の返済残高は今も 8万ドル( 920万円)。毎月 700ドル(約 8万円)の返済に苦しむ。  「 42歳でまだ、役に立たなかった学位の取得費用の返済に苦しんでいる。子どもの養育費、食費、ガソリン代、時々の飲み代を払うと、手元にほとんど残らない。笑い話じゃないんだ」  「学生は大学に通って、借金をつくり、肥えるのは大学だけ。学位なんてフェイク(偽物)だ」「トランプに何を期待するか?  アメリカを再び偉大にしてくれりゃ、それでいいんだ」」

—『ルポ トランプ王国-もう一つのアメリカを行く (岩波新書)』金成 隆一著

「ミシェルの実家は、ヤングスタウンで約 40年続くサンドイッチ屋だ。彼女も高卒後ずっと店で働いてきた。彼女の話は、「学歴社会」への疑問と批判だった。  「祖父がサンドイッチ店を成功させたの。でも実は、彼は大学を追い出されたのよ。成功に学歴なんて関係ないのよね。彼を見ていて「人生っておもしろい」って思い、大学に進むのはやめた。祖父は「大学費用は出す」と言ってくれていたけど断った。スモール・ビジネス(自営業)の一家に育ったから、実業家のトランプに惹かれているのだと思うわ」」

—『ルポ トランプ王国-もう一つのアメリカを行く (岩波新書)』金成 隆一著

「 「アメリカって結局はみんながだまし合っているんじゃないのって思う。ジノの話を聞いたでしょ?  彼も州立大学を卒業しているのに、いまの稼ぎはゼロ。大学なんて若者に借金させてカネ稼ぎしているだけじゃないの?  いまの私には何が正しいのかわからないの」」

—『ルポ トランプ王国-もう一つのアメリカを行く (岩波新書)』金成 隆一著

「 「私は、自分がハシゴの下の方の横木 ​( the ​ ​ lower ​ ​ rung ​ ​ of ​ ​ the ​ ​ ladder) ​だと自覚している。なぜ、アメリカの億万長者は、アメリカ人の業者を使わず、さらに安い不法移民を使うんだ。自分の財布のことばかり考え、地域のことなんてちっとも考えていない。ブッシュ家のような、共和党のエスタブリシュメントも同罪だ。不法移民が増えても、銀行員などの高学歴エリートたちは仕事を奪われる心配がないだろうが、オレたちには深刻なんだ」  「私はここで生まれ育ったアメリカ人だ。私は、稼いだカネを、ここで使う。赤ん坊のミルクを買い、子どもの服やおむつを買う。カネは地域に循環する。社会ってのはそんなもんだろ?  でも不法移民はため込んで、南の方に送金するばかりだ」」

—『ルポ トランプ王国-もう一つのアメリカを行く (岩波新書)』金成 隆一著

「ここから現職の政治家の批判と自分の宣伝に切り替わる。ライバル候補のクリントン批判も続く。クリントンは「現状維持」、自分は「変化」の象徴である、という単純な構図だ。  「数百万人の労働者たちが貧困と苦悩の中に置き去りになっているのに、政治家は何もしませんでした。私たちの仕事がなくなり、高い失業率に苦しんでいるというのに、彼らは何年もの間、傍観してきました」  「多くの地域では今も回復の兆しはありませんし、今後も回復しないでしょう。私が大統領にならない限りは。私が大統領になれば、すぐに回復します。政治家は私たちの生活手段を奪いました。愛する仕事が何千マイルも遠くに送られていくのを眺めていました。ペンシルベニア州の多くの街々はかつて栄えましたが、グローバリゼーションはミドルクラスを全滅させました。まだ取り返せます。しかもすぐに」  「しかし本当の変革を目指すなら、威圧的な政治家や政治の王朝は拒絶せねばなりません。彼らは現状を維持させるためには何でもやります。システムを不正に操る人間はクリントンを支持します。彼らは、クリントンが政権に就けば、現状を維持できることを知っているからです。街は貧しいまま、工場も閉鎖されたまま、そして国境は開きっぱなしになります。クリントンとグローバルな金融業界にいるクリントンのとりまきたちはアメリカ人が夢を描くことを断念させ、より良い未来のために一票を投じることを阻もうとしているのです」」

—『ルポ トランプ王国-もう一つのアメリカを行く (岩波新書)』金成 隆一著

「 「アメリカニズムよりもグローバリズムを崇拝した指導者たちのせいです。今こそ、経済的独立を宣言するときです。それはドナルド・トランプに一票を投じるということです」」

—『ルポ トランプ王国-もう一つのアメリカを行く (岩波新書)』金成 隆一著

「公立学校で聖書を読む。そんなキリスト教の信仰を基盤とする、白人中心のアメリカ社会が当たり前だった世代にとっては、「白人のマイノリティー化」が予測されるまでに至った、今のアメリカはまるで別の社会に見えているのだろう。」

—『ルポ トランプ王国-もう一つのアメリカを行く (岩波新書)』金成 隆一著

「オバマを一般論としては支持するけど、今のアメリカには「変化」が必要です。  アメリカには途方もなく裕福な人々がいる。それなのに税金をほとんど払っていない富裕層がいるって本当でしょうか?  私がもし富裕層になれたなら、きちんと納税して社会に貢献するけど。今の社会はバランスが悪い。あまりに不公平がまかり通っている気がします。」

—『ルポ トランプ王国-もう一つのアメリカを行く (岩波新書)』金成 隆一著

「 実はオバマケア(医療保険制度改革)の負担が苦しい。保険の仕組みは複雑でよくわからないけど、私の身に起きている影響については、自分でよくわかっています。思っていた以上にオバマケアは負担額が大きかった。オバマケアが導入される以前に戻して欲しい。私たちには一定の(オバマケアに入る、入らないという)選択肢があるべきだと思う。みんなが社会保険に入るべきだとも思っていたけど、あまりに負担が大きすぎる。今の私は健康で、保険を必要としていない。それでも高いお金を負担しないといけない。  今のアメリカは生活費も高すぎます。サービスも食料も、何でも高い。月末にお金が残らない。私はきちんと働いているというのに、普通の暮らしを営むことも難しい、もう 3年間もバケーション(長期休暇)で家族旅行にも出られない。昔は 1年に 1度、 1週間ぐらい太陽の近くに行っていた、(南の方の)暖かい地域へ。ここニューハンプシャーは寒いでしょ。少しずつお金をためてね。でもそれが難しくなっている。パンの値段も上がっている、食料品が高い。最近安くなったのは、ガス代ぐらい。でも、それが元に戻ったらどうなるのよ?」

