全4巻の最終巻である本巻では、自由と平等についてのトクヴィルの省察が理論的に深められるが、その核心的なエッセンスを列挙すれば以下の如くである。
★平等な社会は人々の境遇を不安定にし、虚栄心を蔓延させる。
「デモクラシーにおいては、境遇の変化が大きいので、人々の特典はほとんど常に獲得して間もないもの
...続きを読むである。・・・そのような特典はいつ何時失われるかも知れないので、彼らは警戒を怠らず、特典をまだ有していることを見せびらかそうとする。・・・民主的国民の執拗であくなき虚栄心はこのように境遇が平等で壊れやすいことに由来する」(p114)
★平等が進展すればするほど、些細な不平等に人は敏感になる。
「人々が特権に向ける憎悪の念は特権が稀になり、小さくなればなるほど増大する・・・境遇がすべて不平等である時には、どんなに大きな不平等も目障りではないが、すべてが斉一な中では最小の差異も衝撃的に見える。・・・平等への愛は、これが満たされるにつれてまた大きくなる。」(p222)
★自由は平等の確立を援けるが、平等の確立は自由の存続を危うくする。
「市民は刻々行政の統制の手に落ち・・・新たに得た個人の独立のなにがしかを毎日行政に差し出すに至っている。」(p250)
「平等の勝利が確実になるにつれて彼らは最初こそ平等になれるように自由であらんと欲したが、自由の援けを得て平等が確立するにつれて、平等は彼らが自由を保持することを一層困難にした。」(p251)
最初の二つは物事の両面であり、平等意識と格差意識の淫靡な共犯関係を語り尽くして余すところがないが、最後に示されたように、それが結果的に平等の護持者としての国家権力の肥大化を招き、ひいては個人の自由を侵食するというのがトクヴィルの最終的なメッセージと言えるだろう。