吉岡暁のレビュー一覧
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翻訳会社を経営する著者が余暇の時間を使って書いた短編が第13回日本ホラー小説短編賞を受賞。なかなかの傑作だった。
題作の『サンマイ崩れ』:パニック障害と離人症で3度目の自主入院中だった23歳の主人公が、紀伊半島を襲った集中豪雨と山崩れで過疎集落が孤立したとの知らせを受け、精神病院を脱走する。災害対策本部で出会った不思議な老人と粗野な消防団員と共に流された村の墓地へ応急処置に向かうが・・・。
『サンマイ崩れ』は何より主人公のキャラが凄く立っていた。現実社会の絶望ビームから身を守るために人と距離を置きつつ時に無邪気な面を見せる主人公は愛着すら沸いてくる。そうしたコミカルな面とは対照的な暗澹・不吉な文体。救いようの無いクライマックスに向けて着実に坂を転がり落ちてくよう
最終シーンは敢えて「小説構成上の大ドンデン返し」ではないという解釈をしたい。そっちのほうがむしろ前半部分で描かれた主人公の精神的な既往症と辻褄が合うような気がしてくる。全体的に重苦しくもどこか儚げな一編だったな。
中編『ウスサマ明王』はかなり異色で他に類を見ないホラー作品。明治後期の南多摩・八王子の農民と近未来の防衛軍が不思議な形で交錯する。この新しい視点には驚かされた。同時に後半のおどろおどろしさはなかなかのもの。 -
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日本ホラー小説大賞、角川ホラー文庫の歴史を彩る名作たちがまとめて読める短編ホラーアンソロジー。
日本ホラー小説大賞30周年記念、受賞作がまとめて読めるホラーアンソロジーです。
既読の作品は曽根圭介『鼻』のみで、ほぼ初読みでした。
どれも面白かったですが、個人的に気に入った作品をいくつか。
まずは田辺青蛙『生き屏風』。屏風に取り憑いた奥方の相手を頼まれる妖鬼の話。全く怖くはないです。怖くはないですが、緩やかに共存する人と妖のいる世界観や、奥方の気高さ、妖気と奥方の友情など、心温まる素敵な話。
朱雀門出『寅淡語会録』は、町会館で見つけた地域の古い怪異が載った本から始まる話。御当地怪談、因習、民俗学など色々考えながら楽しめておもしろいです。完全オリジナルなのか、アイデア元の怪異があるのか分からないですが、語られる怪異もあまり聞いたことがなく、かつ本当にどこかに伝わってきそうなリアリティがあり興味深い。
吉岡暁『サンマイ崩れ』。精神科の病院を抜け出してボランティアに行く「僕」の話。
オチに意外性があり良かったです。心を病んだ「僕」の、常に追い詰められているような語り口も、息苦しさがあって良い。
ワタナベさんいい人。 -
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ネタバレホラー小説大賞の集成1は、私には合わなかったため、期待せず読んだ。(1と2同時に買ってしまったので)
でも、こちらの本はおもしろかった。「サンマイ崩れ」と「鼻」は、オチに驚いた。「トンコ」は、オチが切なかった。「生き屏風」はオチにほっこりした。「寅淡語怪録」は謎が多かった。(でもおもしろかったと思う)「穴らしきものに入る」はオチに笑った。
■サンマイ崩れ 吉岡 暁
→ワタナベさーーん!!なんて素敵なご老人なんだ。元々いい人だったんだろうね。
たまたま出会った「僕」のために、川を渡ってくれたんだ。てっきり、「僕」に悪霊か何かでもついているのかと思った。
自殺未遂直後の記憶が全くなかったこと。ボランティアに来たと言ったのに、警察も役場の人も、何も言わなかったこと。アキやんは、ワタナベさんをあやしい、気をつけろと言うばかりで、僕には何も悪態をつかなかったこと。いつもは出る病気の症状が、何故かワタナベさん相手には出なかったこと。
正直、文字も多いし、精神病を患っている「僕」
視点では、読むのに苦労した。早く読み終わりたいと思いながら、1週間くらいかけて読んだ。
でも、オチがすっごくよかった!!!!ワタナベさんの優しさに心打たれた。
わざわざ病院を抜け出してボランティアに来た「僕」も、優しい人だったのかな?
■鼻 曽根圭介
→どっちもどっちだね。通り魔が、ヒビノを襲わなかったら、こんなことにはならなかったのか?
救国青年団の制服=私立の高校の制服?
厨二病かよ〜。
ヒビノといっしょにいた女は誰なんだ?それも自分の想像?
どれが妄想でどれが真実なんだ!?
■トンコ 雀野日名子
→トンコは人間から逃げているわけではなく、きょうだいたちの声がするほうへ移動している。
豚は自分が食べられることに気づいているのかな。生姜焼きを見て、自分のきょうだいだって分かるのかな。
場長が、トンコのかつてのきょうだいだった生姜焼きを丁寧に扱う様子はよかった。
この話に出てくる人間はなんか嫌な感じ。公園でジャーキー(トンコのきょうだいだった)を巡って喧嘩した飼い主とか、豚を見たと子どもに報告されただけで、子どもが襲われそうになったと保健所にクレームいれる母親とか、なんか醜いと思った。
トンコは、きょうだいたちの思い出がたくさんあり、きょうだいたちを求めて移動する様子が切ない。
■生き屏風 田辺青蛙
→正直、ホラー小説か?と思った。怖い要素は何一つなかったような気がする。登場人物が、鬼と屏風に憑いた幽霊だから、一応ホラーなのかな?