—『ルポ トランプ王国-もう一つのアメリカを行く (岩波新書)』金成 隆一著

「 私はアランにも同じ質問をした。「自分をミドルクラスと思いますか?」  アランは笑って否定した。  「答えはノー。ミドルクラスは消滅しかかっている。十分な収入を得て、子どもを育てて学校に送り出すことができないんだから。ウェストバージニアはアメリカの貧しい地域だ。この街の人はバーニーやトランプに惹かれる。私にとってのミドルクラスとは、アメリカン・ドリームを信じて生きられることだ。有力者や企業経営者が富の大半を持って行ってしまう社会では、アメリカン・ドリームも死に絶えている。まじめに働けば、まっとうな暮らしを送れることを望んでいるだけなのに」」

—『ルポ トランプ王国-もう一つのアメリカを行く (岩波新書)』金成 隆一著

「 なぜ、アメリカでは社会主義が支持されないのか。ドイツの社会学者ヴェルナー・ゾンバルトは 1906年の著書で、アメリカの労働者たちが社会主義に傾倒するには裕福すぎる点を以下のように指摘した。  「次に述べることは間違いがない。アメリカ人の労働者は心地の良い環境で暮らしている。概して彼らは抑圧的なまでに劣悪な住環境というものに縁がない」「男性は紳士のように、女性は淑女のように身なりを整えているため、自分たちと支配階級を隔てるギャップに外見上は気づかない」  「こういった状況では、特に快適な生活水準が永久に続くと明確に保障され、また今日に至るまでこの生活水準が変わらないと確信できてきたのであれば、「既存の社会秩序」への不満が労働者の心の中に宿らないことも何ら不思議ではない」  そしてゾンバルトは有名な結論を導く。「全ての社会主義の理想も、ローストビーフとアップルパイの前では失敗に終わるのである」」

—『ルポ トランプ王国-もう一つのアメリカを行く (岩波新書)』金成 隆一著

「何よりもトランプの強みになったのは、おかしな話だが、その暴言と傲慢なキャラクターを最初から前面に押し出したことにある。よく知られているように、立候補の演説でメキシコ移民を「(アメリカに)麻薬と犯罪を持ってくる強姦者」と呼んだ。その後もイスラム教徒の入国の一時禁止など暴言を連発。連邦地裁判事がメキシコ系であることを理由に「私の訴訟を担当するべきではない」と真顔で主張した時には、「アメリカは多民族国家だぞ」などと批判を越えて呆れる声が相次いだ。  私はこれらの暴言には、トランプが意図的に吐いていたものもあるのではないかと感じている。主要メディアから批判され、注目を一身に集める。「エスタブリッシュメント」の1つと見られているメディアから批判されてもトランプは困らない。むしろ批判の嵐の中で平然と振る舞うことで、抵抗勢力に立ち向える改革者という演出を図ったのではないか。彼にとって、エリートや主流派からの逆風は、長期飛行のための「浮力」のようなものだった。  何よりも暴言を吐き続けることで、支持者は慣れていった。「トランプがまたおかしなことを言っている」と笑って受け流す人が少なくなかった。もちろん眉をひそめる支持者もいたが、だからといって支持が、「エスタブリッシュメントの代表」というイメージが定着してしまったクリントンに流れる様子はなかった。  トランプは振る舞いも巧みだった。人前で慌てない。ステージではゆっくり歩く。どんな質問を受けても、ふんぞり返っている。知識のない分野でも、まるで熟知しているような口調で語る。集会では「私は軍幹部より「イスラム国( I S)」を知っている」と言い放った。  全米が注目する候補者討論会では、終了後に記者の囲み取材が発生し、テレビ局が生中継する。そのため主流派の多くの陣営は「失言」を恐れてか、候補者本人ではなく側近を出していた。しかしトランプは大勢の記者の目の前に堂々と姿を見せ、質問も受けていた。主流派の候補者たちが失言に怯える中、連日のようにインタビューにも応じる。こんなことが可能だった背景には、長年のテレビ出演で鍛えた即興でのやりとりの能力に加え、いまさら何をいっても失言にならないという究極のリスク管理があったと思う。」

—『ルポ トランプ王国-もう一つのアメリカを行く (岩波新書)』金成 隆一著

「 「オバマは、スピーチは美しいがね、製造業のために成果を出せたかな?  いいかげん、ワシントンを揺さぶる候補者が必要だ。」」

—『ルポ トランプ王国-もう一つのアメリカを行く (岩波新書)』金成 隆一著


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2026年06月09日

Posted by ブクログ

2016年に書かれた本です。
今から8年前のトランプとヒラリーの大統領選挙のときのルポです。
8年経って、この本に書かれていることは変わらず、むしろ悪化しているのかと思いました。
トランプが大統領だった4年間、そのあとのバイデンの4年間、二人の大統領ともに、アメリカの中間層にとっては無力だったのでしょう。
それでもまたトランプが大統領候補になっていることは不思議な感じです。

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2024年08月13日

Posted by ブクログ

トランプ関連書籍を読み始めてこれが4冊目になりますが、これまでの3冊と比較すると圧倒的に質が高いと感じました(その他の3冊の書評については私のレビューをご参照ください)。大統領選挙の1年ほど前からトランプ候補の支持者が多い地域への足で稼いだ生情報、非常に参考になりました。日本のテレビだけを見ていると、トランプを支持している女性なんて1人もいないかのような報道ぶりでしたが、現実は米国女性の41%はトランプを支持している。しかも本書に登場するトランプ支持者の女性は、変人でもなんでもなく、実直に働いてきた人々、という印象を受けました。より正確には「トランプ」という個人が支持されているわけではなく、これまでの既存政治家、エスタブリッシュメントへの反感がいかに大きいか、自分自身の生活をなんとかしてくれ、という強い思いを本書から感じました。

本書の最後にも著者が問いかけていますが、これは米国の民主主義の終わりの始まりなのでしょうか。この問いは本当に難しく、トランプ政権の誕生は行きすぎた資本主義に対する民主主義の逆襲という見方もできるわけですが、その結果として選ばれたトランプが民主主義を弱体化させるかもしれない、という皮肉な結果も十分ありうるわけです。つまり民主主義的な手続きを経て、民主主義を衰退させる指導者が選ばれてしまった、という可能性です。日本の将来を考える際にも非常に示唆が多い良書だと思います。

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2023年04月28日

Posted by ブクログ

トランプさんを支持する人はどういう理由かを迫った書籍です。
現地の人の訴えが分かるため、貴重な本です。

ラストベルトの人々の訴えは日本と全く同じだと思い、危機感を感じます。
基本的には、移民問題による雇用の減少がテーマとなっております。著者は統計データに基づき、トランプへの疑問や反対意見も挙げてますが、賛同できるところとできないところがありました。ですが、そこも含めて良いです。

