ジョー ネスボのレビュー一覧

  • その雪と血を

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    ネタバレ

    凍てつく夜の底、純白の雪に落ちた血は、王にのみ許される白貂のケープに散る斑のように黒い。短くて残酷な童話めいた北欧ノワール。解説の、本作が生まれた経緯が面白かった。薔薇はどのような名で呼んでも芳しいというが、これが違う名義で発表されていたら、どんなふうに読まれたのだろうか。イヴの朝、クリスマスツリーから落ちて砕けてしまった繊細な銀の珠を見るような切なさが残った。

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    2016年10月26日
  • 失墜の王国

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    ノルウェーが舞台のノワールミステリ。
    辺鄙な場所に住むロイ。弟カールがリゾート計画と共に妻連れで帰ってくる。両親の事故のこと、カールの性的暴行のこと、リゾート計画のこと、読者にちょっとミスリードさせ真実を明らかにしていくさまがうまい。
    しかし、金を持ってなくセンスがいいわけでもなく親の死と弟への変な噂もあるロイになぜ女が寄っていくのか謎ではある。男性作家が書く女性はほぼ実像とズレてるのでその典型的パターンでもある。
    しかしこの作品が極めて珍しいのは一番変なのが主人公ロイという部分。読めばわかると思う。

    続編があるようなので邦訳を少し期待します。

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    2025年12月16日
  • 失墜の王国

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    ネタバレ

    『真夜中の太陽』、『その雪と血を』の世界観に惚れたジョー・ネスボ。
    ハリー・ホーレシリーズはそれはそれで面白いけど、期待した雰囲気とはちょっと違うなという感じだったが、これはと感じる導入部。

    無口で人付き合いが得意ではないが、一本芯を通した生き様で、雇われ店長として町のガソリンスタンドを堅実に運営する主人公ロイ・オプガル。
    ザ、無骨。
    こういう芯のある主人公にとっても惹かれる。

    物語はロイの弟カールが帰郷するところから始まる。
    カールは故郷を去った後、アメリカで金融、経営学を学びカナダで事業を営んでいたが唐突なまでの帰郷の知らせを伝えてくる。
    何かと思えば兄弟が今は亡き父親から引き継いだ″

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    2025年12月14日
  • 失墜の王国

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    とかく陰鬱でスローペースな傾向のある北欧ミステリーの中では、ハリー・ホーレ刑事のシリーズはスタイリッシュなキャラクターの魅力を持っている。その著者の単発ノワール作品である本書は、北欧の田舎町の濃密な人間関係を背景に、歪んだ兄弟愛と許される恋をジェットコースター的な展開で駆け抜ける大作。
    久しぶりに時間のかかる魅力的長編を読み終えた満足感。韓国映画のような濃ゆいエキスでお腹もいっぱいです。

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    2025年07月19日
  • 失墜の王国

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     タイトル、装丁ともカッコよく手に取ってみると、2段組みだ。しかも500ページを超えている。これは気合を入れないと、と思ったが、不要な心配だった。

     ノルウエーの田舎町に父母と2人の息子が住んでいる。開拓時代のアメリカを思い出させるマチズモな父親の支配下に置かれた一家で、弟は性的虐待を受けている。小説の前半では、兄から虐待を受けているのかと思わされるが、実は父からだった。同様の伏線は随所にあり、回収される伏線に読者の興味を途切れさせない。また、彼らを巡るエピソードは面白く、彼らの個性がより際立ってくる。後半はますます『読む気』が加速していく。

     マチズモな父親の血がそうさせるのか、強気な兄

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    2025年05月19日
  • 真夜中の太陽

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    「その雪と血を」を読んで、ジョー・ネスポさんをまた読んでみたいと思いつつ年月が過ぎていった。余韻が凄かったイメージが残っている。今作ではウルフの純粋さが心に残った。クヌートとのじゃれあいが微笑ましかった。最後逃げながらもどこかで終わりが来るんじゃないかと胸が苦しくなりながら読んだが、良いラストだった。どこかで3人が笑って暮らしていますようにと願う。マッティスがいい味を出していた。

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    2024年09月23日
  • 真夜中の太陽

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    ジョー・ネスボさんを読むと、男とは何とアホでロマンチストな生き物なのかとあらためて思い知らされます。
    * *
    「ふり返らずに、前だけを見て。これからはそれがおれの生き方になる。背後に置いてきたものは、みなそのままでいい。」

    まるでモノクロ映画を観たような世界観。
    今回は子どものキャラにだいぶ癒されました。(まさかのフタバヤマ登場!)

