川上泰徳のレビュー一覧

  • ハマスの実像

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    岡真里さんの本以上にパレスチナのことが歴史を追ってわかる。現地での取材を重ねた元朝日新聞記者のジャーナリストとしての気骨が伝わる本であった。
    2024年6月時点でのガザの死者は3万7千人を超え、そのうち子どもの死者が1万5千人超えだという。世界中の紛争で亡くなる子どもの数は一年間で3千人以下だというから無惨である。(これも許せないが)
    イスラエルの蛮行はやまない。西欧、米、ロ、そしてあろうことか我が日本などがジェノサイドの加害者側に立っていることが大きな要因だ。恥ずべきことだ。
    作者の古巣朝日新聞でさえ、ハマスのテロ対反テロのイスラエルの争いという見方を広める。
    平和を望む者は騙されないようにしなければ。本書の一読をお勧めする。

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    2024年11月12日
  • ハマスの実像

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    作られたステレオタイプをいつまでも引き摺っている現状。人命と人権を守るために取るべき戦略が偏見や過去によって阻害されることがないよう、多くの視点を獲得し続けるしかない。

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    2024年11月06日
  • 「イスラム国」はテロの元凶ではない グローバル・ジハードという幻想

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    ■なぜ残酷な画像を敢えて公開するのか。アルカイダの幹部で戦略家でもあるアブ・ムサアブ・スーリーによる「イスラム目がある。そこでは,「コーラン」の「戦利品章」にある「彼らに対して,あなたのできる限りの(武)力と,多くの繋いだ馬を備えなさい。それによってアッラーの敵,あなた方の敵に恐怖を与えなさい」という一文を引用していた。この文書はアルカイダの教本の一つとされるが,ここで「テロリズム」と訳しているのは,「コーラン」の中で「敵に恐怖を与えなさい」という部分である。アラビア語では,テロリズムは「イルハーブ」である。これは「恐れさせる」「恐怖を与える」を意味する動詞「アルハバ」から派生した名詞であり,英語動詞「テロライズ(terrorize=恐れさせる)」から名詞「テロリズム(terrorism)」が派生するのに符合する。「コーラン」の「神の敵に恐怖を与えなさい」が,アルカイダのジハード指南書の中で「テロは宗教的義務」とテロを肯定する理屈になっている。敵を処刑するだけでなく,その残酷な場面をネット上で公開することは「神の敵を恐れさせる」という宗教的意味を持つことになる。
    ■「部族は社会の土台であり,国家が分裂すると,人々は庇護を求めて部族に目を向ける。部族は血縁に基づいたものであり,部族独自の法と秩序を持ち,メンバーを守る役割を担う。」「国家が強いときは部族の役割は弱くなり,社会の秩序や公正は国の機関によって維持され,人々も国に頼るようになり,部族長の権威は象徴的なものとなる。しかし,国の方が公正を欠くようになれば,人々は部族の法に頼るようになる。」
    ■「イスラム国」は混乱の原因ではなく混乱の結果である。その混乱は米国による誤ったイラク戦争と,誤ったイラク駐留によってもたらされ,更に自由も平等もないアラブ世界の強権体制に対する若者たちの反乱である「アラブの春」への暴力的な封殺が帰結したものでもある。

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    2017年04月15日
  • ハマスの実像

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    日経womanで池上彰さんが紹介しており、一度読んでみたかった本。

    戦争とは。

    わたしも遠い国での出来事で、どうして戦争なんてするんだろ。とか思ってたし、
    ハマスとかアルカイダって聞いたら、
    もうただ、ただ、テロ。って思い込んでたし、
    そうなんだ、怖!
    ってかなんでそんなんすんだよ!
    民間人を犠牲にするほどのことなんか!

    とか思っていたら。
    全然違うんだ。
    むしろ民間人の人たちも、自分たちの最低限の信仰、大切なもの、生活を守るために戦ってた。

    身を犠牲にするしかなくて。
    できることしなくちゃ、どうにもならなくて必死に戦って、戦争になってた。

    本当に読むまで、10代の若者たちが未来が全く見えなくて。自爆テロで戦うしかない。
    家族のために。自分の大切な何かを守るために。
    そんな若者たちが必死で抵抗してたこと知らなかった。
    池上彰さんじゃないけど、
    ちゃんと知らないことって、怖いことだよなぁ。
    って思う。

    いじめられてると思ってなかった。

    っていうクラスメートみたいなもんだよね。
    報道規制がかかってそういう風にニュースで流すから私たちがわからないままなのか?
    それとも、私たちがあまりにも知ろうとしないからなのか。

