松本礼二のレビュー一覧

  • アメリカのデモクラシー 第一巻(下)

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    本書でトクヴィルは、アメリカでは「人民」があらゆる権力の源泉であるという国民主権の実態と、その帰結を論じている。

    ■民主主義を動かす要素と欠点
    トクヴィルは以下の活動が民主主義を動かす重要な要素だと指摘している:
    ・政党
    ・出版の自由(特に多様な地方紙)
    ・政治結社(社会の個別課題を解決するための集団の力)

    一方で、民主政治の欠点も率直に指摘している。必ずしも優れた人物を指導者に選ぶとは限らず、財政的な浪費を招きやすいという。

    ■民主制の利点と最大の脅威
    民主制には社会全体に強力な活力を与え、市民に愛国心や法への尊重を育むという大きな利点がある。しかし、トクヴィルが最大の脅威として警告するのは「多数の暴政」——少数者の権利や精神の自由を侵害しかねない危険です。この危険を緩和する要因として、彼は法律家の精神や陪審制度の役割を高く評価している。

    ■民主共和政を支えるもの
    民主共和政が維持される主因として、トクヴィルは地理的条件や法制以上に、国民の「習俗」や宗教の影響力を重視している。巻末では、先住民の悲劇的な運命と黒人奴隷制がもたらす人種間の葛藤が、アメリカの将来に深刻な危機をもたらすと予言している。

    ■現代への問い
    200年前の本書の洞察が、驚くほど現代アメリカ社会の良い面も悪い面も言い当てていることに驚く。それと同時に、悪い面に拍車がかかっている印象も受ける。これは人類の悲しいバグなのだろうか。仕組みで改善することはできないのだろうか。

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    2026年02月06日
  • アメリカのデモクラシー 第一巻(上)

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    フランスの政治思想家トクヴィルが1830年代初頭のアメリカ社会を分析し、近代民主主義を論じた古典的名著(全4巻)。アメリカ社会と民主主義を語る上で欠かせない文献となっている。

    <トクヴィルが見たアメリカの特徴>
    トクヴィルは滞在中、「境遇の平等」こそが社会の根源的事実であると看破し、この平等化は世界的に不可避の流れだと捉えました。本書では以下の点が詳述されています:

    ■プロテスタントの宗教と自由の精神が結びついたニューイングランドの重要性
    ・人民主権の原理 タウンから連邦政府に至る政治制度
    アメリカの起源には、経済的な目標だけでなく、入植者の自由を求める思想があり、それがタウンシップという地域レベルで民主主義として実践されてきました。

    ・民主主義を支える「相続法」
    トクヴィルは民主主義を支えるもう一つの柱として「富の再分配」に注目し、その実現には「相続法」が重要だと指摘しています。一代でどれほど莫大な富を築いても、子孫に分配されることで強大な力が分散される——これがアメリカ民主主義を支える仕組みの一つだというのです。

    ■トクヴィルの目的
    身分制が当たり前だったフランス出身のトクヴィルの目的は、最も民主化が進んだ実例からデモクラシーの性質、その利点と危険を学び、到来する民主社会を導くための教訓を得ることにありました。

    ■現代への問い
    翻って現代のアメリカ社会を見ると、富の集中に拍車がかかり、民主主義がポピュリズムに陥っているように見えます。この200年でアメリカ社会は何が、どのように変質してしまったのか——そんな問いを持ちながら読んでいます。

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    2026年02月06日
  • アメリカのデモクラシー 第一巻(下)

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    デモクラシーがどのように機能しているか。
    民主制を無条件に賞賛するのではなく、多角的に冷静に評価。

    ・公務員の権力の執行と権威の分離

    ・外交における一定性

    ・民主制がとる手段(法律)は貴族制のそれに比べて不完全。しばしば意図せず自分自身の利益を害する。だが民主制が目指すところは貴族制の目的より有益

    ・民主政治の自由の下では、行政の達成が特にすぐれているわけではなく、人民が行政の介入なしに、行政と無関係に行う事業が巨大なのである

    ・宗教による平等・公正、政治との分離

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    2026年03月02日
  • アメリカのデモクラシー 第一巻(上)

