マイクル・コーニイのレビュー一覧
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ネタバレ読み終えて改めてタイトルを見返すと、また背筋がゾクゾク。
可愛らしい少女の表紙絵からは想像だにしなかった展開と結末にもう虜。久々に眠気に打ち勝って徹夜で読み耽ってしまった作品。
まず冒頭まえがきの〈作者より〉から既に面白いし、これが紹介するのに最適。
「これは恋愛小説であり、戦争小説であり、SF小説であり、さらにもっとほかの多くのものでもある。」
これがまた本当にその通りで、これだけたらふく盛り込んでいながら全てが完成されていて、青春小説としても身分違いの恋とか少年少女らの微妙な関係性とかが漂う夏の海の気配とも合わさって実にもどかしくも爽やかに描かれる。グルームワタリ鳥の光景だけで夏を感じられる程にのめり込んでしまった空気感にもう夢中さ。
対極的に、少年少女らに忍び寄る戦争の気配やら大人たちが隠している’秘密’についてとかを察知するに及び、物語は一種のヒーロー譚のような様相をも纏い出す。
が、終盤に差し掛かってからの転調が最高にキマっている。あれよという間に世界が一変し、それまでの空気がほぼ全て入れ換わり、からの、衝撃のラストで〆!本当にこの終盤の変わり身は凄い。「この夏のあと、ぼくたちはだれひとり、前と同じじゃなくなってる」(p283)ってさり気なさ過ぎる一文が今思えば恐ろしい。
いや、変わらなかったのは少なくとも二人いるのか。そうだったらいいな。
個人的にはオチについて物凄く語り合いたい!
「俺はこう思ったんだけど、どう?」みたいのをやりたい!
けど自分なりの解釈に満足してるしそれはそれでその方が良いのか。
…p368の10行目から13行目の3行がアレよね?
7刷
2022.8.14 -
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ネタバレSF青春ラブストーリーの名作。架空の惑星を舞台にしているため、独特の固有名詞が多く、ガワはとっつきにくさがあるものの、その中身は極めて真っ当な少年少女のラブストーリーである。主人公ドローヴのやや大人びた語りを通して伝わってくる彼女、ブラウンアイズの愛らしさと二人の関係性は非常に甘酢っぱい。また口の悪い姉弟の、姉である美少女リボンとの三角関係や、役員の父を鼻にかけた高慢かつ小物であるウルフなど、他のキャラクターも生き生きと筆致で描かれている。特にヒロインであるブラウンアイズの身振りや仕草はどれも細やかで、一途な想いを見せたり、リボンに対する嫉妬の感情を垣間見せたりと、その愛らしい仕草を例に挙げると枚挙にいとまがない。その関係性の進展ぶりは読んでいるこちらが赤面するほどである。そんな子供時代の淡い恋物語の背後では、隣国アスタとの戦争の影響が徐々に忍び寄っており、粘流の訪れに従って不穏さが増していく。ドローヴとブラウンアイズ。役人の息子と酒場の娘という身分違いの恋が、そのまま議会の役人たちと町の人間との溝の深さに繋がっており、甘い恋に反して描かれている社会はハードの一語である。クライマックスはまさに怒涛の展開であり、明かされたこの惑星の真実と、緩やかな悲劇の始まり、変わっていく町の人々などを見るのは非常にキツく、ページを繰るのも心苦しかった。タイトルの意味も明らかになったため、てっきりそれが仕込んでいた大きなネタかと思いきや、この小説の真骨頂はラスト数ページに込められている。この壮大なオチはまさにSFならではの大どんでん返しであり、周到に張られた伏線と綿密に寝られた世界観設定の賜物である。人間によく似てはいるが、あくまで登場人物たちは人間型の異星人であり、ここは異星の文明である。それをあらためて再認識するとともに、オチが非常に理にかなったものであることには文字通り舌を巻いた。傑作である。
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ネタバレ待遇のいい公務員の息子「ドローヴ」と、世間的には下層と扱われる家の娘「ブラウンアイズ」との愛を軸に展開する青春&恋愛&SF小説。
未熟な少年少女の物語を通じた成長、身分違いという障壁(=燃料)により燃え上がる愛、ライバル登場による三角関係、(良し悪しはともかく)世間体に縛られた大人との対立、そして彼らの行動が世界の危機と直接的に結び付くSFの仕掛けはセカイ系のように彼らの物語を盛り立ており、屈指の青春恋愛小説という裏表紙のうたい文句にも納得である。
以下、多分にネタバレを含む。
上述のとおり恋愛モノ、というか物語に付き物の三角関係についてが素晴らしい。主人公もヒロインも脇役もかなり人間臭く、敗北者に対する慈悲などは存在しない。所詮は敗北者だろうと言わんばかりに、ほろ苦くも仄かな甘味と退屈さを提供してくれる恋愛小説の常識を叩き潰してくれる。
