トクヴィルのレビュー一覧
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全4巻の最終巻である本巻では、自由と平等についてのトクヴィルの省察が理論的に深められるが、その核心的なエッセンスを列挙すれば以下の如くである。
★平等な社会は人々の境遇を不安定にし、虚栄心を蔓延させる。
「デモクラシーにおいては、境遇の変化が大きいので、人々の特典はほとんど常に獲得して間もないものである。・・・そのような特典はいつ何時失われるかも知れないので、彼らは警戒を怠らず、特典をまだ有していることを見せびらかそうとする。・・・民主的国民の執拗であくなき虚栄心はこのように境遇が平等で壊れやすいことに由来する」(p114)
★平等が進展すればするほど、些細な不平等に人は敏感になる。
「人 -
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『アメリカのデモクラシー』は1500頁に及ぶ大著であり、時間のない人のために全四分冊のうち一冊選ぶとすれば、躊躇なくこの第2巻上を奨める。第1巻で提起された自由と平等のパラドックスが文明論的に掘り下げられ、トクヴィルの最も独創的な思考が凝縮されている。平等の進展がいかにして多数者の専制あるいは自発的な隷従に結びつくかが多面的に考察されている。
各人の諸条件が平等になれば、社会の固定的な障壁は取り払われ、人間関係は流動的になる。人々は孤独に耐えられず、自分を導いてくれるものを探し求める。そこで拠り所となり易いのは「世論」であり、新聞が有力な社会的勢力となる。また人々の紐帯が弱まることが専制政治 -
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第1巻下では本書の中心テーマである「自由」と「平等」のパラドクスが本格的に論じられる。トクヴィルは民主主義の基本的な価値観を「平等」とみる。これはフランス革命が掲げた三大理念の一つだが、「平等」の進展が社会における「自由」の基盤を侵食することへの危機感がトクヴィルに本書を書かせたと言ってよい。革命は「平等」を希求して王権を打倒したが、実は王権こそが「平等」の推進者であった。王権は中央集権化をはかる過程で、大方の貴族階級と彼らが構成する中間団体の特権を剥奪し、王権という頂点を除いて、かなり「平等」な社会を革命以前に既に実現していた。このことを看破したのがトクヴィルの今一つの名著『旧体制と大革命』
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最終巻。
デモクラシーと中央集権、専制についての警告が現代にも通じるところがあるように思えた。
地域共同体などの中間団体がなくなることの危険性やそれらをどんどん無くそうとしてしまう民主的人民の傾向についての分析はいまも変わらないのではないかと思った。
政治活動というと選挙と投票くらいのものしか思い浮かばなくなっている私なんかはトクヴィルからみたらナンセンスなんだろうと思う。
またデモクラシーの時代こそ、仕事や生活は忙しくなるが精神的な変化は停滞するという分析もハッとさせられた。
確かに世論が強くなるにつれて、一度抱いた誤った信念などは中々変化しないように思える。
1巻と2巻長かっ -
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デモクラシーの時代に訪れる恵みや危険について色々と分析しており面白かった。
一般観念という概念自体を問うことに衝撃があった。
境遇の平等が進んで私たち人間という意識が生まれなければ人間一般とかの概念で語ることはなかったという分析。
さらに平等という概念を擬人化して語ることも許されるようになったと言ってる。
貴族制の時代では個別具体的な話を細かくすることはあっても人間存在一般という観念が語られることはなかったという分析で面白かった。
トクヴィルはデモクラシーの時代において宗教が重要であると何度も説いているのが印象的だった。
これは平等の時代における個人主義化の加速や何でも自分の理性で考える -
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私の読解力が低いので、下巻のアメリカの国民を分析している章を読んでようやく、本全体はアメリカに根付いたデモクラシーを分析していたことに気づいた。
それはともかく、第10章の当時のアメリカ自体の分析は面白かった。
ネイティブアメリカンやアフリカ系アメリカ人に対するイギリス系アメリカ人の扱いを外国人の視点だからか容赦なく冷静に分析していた。
もちろん当時なりの差別意識や文明人が優越しているみたいな意識はあるので無批判に受け入れられないこともある。
ただ、奴隷制度などの問題に対する分析は鋭いと思う。
法制度の問題ではなく習俗の問題になっているから、奴隷を解放しても問題は無くならないという分析には驚 -