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    アメリカの根底にあるもの。

    ・宗教と市民的自由・タウンシップ

    ・一般に人間の愛着は、力あるところにしか向かわない

    ・行政権の大きさ、種類、自律性による選挙の空白、非連続性の弊害の緩和

    ・アメリカ諸邦は連邦政府が法を定めるのみならず、これを自ら施行することに同意した

    ・アメリカでは、連邦が統治する対象は州ではなく、一般市民である

    ・連邦の制度は複雑な理論に基づいており、この理論を適用するには、被治者が理性の光を日常的に行使することがどうしても必要である

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    2025年12月28日
  • アメリカのデモクラシー 第二巻(下)

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    最終巻。

    デモクラシーと中央集権、専制についての警告が現代にも通じるところがあるように思えた。

    地域共同体などの中間団体がなくなることの危険性やそれらをどんどん無くそうとしてしまう民主的人民の傾向についての分析はいまも変わらないのではないかと思った。

    政治活動というと選挙と投票くらいのものしか思い浮かばなくなっている私なんかはトクヴィルからみたらナンセンスなんだろうと思う。

    またデモクラシーの時代こそ、仕事や生活は忙しくなるが精神的な変化は停滞するという分析もハッとさせられた。

    確かに世論が強くなるにつれて、一度抱いた誤った信念などは中々変化しないように思える。


    1巻と2巻長かったが読んでよかった。

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    2025年07月07日
  • アメリカのデモクラシー 第二巻(上)

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    デモクラシーの時代に訪れる恵みや危険について色々と分析しており面白かった。


    一般観念という概念自体を問うことに衝撃があった。
    境遇の平等が進んで私たち人間という意識が生まれなければ人間一般とかの概念で語ることはなかったという分析。
    さらに平等という概念を擬人化して語ることも許されるようになったと言ってる。
    貴族制の時代では個別具体的な話を細かくすることはあっても人間存在一般という観念が語られることはなかったという分析で面白かった。

    トクヴィルはデモクラシーの時代において宗教が重要であると何度も説いているのが印象的だった。
    これは平等の時代における個人主義化の加速や何でも自分の理性で考えるゆえに陥りやすい懐疑から人々を守る防波堤としての意味で有用だという考えから宗教を重視するようだった。
    ただトクヴィルの論では宗教の効用を理性的に分析しすぎて結局のところ宗教を理性に従属させてしまっているような気がする。
    冷静な分析すぎて危険な感じもしますが、民衆がみなそこまで分析しないから大丈夫ということなのかもしれない。

    専制に対する警戒もとても面白かった。
    個人主義が加速して自分の身の回りのことも自分で行う能力がなくなれば権力に従属的になり専制を呼び込むというのが大まかな流れだったが、とても考えさせられる。

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    2025年07月05日
  • アメリカのデモクラシー 第一巻(下)

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    私の読解力が低いので、下巻のアメリカの国民を分析している章を読んでようやく、本全体はアメリカに根付いたデモクラシーを分析していたことに気づいた。

    それはともかく、第10章の当時のアメリカ自体の分析は面白かった。
    ネイティブアメリカンやアフリカ系アメリカ人に対するイギリス系アメリカ人の扱いを外国人の視点だからか容赦なく冷静に分析していた。
    もちろん当時なりの差別意識や文明人が優越しているみたいな意識はあるので無批判に受け入れられないこともある。
    ただ、奴隷制度などの問題に対する分析は鋭いと思う。
    法制度の問題ではなく習俗の問題になっているから、奴隷を解放しても問題は無くならないという分析には驚いた。
    もちろん奴隷制度を肯定しているわけではなく、いずれ無くなるだろうとも著者はいっているが、そのときに中途半端な道を選べば人種間戦争のようなものにもなりかねないと予見している。