私は、この本の反対意見も踏まえた上でトランプさんを支持しています。

この本で取材に応じておる現地の人々が、日本人より人情が溢れている感じがして、凄い好感を持てました。
現地の人の声で、「テレビが伝えるアメリカはエスタブリッシュメントばかりだ」「映画で見るアメリカはニューヨークやロサンゼルスばかりだ」という言葉には、確かにそうだと胸を打たれました。移民問題や人種差別問題が多く取り上げられ、少しずつ改善はしていってますが、裏では忘れ去られた白人の人々が貧困になっていることは見向きもされません。
あと、アメリカ国民の政治への関心がとても強いです。私の周りでは選挙に行かなきゃだめだとという考えを持っている人は多いですが、政治についての関心は他国と比べて本当に低いと思います。テレビやネットを見てなんとなく投票するでなく、国の命運をかけているという自覚を持ち、できる限り勉強をして投票をしてほしいです。

もしアメリカに行く機会があれば、この本で登場をした人々の街を旅行して地域貢献をしたいです。

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2022年05月02日

Posted by ブクログ

ネタバレ

ルポ トランプ王国――もう一つのアメリカを行く (岩波新書) 新書 – 2017/2/4

アメリカン・ドリームが死んだ先にあるものは現状への怒りだ
2017年5月20日記述

金成隆一(かなりりゅういち)氏による著作。
現在、朝日新聞ニューヨーク支局員。

1976年生まれ。慶應義塾大学法学部政治学科卒。
(大学の恩師は久保文明氏)
2000年朝日新聞社入社。
大阪社会部、米ハーバード大学日米関係プログラム研究員、国際報道部などを経て、ニューヨーク特派員。
教育担当時代に「教育のオープン化」をめぐる一連の報道で第21回坂田記念ジャーナリズム賞(国際交流・貢献報道)受賞。
好物は黒ビールとタコス。
他の著書に『ルポMOOC革命―無料オンライン授業の衝撃』がある。

2015年11月~2016年11月まで
アメリカの特にラストベルト周辺、アパラチア山脈の人々へのインタビュー、連載記事をまとめた本。
TVの特集などでトランプ支持者について何となくわかった気になっていたけれども、本書を読んで問題はより根深く深刻であることがわかった。
トランプが強かったのはバーニーサンダース上院議員に人気があったのとつながっていた。
本書では第6章でサンダース支持者について紹介している。
可能であればサンダース支持に関してもより深く取材し記事を読んでみたかった。

著者はプロローグにあるように米大手メディアのトランプ番記者にトランプが大きく伸びる理由を教えられた。
このことが大きな示唆として取材のはずみになったに違いない。
しかしこの番記者、トランプの遊説先を地図に落としてみるなど分析に優れている。

本書を読むとウォール街、シリコンバレーなど一部の地域しか1990年代の好景気の恩恵を受けていなかったことが分かる。
野口悠紀雄氏が指摘するような米は日本と違い新産業が生まれ新しい経済構造があるという指摘を読んだりすることもある。
しかしそれはあくまで米の一部に過ぎないのだ。
むしろ大半の州はそうではなかった。
本書を読んでいてまるでバブル崩壊後の日本の不況と大差が無いではないか。
あくまでアメリカはアメリカ合衆国であり多くの国の連合体だということを再認識した次第である。

増えない給料、老朽化するインフラ、工場移転で地場産業が無くなり孫世代の就職先が無い。
白人中年層の寿命が短くなっていること。
広がる薬物汚染。
インタビューしていた3人組女子大生の内、1人が夢は学費を返済することだと返答していたのには驚いた。
アメリカン・ドリームは完全に死んでいる。
ミドルクラスの象徴でもあった長期休暇を取って家族旅行に行くことも出来なくなっている。

多くのミドルクラスが貧困層に陥る中、企業献金に頼らず労働者、生活者、有権者の為の政治を求めている。
トランプの行った敵意を焚き付ける方法は正しいとは思わない。
それでもトランプ躍進、サンダース躍進の背景問題が解決に向かわない限り、既存政治の延長線はあり得ないだろう。
それは次のアメリカ大統領選挙でも同様だろう。
その辺りを踏まえた政策が民主党にも求められているのではないか。

とは言っても著者の指摘するように製造業や石炭産業の復活などあり得ないとは思う。
メキシコ国境沿いの壁建設も資金面で
難しいかもしれない。ただ人々は簡単には国境を越えれないし簡単に転居出来る訳でもない。
(逆に言うと転居を厭わず動ける人の強みも見えた気がした)

非常に難しい問題だ。またそれは日本にも当てはまる問題だ。
夢を失った地域は活力を失う。
夢を喪失せず希望を見いだせる社会を築く為には
何が出来るのだろう。
放置して時間が解決する問題ではない。

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2025年04月19日

Posted by ブクログ

本書は、トランプ支持者への取材をベースにアメリカの現状を私たちに示してくれるような内容でした。
ニュースなどでよく取り上げられるトランプの過激な発言や行動だけに注目するのではなく、そんなトランプが支持された背景をもっと考えなければならないなと強く感じました。
本書の中では、「夢を失った地域は活力も失う。」(p.211)という一文が最も印象的でした。
また、日本の将来に対しても危機感を抱いている身としては、国を少しでも良くしたいという熱い思いを持った国民が多くいるアメリカに対して、少しうらやましいなという気持ちも抱きました。

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2020年02月06日

Posted by ブクログ

迫真のルポだ。登場する一人一人は洗練されていないが、ひたむき。いわゆる頭でっかちがいない。庶民の声だ。エスタブリッシュメントを嫌い、ビジネスの手腕を評価する人々。今のアメリカに何が起きていて、トランプがなぜ勝てたか納得できた。グローバル化はアメリカをも疲弊させているのだ。

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2019年08月15日

Posted by ブクログ

トランプがまだ有力候補ではなかった2015年後半から、支持者への取材を積み重ねた成果。ラストベルトを中心とする普通のおじさんたちが、なんでトランプを支持するに至ったのかが、詰問することなく、丁寧に描かれている。1932年に普通の人たちに希望を与えたのがローズヴェルトだったのに対して、その84年後はトランプであることを、私たちはどう考えればよいのだろうか。
トランプ当選時の米国の雰囲気を伝えるルポとして、長く読みつがれるだろう。

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2019年07月15日

Posted by ブクログ

筆者が実際に何度もラストベルトを中心としたアメリカへ足を運んで取材を重ねるなかでの、アメリカの分断に対する肌感覚をリアルに描いている。かつては比較的、好待遇で所謂「一般的な幸せ」を築けたブルーカラーの労働者たちが職を失い、社会に対して荒んだ眼差しを向けている。
もちろんここに書かれたことはアメリカのほんの一部ではあるが、自分が想像していたよりも、荒んだアメリカ、ネガティブなアメリカの実情は悲惨だった。

