金成隆一のレビュー一覧
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大統領選の1年前からトランプの動向を取材していた、朝日新聞記者のルポ本。著者自身始めた頃に本になることを予想できなかったのではないかと思うほど、トランプは一部の人の人気者程度だった。しかし、取材を進める中で、ミドルクラスだったアメリカ人、ブルーカラーで炭鉱や製造業に従事していたアメリカ人にはあまりにも深刻な現状があり、それを変革するにはトランプは格好のシンボルになったに違いない。ラストベルト(五大湖ちかくの製造業地帯)、ニューヨークなどの東側のアパラチア山脈を超えた地帯はトランプ王国と化していた。
日本からは全くわからないトランプフィーバーの裏が垣間見える内容だった。 -
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ラストベルトで出会ったトランプ支持者たちは、「素朴で、控え目な人が多い。自分の暮らしぶりなど誰も気にしちゃいない、自分の意見など誰も聞いちゃいない――。そんなあきらめのような思いを持っている人が多かった、と感じる」「トランプ氏本人は差別主義者かもしれないが、少なくとも私が取材している支持者たちは違う。人種差別主義者が、アジア人の記者と2年も3年も付き合い、自宅に泊めたり、交際相手を紹介したりしないのではないか、と思う」(339)。
2017年10月から「ラストベルト」のアパートで3ヶ月間過ごした定点観測をふくむ、「トランプ時代」のアメリカのルポルタージュ。しばしばニュースで耳にする「分 -
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大統領に就任した途端に支持した米国民は失望するに違いない、そう確信していた。ところが、就任1年を迎える昨年の今ごろ、経済政策ではかなり評価され、外交でも速断を明確に下し、敵対国の首脳との会談をもこなして、政権担当能力は及第点を得ていた。先の中間選挙では、下院で敗れたが上院は守った。現在はメキシコ国境の壁建設をめぐり、政府機関の閉鎖を盾にゴリ押しの様相だ。道理の有無はともかく、実現性がいかにも乏しかった選挙公約を果たそうとする姿勢はあるんだわ。この本で取材を受ける米国中間層の皆さん、ご不満は分かるけれど、かつて圧倒的先進国だったころの米国には回帰できないし、すべきでもない。もはや重厚長大での経済
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差別的・攻撃的で根拠のないでまかせを平気で口にするトランプが米国大統領になってしまったことは、日本から見ていると何かの間違い(事故)みたいに思えるけれど、この本を読めば実は彼がなるべくして大統領になったということがわかります。
かつて栄えた鉄鋼業などの重厚長大型産業が衰退し、移民が増え、企業が海外に生産拠点を移したことなどで失業者が増えたラストベルト(錆びついた工業地帯)と呼ばれる地域(ミシガン州、オハイオ州、ウイスコンシン州など)を中心に、トランプは熱烈に支持されてきたようです。トランプを支持する人たちは現状に不満を持ち、「アメリカン・ドリームは終わってしまった」、「自分たちは置き去 -
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ネタバレメディア等で多くの米国民がトランプ大統領の誕生に反対しているように見えた中、なぜ(得票総数そのものはクリントン氏を超えなかったが)大統領選で勝利することができたのか、という問いに現場面から答えようとする本。
「反グローバリゼーションとポピュリズム~『トランプ化』する世界」(神保哲生氏等著)においてもトランプ大統領誕生の要因の一つとして語られていた、ラストベルトに住む人々への訴求について、実際に当該地帯に住みトランプ氏に投票した人々の生の声を知ることができる。
本書に登場するラストベルトの人々に共通するのは、かつて真面目に働けばそれなりに豊かな暮らしが出来た上向きの時代(著者はアメリカン・ドリー -
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一章は、アメリカの大統領、選挙の概要やその歴史を振り返る。私たちにとって、最もなじみのある日本の首相や議員との関係、あるいは、行政との関係とは大きく異なる制度であることがよくわかる。
