下楠昌哉のレビュー一覧

  • 時ありて

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    初イアン・マクドナルド。
    テンポ良く詩的で映像的な情景、移り変わる舞台、かなり個性的な登場人物たち。古書巡りやら戦争、ウィッカやUFO、極秘プロジェクトなどのオカルトネタが興を添え、所狭しと散りばめられた多彩なトッピングネタで楽しませる作風。これだけ短いにも関わらず、これだけの内容を詰め込める才は流石だなと。

    そして最後の数ページに押し寄せる、怒涛の展開には魅了されました!このラストから始まる物語の続きにワクワクしてしまう自分がいる。続編は書かないんだろうか?

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    2025年05月18日
  • サイバラバード・デイズ

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    近未来のインドを舞台にしたSF連作短編集。

    SFは、たまにしか読まないからこそ、脳みそをガツンとやられる。

    舞台は2050年頃のインド。圧倒的に発達したナノテクノロジーやサイバー空間・AIなどにより驚異的な発展を見せる一方、政治的には8つの国に分裂し、気候変動による水不足が問題になり、遺伝子操作による男女構成比の崩壊が社会的なひずみを生んでいる。
    そんな近未来的な設定が前面に出てくる一方で、カースト制度やヒンドゥー教的なエキゾチックな世界観もがっつり根付いている。
    そんなSFと伝統が融合し、AIなどの超技術といかにも人間臭い登場人物たちの葛藤が融合しているところに、本書の魅力があると思う。

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    2013年06月20日
  • サイバラバード・デイズ

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    いいね、この装丁、この紙質、この表紙。遠目に見たとき「あれ、またバチガルビ?」と思った。「新☆ハヤカワ・SF・シリーズ」はこれで統一しているんだね。近未来のインドを舞台にした日常をたんたんと描く。爆発的な面白さは無いけれど、設定と雰囲気で読ませる。SFの舞台設定として東南アジア流行ってるのか?この人の長編も読んでみたい。

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    2012年07月28日
  • サイバラバード・デイズ

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    面白かった!分割した未来のインドを舞台に超知性やAI、第三の性、ネットワークに存在する複数の人格AIを描く。7つの短編どれも面白かった。なかでも好みは「暗殺者」、敵対する二つの家、ロミオとジュリエットの過激版?と勘繰ったけど、題名がこれなので・・最後はなんとも
    「小さき女神」神になった少女、ワイヤーから落ちて死んだ叔父を笑いながらみていたところから神の資質は・・・神ではなくなってからも面白い
    「ジンの花嫁」「ヴィシュヌと猫のサーカス」も良いです。好きです。

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    2012年05月11日
  • 雪女・吸血鬼短編小説集

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    ダイジェスト。面白かった?というのか怖かったというのか、色んな国、作風の短編小説で味わい深い。どれも少しずつ心に朧げな画として残る。冷たく白い月夜。

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    2025年11月10日
  • 雪女・吸血鬼短編小説集

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    宮田登先生が「雪女」に吸血鬼みを「恐らく」あるんぢゃねえかと言ってそれっきりなのだが、小泉八雲大先生が本著参照なのであった。しかもこれ、その辺で出回ってる。
    で宮田説で日本の血を吸ふ妖怪とヴァンパイアは明確に区別つくさうであるが、小泉八雲大先生も本著参照である。奥が深い。
    牧野陽子説でボードレールの本著でピャッと紹介される詩が『雪女』へ影響がとあった。
    大分県で「吸血雪女」傳承があるとか、小泉八雲はマルティニーク島で「死者の霊」と別の妖怪としての「ゾンビ」話を収録してるとか無いー
    でも面白い。

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    2025年10月01日
  • 雪女・吸血鬼短編小説集