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2018年05月19日

Posted by ブクログ

14州150人の人たちに丁寧にインタビューし、自由貿易による恩恵が十分でなく、より安い労働力に取って変わられ仕事を失ったり、収入が十分でなくなった人たちの不満、不安がトランプ支持につながった背景が非常に納得できた。
全面的にトランプを支持し手弁当で活動を応援する人、差別発言等は受け入れがたいと思いつつ今までの違うことをしてくれるのではと期待する人、オバマを支持しつつも「変化」を求める人、現状の政治に期待できず一度くらいトランプに任せてみようかと思った人など、立場も想いも様々であるようだ。
トランプのPR、人の心をつかむ振る舞い、スピーチの上手さもなるほどと思わされる。一方で発言内容のエビデンスのない点も指摘されている。
たとえば不法移民は税金を払わず、福祉に頼っているとの意見が繰り返されたが、「半数の不法移民が所得税を払っている。買い物の消費税や、住居の固定資産税も払っている」「不法移民により払われた地方税と州税の年間合計は116億ドル」にも上るそう(p.218)。
またオバマケアの国民皆保険制や移民の保険金についての不満についても、不法移民の多くが「保険料をはらっており、支払額は年間150億ドル」「彼ら推定310万人の支払いがなければ予算不足になる」との社会保障庁の見解も紹介されていた(p.14)。
さらに国民全体の意見としては、「雇用や住居を奪うという理由で移民を「重荷」と見る人の割合は激減し、逆に勤勉さや才能で社会を「強化」していると捉える人は増加している」のだそう(p.135)。
問題は当選後。これからトランプはアメリカの大統領としてどんな政治を展開していくのだろう。選挙スピーチでは具体的な方法、方策は示さず、現状のダメな点を指摘し、自分はうまくできる、と言うことで支持を得られても、実際の政治ではどう解決していくのか。選挙で終わりでなく、これからのトランプの、そしてアメリカの動向が気になる。
インタビューの発言で非常に心に残った意見、「インターネットの影響で(略)自分の好きな情報だけを選んで見られるようになった」「そのため自分と同じ考えを持っている人としか話さなくなって、そうすると不満を持つ人同士がどんどんつながる」(p.193)という言葉、非常に納得した。

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2017年08月17日

Posted by ブクログ

2016年のアメリカ大統領選でドナルド・トランプが勝利したことには非常に違和感があったため、トランプ勝利の理由を知りたかった。本書がこの気持ちに的確に答えてくれた。

ニューヨーク、ワシントン、ロサンゼルス等の大都市圏に住む人々からアメリカ人のイメージを思い浮かべていたため、ヒラリー・クリントンが勝利すると思っていたが、本書のルポから有権者の生活実態を全米規模で考えればトランプ勝利もあり得ることが理解できた。

アメリカの「ミドルクラス」が抱える悩み、最早アメリカンドリームを思い描けない現実が、トランプが発する心地よい演説に魅せられたトランプ支持者を生み出したようだ。
日本でも、真面目に働いても生活が以前よりも良くなるとは言えないのが現状である。将来の日本において、トランプの様なポピュリストが政治の要職に就くことがあるのか、気になるところである。

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2017年07月03日

購入済み

知りたかったことが書いてある本

都市部に偏った日本の一般報道への反省から、
トランプへの投票が多かった「ラストベルト」
の状況を調査報道した本。
アメリカの中間層が経済面で凋落し、過去の経済水準を保てなくなったことへの危機感が、トランプ支持の一つの要因だったことが判る。
考えてみると、嘗てアメリカ中間層に有った富がグローバル化によって中進国に移った結果でしかないのかもしれないが、中間層側の怒りは、やっと貧困から脱けようとしている中進国の民衆に向かうのであって、それで大儲けしている超富裕層には行かないらしい。

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2017年05月13日

Posted by ブクログ

約10年前のアメリカ大統領選挙に伴い、当時のトランプ支持者へのインタビュールポ。

当時もトランプはアメリカ第一主義を唱えていたが、それは今も同じ。

当時も今もトランプ支持者の属性はそう変わらないのではないかな。
ミドルクラスから貧困層へ落ちるの恐れる人々。
現状のままではなく変化を求める人々。
インタビューを読んでいると、普通の人々がそれまでと鞍替えをしてトランプ支持者となっている。それくらい魅力的に見えたのだろう。
経営者と出身いうのも良かったんだろうな。政治家もしくは政治屋というのに辟易していたのだろう。
既得権益にとらわれない、政治素人に任せたい人々がそれだけ掘り起こされたということか。

あれから10年たった現在。今もまた同じ事が全世界で起こっている気がする。

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2026年05月07日

Posted by ブクログ

自由貿易と、グローバリゼーションによる、作業の空洞化と、地方の衰退、これこそが、アメリカの病理であり現実である。
アメリカも緩やかな経済成長を続けている。ただし、白人の高卒以下の層についてはそうではない。死亡率も年々高まっている。
本書は、トランプの選挙活動を通じて、アメリカの現実を浮き彫りにする。本書は、トランプを指弾するものではなく、トランプを通じて、今のアメリカを映し出してみるものです。

・都市部はトランプを拒絶したのだ。
・多くは明日の暮らしや子どもの将来を心配する、勤勉なアメリカ人だった。そこには、普段の取材では見えない、見ていない、もう一つのアメリカ、「トランプ王国」が広がっていた。
・もう一つのアメリカ。
・前回の共和党候補が負けて、今回トランプが勝った州は6つある。具体的には、オハイオ、ペンシルベニア、ウィスコンシン、ミシガン、アイオワ、フロリダの6州である。
・フロリダ以外の5州は、五大湖周辺の通称「ラストベルト」(さびついた工業地帯、ラストというのは金属のさびのこと)と呼ばれるエリアに、全体もしくは、部分的に含まれるのだ

気になったのは以下です。

・トランプの演説、身振りが大きく、ラフな言葉遣いの演説に支持者は聞き入り、笑い、歓喜に沸く。使っている英語も簡単だ。なるほど、「小学生レベルの英語」と言われている通りだ。
・自分のことを「天才」「本当に頭がいい」「いい人」と真顔で繰り返すが、多くの人は、「また、トランプが言っている」と軽く受け流し、不思議なくらいイヤミになっていない。政治家としては、イヤミにならないことは強い。
・サイレント・マジョリティ(声なき多数派)は、トランプを支持する
・彼は、ポリティカル・コレクトネス(政治的な正しさ)で批判されることを恐れていない
・普通の政治家に任せていては、国は破綻する。問題をありのままに、恐れることなく指摘するトランプが大統領になれば、国を立て直してくれるわ

・人間は仕事がなきゃ幸せになれない。日本人もおなじだろ
・政治家は長生きするから、簡単に「年金の受給年齢を引き上げる」という。それが許せない。でも、トランプは違う。立候補の会見で、社会保障を守ると言ったんだ。
・オバマ大統領も、ヒラリーにも、「あなたに必要なことを、私はあなた以上に知っている」という姿勢を感じる。私はそれが大嫌いです。
・「こつこつ働いて、やっと家を買うことができましたよ。中古ですけどね。女房は喜んでくれています」
・「私が指導者に求めていることはシンプルです。まじめに働き、ルールを守って暮らし、他人に尊敬の念をもって接する。そうすれば、誰もが公正な賃金が得られて公正な暮らしが実現できる社会です。ビジネス界でやってきたトランプに期待したいのです」

