鼓直のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
ボルヘスは決して多くのことを述べているわけではないが、示唆に富んだ事柄ばかりを述べるため、豊富に世界が拡大していく。
・生は詩から成る。
・リンゴと口の接触が必要。
・詩は一回限りの経験。
・書物は美の契機。
・詩とは何かを心得ているために定義できない。
・隠喩……人間は断定よりも暗示を信じる。
・数えられるパターンから無限に近い変奏。
・未来においては状況や歴史や詩人の名前や生涯よりも、美そのものに関心が向けられるかもしれない。
・日常的な言葉から、魔術的な源泉を、詩人は呼び出す。
・ストーリーは信じられないがキャラクター(存在そのもの)は信じられる。ドン・キホーテ。ホームズ。
・人間の一生 -
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Posted by ブクログ
様々な人物の末期(まつご)が淡々と叙述されていくところは
山田風太郎『人間臨終図鑑』のようだ。
表題作を除いては幻想的でもメタフィクショナルでもないが、
我々と異なる時代、遠い場所に生まれて死んだ人たちの――
恐らく多くは作者が
実体験・聞き書きに尾鰭を付けたと思われるドラマが
味わい深い。
晩年、作風がアッサリしていったのは、
視力の衰え(最終的に失明)から
口述筆記に移行したことと関係があったのだろうか。
以下、特に印象的な作品について。
「じゃま者」
ならず者が暮らす地域に住んでいたニルセン兄弟の逸話。
彼らは一人の女を共有したが……。
自ら招いた三角関係の無残な清算。
「 -
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Posted by ブクログ
20世紀ラテンアメリカの作家ボルヘス(1899-1986)最晩年の短篇集、1983年。
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自己への拘泥という依存からの解放を、精神からも肉体からも解放されるということを、精神と肉体から抜け出る秘密の抜け道としての何かを、求めていた。自己がどこともなく解消されて、喪失すべきものが実ははじめから喪失してしまっていたということになれば、喪失の前提条件が予め解消されてしまっていたということになれば、そもそも迷子になる布置そのものがなくなってしまっている、ということになる。
主/客、自/他、有/無、同一/差異、区別/混沌、、現/夢、生/死、実/虚、能動/受動、自由/運命、、始/終、先/後、因/果 -
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