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    雪妖や氷魔と吸血鬼。白と赤。生と死の境界。
    ラフカディオ・ハーンと同時代の文学者が織り成す
    怪異譚の13の短編小説集。
    ・はじめに
    一 雪と氷と白魔
     「幽霊と悪鬼について(抄訳)」ラフカディオ・ハーン・・・
      聞き書きのユキオンナの話の抄訳。血を吸う雪女がいる?
     「年老いた乳母の物語」エリザベス・ギャスケル・・・
      陰鬱な屋敷から雪の丘に誘う少女と女の正体とは?
     「雪の妖術」アルジャーノン・ブラックウッド・・・
      真夜中のスケート場での出会いは雪と妖の魅惑の誘い。
     「光と光の間で」E.F.ベンスン・・・幻影か?悪夢か?
      悍ましい光景は雪の中でも彼に付きまとう。
     「北極星号の

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    2025年09月30日
  • 妖精・幽霊短編小説集

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    ジョイス『ダブリナーズ』の短編を同時期に書かれた
    妖精・幽霊短編作品と併読するアンソロジー。
    ・編訳者まえがき
    一 妖精との遭遇
      「取り替え子」W.B.イエイツ&T.C.クローカー
      「卵の殻の醸造」T.C.クローカー
      「妖精と行ってしまった子ども」J.S.レ・ファニュ
      「遭遇」J.ジョイス
    二 アイルランドの化け物
    「ウォーリングの邪なキャプテン・ウォルショー」
                     J.S.レ・ファニュ
      「夜の叫び」S.L.マッキントッシュ
      「姉妹たち」J.ジョイス
    三 心霊の力
      「科学の人」J.K.ジェローム
      「第一支線―信号手」C.ディケンズ

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    2023年09月25日
  • 時ありて

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    たぶんあまりわかってない。でも、もっと自分に理解力があってちゃんと読めてたら、話の類型的にはかなりすきになりそうだと思った。
    未来にむかっての移動しかできないと思っていたので、種明かしは驚いた。
    もうちょっと理解力のあるときにまた読みたい。

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    2023年07月30日
  • 時ありて

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    ネタバレ

    雰囲気が良い。映画向きだと思う。
    詩を意識しているのか、単語の羅列や意味深な言い回しが多くて想像が難しい。
    SF部分も結局はっきりわからない。実験に巻き込まれて時間旅行者にならざるを得なかったって感じ。
    ラブストーリーさも物足りない。語られないところにあったと思うが、そこを語れよって感じ。恩田陸の「ライオンハート」のほうが好きかな。
    ELの正体もだろうな、というか、まあ同性愛以外普通のあるあるSF。
    雰囲気と現代イギリスと、この手紙の主は誰だ?という謎解きの雰囲気が面白いかな。不死者かな?という可能性に最初に行くのが面白い。親子とか兄弟とかと思わないのかな……。

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    2023年03月13日
  • 時ありて

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    短い言葉で説明するのが難しい小説である.
    帯に「英国SF協会賞受賞」とあるが,SFという語で乱暴に括れる小説ではない.この10年ほどで読んだ小説では,クリストファー・プリーストに一番テイストが近いなあ,と思ったが,そういえばプリーストもイギリス人だ.
    幻想的なファンタジーに,SFを組み合わせている感じか.

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    2023年01月22日
  • 時ありて

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    ロンドンにあるアパートの一室で本に埋まり、ネットで古書を売っている「私」は、有名な古書店の閉店に伴う在庫の処分品の中から、一冊の本を掘り当てた。E・L著とイニシャルだけが記された詩集で『時ありて』というタイトルだ。第二次世界大戦が専門分野である「私」は、普段なら手を出さないところだが、なぜか好奇心が働いた。刊行は一九三七年五月、イプスウィッチ。出版社は記されていない。紙も表紙の布地もいいものが使われている。中に何かが挟まっている。便箋が一枚。トムからベンに宛てたラブレターだった。

    「私」を視点人物とする、手紙にまつわる謎を解いてゆくミステリー調の章と、シングル・ストリートに暮らす「ぼく」とE

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    2023年01月10日
  • サイバラバード・デイズ

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    2030~2050年代、近未来のインドのおはなし。カレーとITの国というイメージのインドをこうまでSF的に昇華させたところがすごい。AIの進化と、脅威、ホークとパーマーによるコミュニケート(まるでサイバースペースへのジャックイン!)それよりはもっとナチュラルか。散りばめられたガジェットはワクワクもの。ブラーミンはAKIRAに出てくる、あの子供大人たちを思い浮かべた。