    すごく読んでよかった。

    #戦争
    #ハマス
    #大切なもの

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    2026年10月04日
  • ハマスの実像

    Tod

    購入済み

    ハマスの実像

    なかなかわかりにくいハマスという団体がわかりやすく説明されています。ただハマスが悪いのかイスラエルが悪いのかを単純に決めつけることができない実情が現実であることに、言い知れぬ無力感があります。宗教、人種、言語などもろもろによる憎悪をなくすのは、バベルの塔が物語れた時代から人類共通の悩みであるのでしょう。一人一人がお互いを理解しようとすることが難しく、それだからこそ目指そうとするしかないのではと改めて考えさせてくれる本です。

    #怖い #タメになる #切ない

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    2024年10月18日
  • ハマスの実像

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    絶望的な型のニュースが続く中、ハマスに対する理解は様々な見方によって別れる。
    1967年の第三次中東戦争の後に採択された、安保理決議242である。パレスチナ独立国家が樹立されアラブ諸国もイスラエルの生存権を認める、土地と和平の交換の原則である。2国共存にはパレスチナもイスラエルも反対勢力が数多く、達成への道のりは困難を極めるかもしれない。しかし、この戦争が永遠に続く、一方を絶滅しない限り平和は訪れない、と考えるのは絶望感しかもたらさない。
    どのような楽観的な見方が可能だろうか?

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    2024年10月08日
  • 「イスラム国」はテロの元凶ではない グローバル・ジハードという幻想

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    世界貿易センタービルに飛行機が突っ込むシーンは未だ頭から離れず、ビルから上がる煙や崩れ去ると同時に大量の書類が宙を舞う風景、逃げ惑う人々、あれ程衝撃的な映像を見たのは生まれて初めてだったと記憶している。その後アメリカによる対テロ戦争が始まった。首謀者とされる人物が軍事作戦で殺害され収束に近い形を見た事も何度かあった。欧米が支援する政権が樹立し、軍も撤退するなど一時的な平和状態が訪れた様にも思うが、世界では引き続きテロや紛争が絶え間なく発生している。直近のハマスの先制攻撃に報復するイスラエルの攻撃も表向きはユダヤ教対イスラム教の宗教対立に見えるが、真因については、私の様な遠い地に住む人間には解らない。ただ現実そこには貧しい人々の暮らしがあり、罪もない市民が攻撃によって亡くなっていく事実だ。
    本書は世界がテロの諸悪の根源として扱うイスラム国の成り立ちや、それに対する世界の動きを追いかけて、イスラムによるテロの真の原因がどこにあるのかを考察していく。タイトルに「(イスラム国は)テロの元凶ではない」とあるように、まるで世界がイスラム国さえ潰せばテロの無い平和な暮らしが来る様な感覚に陥っているが、実際それは問題の真因ではなく、イスラム国自体が問題から生まれた「結果」であると論じる。
    何度か繰り返されてきたパレスチナ紛争、アラブ世界が民主化に向かったアラブの春、イラク戦争などの原因と経緯を追いかける事で、今のイスラム世界が直面する貧困・若者の失業を考えていく。そうする事で日本を含む欧米諸国が如何に自分たちの都合の良い国造りを押し付け、結果的に失敗してきた(失敗している)事が紐解かれていく。特にスンナ派とシーア派の対立や政権の転覆を図る内向きなローカルなテロと、アメリカなどの介入により引き起こされ、自爆テロや航空機乗っ取りなどの手段で対外的な攻撃を行うグローバルテロの関係性を理解せずに、誰が正しいのかを理解するのは難しい。
    本書はそうした一見すると複雑怪奇に見える構造を分かりやすく紐解いていく。失業し行き場を失った若い世代の熱をインターネット動画をはじめとするローカルニュースによって惹きつけていく過激派集団。欧米諸国で流されないニュース映像が時代の波に乗り、アラブの若者の目に触れるようになった。アラビア語の解らない日本人の多くは、イスラム社会で何が起こっているかを正確に理解するのは難しい。筆者は現地で活動するジャーナリストの眼でそうした真実を明らかにしていく。
    先ずはこうした書籍を読む事で、自分の頭で判断するしか無い。それでも答えは見つからないかもしれないが、それらを知らずに垂れ流しの(捻じ曲げられた)ニュース報道だけ見て批判するのはあまりに酷い。世界からなぜ紛争が無くならないのか、テロ組織は何を目的としているのか、アメリカの真の狙いは、イスラエルは何処まで闘うのか。パレスチナ問題を表からも裏からしっかり見ていけるような知恵を身につけなければならない。

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    2023年11月24日
  • ジャーナリストはなぜ「戦場」へ行くのか――取材現場からの自己検証