・この国には企業経営者のマインドでかじ取りする指導者が必要だ。アメリカも日本も世界も、大きなキャッシュ・レジスターだ。そこに入っているカネしか使うべきでない。そのルールが守られていない。平気で借金を増やす大統領が続いている。それをとめないといけない。企業経営だって、借金ばかりじゃ倒産するだろう。彼には、企業と同じようにアメリカを経営してほしいね。
・不法移民や働かない連中の生活費の勘定を払わされていることに、実はみんな気づいていた。問題だと知っていたけれど、自分たちに余裕があり、暮らしぶりに特段の影響もなかった頃は放置していた。
・ところが、収入が目に見えて落ち始め、もう元の暮らしには戻れないとわかり始めた頃、多くのミドルクラスが、もう他人の勘定までは払えない、と訴えるようになった。もう十分だ。フェアにやってくれ。限界に達しようとしている時に、トランプが登場した。
・トランプは自分のカネで選挙運動している。当選後、特定業界の言いなりになるような政治家とはわけが違う。
・トランプは受諾演説でこう強調した。「毎朝、私は全米で出会った、これまでなおざりにされ、無視され、見捨てられてきた人々の声を届けようと決心している。私はリストラされた工場労働者や、最悪で不公平な自由貿易で破壊された街々を訪問してきた。彼らはみな「忘れられた人々」です。必死に働いているのに、その子をは誰にも、聞いてもらえない人々です。私はあなたたちの声です」

・みんな起こっているのは、雇用の喪失が主な原因と思う。共和党も民主党もどっちも、グローバル化への対応で失敗した。アメリカの勤労者を陥れたのよ。
・オレたちアメリカ人は、給料から社会保障費も税金も払う。不法移民は何でも負担を逃れる。母国にドルで送金すれば、何倍もの価値になるから、安くても働く。ここで生まれ育ったアメリカ人が、この競争に勝てるわけはない。

・ついえたアメリカン・ドリーム。私が「アメリカン・ドリームを実現できそうですか?」と聞くと、多くのトランプ支持者は力なく首を横に振った。
・アメリカン・ドリームとはそもそも何だろう。誰にとっても生活がより良く、より豊かな、より充実なものとなり、各人がその能力ないし達成に応じて機会を得ることができるような土地の夢。出自はどうであれ、まじめに働いて、節約して暮らせば、親の世代より豊かな暮らしを手に入れられる。今日より明日の暮らしは良くなるという夢だ。

・いま新しい技術者を募集しているが、集まらない。応募者はくるが、水準に達していないんだ。「いい仕事がない」と嘆く労働者は多かったが、「求める人材がいない」という声ははじめてであった。「雇用を取り戻す」と言い切ったトランプが大統領になっても、かつてのような時代はもどってこないだろう。

結論
・私が出会ったトランプ支持者とは、このように日本のどこにでもいるような、普通の過程のお父さんや職探しになやむ若者たちだった。
・グローバル化と技術革新が明日の雇用にどんな影響を及ぼすのかなんてわからない。労働者の権利を守るはずの労働組合も弱体化し、組織率も下がるばかり。政党が労働者の権利保護を唱える声も小さくなっている。アメリカン・ドリームを信じるには現実が厳しすぎ、立身出世物語にもすっかり現実味がなくなった。
・グローバル化する現代社会において、アメリカの異変は対岸の火事ではない。先進国における、ミドルクラスの行方、再配分のあり方などを当事者として考えていきたい。

目次

はじめに
記者が歩いた「トランプ王国」
プロローグ 本命はトランプ
第1章 「前代未聞」が起きた労働者の街
第2章 オレも、やっぱりトランプにしたよ
第3章 地方で暮らす若者たち
第4章 没落するミドルクラス
第5章 「時代遅れ」と笑われて
第6章 もう一つの大旋風
第7章 アメリカン・ドリームの終焉
エピローグ 大陸の真ん中の勝利
おわりに
付録 CNN出口調査の結果(抄録)

ISBN:9784004316442
出版社:岩波書店
判型:新書
ページ数:240ページ
定価:880円(本体)
発売日:2017年02月03日 第1刷発行

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2023年07月24日

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トランプがアメリカにムーブメントを起こした過程を、トランプの支持者がいるエリアに入り込んで取材をしながら生の声を届けている。

指示者の感情や背景を押さえながら、臨場感を持って書いているので、次に次にと引き込まれるように読んでしまった。著者の文章技術に脱帽。

アメリカで問題になってる不満は、日本など他の先進国でも同じ現象ではないだろうか。一生懸命目の前の仕事に働いていれば、そこそこの生活を堪能できた時代から変わってしまっている。
所々にも出てくるように、情報技術に基づく職業は確かに利益を生み出す業界であるけれども、雇用や街、生活を作り出す点では、製造業は違っていて、には違う指標が必要だ。

一方、サンダースについて。彼も、結局、現場の人々の生活や社会行動には課題認識を持っている。ただその伝え方がトランプとは異なっていたと言うだけだろうか。

ソガ氏(サンダース)のコメント:
昔は多くの人がテレビで同じ情報を得ていたが、最近は自分の情報を選り好んで、自分と同じ意見の人としか話さないから、不満を持つ人同士がどんどんつながるようになった。

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2022年12月02日

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面白かった!廃れていくラストベルト。細っていくミドルクラスこそトランプを支持したんやな。反エスタブリッシュメントがキーワード。

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2022年01月15日

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トランプが大統領に当選した後ではなく、当選するまでのアメリカの状況を描写している。
支持したのはどのような層か?に焦点が当てられている。
80年代まで続いていたかつての「強いアメリカ」像が失われ、閉塞感が漂う中、移民問題や既得権益への不満が溜まり、トランプは支持を集めていった。
書かれたのは2017年なので、(2019年の現在では)変化が早い政治の世界ではやや古い情報かもしれないが、次の大統領選がどうなるかという観点でも、当時の大統領選の推移の分析は面白い。

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2019年12月27日

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大統領選の1年前からトランプの動向を取材していた、朝日新聞記者のルポ本。著者自身始めた頃に本になることを予想できなかったのではないかと思うほど、トランプは一部の人の人気者程度だった。しかし、取材を進める中で、ミドルクラスだったアメリカ人、ブルーカラーで炭鉱や製造業に従事していたアメリカ人にはあまりにも深刻な現状があり、それを変革するにはトランプは格好のシンボルになったに違いない。ラストベルト(五大湖ちかくの製造業地帯)、ニューヨークなどの東側のアパラチア山脈を超えた地帯はトランプ王国と化していた。
日本からは全くわからないトランプフィーバーの裏が垣間見える内容だった。

