あらすじ
20世紀文学の巨人ボルヘスによる知的刺激に満ちた文学入門。誰もが知っている古今東西の名著・名作を例にあげ、物語の起源、メタファーの使われ方の歴史と実際、そして詩の翻訳についてなど、フィクションの本質をめぐる議論を分かりやすい言葉で展開する。ハーヴァード大学チャールズ・エリオット・ノートン詩学講義(1967-68)の全記録。
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Posted by ブクログ
ボルヘスの思うところの、「詩」へ関わり方が簡潔に5回の講義で話されている。
最後の章は本当に感動した。
結局は、言葉というものは読む人や書く人それぞれの生き方に沿っていくものなんだなと。
インドの人たちの歴史への捉え方も面白かった。
言葉や時の流れ、過去と未来、現代といった空気のような存在で考えもしなかった事について、この本を読む前と後ではガラッとひっくり返された気分です。驚きの講義。
Posted by ブクログ
隠喩にこそ言語の本質があるとでもいうように、その働きを矯めつ眇めつし見極めようとする。また物語の機能の根源には歴史性があるという風に、古典に幾度となく立ち返る。
謎を提示する、と本人の言うとおり、議論は明晰ではあるけれどクリアカットな結論に落とし込むためになされてはおらず、一読して理解した気にはなれなかった。
紹介される英語の詩がどれも素人目にも美しい
Posted by ブクログ
ボルヘスによる詩に関する話。詩に対して共感できることがここにはある。詩のよさ本来の姿といってもいいと思う。ボルヘスが先導役ならきっと詩を書こうと思う人は増えると思うな。そんな気がした。
Posted by ブクログ
ボルヘスは決して多くのことを述べているわけではないが、示唆に富んだ事柄ばかりを述べるため、豊富に世界が拡大していく。
・生は詩から成る。
・リンゴと口の接触が必要。
・詩は一回限りの経験。
・書物は美の契機。
・詩とは何かを心得ているために定義できない。
・隠喩……人間は断定よりも暗示を信じる。
・数えられるパターンから無限に近い変奏。
・未来においては状況や歴史や詩人の名前や生涯よりも、美そのものに関心が向けられるかもしれない。
・日常的な言葉から、魔術的な源泉を、詩人は呼び出す。
・ストーリーは信じられないがキャラクター(存在そのもの)は信じられる。ドン・キホーテ。ホームズ。
・人間の一生は、自分が何者であるかを悟る一瞬につづめられる。→イエスにキスをするユダ。→裏切り者。
・言葉は共有する記憶を表す記号。→読み手に想像させようと努める。→一種の共同作業。
Posted by ブクログ
『7つの夜』もそうだったのだけど、ボルヘスの講演録は読んでいてものすごく心地良い。それは彼の書物に対する愛情、文化に対する敬意を言葉の端々から感じることができ、博覧強記なその知性が軽やかなステップを踏んで読み手を魅力するからだ。一言で表すならば、それは信愛なる美しさ。物語について、詩についての講演録である本作ではそんなボルヘスの美学が満遍なく語られながら、書物を超えた「言葉」が持つ美しさへとアクセスする。ボルヘスが盲目となりながらも書物へ、そして美しさへの敬意を失わなかった理由に触れることのできる一冊。