恋愛小説のサブヒロインというのは、時としてヒロイン以上の魅力を放つが、それでいてサブとしての宿命を逃れられない。彼女にストレートな幸福を掴む権利はないのだ。だからこそ、ひとつの恋の終わりまでに至る万感の思いが読者の魂を壊れるほどに揺さぶるのだと思う。読者はサブヒロインの幸せを願ってやまない。漫画やアニメならファン投票で正ヒロインが破れるパターンである(ファンに好かれてもサブヒロインの救いにはならないのだが)。
恋愛小説の華とは、失恋である。
しかし、この物語において、サブヒロインに救いなど用意されてはいない。正ヒロインに「品がなくなった」「意固地で嫌な人」「あのことはつきあえそうにないわ」とまで言われるサブヒロインなど、武者小路実篤『友情』の野島以外、私は知らない(思い出せないだけかも)。彼女は幸せを掴むことも、幸せだった思い出を胸に生きることも許されず、惨めに死んでいく。
でも、青春なんてそんなもんである。どんなに脚色をしたところで、どんなに無粋だと糾弾したところで、勝ち組と負け組の存在は揺るぐことは無い。自分で動かなきゃ救済なんて存在しないのだ。
『ハローサマー、グッドバイ』という表題は、次に進む主人公たちの台詞ではなく、置いていかれる者たちへのお悔やみ、あるいは置いていかれる者たちの遺言なのかも知れない。屈指の青春恋愛小説である。 -
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ネタバレバーナード嬢曰く。に影響されて買った本。
訳はちょっと読みにくい(直訳調)ところもあったが、丁寧に訳してくれているという印象。あとがきを見て訳者さんの苦労を知って、素直に尊敬した。
途中までは☆3.5くらいの評価だったのだが、終盤で一気に☆5に。
最初はこれジャンルSF? 異星設定以外、ファンタジーと言われた方がしっくりくるなあと首を捻って読んでいたのだが、うん、まぎれもなくSFでした。
……どうでもいいが、表紙の女の子ってブラウンアイズ? 彼女は海辺の町に育った健康的に日焼けした女の子ってイメージなのだが。本文中にも褐色の肌、みたいな表現があったような。
この星に住む人間が寒さに発狂するほどの恐怖を抱いていて、フリーザー、フリージング(凍るほど~だ)という言葉が汚い言葉(英語でいうfu〇k)になっているという設定には目を瞠った。変った動植物の存在よりもこういう文化の設定が、この小説が異星の物語であり主人公たちが地球人ではないということを印象付けてくれたように思う。
主人公は思春期反抗期少年って感じでひねくれている。自分の親を筆頭に、周囲の人たち(主に大人)を見下している。それは終盤まで変わらないのだけれど、読者目線で見ると、そんなに酷い人たちかなあ、と同情したくなる。特に主人公の父親とか。そりゃ権威主義的なところはあるけど、彼は彼なりに必死で、間違いなく家族を愛していたと思う。両親の愛情が最後まで主人公に伝わらなかったのは残念。
全体的に、善悪がはっきり分かれているタイプの物語ではないのでいろいろ考えさせられる。たとえば主人公はパラークシの人々側に立っていて、議会・役人側を敵視している。頼んでもいないのに勝手に戦争を始めて自分たちに不自由を強いる議会を憎悪するのは当然なのだが、議会(国全体)から見ると申し訳ないとは思うが国を守るためには仕方ないんだ受け入れてくれ、と言うのは当然だろう。このあたり、パラークシが海辺の町だということも相まって日本の某問題と重なった。解決しようのない溝だ。
(……まあ、終盤に差し掛かるまでは、の話だが)
最後に。ロリンに会ってみたい。ロリンは主人公たちと人種が違うが人間で、毛が多いという見た目と文明を持たないことから蔑まれ使役されている、心優しい被差別者……という妄想を抱いてしまった。 -
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文句を言いたいわけじゃないが、5年待った。『ハローサマー、グッドバイ』のあとがきに触れられていた続編のようやくの登場である。
続編というのはいささか語弊があって、直接的な続きというより、同じ舞台を使った作品である。しかも、『ハローサマー』の主人公、ドローヴとブラウンアイズは伝説の人物となっていて、その実在すら定かではなくなっている未来の話。スティルクと自らを呼ぶこの星の知的生命は人間とそっくりなのだが、『ハローサマー』では機械文明初期にあったのが、この未来の話では産業革命以前のような狩猟・農耕社会に退行している。