    他には5章も面白かった。
    みんなが一様に力を持たず傑出した個人がいない。
    そして、短絡的で感情で動き、しばしば間違えることがある。
    それでもやり直すことのできる制度とそういった精神性を持つ人民で構成されている強みがある。
    一方では多数の力が強すぎるゆえの弊害についても懸念を示していた。

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    2025年07月01日
  • アメリカのデモクラシー 第一巻(上)

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    難しかった。

    アメリカにおける民主主義の制度や人々の特徴についてさまざまに書かれている本。

    意外だったのは著者が人々の同質性をなんどもとりあげていた点。
    資産状況のみならず、知識などにおいても同質な人々が集まっていたからデモクラシーが成立していると分析しているようだった。
    また、地方自治の重要性やそれを支える制度と地域共同体の強さについても強調されていたことは勉強になった。

    民主主義というと一人一票とか選挙にいくことの重要性ばかり重要視されるが、そもそもの人々が平等でなければならず、自主的に地域の事柄に取り組む精神がなければならないのだということを考えさせられた。

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    2025年06月29日
  • アメリカのデモクラシー 第一巻(上)

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    もうすぐ大統領選挙なので。アメリカの選挙制度その他、どうしてこんな風になってんのかな?との疑問の一端が晴れた感じがしています。
    あくまで二百年前のフランス人から見たアメリカ像なので、社会の安定という点に物凄く力点が置かれており、安全装置がバランスよく働いているとの評価に繋がっていると感じました。その反面、現在のアメリカが置かれている不安定な状況をみるにつけ、どこで何が損なわれたのか、疑問は尽きません。

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    2024年10月31日
  • アメリカのデモクラシー 第一巻(上)

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    まとまり。弱肉強食の国際情勢。生まれたばかりの中堅国アメリカ。各州ばらばらだと、足並みの乱れを突かれて、列強の餌食になる。連邦政府の強化と、州の主権の廃棄が必要だ。アメリカ人は同じ祖先・言語・宗教・統治原則を持っている。よく似た習俗と慣習を持っている。ただし連邦政府を強化しても個人の自由は守られるべきだ▼多数派による専制を防ぎたい。直接民主政は多数派による少数派への圧政につながる。個人の生命や財産が守れない。そこで代議制を採用し、優れた人間に統治を任せる▼立法部(議会)の暴走を防ぎたい。大統領に拒否権を与えて、議会に対抗する力を持たせる。裁判所に違憲審査権を与えて、議会の暴走を防止。互いに権力を抑制▼大統領が独裁者になるのを防ぎたい。まず州ごとに選挙人を投票で選び、その選挙人が大統領候補に投票する仕組みに。選挙戦の期間を長くすることで、大衆の一時的な熱狂で担ぎ上げられることを防止する。アレクサンダー・ハミルトンHamilton他『フェデラリスト』1787