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    非常に難しい問題。戦場へ向かうジャーナリストの主張も分かるし、それを引き止める側も理解できる。リスクを冒した報道がなければ、「世界を見る目」は失われていくだろうし、世界情勢から目を背けてはならない点は大いに賛同。政府が必要以上に干渉や行動規制をかけることにはジャーナリズムの観点からも批判的であるべき。ただ現地での安全が十分に確保されているのかどうかも重要な点で、時に周りが止めることも必要になるとは思った。いずれにせよ、迷惑とか自己責任とかそんな簡単な言葉処理する問題ではないと認識。

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    2022年03月04日
  • ジャーナリストはなぜ「戦場」へ行くのか――取材現場からの自己検証

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    2015年年初にフリージャーナリストの後藤健二氏らがISに拘束・殺害されたことをきっかけに高まった、危険地域の取材・報道に否定的な世論に対し、危険地域報道を主たる仕事とする現役のジャーナリスト10名が、その意義や自らの体験、更に今後の在り方などを語ったもの。
    執筆者は、2014年にジャーナリストとして世界で初めてISの拠点ラッカを取材した(同時に、拘束されかけた)報道カメラマン・横田徹、世界的な映像ジャーナリスト・綿井健陽、フリージャーナリスト・土井敏邦、アジアプレス大阪オフィス代表・石丸次郎らである。
    まず、「なぜ、ジャーナリストが危険地域へ行く必要があるのか?」については、「(紛争における)ジャーナリズムの使命は、紛争当事者(国)の発表ではわからない、現地で起こっている真実を世界中の人々に伝えることである。それにより、当該紛争にどのように対応するべきかを、人々が客観的に判断する材料を提供することである」という主張で全員がほぼ一致する。
    そして、当然ながら次には、「なぜ、“日本人”ジャーナリストが行く必要があるのか?なぜ、世界的な巨大メディア(ロイター、AP、CNN、NYタイムズ等)の取材・報道ではダメなのか?」という疑問が湧いてくるが、これに対する答えは、いくつかに分れる。大勢は、「イラク戦争後の自衛隊のサマワでの活動のような事象は、他国のメディアで取り上げられることはほとんどなく、日本の関心事については日本のメディアが取材・報道することが必要」というものである。
    しかし、私が印象に残ったのは、もう一つの少数派の主張で、それは、世界各地で起こる戦争や大惨事も “日本人絡み”でないとメディアは詳細に伝えず、国民も関心を示さない日本の現状に問題を提起し、「日本人が他国の出来事を“同じ人間のこと”として捉えられるようにするために、日本のメディアが日本人に共感できる感覚・切り口で“同じ人間のこと”を伝えることが必要」というものである。私は常々、他国で起こった事故などの報道の際に、日本人の死傷者の有無を殊更に伝える日本のメディアに違和感を覚えており(もちろん、自分の知人が巻き込まれていないかを知る上で大事な情報ではあるが)、この主張には強く共感する。
    更に、ジャーナリストの取材中の死について、そのリスクをどのように引き受けるべきなのか、メディアはその事実をどのように報道するべきなのか、残ったジャーナリストはその事象をどのように検証してその後に活かすべきなのかなどについて、それぞれの執筆者が語っている。
    ジャーナリストのほかにも、本書でも取り上げられている国境なき医師団などの医療関係者、外務省スタッフ、インフラ関連企業・商社の社員など様々な人々が危険地域で活動する現在、日本人として為すべきことは何か、そのためにどのような対策をとり、どこまでのリスクを引き受けるのかを考えさせる一冊である。
    (2016年1月了)

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    2016年01月11日
  • ジャーナリストはなぜ「戦場」へ行くのか――取材現場からの自己検証