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2019年06月12日

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大統領に就任した途端に支持した米国民は失望するに違いない、そう確信していた。ところが、就任1年を迎える昨年の今ごろ、経済政策ではかなり評価され、外交でも速断を明確に下し、敵対国の首脳との会談をもこなして、政権担当能力は及第点を得ていた。先の中間選挙では、下院で敗れたが上院は守った。現在はメキシコ国境の壁建設をめぐり、政府機関の閉鎖を盾にゴリ押しの様相だ。道理の有無はともかく、実現性がいかにも乏しかった選挙公約を果たそうとする姿勢はあるんだわ。この本で取材を受ける米国中間層の皆さん、ご不満は分かるけれど、かつて圧倒的先進国だったころの米国には回帰できないし、すべきでもない。もはや重厚長大での経済発展はありえないし、往時の繁栄は貧国との相対関係によるんでしょうに。

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2018年12月22日

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 差別的・攻撃的で根拠のないでまかせを平気で口にするトランプが米国大統領になってしまったことは、日本から見ていると何かの間違い(事故)みたいに思えるけれど、この本を読めば実は彼がなるべくして大統領になったということがわかります。

 かつて栄えた鉄鋼業などの重厚長大型産業が衰退し、移民が増え、企業が海外に生産拠点を移したことなどで失業者が増えたラストベルト(錆びついた工業地帯)と呼ばれる地域(ミシガン州、オハイオ州、ウイスコンシン州など)を中心に、トランプは熱烈に支持されてきたようです。トランプを支持する人たちは現状に不満を持ち、「アメリカン・ドリームは終わってしまった」、「自分たちは置き去りにされた」という思いを抱いている。エスタブリッシュメント(既得権者≒一部の富裕層)に対する彼らの反感と怒りが、トランプ勝利の原動力のようです。トランプは彼らに理想を語るのではなく、彼らの敵意を煽ることで支持を集めました。

 自由貿易と移民を悪者に仕立て、「TPPから離脱する」、「メキシコ国境に壁を作る」などのバカげているけど単純で分かりやすい主張をするトランプ。その主張に希望を託さざるを得ないごく普通の(むしろ思いやりのある誠実な)人たち。やはりアメリカは病んでいるのですね。

“トマスの双子の兄フランク(42)が来て「この地図、ちょっと違うな」と言い、ノートに何やら描き加え始めた。メキシコ国境沿いの壁だ。「トランプが美しい壁を造るんだ」” ── トランプを応援している人たちは、こんなにも生真面目だから悲しい。

 著者は朝日新聞記者。大統領選までのおよそ一年間に約150人もの人たちにインタビューしてこの本をまとめたそうです。インタビューの結果を書いた第1~6章はどこの街でも同じような話が多く少し退屈だと感じましたが、トランプ勝利の意味を分析する第7章を読むに至って、足で稼いで積み上げられた事実の重みが説得力につながっていると感じました。

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2018年09月19日

Posted by ブクログ

ネタバレ

メディア等で多くの米国民がトランプ大統領の誕生に反対しているように見えた中、なぜ(得票総数そのものはクリントン氏を超えなかったが)大統領選で勝利することができたのか、という問いに現場面から答えようとする本。
「反グローバリゼーションとポピュリズム~『トランプ化』する世界」(神保哲生氏等著)においてもトランプ大統領誕生の要因の一つとして語られていた、ラストベルトに住む人々への訴求について、実際に当該地帯に住みトランプ氏に投票した人々の生の声を知ることができる。
本書に登場するラストベルトの人々に共通するのは、かつて真面目に働けばそれなりに豊かな暮らしが出来た上向きの時代(著者はアメリカン・ドリームとも表現している)への郷愁と自身ないし彼らの子孫の(そうした生活を享受することのできる)ミドル・クラスからの没落に対する危機感であった。トランプ氏の発言には論理的でない(矛盾する)面もあったり、事実に即していない点、具体性に欠ける点などもあったが、彼らはトランプ氏の掲げる理想(大きな方向性)に共感するとともに、特定団体からの献金に頼らずストレートな物言いのトランプ氏に(エスタブリッシュメントが政治を支配する現状からの変化という)希望を見出したのである。
本書の最終章では現場でのインタビューを踏まえてトランプ大統領が誕生した背景と民主主義への影響についての考察がなされている。グローバリゼーションによって得をした(所得が大きく上昇した)のは先進国の最上層と新興国の中流層(先進国の中流層は相対的な敗者)であり、この点が本書で取り上げられたような人々が登場した背景になったと筆者は説明している。また、今回の大統領選によって、民主主義の根幹である政府の正当性や言論の自由(暴力の否定)が脅かされる恐れがあるとの指摘もなされている。
本書に出てくるラストベルトの人々と同じような境遇の人は、我が国においても増加しているのではないかと実感する。マクロ経済的にはグローバリゼーション・自由貿易は是認されるべきものであろうが、急速な変化に乗り遅れ得る人々への対応・迅速な国内産業構造の転換をどのように行うべきか、政府には難しい舵取りが求められる、という点が含意されている。Brexitの例にも示されるように、今後当面は(先進各国において)グローバリゼーション及びそれに伴う急速な変化への反動として、このような潮流が予想されるだろう。

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2018年07月18日

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トランプ支持層と言うか、ミドルクラスの没落についてのルポ。刺さり過ぎる…
て言うか、日本はアメリカより没落度合い進んでるんじゃ…

と思いつつ、ここに感想書きに来たら、日本もこの先こうなりそう、みたいな感想が並んでて驚きました…
私人一倍早々没落してたか…orz

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2019年05月04日

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トランプ支持者達の状況がよくわかった。時代と共に主要産業の交代は不可避だが、不幸な人々がでないように移行するのは難しいと思った。白人の寿命が下がっているという情報はインパクトがあった。

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2018年06月03日

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イギリスのEU離脱もしかり、世界はグローバル化してるように見えてだんだん反グローバリズムが進んでいるように感じました

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2018年03月17日

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良書。米国のミドルクラスの没落について書かれているのに、日本の事のように思えて読んでしまった。

・製造業の減少とサービス業の増加。
・親世代より豊かになれない子供世代。(日本でも団塊世代vs氷河期世代の問題)
・親世代と同じ職業でも求められるスキル、学歴は圧倒的に高レベルな子供世代。
そして進学の為には多額の学費負担が必要で、卒業時の借金は1000万円相当。(日本でも奨学金の返済問題)
などなど。

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2017年06月26日

Posted by ブクログ

かつてはブルーステーツ(民主党支持)呼ばれ、トランプ大統領が赤(共和党支持)く染めたラストベルト諸州を丹念に取材し、現地の人々と交流し、彼らの本音を引き出し、米国の変容を描いた好著です。トランプ支持者は一般的にはヒルビリーと呼ばれ無学で怠け者といったレッテルが貼られていますが、本書での取材からは学歴は無いものの人間味のある真面目な働き者といった印象でした。ちなみに、著者の金成氏はトランプ大統領には批判的です。