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難しかった。
アメリカにおける民主主義の制度や人々の特徴についてさまざまに書かれている本。
意外だったのは著者が人々の同質性をなんどもとりあげていた点。
資産状況のみならず、知識などにおいても同質な人々が集まっていたからデモクラシーが成立していると分析しているようだった。
また、地方自治の重要性やそれを支える制度と地域共同体の強さについても強調されていたことは勉強になった。
民主主義というと一人一票とか選挙にいくことの重要性ばかり重要視されるが、そもそもの人々が平等でなければならず、自主的に地域の事柄に取り組む精神がなければならないのだということを考えさせられた。 -
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まとまり。弱肉強食の国際情勢。生まれたばかりの中堅国アメリカ。各州ばらばらだと、足並みの乱れを突かれて、列強の餌食になる。連邦政府の強化と、州の主権の廃棄が必要だ。アメリカ人は同じ祖先・言語・宗教・統治原則を持っている。よく似た習俗と慣習を持っている。ただし連邦政府を強化しても個人の自由は守られるべきだ▼多数派による専制を防ぎたい。直接民主政は多数派による少数派への圧政につながる。個人の生命や財産が守れない。そこで代議制を採用し、優れた人間に統治を任せる▼立法部(議会)の暴走を防ぎたい。大統領に拒否権を与えて、議会に対抗する力を持たせる。裁判所に違憲審査権を与えて、議会の暴走を防止。互いに権力
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金言の数々がちりばめられている。重い。またゆっくり読み直したいと思った。
上巻に続き、参考箇所。一つ一つが考えさせられる一節である。
「普通選挙こそよい政治家を選ぶ保証だと考える者が完全な幻想に囚われていることは、私にははっきり証明された。」
「二段階選挙こそ人民のあらゆる階級に政治的自由の行使を可能にする唯一の手段だと思う」
「その本性あるいは構造が悪法の一時的弊害に耐えられるようにできている社会、法の一般的傾向の帰結が現れるまで滅びずに待っていられるような社会を想像していただきたい。民主政治はその欠陥にもかかわらず、このような社会を繁栄させるにはやはり最適の政治であることはお分かりであろ -
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先日拝聴したライフネット生命の出口治明会長の講演の中で、『縦と横に見る視点が重要』とおっしゃっていた。先に読んだ、ちきりん著「自分のアタマで考えよう」の中でも、同じことに触れており、「『縦=時系列比較=歴史的な観点でものごとを見ること』と『横=他者比較=国際的な視点でものごとをみること』とのことですから、やはり比較といえばこの二種類を覚えておくべし」と言っている。そういう意味で本書は、現代の民主主義を考える上での「タテとヨコ」の決定版である。ちなみに本書も出口会長のお薦め本。
本書は、フランスの政治思想家トクヴィルが1800年代前半にアメリカに渡り実際の見聞を著したものである。(著者が初めてア -
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下巻は、市民社会と習俗に焦点を当てると伴に、貴族社会と民主社会の比較から、(当時)将来来るべく民主社会の課題や有るべき姿を述べ、民主社会における中央集権化、独裁主義化への懸念を見事に予想している。
貴族社会には主権者である国王が民衆に直接支配力を及ぼすことができないクッション(貴族)があったとし、米国では、それを地方自治の仕組みに取り入れ、中央集権化、独裁主義化へ向かわない仕組みを内在化させたとする。
なぜ、アメリカ人は産業に向かわせるのか、民主化された社会で客観的な物差しは金でしかない等、現在の米国社会を示す考察をこの時点で為し得ている。
以下引用~
・(アメリカの)国民にあって怖れるべ -
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1800年代にフランスの政治家トクヴィルが米国に渡り、米国社会の仕組み、米国人行動をつぶさに分析した結果を「米国論」として纏めたもの。
米国を表わす最も適当なコンセプトが民主的(デモクラシー)ということになる。
当時、欧州からみると米国は壮大な実験の場であり、また将来の自らを占う国として大きな関心が持たれていたのだと思う。本著は古典の部類に入るのかもしれないが、現在の米国社会を考える上でも参考になる考察が数多く見出すことができ、大いに参考になった。
国は人間の成長と同じだという。子供の頃からの成長の過程を見ることで、今の自分を判断できるように、”米国は、一大国民の出発点を明瞭に認識することの