    真夜中でも太陽が見えるノルウェー。
    行ってみたいけどとても寒そう…。

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    2023年05月20日
  • その雪と血を

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    表紙が印象的な一冊。海外ミステリーは苦手でしたが本書は一気読みでした。

    ザ・ハードボイルド。短い文章でさらっとした言い回しがたくさんあり、まるで詩のようです。
    例えば
    〈いい話というやつは、ありえないほどいい話だと、悪い話になることもある。〉
    キザな感じが好き嫌い分かれるかもしれませんが…。個人的には好きなほうです。

    人は誰しも自分の〈物語〉を生きている。起こった事実は同じでもそこにどんな意味を持たせるかで物語は全く変わってくる。
    そんなことを思い出させてくれる良書でした。

    * *
    物語とは直接関係ありませんが、主人公の『レ・ミゼラブル』への考察は何かはっとさせられるものがあります。

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    2023年04月29日
  • その雪と血を

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    ネタバレ

    ハリー・ホーレ刑事シリーズと同じ作者だったので。

    主人公は殺し屋だが、おとぎ話のような、夢の中の物語のような。

    殺し屋というか、自己申告の通り「始末屋」といった方が適格だ。
    綿密な計画も知ら調べもなく、とりあえず殺す。
    冒頭の始末屋以外ができない理由を説明する箇所が印象的だった。

    目立たないように車を運転できないので逃走車の運転ができない、
    銃口を向けた相手が精神に問題を抱えてしまうので強盗はできない、
    意志薄弱だからヤク売人になれない、
    女に惚れっぽいのでポン引きにもなれない。
    ボーイフレンドの借金のかたになりかけた女性にも惚れた。

    ボスに自分の妻を殺せと命じられたが、
    見張っている

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    2023年04月01日
  • 真夜中の太陽

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    過去作では「ザ・バット」が文句なしの面白さだったジョー・ネスボ。今作は長過ぎた   を反省するような、シンプルでドキドキさせて、なおかつ北欧風味もたっぷりという粋な小品。最後がハッピーエンドなのも、良い意味で期待を裏切ってくれたな。本作と兄弟関係にあるらしい話題作「その雪と血を」は未読だけど、相変わらず長いみたい。ちょっと躊躇しまうな。3.8

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    2020年03月19日
  • その雪と血を

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    ネタバレ

    これはね、超切ない作品よ。
    殺し屋だけれども、女に乱暴を働く男が
    許せない男なの。
    それは自分の最初の殺しと関係するけど…

    それがゆえに本来の任務を逸脱し、
    ボスの息子を殺害してしまいます。
    結局根回しをして彼は
    対立組織を頼りますが…

    彼は結局、それがゆえに
    命を落とすことになるのです。
    残念だけれども。

    彼の存在は危険なのもあるけど、
    要するに別の女を愛したのが
    ボスの元妻は許せなかったんじゃないかな。
    彼は不思議な魅力を持つ危険な男だったからね。

    それを雪のシーンで描くんだぜ。
    罪深いこった。

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    2018年12月07日
  • 真夜中の太陽

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    宗教的にストイックな村と村人、その村で暮らし離れることが出来ない美しい母と息子、そこに外からやってきた男…ということで、『刑事ジョン・ブック』を思い出す。
    ストーリーとしては単純でオーソドックスだけど、キレも雰囲気もいいよね。ノルウエー極北の厳しい自然や寒さ、白夜も、舞台として効果が高い。
    そしてウルフとレアの、言いたくても言えない(言ってはいけない)抑制の感じがなんとも言えず、切なくていいです。

    ネスボ、やっぱりヤルなあ〜。

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    2018年11月08日
  • その雪と血を

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    ノルェー作家 もう、最初暗くて暗くて何度投げそうになったか でも177pと薄いので、意地でも読み終えてやると思ったら、あらら…最後の最後にあぁこうきたか ん〜上手いな 
    とてつもなく悲しく、美しいラスト 胸に沁み入りました この作家は日本人好みだと思う 