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2017年06月18日

Posted by ブクログ

先入観を持たず現地で聞き取りを行うジャーナリズムを感じさせる一冊。グローバリズムによって経済状況が向上したのは、先進国の上流階級と途上国の中間層であり、没落したミドルクラスのエスタブリッシュメントに対する反感をうまく集めたのがトランプ。高卒でもミドルクラスになれたという状況が例外的なものだったということを踏まえ、アメリカという共同体をどう維持するかは引き続きの課題といえる。

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2022年11月06日

Posted by ブクログ

2020年の大統領選挙を経た2021年の現在から見返してみると、まさしくこの5年間に議論されていたことを2015年の段階で浮かび上がらせていた見事な取材力だと感じる。

MBA留学中に知り合ったアメリカ人のうち最も親しくなった友人がインディアナ州出身であった。他の多くのアメリカ人達が東西沿岸部出身であることに対して、彼は彼自身のことを他のアメリカ人達とは少し違うと言っていたが、まさにその背景はこの本で描かれているラストベルト、アパラチア山脈地方のバックグラウンドによるものであった。

彼の話を聞いた際にも感じた事柄であるが、アメリカを外から見る際にはこういったデモグラフィーの違いによる多様な背景があることを念頭においておかなければ見方を誤るだろう。
実際に2020年の大統領(選挙人)選挙でも依然トランプは7000万票以上を集め、2021年1月のキャピトル・ヒル襲撃を経て退任したあとも熱烈な支持者を集めている。かの共和党でさえもトランプ退任後もトランプ人気に配慮した政党運営をしなければならないことは、今後のアメリカ社会におけるデモグラフィーの動向がアメリカ政治、ひいてはスーパーパワーをバックグラウンドとした国際社会への影響にも強い影響を及ぼす可能性を示唆しているだろう。

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2021年05月29日

Posted by ブクログ

第6章までは、とても面白かった。とても丁寧に取材していて、トランプがなぜ支持されているのか、とてもよくわかった。そして、第6章では、サンダースの支持者とトランプの支持者が実は同じようなことを言っており、またサンダースとトランプも似ているという興味深い指摘があり、第7章からの分析にとても期待したのだが・・・。
トランプの支持者、またサンダースの支持者が共に抱いているエスタブリッシュメントへの不信感、なぜエスタブリッシュメントはミドルクラスの要望に応えられていないのか、どうすれば彼らの不信感を払拭して、トランプのような人物が権力を握らないようになるのかという点への切り込みが十分でなく、トランプが当選したら大変なことになる、という指摘が主で終わってしまったのがとても残念だった。まあ、トランプが本当に大統領になる前の執筆がほとんどだからと割り引いても、ちょっとがっかり。どこの国でも、日本でも起こり得る現象であるのだから、もっと深い分析があると読みごたえがさらに増したのにと思った。

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2019年12月19日

Posted by ブクログ

*内容に触れているけど、内容に触れて興を削ぐような本ではないのでネタバレ仕様にはしていません。


THクックの『蜘蛛の巣のなかへ』を読んでいて、ふっと読んでみたくなった本。
朝日新聞のニューヨーク特派員である著者が、その舞台(アパラチア)の地域や近接するいわゆるラストベルト地帯に住む人々に2016年のアメリカ大統領選挙の時のインタビューをまとめたもの。
ただ、正直言うとインタビューの内容は、ちょっと期待外れだった感がなきにしもあらず。
というのも、第2章の冒頭でブルース・スプリングスティーンの「ヤングスタウン」が紹介されるのだが、そういったスプリングスティーンやジョン・メレンキャンプ等、アメリカのスモールタウンソングを歌うミュージシャンに親しんできた自分みたいなのからすると想像した範囲内のことが多かったからだと思う。
「トランプ現象」なんて言われだした頃、その震源地が「ラストベルト」と言われるエリアだというのは日本のニュースでも伝えられていた。それを知ってしまえば、そういったスモールタウンソングの歌詞を思い出し、おぼろげにでもイメージ出来たのだ。

そんなわけで、ラストベルトやアパラチアについて書かれた5章までは面白いのは面白いのだが、興味という点でちょっとイマイチ。
でも、サンダース候補について書かれた6章、アメリカンドリームの終わり(?)について書かれた7章はとても興味深く読んだ。

サンダース候補の日本での報道はトランプさんとヒラリー・クリントンに比べると少なかったとはいえ、それでもその偏屈な面白さは十分に伝わっていたように思う。
「こういう人って、今の日本の政治家にいる?」、「あ、強いて言えば、橋下徹?(異論反論そーと―あるだろうけどw)」
「ただ、橋下さんだと、(サンダースみたいな)ついクスっとしちゃう可笑し味がないんだよなぁー」なんて(笑)

サンダース候補と付き合いが長いという地元の新聞社のアキ・ソガ編集長によれば、“いつも機嫌が悪い、おじいさんのイメージ”だとかで、まさにTVの演説通りの人なんだなーと感心したり、呆れたり。
そのサンダース候補を支持している(た)人によれば、サンダース候補が“「週40時間働いている人が貧困に陥るべきではない」と言っているのを聞いて、これだ。この人を応援しようと思った”とのことで、そんなの聞いたら日本人の自分でも応援したくなるw

というか、今の日本の政治家や役人で(に限らず経済人、あるいは一般の人でも)それをそう言える人、どれだけいるんだろう?
もちろん、そこには、たんなる自己満足の感情論だけで無責任に働き方改革と旗を振っている人たちは含まれない。
そんなわけでサンダース候補の章はかなり面白かったのだが、1章しか割かれてなくて残念だった。

次いで終章である7章、これはいろいろ示唆に富んでいて相当考えさせられる。
まず、大統領選挙の討論会の前、トランプ陣営は支持者にヒラリー・クリントンを具体的にどんな風に悪口言えばいいか?をアンケートしていたというのには、大笑いしてしまった。
もはや、「勝てるわけねーよ、ヒラリー・クリントン」という感じw
ヒラリー・クリントンって、関係ない日本の自分から見ても金持ち臭プンプンで憤懣やるかたないって感じだったから。そういう層(既得権益層)に反感を持っていた人からしたら、そのアンケートはさぞ溜飲が下がったろうなぁーw
ま、金持ち臭プンプンで辟易といえばトランプさんはそれ以上なわけで、支持者がそれに文句言わないのは不思議なんだけどさ(もしかして、そここそがトランプさんのご人徳?爆)。