    フランス革命後、仏では政治体制が不安定化、帝政が生まれてしまった。アメリカ(ジャクソン大統領時代)でデモクラシーの可能性を探りたい▼平等と自由は両立しない。平等の実現(平準化)はしばしば自由を犠牲にする。階層秩序が崩壊し、貴族(中間的な権力)に支配されていた人が解放されると、無数の群衆が解き放たれる。彼らは魂を充たしてくれる卑俗な喜びを求めて動き回る。富と財産を増やすことが最大の関心事。自分の内に引き籠もり、個人がバラバラに欲望を追求する。彼らの享楽を保障し、監視しているのが国家。無力で不安定な個人は強力な国家に依存・隷属するようになる。また、政治に無関心になり個性を喪失し多数派に隷従・同調する。デマゴーグに操作される。こうして平等は自由ではなく隷属をもたらす。伝統的権威をなくした社会では多数者の意見が権威となる。多数者の専制。※cf. ミル自由論・ハーバマスの福祉国家▼それを防いでくれるのがアメリカの地方自治を通じた政治教育(民主主義の学校)。地域の問題を住民自身が考えて解決していく。仏のように行政的な中央集権がなく、人々が自らの手で身近な行政に携わっている(1-2-8)。仏のように中央の官僚(王の僕)が政治を主導するのではなく、下から国家をつくっている。仏のように結社の自由が制限されておらず、結社を自発的に作って個人と個人が結びつく。仏のように教会が強権をもつことなく、宗教が人間相互の連帯や社会への義務を自覚させ、利己主義を克服、紐帯が生まれている。アレクシ・ド・トクヴィルTocqueville『アメリカのデモクラシー』1835; 1840
    ■アメリカでは連邦が統治する対象は州ではなくて一般市民。税を徴収するとき、州政府に命令するのではなく、その州の住民1人1人に命令する(1-1-8)。
    ■結社の権利の行使は、大きな党派が多数派になる可能性が小さければ小さいほど危険になる。支持を得ることを期しがたい時、もはや説得しようとはせず、戦闘しようとする(1-2-4)
    ■小さな仕事を共同で行えば行うほど、人々は大きな仕事を共同で遂行する力を身につける。だから市民的結社は政治的結社の活動を容易にする(2-2-7)。
    ■人間の制度を変えることはできても、人間を変えることはできない(2-3-13)
    ■人々が特権に向ける憎悪の念は、特権が稀になり、小さくなればなるほど増大する(2-4-3)

    トクヴィルが礼賛したアメリカの地域コミュニティの結束は1980年代辺りから弱まっている。市民組織や友愛団体の会員数減少。メンバーの高齢化。親の教育課程への関与(PTA)の減少。投票率の低下・公的な集会への参加の減少。相互援助や共感の弱まり。個人間のつながり・社会的な網目は弱体化。互酬と信頼の規範が衰退。社会的な信頼の低下▼全国的な社会運動組織は、社会的な網目・相互信頼(ソーシャルキャピタル)とは言えない。ワシントンに拠点を置くプロ(専門家)が運営する組織であり、大部分の会員は会費を納めるだけか、一時的に寄付することで、自らの良心を慰めて自己満足しているにすぎない。全国的な社会運動組織の存在は草の根の参加が欠如していることの証し。ロバート・パットナムPutnam『独りでボウリング』2000
    ※昔ながらの古い組織に注目するから「コミュニティが衰退している」ように見えるだけとの批判。新しいコミュニティ(SNSなど)はむしろ隆盛。
    ※仲間うちの結束をもとづく内部指向の排他的な信頼・規範・ネットワーク。外部指向で他者と橋渡しをする信頼・規範・ネットワーク。cf. デュルケーム。機械的連帯(結束型)。有機的連帯(橋渡し)。

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    2025年04月26日
  • アメリカのデモクラシー 第一巻(上)

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    先日拝聴したライフネット生命の出口治明会長の講演の中で、『縦と横に見る視点が重要』とおっしゃっていた。先に読んだ、ちきりん著「自分のアタマで考えよう」の中でも、同じことに触れており、「『縦=時系列比較=歴史的な観点でものごとを見ること』と『横=他者比較=国際的な視点でものごとをみること』とのことですから、やはり比較といえばこの二種類を覚えておくべし」と言っている。そういう意味で本書は、現代の民主主義を考える上での「タテとヨコ」の決定版である。ちなみに本書も出口会長のお薦め本。
    本書は、フランスの政治思想家トクヴィルが1800年代前半にアメリカに渡り実際の見聞を著したものである。(著者が初めてアメリカに渡ったのは25歳の時だから驚き!)アメリカ人ではないところがミソで、日本人から見れば、「タテとヨコ」でいう「ヨコ」に深みが増している。
    一例をあげる。たとえば、著者は以下のようにアメリカの二院制について、
    「立法権力を分割し、議会政治の進行を遅らせ、法律の修正のために上訴の場を一つ設けること、これが合衆国の二院制から導かれる唯一の利点である。
     利点はこれらに限られるとしても、立法権の分割になお第一級の必要性があることを、アメリカ人は時と経験から知った。連邦に加わった諸国の中で、ペンシルバニアだけが最初一院制を試みた。フランクリン自身、人民主権の教義の論理的必然に導かれて、この措置に同意していた。その後、法を改正し、二院制をとらざるをえなくなった。かくして立法権の分割は最後の祝福を受けた。このとき以来、立法行為を複数の機関に分掌させる必要性は証明済みの真理とみなすことができる。この理論は古代の共和国にはほとんど知られておらず、多くの偉大な心理と同じく実行に移されたのはほとんど偶然の賜であり、近代の諸国もいくつかはこれを無視しているが、いまや今日の政治学の一つの公理となっている。」と述べている。
    正直1回通読した現時点において、まだこの重みが処理しきれないでいる。ただ、噛めば噛むほど味が出そうだということはよくわかった。何度か読み返すべき名著である。

