P138〜140
『食わず嫌いがいいんですよ私には
一度でも食らえばその簡便さに溺れてしまうかもしれないから…
でも 死に往く相手の顔も見えず 返り血も浴びない人殺しに慣れてしまったら
武士道は滅びる気がするんです
一斬り毎に殺生の罪深さを存分に味わい
故にこそ決して不正の剣だけは奮うまいと 己の胸に刻まなければ
私の如き怠け者は いつか正義の在り処さえ顧みなくなる気がします』
ああ… ああ その通りだ
痛みなく人を殺せる物を便利だと思った自分にこそ
私は恐怖すべきだったのに―――
★浮之助登場