今まではただ単純に大統領がどうやって決まるのか、といったところしか知らなかったが、なった後も、仕事の進め方、といったところも解説してあって、興味深い、勉強になった。
二章、三章は、予備選挙、党員選挙から本番まで追いかけている。これまた日本との違いを感じた。議員が首相になるのではなく、一般人でも大統領を目指せる、といった仕組みだからこそ、選挙が他人事ではないのだろう。
これまでの著者の他のルポを踏まえて読むと、 -
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2020年の大統領選挙を経た2021年の現在から見返してみると、まさしくこの5年間に議論されていたことを2015年の段階で浮かび上がらせていた見事な取材力だと感じる。
MBA留学中に知り合ったアメリカ人のうち最も親しくなった友人がインディアナ州出身であった。他の多くのアメリカ人達が東西沿岸部出身であることに対して、彼は彼自身のことを他のアメリカ人達とは少し違うと言っていたが、まさにその背景はこの本で描かれているラストベルト、アパラチア山脈地方のバックグラウンドによるものであった。
彼の話を聞いた際にも感じた事柄であるが、アメリカを外から見る際にはこういったデモグラフィーの違いによる多様な背 -
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いわゆるエリートが闊歩するNYやワシントンでなく、庶民が暮らす労働者の街を巡ってトランプ大統領政権下のアメリカの実情を探る著書。
米国民主党員が前回選挙の敗因として挙げた「トランプが『今晩のメインディッシュは大きくてジューシーなステーキ(=労働者の雇用、賃金といった経済問題)です』と売り込んでいる時に、民主党は『メインはブロッコリー(=LGBTQ優遇や移民難民救済、BLM)。健康にいい』と言っているように聞こえてしまった」という例えが言い得て妙。
国民が本心で望んでいることを外してしまったと。だから本来民主党側であった人々もトランプ支持に回ったという。
また、トランプが勝ったのでなくクリントン -
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トランプ当選後のラストベルト(中北部州)とバイブルベルト(南部州)でインタビュー取材した本です。ラストベルトの経済凋落や労働者の失業という現実は今の日本と合わせ鏡。労働者の党だった民主党に職を失った製造業労働者は完全に愛想を尽かしており、次もトランプにという。決してトランプが彼らの生活を回復させているわけではないのにこのような状況が。何が彼らをそう思わせているのか、ぜひとも読み取り、現在日本と比較してみて欲しいと思います。
また、現代アメリカを憂う2人の著名なジャーナリストにもインタビューしています。この部分だけでも現代アメリカの抱える病理を理解できると思います。 -
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第6章までは、とても面白かった。とても丁寧に取材していて、トランプがなぜ支持されているのか、とてもよくわかった。そして、第6章では、サンダースの支持者とトランプの支持者が実は同じようなことを言っており、またサンダースとトランプも似ているという興味深い指摘があり、第7章からの分析にとても期待したのだが・・・。
トランプの支持者、またサンダースの支持者が共に抱いているエスタブリッシュメントへの不信感、なぜエスタブリッシュメントはミドルクラスの要望に応えられていないのか、どうすれば彼らの不信感を払拭して、トランプのような人物が権力を握らないようになるのかという点への切り込みが十分でなく、トランプが当 -
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*内容に触れているけど、内容に触れて興を削ぐような本ではないのでネタバレ仕様にはしていません。
THクックの『蜘蛛の巣のなかへ』を読んでいて、ふっと読んでみたくなった本。
朝日新聞のニューヨーク特派員である著者が、その舞台(アパラチア)の地域や近接するいわゆるラストベルト地帯に住む人々に2016年のアメリカ大統領選挙の時のインタビューをまとめたもの。
ただ、正直言うとインタビューの内容は、ちょっと期待外れだった感がなきにしもあらず。
というのも、第2章の冒頭でブルース・スプリングスティーンの「ヤングスタウン」が紹介されるのだが、そういったスプリングスティーンやジョン・メレンキャンプ等、アメ