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    2021年08月08日
  • アメリカのデモクラシー 第一巻(下)

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    金言の数々がちりばめられている。重い。またゆっくり読み直したいと思った。

    上巻に続き、参考箇所。一つ一つが考えさせられる一節である。
    「普通選挙こそよい政治家を選ぶ保証だと考える者が完全な幻想に囚われていることは、私にははっきり証明された。」
    「二段階選挙こそ人民のあらゆる階級に政治的自由の行使を可能にする唯一の手段だと思う」
    「その本性あるいは構造が悪法の一時的弊害に耐えられるようにできている社会、法の一般的傾向の帰結が現れるまで滅びずに待っていられるような社会を想像していただきたい。民主政治はその欠陥にもかかわらず、このような社会を繁栄させるにはやはり最適の政治であることはお分かりであろう。
     これこそまさに合衆国の事態である。…アメリカ人の大きな特権は、失敗してもやり直しがきくということである。」
    「法律は習俗に根づかぬ限りいつも弱いものである。習俗こそ国民にあって唯一変わらぬ、持続的な力である。」
    「…合衆国の民主的諸制度の存続を帰すべき原因は、環境、法律、習俗の三つである。
     ヨーロッパ人の多くはこの三つの原因のうち、最初のものしか知らず、これを実際以上に重視する。」
    「私はアメリカ人の実地の経験や習慣と意見、一言でいって習俗が彼らの法制の維持に果たす重要性を認識した…」

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    2021年08月08日
  • アメリカのデモクラシー 第一巻(下)

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    下巻は、市民社会と習俗に焦点を当てると伴に、貴族社会と民主社会の比較から、(当時)将来来るべく民主社会の課題や有るべき姿を述べ、民主社会における中央集権化、独裁主義化への懸念を見事に予想している。
    貴族社会には主権者である国王が民衆に直接支配力を及ぼすことができないクッション(貴族)があったとし、米国では、それを地方自治の仕組みに取り入れ、中央集権化、独裁主義化へ向かわない仕組みを内在化させたとする。

    なぜ、アメリカ人は産業に向かわせるのか、民主化された社会で客観的な物差しは金でしかない等、現在の米国社会を示す考察をこの時点で為し得ている。

    以下引用~
    ・(アメリカの)国民にあって怖れるべきことはすぐに立て直せる少数の人々の破滅ではなく、万人の活動停止と無気力である。大胆な産業活動こそ、そうした国民の急激な進歩と力と栄光の第一の源泉である。
    ・・・このため、合衆国では、破産した商人は異様に寛大に遇される。

    ・専制は民主的な世紀には特別恐るべきもののように思われる。

    ・同業組合や貴族から奪った行政権をすべて主権者一人に委ねる代わりに、その一部を普通の市民が一時的に形成する二次的段階に託すことができる。このようにすれば、平等を減ずることなく、私人の自由はより確実になるであろう。われわれのように言葉にこだわらないアメリカ人は彼らの行政区画の最大のものを指すカウンティ(伯爵領)という語を残した。だが、それを部分的に地方議会で置き換えた。