最後は、ふたりいっしょになってよかった!友情だね!
■寅淡語怪録 朱雀門 出
→謎が残る。主人公は、本に選ばれたってことなのかな?
結局、ぼうがんこぞうって何なの!?死体生け花の煉瓦屋敷とは!?
世の中のどこかにありそうな話ではあるけど、謎が多すぎる。。
■穴らしきものに入る 国広正人
→笑って読んだ。主人公の穴への執着には脱帽。他にはどんな穴に入れるんだろう。
酸素ボンベは爆発するのかな?家が火事になったりする?主人公の遺体はコンセントサイズのままなのか?保険金は下りる?
そもそもこれはホラー小説なの?主人公が穴ライフを満喫する姿はなんだか微笑ましかった。 -
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【サンマイ崩れ】
主人公が鬱病やパニック障害を患っているのだが自身の病症を冷静に捉え分析しているため心理描写がそこまで重苦しくのしかかる感じではない。
キーマンとなるワタナベさん、田舎のヤンチャな若者っぽさもありつつ消防団の仕事はそつなくこなすアキやんとまっちゃんなど脇役にもリアリティを感じられて面白かった。
【鼻】
エピソードが入り組んでいる割には収束感が物足りなく、オチも少し弱いかな?と感じた。悲惨なディストピアは幻なのかもしれないが、後味の悪さはきちんと残るホラーだった。
【トンコ】
ホラー要素はほぼないけれど、ブタ視点の世界の見え方に哀切を覚える。
【生き屏風】
心温まる伝奇ファンタジー。あまり興味のないジャンルだったが、主人公の妖鬼と屏風に住まう死霊の奥方が対話を通じて絆を育む過程が丁寧に描かれ引き込まれた。最後はこうなれば良いな…と思った通りになって満足。
【寅淡語怪録】
派手な展開はないが、ちょっとした違和感の積み重ねからいつの間にか怪異に絡め取られている独特の読後感が面白い。
【穴らしきものに入る】
シュール・フェティシズム・ホラー…ギャグ?
発想力に脱帽。 -
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第13回日本ホラー大賞短編賞受賞という表題作「サンマイ崩れ」と文庫書き下ろし中編「ウスサマ明王」の編まれた一冊。
「サンマイ崩れ」は、まあ何というか鬱病治療のトリビアと熊野信仰がブレンドされたオフビートなお話で、オチは某有名映画を思い出すが、それを云った瞬間にネタバレになるので伏せる。が、そのオチは、そこまでの道程がノンビリしていたぶん、なかなかゾッとした。
で、問題は書き下ろし中編「ウスサマ明王」。
ウスサマ…ってカタカナで書くと、和菓子のようなホッコリ感があるが、然に非ず。これは「烏枢沙摩(うすさま)明王」という炎を統べる神様の事で、本邦においては不動明王と並び、台密の5大明王に数えられる偉い神さん。
とまあ、そういう素材をタイトルに持ってくるあたり、作者の仏教への造詣の深さは熊野信仰を素材にした「サンマイ崩れ」からも窺い知れるわけで、そうした下地を弄して展開するのが、超絶エンタメアクションホラーてんだからお立ち会い!
サンマイ〜とはまったく肌触りの違う物語だが、断然こっちの方が面白い。読み始めた瞬間にサンマイ〜がセピアの彼方へ運ばれるような気分。
詳細は実際に読んでいただくとして、かいつまんで云うと、これは「寄生獣」ですね。特に最終ステージに展開する中盤からは完全にそうした様相を呈してきます。
文句なく面白い!寄生獣好きなら気に入ることウケアイ。
いやあ、何か思わぬ拾いモノをしたようで、実に楽しかった。オススメ!
主要人物の老尼が最終局面で言い放つ「六条御息所でもあるまいに、元はただの田舎女やないか。知れてるわ!」てのは奮えましたねえ!
(サンマイ崩れ☆2、ウスサマ明王☆5つでトータル☆3つ) -
Posted by ブクログ
夏の余韻の残るうちに、角川ホラーに挑戦である。
本作は2006年度日本ホラー小説大賞短編賞受賞の表題作『サンマイ崩れ』と書き下ろし中篇『ウスサマ明王』から構成されている。
『サンマイ崩れ』に関しては、少し残念な印象。
豊富な宗教的な知識をバックボーンに、未曾有の災害に見舞われた山村を探索する物語なのだが。
構成上真相を先読みされるとホラーとして、成立するか怪しくなる事とその真相が思いのほか読めてしまうという問題を抱えていた様に思う。
精神病患者の一人称と、念仏が聞こえてくる様な見事な雰囲気が描かれるだけに、惜しいトコロである。
『ウスサマ明王』は面白かった。
ハリウッド的ホラーを純日本風に装飾したかの様な不思議な構成である。これがなかなかに嵌る。
「ユーマル」と呼ばれる化け物、それを追う超法規部隊に不思議な力を持つ尼僧。
何より存在感抜群のユーマルが秀逸。
呪の権化ユーマルに部隊が始末されていく様は、手に汗握る怖さである。奇妙な表現だが、これが正直な感想なのである。
多少のご都合主義は見え隠れするが、複雑に入り組んだ事象が解き明かされるミステリィ的な快感も味わえる。
サバイバルホラーな感じが好きな方には是非ともお勧めの一冊である。