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    戦場やテロ、災害地など危険な場所に自ら深くまで入り込み、最前線の実態を見続けるジャーナリスト達。日本でも稀にニュースで彼らが拘束されたり、殺害されると大きなニュースになる。一時期イスラム過激派に拘束されて殺害されたジャーナリストの報道では、多額の身代金が要求され、世論は自己責任で行う行為に、何故国民の血税で彼らを救わなければならないのか、といった風潮が沸き起こった。私も心のうちでは何処かそうした想いがあった様に記憶している。本書を読んで果たして同じ気持ちのままいる事ができるだろうか。
    世界各地で未だ止まない紛争や自然災害。誰もがその実態がどうなっているのか、今現場で人々がどの様な状況に陥っているか知りたがっている。大半は欧米メディアの伝える報道や、現地のテレビ、ニュースメディアの流す映像を、時には邦人カメラマンの撮った映像・写真などから想像している。それらは画像という意味では真実に限りなく近いであろうが、一緒に掲載される文章はそのまま真実として受け入れてしまって良いものだろうか。実際にイスラム世界が流す報道と欧米メディア、ロシアとウクライナでは同じ映像でも違った見方、表現で流しているのを、インターネットで繋がれた世界で同時に見ることができている。
    流す側、報道する側の立場によって、映像や写真は如何様にでも変わる。真実は自分の目で見て話を聞く以外に無いのが現実だ。危険地域に飛び込むジャーナリスト達は何を目的に死の危険を伴う現場を訪れるのか。歴史的な現場を収めれば確かに巨額の金にはなる。だがそれだけで死地に飛び込むことができるのだろうか。
    本書はそうした危険を犯しながらも、真実を伝えようとするジャーナリスト達の何故に迫る一冊だ。だが確かに本書すらも真実であるかはわからない。本の売れ行きにも利益がつきまとうからである。だが読み終わった瞬間に、彼らがそれぞれ様々な使命感やリアルな感情によって動かされていることを知る。表面に見えている映像だけでなく、その背景にある「構造」を知るために彼らは危険を顧みず現場にいる。そこに至るまでには国家権力との戦い、言葉の壁、現地の真の情報、ゲリラが構える武器、そして必要となる資金、様々な困難を乗り越えてようやく目にすることが出来ても、そこで命を落とす者も多い。
    それでも尚追い続ける姿勢には、感動や衝撃以上の何か特別な感情を抱く。自分には無い何かが彼らを支配し突き動かしているという事実。
    私にそこまでして相対する物事が、取り組む仕事があるだろうか。自分に対する疑問が湧き起こる中、いつしか彼らに対する尊敬の念すら起こっている。理由はどうあれ、彼らの生き方、考え方に触れて刺激を受ける事は無駄では無い。

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    2023年09月01日
  • ジャーナリストはなぜ「戦場」へ行くのか――取材現場からの自己検証

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    日本では拘束等が報じられると自己責任論が前面に突出し、半面万一不幸にして亡くなれば、英雄視といったワンパターン報道になり、戦場に何故ジャーナリストが向かうのか、その戦場の現実はどうなっているかなどの本質論は捨て置かれている現状がある。
    10人のジャーナリストの生の体験と声を聴くことで、その心理をある程度理解することができる。
    ただ、拘束拉致された場合の国や住民側の対応についてはほとんど触れられていないので、その辺の本音も聴ければなお理解が深まったかもしれない。

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    2016年03月13日
  • ジャーナリストはなぜ「戦場」へ行くのか――取材現場からの自己検証

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    10人のジャーナリストによる共著で、一貫性を持たせているというよりは、それぞれの体験や主張が展開されていて、各自のジャーナリストとしての個性が見える。
    ただ、内容的には不満が残る。著者の多くが、外務省による旅券返納命令事件を取り上げ、取材の自由の侵害や政府による都合の悪い情報の統制であると問題視している。また、その契機となった「後藤さん事件」に対するマスコミや世論の自己責任論やジャーナリストへの批判に違和感を表明している。確かに、そういう側面もあるのだろうが、「ジャーナリスト」特有の政府批判、批判をしてもあまり非難を受けるおそれのない主張に聞こえる。それよりも、こういう場面にあって、一般の読者が知りたいのは、リスクを侵して危険地域に入ったジャーナリストが拘束され、人質となって、身代金や日本の政策変更を要求されたときに、政府や国民がどうすべきか、どうしてほしいのかについて、ジャーナリスト側の意見ではないだろうか。人質を盾にした要求には一切応じないという国ならともかく、日本は、人の命は地球よりも重いとして、超法規的措置で犯罪者を釈放するような国だ。人質救出のために、大臣やら副大臣やらが現地入りし、また、政府の対応について一々国会で議論になったり政治問題化して、国全体にとってもっと重要な政策課題が停滞したりするコストまで考えれば、自己責任論が出てきてもおかしくないと思うのだが、そこで日本という国がどうすべきなのかについて、本書では誰も何も言っていない。そういうことに思いが至っていてないのか、それとも、これに関する主張をすることを逃げているのか。
    本書については、このような不満があるが、土井敏邦氏が、ジャーナリストは一種の生業で、真実を伝えたいという純粋な気持ちの一方で、スクープを取りたいという色気があるのも事実であると告白していることは高く評価したい。また、玉本英子氏の誠実なジャーナリストとしての姿勢も、「旬の現場」や特ダネを追って危険地域を駆け回る「戦場ジャーナリスト」とは異なり、地道な取組みに共感を覚えた。

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    2016年01月24日