    ・合衆国では武勲はあまり評価されず、いちばんよく知られ、高く評価される勇気は、誰よりも早く港に着くために嵐の海と闘う勇気であり、不平一つ言わずに、荒野の窮乏生活に耐え、またいかなる窮乏よりも残酷な孤独に耐える勇気である。

    ・人と人との間にはっきり目に見える違いを生み、少数のものを仲間から際立たせるものは金の他にほとんどない。富に発する差別は他のあらゆる差別が消え、減っていくと共に大きくなる。

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    2015年04月06日
  • アメリカのデモクラシー 第一巻(上)

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    1800年代にフランスの政治家トクヴィルが米国に渡り、米国社会の仕組み、米国人行動をつぶさに分析した結果を「米国論」として纏めたもの。
    米国を表わす最も適当なコンセプトが民主的(デモクラシー)ということになる。
    当時、欧州からみると米国は壮大な実験の場であり、また将来の自らを占う国として大きな関心が持たれていたのだと思う。本著は古典の部類に入るのかもしれないが、現在の米国社会を考える上でも参考になる考察が数多く見出すことができ、大いに参考になった。

    国は人間の成長と同じだという。子供の頃からの成長の過程を見ることで、今の自分を判断できるように、”米国は、一大国民の出発点を明瞭に認識することのできた唯一の国である”。
    例えば、米国を創ったのは母国英国を捨てた清教徒であり、そのニューイングランドの気風が全国に拡がり、国の精神を作ったとしている。
    確かに、今も米国人は宗教心に厚く、正義・公正を重んじる傾向があり、それはこの生い立ちに繋がってくるものだと納得した。
    また、自由、平等はまさに母国での差別から逃れてきたこと人々にとって最も重んじられているものであり、それが法制度等、社会の仕組みに埋め込まれていることにも必然性を感じる。
    その他、地方自治、連邦制度、大統領制、司法制等、米国の社会の特徴を米国の生い立ちから紐解き、その趣旨を理解することができ、大変興味深い内容になっている。

    以下引用~
    ・アメリカでは逆に、郡より前に自治体が、州より前に郡が、そして連邦より前に週が組織されたと言うことができる。
    ・アメリカでは両者をいわば混ぜ合わせ、見事に結びつけることに成功したのである。すなわち、私が言うのは宗教の精神と自由の精神のことである。

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    2015年03月08日
  • アメリカのデモクラシー 第一巻(上)

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    アメリカという国を、もう一度作ろうと思っても、もう作れない。アメリカはこの世界が一度だけ作ることのできた宝石だと思う。人間というのがいかにすごいのか、歴史書を読んでいるとなぜか自分が人間より上の種族になったような気がするが、それにしても人間という生き物はすごいなあ、と上から目線で、いやあすごい本当にすごい、と飛び切りお気に入りの本でも見つけたみたいに何度も色々な場面から見て見たくなってしまう。アメリカというシステム、アメリカという人間たち。アメリカという蒸気、ただ機関車を動かしている、そのしくみ。

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    2015年02月03日
  • アメリカのデモクラシー 第二巻(上)

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    本書では、民主制がいかにアメリカ人に影響を及ぼしているかが考察の対象とされており、第一部では、民主制の「知的運動」、第二部では「感情」に及ぼす影響が検討されている。第一部によれば、民主制は、アメリカ人に物理的享楽を大胆に志向させており、彼らは、一般性・無形式性・実用性を好んでいる。彼らの宗教には来世への関心が比較的弱い。とはいえ、その宗教は、秩序を破壊するものではなく、利益を求める上でも有効に機能している。第二部によれば、アメリカ人には、個人主義があるが、同時に結社を志向する態度がある。また、アメリカ人は、宗教の効用ゆえに物質的享楽への愛着が行き過ぎてはいない。

