ジョー ネスボのレビュー一覧
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Posted by ブクログ
ノルウェーが舞台のノワールミステリ。
辺鄙な場所に住むロイ。弟カールがリゾート計画と共に妻連れで帰ってくる。両親の事故のこと、カールの性的暴行のこと、リゾート計画のこと、読者にちょっとミスリードさせ真実を明らかにしていくさまがうまい。
しかし、金を持ってなくセンスがいいわけでもなく親の死と弟への変な噂もあるロイになぜ女が寄っていくのか謎ではある。男性作家が書く女性はほぼ実像とズレてるのでその典型的パターンでもある。
しかしこの作品が極めて珍しいのは一番変なのが主人公ロイという部分。読めばわかると思う。
続編があるようなので邦訳を少し期待します。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ『真夜中の太陽』、『その雪と血を』の世界観に惚れたジョー・ネスボ。
ハリー・ホーレシリーズはそれはそれで面白いけど、期待した雰囲気とはちょっと違うなという感じだったが、これはと感じる導入部。
無口で人付き合いが得意ではないが、一本芯を通した生き様で、雇われ店長として町のガソリンスタンドを堅実に運営する主人公ロイ・オプガル。
ザ、無骨。
こういう芯のある主人公にとっても惹かれる。
物語はロイの弟カールが帰郷するところから始まる。
カールは故郷を去った後、アメリカで金融、経営学を学びカナダで事業を営んでいたが唐突なまでの帰郷の知らせを伝えてくる。
何かと思えば兄弟が今は亡き父親から引き継いだ″ -
Posted by ブクログ
タイトル、装丁ともカッコよく手に取ってみると、2段組みだ。しかも500ページを超えている。これは気合を入れないと、と思ったが、不要な心配だった。
ノルウエーの田舎町に父母と2人の息子が住んでいる。開拓時代のアメリカを思い出させるマチズモな父親の支配下に置かれた一家で、弟は性的虐待を受けている。小説の前半では、兄から虐待を受けているのかと思わされるが、実は父からだった。同様の伏線は随所にあり、回収される伏線に読者の興味を途切れさせない。また、彼らを巡るエピソードは面白く、彼らの個性がより際立ってくる。後半はますます『読む気』が加速していく。
マチズモな父親の血がそうさせるのか、強気な兄 -
Posted by ブクログ
表紙が印象的な一冊。海外ミステリーは苦手でしたが本書は一気読みでした。
ザ・ハードボイルド。短い文章でさらっとした言い回しがたくさんあり、まるで詩のようです。
例えば
〈いい話というやつは、ありえないほどいい話だと、悪い話になることもある。〉
キザな感じが好き嫌い分かれるかもしれませんが…。個人的には好きなほうです。
人は誰しも自分の〈物語〉を生きている。起こった事実は同じでもそこにどんな意味を持たせるかで物語は全く変わってくる。
そんなことを思い出させてくれる良書でした。
* *
物語とは直接関係ありませんが、主人公の『レ・ミゼラブル』への考察は何かはっとさせられるものがあります。
曰 -
Posted by ブクログ
ネタバレハリー・ホーレ刑事シリーズと同じ作者だったので。
主人公は殺し屋だが、おとぎ話のような、夢の中の物語のような。
殺し屋というか、自己申告の通り「始末屋」といった方が適格だ。
綿密な計画も知ら調べもなく、とりあえず殺す。
冒頭の始末屋以外ができない理由を説明する箇所が印象的だった。
目立たないように車を運転できないので逃走車の運転ができない、
銃口を向けた相手が精神に問題を抱えてしまうので強盗はできない、
意志薄弱だからヤク売人になれない、
女に惚れっぽいのでポン引きにもなれない。
ボーイフレンドの借金のかたになりかけた女性にも惚れた。
ボスに自分の妻を殺せと命じられたが、
見張っている -
Posted by ブクログ
ネタバレ結晶で降る雪を見たことがある。知床ウトロにある小学校の校庭にテントを張っていた時、青いフライシートに降りる雪は結晶の形そのままだった。本書の冒頭の風景に降る雪も結晶だ。しかし、白く美しい雪に血の色が混じる。ドライな文体で、とてつもなくハードボイルドな文章だが、詩的で美しい描写だ。主人公の始末屋(殺し屋)の胸の内に流れる熱いものがそうさせるに違いない。
一人称で語られる主人公オーラヴの経歴は謙遜気味だが、物語が進むにつれ、思慮、行動とも一流のそれだと理解できる。ノワール小説の形式はとっているが、描かれているのは主人公の恋心なので、文章全体が純粋かつ、美しい。小説の終えんに合わせて、読者である自分 -
Posted by ブクログ
『その雪と血を』が好き過ぎて、一部の登場人物と組織が共通しているという連作『真夜中の太陽』を読んでみた。
主人公ウルフが目にする風景に「静かな空漠感というか、寡黙な非常さ」を感じ、夕方に「奇妙なわびしさと無情さが漂っていた」と語る場面があるが、それはそのままジョー・ネスボの世界観だ。
せつないラストがグッときた前作とは違ったが、ラストに至るまでのウルフの生き方に引きずり込まれるように読んだ。
この薄さの本に一人の男のこれほどの厚い人生を書きこんで、、、やっぱりネスボは凄いな!!
私としては前作のやるせないラストの方が好みだが、、、最後の1ページの思わせぶりな終わり方の余韻にも充