吉岡暁のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
翻訳会社を経営する著者が余暇の時間を使って書いた短編が第13回日本ホラー小説短編賞を受賞。なかなかの傑作だった。
題作の『サンマイ崩れ』:パニック障害と離人症で3度目の自主入院中だった23歳の主人公が、紀伊半島を襲った集中豪雨と山崩れで過疎集落が孤立したとの知らせを受け、精神病院を脱走する。災害対策本部で出会った不思議な老人と粗野な消防団員と共に流された村の墓地へ応急処置に向かうが・・・。
『サンマイ崩れ』は何より主人公のキャラが凄く立っていた。現実社会の絶望ビームから身を守るために人と距離を置きつつ時に無邪気な面を見せる主人公は愛着すら沸いてくる。そうしたコミカルな面とは対照的な暗澹・不吉な -
Posted by ブクログ
第13回日本ホラー大賞短編賞受賞という表題作「サンマイ崩れ」と文庫書き下ろし中編「ウスサマ明王」の編まれた一冊。
「サンマイ崩れ」は、まあ何というか鬱病治療のトリビアと熊野信仰がブレンドされたオフビートなお話で、オチは某有名映画を思い出すが、それを云った瞬間にネタバレになるので伏せる。が、そのオチは、そこまでの道程がノンビリしていたぶん、なかなかゾッとした。
で、問題は書き下ろし中編「ウスサマ明王」。
ウスサマ…ってカタカナで書くと、和菓子のようなホッコリ感があるが、然に非ず。これは「烏枢沙摩(うすさま)明王」という炎を統べる神様の事で、本邦においては不動明王と並び、台密の5大明王に数えられる -
Posted by ブクログ
夏の余韻の残るうちに、角川ホラーに挑戦である。
本作は2006年度日本ホラー小説大賞短編賞受賞の表題作『サンマイ崩れ』と書き下ろし中篇『ウスサマ明王』から構成されている。
『サンマイ崩れ』に関しては、少し残念な印象。
豊富な宗教的な知識をバックボーンに、未曾有の災害に見舞われた山村を探索する物語なのだが。
構成上真相を先読みされるとホラーとして、成立するか怪しくなる事とその真相が思いのほか読めてしまうという問題を抱えていた様に思う。
精神病患者の一人称と、念仏が聞こえてくる様な見事な雰囲気が描かれるだけに、惜しいトコロである。
『ウスサマ明王』は面白かった。
ハリウッド的