    トクヴィルは、アメリカ人に精神的な単純性や文芸における素朴さを見るとともに、平等が彼らに現世的利益を追求させていると考えている。だが、彼は他方で、宗教ゆえに物理的享楽への一定の歯止めがかかっていると見ている。彼によれば、民主制の立法者は、人々の宗教的関心を持続するよう配慮しなければならない。彼には敬虔なキリスト教信仰があるように見えるが、その議論には、宗教の政治的利用の必要性という冷徹な見方もうかがえる。宗教は、民主制の諸帰結のうちを悪しき部分を抑制する装置として不可欠ということになろう。

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    2018年02月20日
  • アメリカのデモクラシー 第一巻(下)

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    トクヴィルは序文で、アメリカでは人民の権力が制度や形式を思うままに破壊ないし修正していると指摘し、その本能と情熱は何か、それを推し進め、あるいは抑制する仕掛けは何か、その将来の帰結は何かを本書で明らかにすると論じている。

    1章によれば、アメリカでは、人民が直接その代表を任命し、議員は、人民に従属しているが、代議制が採用されている。2章によれば、アメリカには、もはや大きな目標を持つ「偉大な」政党はない。政治的信念のない「矮小な」政党があるにすぎない。3章では、アメリカには出版の自由があり、新聞の独立があるという。4章によれば、アメリカには政治結社が無数にあり、社会的権威には疑いの念を抱いている。結社の自由は、多数者の専制に対する保証でもある。5章によれば、普通選挙が優れた為政者を生み出すわけではないが、アメリカでは、上院議員を選ぶ選挙が二段階であるため、民主制の欠点を是正している。また、民主制の運営は、それ自体安価で済んでいるというわけではなく、戦争がないために支出が少ないにすぎない。アメリカには徴兵制がないため、大規模な戦争を遂行しえない。それゆえ、諸外国との関わりは抑制的でなければならない。なお、外交政策は、民主制の原理に基づいているわけではないとされている。6章によれば、民主政の利点は、最大多数の福祉を目指す点にある。民主制は、政治的権利の観念を行き渡らせ、人々は、自身の権利を置かれないために他人の権利を攻撃しないようになる。7章の議論では、アメリカでは多数者が絶大な権力を持ち、この帰結は、将来にとって危険であり、自由を失うかもしれないという。8章では、多数者の専制を和らげている理由の一つは、中央行政の権力の弱さにある。さらに、貴族的牽制、すなわち、保守的な性格を有する法曹精神もある。9章では、アメリカでの民主制維持の主な理由が偶然、法制、習俗に求められている。そこには境遇と知性の平等、広大無辺の大陸、秩序への意識や商業的情熱がある。法律では、連邦制度、地方自治、司法権の構成が多数者の動きを方向づけている。また、キリスト教という点で一体性があるが、宗教は、政治権力と結びついていない。習俗の民主制に対する影響は、すでに第一部で論じられていた。10章では、連邦が持続する可能性が三つの人種を考慮することで検討されている。インディアンは、絶滅する運命にあろう。黒人は、奴隷制とともに生きており、それは人種的相違に基づいているため、問題は永続的である。北部での奴隷制廃止は、南部での廃止を困難にしており、いずれ黒人と白人の深刻な対立が生じるだろう。だが、連邦は、各州が経済的利益や精神的・道徳的見解の一致からして崩壊しないだろう。共和制も、宗教的習慣や平等があるため持続するだろう。

    トクヴィルによれば、アメリカの民主制を他国にそのまま移植してもその制度は維持しえない。とはいえ、アメリカは、民主政の病理に治療法を施しており、民主制に絶望する必要はない。彼は、ヨーロッパがアメリカから学ぶべき教訓を引き出していると言えるが、詳細なアメリカの(欠点を含めた)現状分析からうかがえるように、きわめて慎重な形でこれを行う必要があると考えているように見える。彼が恐れている事態の一つは、多数者の専制である。

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    2018年02月20日
  • アメリカのデモクラシー 第一巻(上)

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    トクヴィルは、民主制は(ヨーロッパでも)不可避的という見通しの下に、アメリカの民主制の制度的あり方やその成立条件を検討している。

