松本礼二のレビュー一覧
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金言の数々がちりばめられている。重い。またゆっくり読み直したいと思った。
上巻に続き、参考箇所。一つ一つが考えさせられる一節である。
「普通選挙こそよい政治家を選ぶ保証だと考える者が完全な幻想に囚われていることは、私にははっきり証明された。」
「二段階選挙こそ人民のあらゆる階級に政治的自由の行使を可能にする唯一の手段だと思う」
「その本性あるいは構造が悪法の一時的弊害に耐えられるようにできている社会、法の一般的傾向の帰結が現れるまで滅びずに待っていられるような社会を想像していただきたい。民主政治はその欠陥にもかかわらず、このような社会を繁栄させるにはやはり最適の政治であることはお分かりであろ -
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先日拝聴したライフネット生命の出口治明会長の講演の中で、『縦と横に見る視点が重要』とおっしゃっていた。先に読んだ、ちきりん著「自分のアタマで考えよう」の中でも、同じことに触れており、「『縦=時系列比較=歴史的な観点でものごとを見ること』と『横=他者比較=国際的な視点でものごとをみること』とのことですから、やはり比較といえばこの二種類を覚えておくべし」と言っている。そういう意味で本書は、現代の民主主義を考える上での「タテとヨコ」の決定版である。ちなみに本書も出口会長のお薦め本。
本書は、フランスの政治思想家トクヴィルが1800年代前半にアメリカに渡り実際の見聞を著したものである。(著者が初めてア -
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下巻は、市民社会と習俗に焦点を当てると伴に、貴族社会と民主社会の比較から、(当時)将来来るべく民主社会の課題や有るべき姿を述べ、民主社会における中央集権化、独裁主義化への懸念を見事に予想している。
貴族社会には主権者である国王が民衆に直接支配力を及ぼすことができないクッション(貴族)があったとし、米国では、それを地方自治の仕組みに取り入れ、中央集権化、独裁主義化へ向かわない仕組みを内在化させたとする。
なぜ、アメリカ人は産業に向かわせるのか、民主化された社会で客観的な物差しは金でしかない等、現在の米国社会を示す考察をこの時点で為し得ている。
以下引用~
・(アメリカの)国民にあって怖れるべ -
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1800年代にフランスの政治家トクヴィルが米国に渡り、米国社会の仕組み、米国人行動をつぶさに分析した結果を「米国論」として纏めたもの。
米国を表わす最も適当なコンセプトが民主的(デモクラシー)ということになる。
当時、欧州からみると米国は壮大な実験の場であり、また将来の自らを占う国として大きな関心が持たれていたのだと思う。本著は古典の部類に入るのかもしれないが、現在の米国社会を考える上でも参考になる考察が数多く見出すことができ、大いに参考になった。
国は人間の成長と同じだという。子供の頃からの成長の過程を見ることで、今の自分を判断できるように、”米国は、一大国民の出発点を明瞭に認識することの -
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本書では、民主制がいかにアメリカ人に影響を及ぼしているかが考察の対象とされており、第一部では、民主制の「知的運動」、第二部では「感情」に及ぼす影響が検討されている。第一部によれば、民主制は、アメリカ人に物理的享楽を大胆に志向させており、彼らは、一般性・無形式性・実用性を好んでいる。彼らの宗教には来世への関心が比較的弱い。とはいえ、その宗教は、秩序を破壊するものではなく、利益を求める上でも有効に機能している。第二部によれば、アメリカ人には、個人主義があるが、同時に結社を志向する態度がある。また、アメリカ人は、宗教の効用ゆえに物質的享楽への愛着が行き過ぎてはいない。
トクヴィルは、アメリカ人に精 -
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トクヴィルは序文で、アメリカでは人民の権力が制度や形式を思うままに破壊ないし修正していると指摘し、その本能と情熱は何か、それを推し進め、あるいは抑制する仕掛けは何か、その将来の帰結は何かを本書で明らかにすると論じている。