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    2017年05月01日
  • その雪と血を

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    この主人公をレオ様がやるのか…なんかイメージが違うなぁ。
    ほんと、健さんだったわ「自分不器用ですから」って感じが。

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    2017年04月23日
  • その雪と血を

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    ネタバレ

    いろんな方がレビューで文章の美しさを指摘しててどんなだろうとワクワクしていた。冒頭から、おぉって思わせる私好みの文体!この人の書く文章はどれもこんな感じなのか?!
    だとしたら読まねば!
    ★五個にしようか迷ったが、最後の方のくだりがどこまで現実なのか難解で…そこがまたいいのかもしれないですが。
    ノワールってイイなあと思わせる。
    哀しい…けどだからこそ美しさが際立つ。
    レオ様で映画化されるんですか?

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    2017年03月29日
  • その雪と血を

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    ネタバレ

    結晶で降る雪を見たことがある。知床ウトロにある小学校の校庭にテントを張っていた時、青いフライシートに降りる雪は結晶の形そのままだった。本書の冒頭の風景に降る雪も結晶だ。しかし、白く美しい雪に血の色が混じる。ドライな文体で、とてつもなくハードボイルドな文章だが、詩的で美しい描写だ。主人公の始末屋(殺し屋)の胸の内に流れる熱いものがそうさせるに違いない。
    一人称で語られる主人公オーラヴの経歴は謙遜気味だが、物語が進むにつれ、思慮、行動とも一流のそれだと理解できる。ノワール小説の形式はとっているが、描かれているのは主人公の恋心なので、文章全体が純粋かつ、美しい。小説の終えんに合わせて、読者である自分

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    2017年01月21日
  • その雪と血を

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    パルプ・ノワールにクリスマスと恋愛を盛り込むという、食べ合わせが悪いような組み合わせなのに、見事に融合していて、ちょっと切ない恋愛小説という趣になっていました。主人公のオーラヴにはできないことが四つあり、惚れっぽく、ついにはボスから殺すように命令された女性にまで一目惚れしてしまう。そして一度好きになったら命がけで守ろうとする、そんなところが殺し屋なのに親近感を抱いてしまう。ポケミスにしては分量が少なく展開も早くさらっと読めて面白かった。

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    2017年01月16日
  • 失墜の王国

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    ネタバレ

    CL 2025.4.17-2025.4.21
    兄ロイと弟カール、カールの妻シャノン。
    ロイとカールは10代の頃からお互いのために罪を犯し、シャノンが加わった後も、家族のために罪を重ねる。でも、結局はお互いを裏切り最後の悲劇へと突っ走っていく。
    兄弟。何よりも誰よりも分かちがたい兄弟の絆。全く心温まる絆ではないけど。ある意味不健全なくらいに強い絆なんだと思う。
    なかなかに硬質なキッパリしたノワールだった。
    次作はさらに悲惨な出来事が起こるらしい。怖いような楽しみなような。

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    2025年04月21日
  • 真夜中の太陽

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     『その雪と血を』が好き過ぎて、一部の登場人物と組織が共通しているという連作『真夜中の太陽』を読んでみた。

     主人公ウルフが目にする風景に「静かな空漠感というか、寡黙な非常さ」を感じ、夕方に「奇妙なわびしさと無情さが漂っていた」と語る場面があるが、それはそのままジョー・ネスボの世界観だ。

     せつないラストがグッときた前作とは違ったが、ラストに至るまでのウルフの生き方に引きずり込まれるように読んだ。
     この薄さの本に一人の男のこれほどの厚い人生を書きこんで、、、やっぱりネスボは凄いな!!

     私としては前作のやるせないラストの方が好みだが、、、最後の1ページの思わせぶりな終わり方の余韻にも充

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    2025年01月24日
  • 失墜の王国

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    ネタバレ

    重厚過ぎるノワール。血みどろでぐちゃぐちゃでどんどん辛くなっていくがなんとか2段組536頁を読み終え、自分なりに決着をつけたと思う間もなく衝撃の報せが。
    なんと、続編があり更に悲惨な出来事が起こるらしい。
    これ以上の悲劇っていったい…
    この暗黒をシリーズ化するとはさすがネスボ。

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    2025年01月08日