杉本鉞子のレビュー一覧
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明治6年、長岡藩家老の娘として生まれた杉本鉞子さんが英語で書いた自伝を訳したもの・・・本屋さんでふと目にとまった一冊。
まさに古き日本の風習を厳しく躾けられた彼女の、日本でのそして結婚して渡ったアメリカでの日常生活が綴られています。
仏壇と神棚のあり方(初めて牛肉を食べる事になった日は、牛肉が届く前から仏様を穢していけないと、仏壇にめばりをする!)、お正月の迎え方、嫁入り(結婚とは里方の家に死ぬことゆえ白無垢を着る。そしてそれは死装束となる)、お盆、お歯黒・・・四十路を過ぎて初めて知る風習も多くて、驚きの中読み進めました。
今こそボーダレスな時代だけど、当時彼女がアメリカで感じた「異 -
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ネタバレお盆、忌みなどの古き日本の風習の徹底し、経を聞いては精神の安らぎを感じ、嫁入りとなれば蚊帳を縫い、布団をこしらえ(自分で!)、現代社会にはまず存在しないであろう武家の娘とその生き方。
でも決して「やりすぎ」とか否定的には感じない、むしろ欧米化というよりアメリカ化しすぎた女性が学ぶべきところは非常に多い。
筆者は嫁入りとともに未知の大陸アメリカに渡り、若くして夫を亡くし、後年になって本書を執筆している。
アメリカでもかなり愛読された一冊というくらい、アメリカ人からしても古き日本女性からは学ぶことが多いという評価を得ているので、
・自分の意見はガンガン言う
・男性の3歩後ろを歩くなんて言葉、 -
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明治維新の時にすでに生まれていた「武士の娘」が著した本。
前半は当時の「武家の歳時記」的な記述で、いかにも旧い「武家の女、または男に従属すべき女はかくあるべき」っぽい考え方に基づいて書かれている。
しかし夫となるべく人がアメリカでビジネスをしていることから、彼女も単身海を渡る準備をすべく東京の学校で英語などを学ぶなかで、キリスト教の考え方やアメリカの女性教師たちと出逢い、また渡米後の異国での結婚生活を通して、自分が育ってきた、そして疑うことなく信じてきた「旧い日本」、「女とはかくあるもの」という考え方を客観視しつつ「違い」を受け入れていく様子が非常に素直で興味深い。
「異なる価値観」を拒絶す -
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幕末時、長岡藩藩主の家老の娘に生まれ、渡米、シングルマザーとして二人の娘を育て、コロンビア大学で日本文化について教鞭を取る。
二つの関心がある。
先ずは、長岡藩家老稲垣茂光(上級藩士)の家に生まれて、その教育、躾、慣習について知ること。
特に当時は長岡藩は新政府軍と戦い、苦渋の選択を迫られていた。
稲垣茂光の杉本鉞子に対しての教育観が比較的現実的で、柔軟であったことが面白い。
二つ目は、当時は珍しかった米国での生活。
渡航前の日本での米国式の教育、キリスト教徒への改宗等、クロスカルチャー的に興味深い内容がある。
ただ、アメリカでコロンビア大学で教鞭を取る部分はカバーされていないので、残念。 -
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杉本鉞子が自分のことを書いているのだが、一つ一つのテーマについて書かれている、これは伝記というよりエッセイに近いもの。語れらないこともある。
特に父親や夫を亡くしたことは、悲しみが深すぎたのか、多く語られていない。
祖母や使用人たちの物語を聞いて育ち、さらに仏教の教えも学んでいた幼少期。嫁入りが決まってから上京し、東洋英和に入学して学ぶ英語教育。英語を学ぶにも物語を愛した。結婚、渡米。出産、夫を亡くし、再び帰国。数年後再び渡米。ずっと深窓の令嬢で、召使に傅かれ、お金の心配もしたこともなかったであろう杉本鉞子が、その蓄えもほそぼそとしてきた時に、新聞社に投稿していたのが一連のエッセイだった。
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父親が武士出身で、明治時代武士という職業・階級が無くなってからの家族の生活を書いた自伝的小説。アメリカの雑誌に連載されたのが反響を呼び、大正時代に7か国語に翻訳されたという。著者は日本人だが、本書は英語で書かれ、日本語に逆翻訳されている。
当時の上流の生活を知る、とても貴重な資料と呼ばれているそうだ。侍としての特権階級が無くなった後も、ある程度いい生活を送った著者。古き良き時代を懐かしむ前半と、家族に決められた結婚で、夫の仕事に同伴しアメリカに住むことになり、そこでの子育てを書いた後半から成る。
今の価値観からすると、やはり家族が決めた人と顔も見ないで結婚することを受け入れるのがすごいと思う。 -
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桜庭一樹さんのフェア「さくらばほんぽっ!」にておすすめされていたものを購入。『本に埋もれて暮らしたい』掲載のものです。
私は女性を描いた作品がすきだし、昔の文化や言葉遣いで書かれたものもすきだしいいなーと思って買ってみましたが、やっぱりよかったです。
訳されているので勿論書かれたときのままの言葉ではないんだけど、それでもうっとりしてしまう。昔の、育ちの良い家庭での話し言葉って読んでいていいなあって。身に染みこんで自然に綺麗に使っている雰囲気が。
厳格な家庭で育って、当時にしても割合古風とも言える考え方を持っていた「エツ坊」が、新しいものをも受け入れる力にも優れていてすごいなあと思いました。流 -
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明治四年、旧長岡藩の家老の家に生まれた娘さんが、武士の暮しを色濃く残した躾を受け、やがて兄の決めた許婚のいるアメリカに渡り、アメリカの文化に触れ、また日本に戻り、そして娘たちをつれて再度渡米するまでの私小説。エッセイ?
「武家の女性」が大好きなのだが、「武家の女性」が、下級武士の家庭での暮し振り、日常生活や仕事のことを国内むけに描いているのに対し、こっちの「武士の娘」は米国で発表されたせいか随分と毛色が違う。
下級武士の生活誌が主眼におかれているのが「武家の女性」、江戸の色濃い明治に生まれて躾けられた女性が、その目でどう米国を見、感じたか追体験できるのが「武士の娘」なのかもしれない。