1章によれば、アメリカでは、人民が直接その代表を任命し、議員は、人民に従属しているが、代議制が採用されている。2章によれば、アメリカには、もはや大きな目標を持つ「偉大な」政党はない。政治的信念のない「矮小な」政党があるにすぎない。3章では、アメリカには出版の自由があり、新聞の独立があるという。4章によれば、アメリカには政治結社が無数にあり、社会的権威には疑いの念を抱いている -
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トクヴィルは、民主制は(ヨーロッパでも)不可避的という見通しの下に、アメリカの民主制の制度的あり方やその成立条件を検討している。
彼は第1章で北アメリカの地形を概観した後、第2章では国民の起源ないし形成期にすでに国民間の優劣がなく、かつ、「民主的共和制」と不可分のピューリタニズムがあったことを指摘している。その「社会状態」は、第3章によれば、市民の平等と知識の平等が著しい状態であった。第4章では、アメリカのイギリス系植民地に人民主権が原理として根づいており、革命後はそれが自治体から政府へと波及したと論じられている。第5章では、個々の州の事情が検討されている。その特徴は、例えば、ニューイングラ -
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第1巻を刊行した1835年の5年後に、トクヴィルはこの第2巻を出した。
アメリカ合衆国のイメージは彼の中で煮詰まり、この巻では「自由」「平等」などの概念をめぐって延々と思索が続く。
特に「平等」概念を、ヨーロッパ文化にとっても重大な歴史的転回点としてとらえており、単に賞賛するのではなく、その危険性をも含めて考えを深めている。
19世紀前半のトクヴィルの思考は、ただちに現在の「民主社会」に適用できるわけでもなく、彼の予測は外れている面もある。それでも、「民主主義とは何か」を考える上で、本書は多くの示唆を含んでいる。
しかしこの本の要点を抜き出し、その思想の骨格を明確にする作業は、一読しただけでは -
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民主主義というテーマにおいては有名で重要な本らしいので、読んでおくことにした。
第1巻の出版は1835年で、南北戦争前である。主にイギリスの出身者たちがつぎつぎと北米に入植し、開拓し、社会を築き上げていく黎明期を描き、分析している。トクヴィルはフランス人なので、フランスの君主制との違いが、折に触れて指摘される。
トクヴィルによると、北米は入植によって生まれた当初から「民主的」であり、住民間に階級差はなく(黒人奴隷やインディアンを除く)、自然発生的な共同体「タウン」において、自治的に倫理や法が築かれていったという。キリスト教をベースにし、そこからタウンみずからが、<掟>を制定していったのである。 -
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ネタバレ1830年代にフランスの政治思想家トクヴィルが、アメリカ社会を観察するとともにその民主政治の成り立ちや統治機構の特徴を考察したもの。
著者は、当時民主政治について最も進んだアメリカを研究することで、革命の時にあったフランス(ヨーロッパ)にも訪れつつある民主政治をより有益なものする方法を知ろうとしたが、その観察眼や洞察力から導かれた鋭い考察により、現代の民主主義を考えるにあたっても読み直すべき古典的名著とされている。
この1上巻では、アメリカ建国時にまで遡ってイギリス系アメリカ人の性格、宗教観やそれが政治に与えた影響、連邦や州といった統治機構の性格や特徴などが論じられている。
興味深かったの -
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「啓蒙の中心的諸原理、すなわち普遍性と客観性と合理性、生活と思想の真正の問題のすべてに恒久的な解決を与える能力、そして観察と論理的思考の適切な能力を備えて考える人なら誰にでも合理的方法は開かれているという前提」(45-46ページ)に対する批判、反対である反啓蒙思想に関する論集。
『反啓蒙思想』で、ヴィーコ、ハーマン、ヘルダーなどその思想的系譜が簡潔にまとめられており、良いガイダンスが得られる。
『ジョセフ・ド・メストルとファシズムの起源』。
ここで取り上げられるド・メストルという人物をまずもって知らなかった。1753年生まれで、フランス革命期からナポレオン帝政期の同時代人である。啓