ていうか、その手法。選挙への関心がやたら低い日本も、もしかしたらそんな風に選挙を盛り上げたらいいんじゃない?なんて(笑)
日々生活していれば、要望や言い分は誰しもあるわけで。候補者がそれを巧みにすくい上げて他の候補者と論戦したり、あてこすりし合ったら、みんなたちまち選挙に関心を持つと思うけど。
あ、でも、今の日本の政治家は、投票に行かない層が投票に行かないからこそ自分(自党)が安定した票を得られると知っているから、そんなことさせるわけないか?w
「分断はよくない!」とか、もっともらしいこと言ってさ(笑)

ていうか、マスコミもよく「(アメリカの)分断が進んだ」って言っているけど、そぉ~お?
暴力事件等が起きているのは事実だけど、でもそれは昔からあったことで、ある意味それこそが良くも悪くもアメリカだったりするんじゃないのかな?
そもそも分断したらしたで、政治家が外に「民主主義の敵」を作って、たちまち団結。戦争をすることで国民のガス抜きしてきたのがアメリカじゃん(笑)

それはともかく、選挙をエンターティンメントとして庶民を楽しませて支持を集めるという点で、トランプさんは一枚上手だったということか。
ていうか、先週の相撲のアメリカ大統領杯贈呈の時の心底嬉しそうな顔が示しているように、実は(自分に歓声をおくる)観衆を楽しませることが大好きな人、ということにすぎなかったりして?w

次いで一番考えさせられたこと、それは7章の表題にもなっている、アメリカンドリームの終焉だ。
つまり、P244にあるように“「高校を卒業すればミドルクラスになれた」という時代は、もはや特定の時期に、特定の国に起きた奇跡と捉えた方がよさそうだ。「雇用を取り戻す」と言い切ったトランプが大統領になっても、かつてのような時代は戻ってこないだろう”ということだ(なのだろう)。

ただ、著者は直接そうは書いていないが、それは「終焉」というよりは「変化」なのだろう。
つまり、書かれているように、“先進国で食べていける技能が、より高度になるだけでなく、技術革新に合わせて変わっていく以上、いわゆる「スキルギャップ(技能の差)」の問題にはどの先進国も直面している”ということで。
今や「アメリカンドリーム(注:著者は昔のアメリカのミドルクラスの豊かな暮らしという意味で使っている)」は、高校を卒業しただけでは叶えられない時代へと変わった、ということなのだろう。

日本でいうなら、それは大卒や大企業にあたるのかどうかそれはわからない。ただ、いずれにしても、毎日会社に行って仕事をして退社時間になったら帰るみたいな、言ってみればサザエさんの家のお父さんたちのようには暮らせないと思った方がよいということか。

著者は、さらに哲学者のローティという人の“世界経済は(略)どこの国とも共同体を作ることなど考えていない国際的上流階級によって、間もなく所有・支配されるだろう”という文章を紹介している。
“所有・支配”といっても、もちろんそれをするのは民主主義こそが為政者にとって一番都合のいい統治システムだとわかっている現代人たちがそれをするのだから、独裁や圧政といった、いわゆるディストピアがやってくるわけではないだろう。
ただ、今も多かれ少なかれそうであるように、日々の生活のため、あるいはちょっと便利のため、死ぬまで月々費用を徴収され続ける生活。さらには、払う費用やちょっと便利のために生活や自由が次第に圧迫されていく、そんな生活。
そんな生活のための膨らみ続けるそれらの費用を払うため、庶民はあくせく働かなきゃならなくなっていく……、って、あれ?それって、今と全然変わんないじゃん!?(笑)
ただ、それはアメリカだからで
。人がどんどん少なくなっていくこの日本では将来的に働く場所がなくなっている可能性もあるわけで…


以下は蛇足。
トランプさんというと「国境に美しい壁を作る」だけど、いつも不思議に思うのはなんで日本のマスコミはそれを悪いこととして報道するのだろう。
TV報道を見るかぎり、国境には今でも有刺鉄線やフェンスなのの壁があるようだ。
ただ、それは国境である以上普通のことで、トランプさんが「壁を作る」というのは今の有刺鉄線や壁では国境が守られていない現状があるからだ。
壁や有刺鉄線の柵は今でもあるわけだ。トランプさんの言う「美しい壁」wは反対だけど、今あるものはOKというのは、つまり“国境を勝手に入れる壁や柵はいいけど、トランプの壁だと入れないから駄目”ということなんだろうか?
ていうか、そもそもトランプさんが問題にしているのは、(あくまでタテマエの上は)勝手に入ってくる“不法な”移民のことだ。
その“不法な移民”を防ぐための壁について、政敵であるアメリカの民主党が反対するのはともかく。また、トランプさんにコケにされるから反トランプになっているアメリカのマスコミが反対するならともかく、日本のマスコミや評論家、エコノミストが反対するのは意味が分からない。
こないだもテレビ朝日だったかで、「国境の壁はなんの解決につながらない」とか言っていたけど、もし半島の某国から日本に難民が大挙してやってきてもそんなことを言うつもりなんだろうか?
もっとも、日本の場合、国境は海なんで。確かに「壁はなんの解決につながらない」とは思うけど(笑)


もうひとつ蛇足。
テレビのニュースでトランプさんが勝つと予想と言ってたんだったか、次期大統領と決まった直後に勝利した納得出来る理由を言ったんだかどっちかは忘れたけど、なるほどなーと感心させられたのはフジテレビの風間氏と木村太郎氏だった。
あくまで自分が見ていた範囲なので他にもいるとは思うが、その風間氏が出ていたユアタイムはユニークで面白いニュース番組だったなーと思う。
テレビのニュースというと、最近は取り澄ましたカッコばっかりつけるばかりで中身は全然ないものばかりになってしまったけど、あの番組出ていたレギュラー陣(もちろん司会の女性タレントも含む)から出てくる話に興味深いものが多かった。
変なバッシングのせいかすぐに終番になってしまったが、視聴者にチャンネルを変えられないよう視聴者が好みそうなニュースだけ選んで流している●HKを見るたんび、何で日本にはまともなニュース番組がないんだろう?と不思議に思う。

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2019年06月01日

Posted by ブクログ

トランプがなぜ大統領になったのか。
大統領になる1年以上前からの筆者の取材でトランプ支持者を中心とした人々の考え、意見、思いがこの本に詰められている。
6297万票のうちほんの一部の人びとを扱っただけとも言えるけれど、アメリカの地方の人びとの生の声は、これこれだけも多くの人々がトランプに票を入れたのか、そしてアメリカという遠くて大きな国が今置かれている現状について理解するために欠かせない貴重なものであると思う。

個人的にこの本を読んで納得したことは、トランプの資金力がどう受け止められているか。つまり、特定団体からの政治資金を必要とせず、自力で物事を成し遂げることができる、という、非常に現実的な点が、トランプの特性を活かし、当選に導いた一つのカギだったということ。
これで、明らかに既得権益層にいると考えられるトランプがなぜ反エスタブリッシュ候補として支持され選ばれたかの説明が少しついた。

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2019年04月19日

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