    彼は第1章で北アメリカの地形を概観した後、第2章では国民の起源ないし形成期にすでに国民間の優劣がなく、かつ、「民主的共和制」と不可分のピューリタニズムがあったことを指摘している。その「社会状態」は、第3章によれば、市民の平等と知識の平等が著しい状態であった。第4章では、アメリカのイギリス系植民地に人民主権が原理として根づいており、革命後はそれが自治体から政府へと波及したと論じられている。第5章では、個々の州の事情が検討されている。その特徴は、例えば、ニューイングランドに見られるように、地域共同体(タウン)の自治にある。第6章によれば、アメリカの司法権は、法律よりも憲法に基づいて審判できる。第7章は、ヨーロッパでは政治裁判で公務員に重罪を課すが、アメリカでは公的資格を剥奪するにすぎないことが指摘されている。連邦憲法を扱った第8章によれば、アメリカでは、連邦の主権と州の主権が分割され、連邦政府の権限は、戦争・通貨・交通・課税などに限定されている。①州の原理を上院に国民主権の原理を下院に代表させた立法、②大統領が長であり立法議会との対立の生じない行政、③他国にないほど大きな権力を有し、立法府への権力集中を防止する司法が論じられている。

    アメリカの特徴は、連邦制度にあり、それは、地域の多様性を生かしつつ、防衛のような社会全体に関わる行動を規制している。とはいえ、すべての国家が連邦制度を採りうるわけではない。それを可能にした条件とは、市民の政治的知識の普及、「文明」の同質性、とりわけ地理的な環境である。

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    2018年02月20日
  • アメリカのデモクラシー 第二巻(下)

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    第1巻を刊行した1835年の5年後に、トクヴィルはこの第2巻を出した。
    アメリカ合衆国のイメージは彼の中で煮詰まり、この巻では「自由」「平等」などの概念をめぐって延々と思索が続く。
    特に「平等」概念を、ヨーロッパ文化にとっても重大な歴史的転回点としてとらえており、単に賞賛するのではなく、その危険性をも含めて考えを深めている。
    19世紀前半のトクヴィルの思考は、ただちに現在の「民主社会」に適用できるわけでもなく、彼の予測は外れている面もある。それでも、「民主主義とは何か」を考える上で、本書は多くの示唆を含んでいる。
    しかしこの本の要点を抜き出し、その思想の骨格を明確にする作業は、一読しただけではなかなか難しいだろう。

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    2013年03月23日
  • アメリカのデモクラシー 第一巻(下)

    Posted by ブクログ

    民主主義というテーマにおいては有名で重要な本らしいので、読んでおくことにした。
    第1巻の出版は1835年で、南北戦争前である。主にイギリスの出身者たちがつぎつぎと北米に入植し、開拓し、社会を築き上げていく黎明期を描き、分析している。トクヴィルはフランス人なので、フランスの君主制との違いが、折に触れて指摘される。
    トクヴィルによると、北米は入植によって生まれた当初から「民主的」であり、住民間に階級差はなく(黒人奴隷やインディアンを除く)、自然発生的な共同体「タウン」において、自治的に倫理や法が築かれていったという。キリスト教をベースにし、そこからタウンみずからが、<掟>を制定していったのである。そこで、ホーソーンの『緋文字』に描かれたあの街、あの掟、あの「罰」が生まれたわけだ。
    トクヴィルの合衆国民主主義の分析は、たぶん当時としては画期的なものだったろう。ただし、現在の視点から読むと首肯できない点もあるが。
    対等な人間たちのあいだでの<多数者>が実質的に政治を動かしていくという民主主義ルールは、ともすれば世論という名の「衆愚」の醜悪をさらけだす危険があると私は思うのだが、トクヴィルはそこまでは言ってない。アメリカ合衆国の民主主義を最高のものとして語っているわけではないが、その価値を認めてもいる。なかなかに冷静な見方で、多義的に捉えている。
    第2巻(岩波文庫ではさらに上下に分かれる)はさらに突っ込んで民主主義について考察するようなので、楽しみだ。

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    2013年03月17日