鼓直のレビュー一覧
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隠喩にこそ言語の本質があるとでもいうように、その働きを矯めつ眇めつし見極めようとする。また物語の機能の根源には歴史性があるという風に、古典に幾度となく立ち返る。
謎を提示する、と本人の言うとおり、議論は明晰ではあるけれどクリアカットな結論に落とし込むためになされてはおらず、一読して理解した気にはな...続きを読むPosted by ブクログ -
乾き、こわばり、血の味、人間の体臭、闇。
『伝奇集』とは違う作家が書いているようだ。
現実を追究しているにもかかわらず、かえって現実から浮遊してしまう。Posted by ブクログ -
ボルヘスによる詩に関する話。詩に対して共感できることがここにはある。詩のよさ本来の姿といってもいいと思う。ボルヘスが先導役ならきっと詩を書こうと思う人は増えると思うな。そんな気がした。Posted by ブクログ
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ボルヘスは決して多くのことを述べているわけではないが、示唆に富んだ事柄ばかりを述べるため、豊富に世界が拡大していく。
・生は詩から成る。
・リンゴと口の接触が必要。
・詩は一回限りの経験。
・書物は美の契機。
・詩とは何かを心得ているために定義できない。
・隠喩……人間は断定よりも暗示を信じる。
・...続きを読むPosted by ブクログ -
160ページくらいの薄い本で、しかも3分の1は解説。
宮崎駿「君たちはどう生きるか」の感想で、セルフオマージュみたいでマンネリ、というものがあったが、
いやむしろ追い続けたモチーフがまたも登場することに業を見出して嬉しくなってしまった者としては、
最後の短篇集にまで「いつものあれら」が出てくるのは嬉...続きを読むPosted by ブクログ -
『7つの夜』もそうだったのだけど、ボルヘスの講演録は読んでいてものすごく心地良い。それは彼の書物に対する愛情、文化に対する敬意を言葉の端々から感じることができ、博覧強記なその知性が軽やかなステップを踏んで読み手を魅力するからだ。一言で表すならば、それは信愛なる美しさ。物語について、詩についての講演録...続きを読むPosted by ブクログ
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マルコ福音書は外部の知識人/知性者を神=生贄とする原始宗教とキリスト教の関係性を描いているが他の作品でもみるね。ここまで書いてちょっと違うかもしれないPosted by ブクログ
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詩を中心とした文学論、という印象。大学の講義録なので語り口が易しく、読みやすかった。後半3章が特に興味深く読めた。
しかし内容が理解しきれたわけではないので、折を見て要再読。Posted by ブクログ -
20世紀ラテンアメリカの作家ボルヘス(1899-1986)最晩年の短篇集、1983年。
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自己への拘泥という依存からの解放を、精神からも肉体からも解放されるということを、精神と肉体から抜け出る秘密の抜け道としての何かを、求めていた。自己がどこともなく解消されて、喪失すべきものが実ははじめから喪...続きを読むPosted by ブクログ -
マジック・リアリズムと呼ばれるが、ガルシア・マルケスとはまた違う。日本文学より語り切る感じだが、シンプルな中に読み手に委ねてあるところが多く面白い。Posted by ブクログ
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ボルヘスの遺作が本邦初訳なのがびっくり。良くも悪くも枯れた感じは、昔からかも知れないが、渇き具合が一段と上がっている感じはする。懇切丁寧な解説が助かる。Posted by ブクログ
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ボルヘス後期の短篇集。南米特有の場末の雰囲気には、日本の小説では味わえない異国感がある。「マルコ福音書」の終わり方がよかった。書かれないラストに思いを馳せ、書き出しに立ち戻る。「めぐり合い」の二本のナイフの物語はロマンチックだ。p68「物は人間より持ちがいい。」Posted by ブクログ