しかもスティルクたちはこの何百年かのあいだに『ハローサマー』にはなかった能力を身につけている。それは同性の祖先の記憶をアーカイヴのように残しているということである。父が自分を受胎させるまでの記憶、祖父が父を受胎させるまでの記憶、というようにずっと遡っていけるのだ。ただそれを思い出すには、それ相応の努力がいる。そしてもっとも長く祖先の記憶をたどれる家系が、村の長となるのだ。記憶が女系と男系に分かれているせいか、コミュニティも男性集落と女性集落に分かれており、男の子は一定年齢になると母から離されて、男性集落の父のもとで過ごすようになる。
「ぼく」ヤム・ハーディは、男が狩猟、女が農耕を営むヤムの村の男長の甥である。彼の父の弟が男長だ。年少の兄弟のほうが父の記憶をより多く持っているから長になるのである。折しも、年々寒さが強まり、獲物がとれにくくなり、作物も実りにくくなっている。だいたい『ハローサマー』と同じような状況になっていると読者にはわかるわけだ。このため、ヤムの村では漁を営む沿岸のノスの村に援助を求めることになる。そこでハーディはノスの女長の娘ノス・チャームと出会い、恋に落ちる。美しくて、利発で、意志の強い女の子が主人公と相思相愛になるのはマイクル・コーニイの常。
『ハローサマー』の時代よりあと、この惑星には地球人がやってきていて、鉱物を採掘している、というのも、新たな設定。地球人ミスター・マクニールはハーディのよい助言者である。
ハーディの父ブルーノはリーダーの才覚のある人だが、その資質を欠く弟のスタンスが男長を務めており、ブルーノはスタンスを保佐して村を運営している。しかし、ある日、父ブルーノは殺されて発見される。祖先の記憶を有するスティルクたちは、殺人のような不名誉な記憶を子孫に残すのを嫌って、恐ろしく犯罪は少ないはずなのに。
基本的には『ハローサマー、グッドバイ』と同じ話といってもいい。この星の人たちが、40年続く凍期をどうやり過ごすのかという話だ。そして『ハローサマー』を読んでいる人はその答えもすでに知っている。そこで作者は上記のような新たな設定を投入して、似ているけどぜんぜん別の話、でも『ハローサマー』をもうひとつ読みたいという読者のわがままをかなえてくれる本を書き上げたのだ。登場人物たちが『ハローサマー』の舞台だったパラークシ(今では聖地とされている)での出来事の記憶にたどり着けるかどうか、殺人事件の真相はどうなのか、スティルクたちはどうしてこんなに人間に似ているのか、などなど。
そして、あとがきには次のお楽しみが。傑作だったということしかもう記憶にない『ブロントメク!』が本文庫で復刊予定だというのだ。 -
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ネタバレ前作が、夏の日差しから凍期を前に
希望も恋も失われていき、徐々に灰色が濃くなって
行くかのような雪の中、ラストを迎えるのに対して、
続編は、前作になかった異星人の特徴や前作と異なる
文化、文明状態など戸惑いもあるが、前作のことも
全て(一応)説明を付けたうえで、日差しのなか
終わるのが、皆が待った続編が届いた、
という感じでよい。
まわりの青二才がアホで、少しはそれより優れている
といっても、二人を隔てる障害があっても、
主人公が初めからビシッとしていて、
美少女と惹かれあっては一般人には妬みの
種なだけだし、徐々に古くからの世界を
新しく築きなおすという所につながって、
青二才が一人前の男になる過程を見ていけるのもよい。 -
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『ハローサマー、グッドバイ』の続編。
続編、とは言っても前作から数百年単位であとの世代の話。だけれど、その数百年の“記憶”が上手く話に生かされているので、前作を読んでから読んだ方が絶対に楽しめる。
記憶遺伝子をもつ人間型の種族で、世代間に記憶が継承されていく(制限はあるし、自主的に制限をかけることもできる)という設定がとても面白かった。
それにしても、前作のドローヴとブラウンアイズのいちゃつき具合も大概だったけど、今作のハーディとチャームもなかなかのものでした…(笑)まあ、どちらも愛は世界を救うというところなので。良い青春恋愛SFでした。 -
Posted by ブクログ
山頂の雪化粧に夏が完全に終わったなと思い再読
最後に唐突に現れる大仕掛けが有名だけれど
再読の度こんな所に!と新しく発見出来るものもあり今後も読まれ続けるのだろうなと思う
作者マイクルコーニィ本人の
これは恋愛小説であり、戦争小説であり、SF小説であり、さらにもっとほかの多くのものでもある
というコメント、まさにそのまま僕もそう思う
何かね、最近AIが着実に芸術文化方面へ足を踏み出しているニュースの頻度が早い、増えてきたじゃないですか
せっかく人間が考えて生み出した世界
このハローサマーグッドバイのドローヴとブラウンアイズの恋の冒険をどうか
人間が考えてたころの話か
なんて思う時代は来ないで欲しいなと切に願います
いい話が読めればいいじゃつまらないじゃない
港町パラークシ、行ってみたいですね