赤尾秀子のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
カレン・メメリーは”縫い子”だ。
彼女はモンシェリという館で働いている。
実際に19世紀後半のシアトルで約三千人の女性が”縫い子”として登録されていたそうだ(訳者あとがきより)。
どうして” ”がついているかって?
だって彼女たちは、娼館で働く、娼婦だから。
本書にはアメリカの歴史がそれとなく織り込まれている。
私はなんとなく舞台をイギリスのように感じていたが。
例えばラジウム時計の生産現場で、筆を舐めてその先を尖らせていた女性行員たちに発症した奇病。
放射性物質を摂取したことで起きた顎の骨のガンだ。
この話などが盛り込まれることで、近代と、SFが混ざった独特の面白い世界を作り上げている。
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Posted by ブクログ
まるで目が不自由な方向けの副音声のような
解説的な訳文が気になってしまうこともあるが。。。
体制が正しいと決めたことに従って生きる
ユートピア≒ディストピアな世界で自分自身の
正しさを追い求めたために、絶望的な世界から
絶望的な状況に追い込まれた男女の愛。
その軌跡と90分という限られた時間の中で
生きるため、人生を見つめなおし、最善を尽くし
最良の結果を求める、人間の物語。
第三章は展開に戸惑うこともあるけど、
訳文とあいまって一種幻想的な雰囲気をまとい、
本当のラスト一文まで一気読み。
ラストは衝撃的だけど、その世界での人間の
高み、極みに達したといえるほど美しい。
※映画化するらしい -
Posted by ブクログ
1000年を超す月日を重ねる主人公が語り手のSF。
どう説明していいのかわからない。
私たちの生きる今からかけ離れた文化と認識を当たり前のように語られる。時系列も個もゆらぐ主人公の正体が分からない。主人公の性別も人格も不明で、ただ歌が好きだということはわかる。
何をする物語なのか、どういう社会なのかもわからないまま、不思議な世界にどんどん引き込まれていく。
この本は「わけのわからなさ」がOKかどうかで楽しめるかどうかが分かれる気がする。私も最初はよくわからなかった。でも大丈夫、わからないまま読んでいくといい。そしてそんな読者のために、何もわからないセイヴァーデンがいるという安心設計