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    2019年10月18日
  • サイバラバード・デイズ

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    「埠頭三角暗闇市場」のインドつながりで、積読状態だったのを読んでみる。

    分裂戦争状態に入った近未来インドもやはり暑く混沌として、ガンジス川では沐浴も火葬も行われている中でAIも同居している世界。

    最近ニュースや映画でも取り上げられているAIに恋するなんてエピソードもあり、近未来との地続き感も良好。

    混沌としたアジアとしては内側からの視点として描かれた「埠頭三角暗闇市場」と違い、異なる文化の外側からの視点で描かれています。

    様々なガジェットをミックスさせるのが得意な作者も、文化のミックスにきましたか。

    2000年に入ってから日本では音沙汰がなかった作者で久しぶりなのですが、やはり悩み、

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    2014年07月28日
  • サイバラバード・デイズ

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    ハイテクノロジーと土着的猥雑さが共存する近未来のインド。
    分離戦争が勃発し、ドラック漬けのロボット戦士が進軍。遺伝子工学の発達が男女比率の偏りを生み、深刻な花嫁不足に。生神が身売りをし、魔神の代わりにAIが跳梁跋扈する。モンスーンは訪れず聖なる大河が枯渇し、生身を捨てた情報ネットワークの住人は新世界へと旅立つ。
    欲望と信仰とテクノロジーの革新に翻弄されながら、それでも強かに逞しく生きる人々の物語です。
    楽しめました。

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    2014年02月20日
  • サイバラバード・デイズ

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    これは今まで読んだ事のないタイプの作品。
    だって、近未来のインドが舞台!なんだかとてつもなく新鮮でした(笑)

    個人的なお気に入りは「暗殺者」。
    敵対する名門一族の男女の恋。甘さと切なさのバランスが絶妙です。
    「小さき女神」と「ジンの花嫁」も良かったな。

    「シャンタラム」を読んだ時にも感じた事ですが、
    インドには、猥雑さもあれば例えようのない美しさもあって。
    混沌とした中にも、抑えられたパワーが満ち満ちています。
    そこがこの本の魅力で、こんなにも惹きつけられるんでしょうね~。

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    2012年11月18日
  • サイバラバード・デイズ

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    世界観がしっかりしすぎていて入り込みにくいのですが、その分入り込んだらすげー面白い!!ってなりました。

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    2012年05月25日
  • 時ありて

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    古書ディーラーの「私」がゴミ箱の上に積み上がった古本のなかから拾い上げた詩集には、一通の古い手紙が挟まっていた。戦地で恋文を交わす同性カップルの来歴を調べるうち、彼らは時を超えて遍在することが明らかになる。一冊の本との出会いから始まるタイムトラベルSF。


    道具立てはクラシカルだけど、うだつのあがらない語り手の現代パートは完全に今っぽい口調。インターネット時代だからこそ可能になった情報の探索と、古本へのノスタルジーが矛盾しながら同居する、古書オタクが書いた夢小説みたいな側面もある。
    パリの古書店は二人のことを知っていて(伝承していて?)『時ありて』を保有しているのか、タイムトラベラーとなった

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    2024年06月30日
  • 妖精・幽霊短編小説集

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     19世紀末から20世紀はじめにアイルランドとイギリスの作家たちにより書かれた妖怪・幽霊譚を8つのセクションに、そして各セクションの留め石にジョイスの『ダブリナーズ』に収められた短編を配したアンソロジー。

     読んだことのあるのは、ディケンズ「第一支線-信号手」とハーン「雪女」のみなので、大変なお得感。
     
     イェイツの”取替え子”の話から始まる。親がちょっと目を離した隙に可愛い子どもがいなくなってしまう。事故かもしれないし、さらわれてしまったのかもしれない。そんな悲しみが生んだ言い伝えなのだろうか。レ・ファニュの「妖精たちと行ってしまった子ども」を読むと、恐ろしさと悲しみが身に沁みてくる。

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    2024年02月02日
  • 時ありて

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    イギリスのSF作家、イアン・マクドナルドが2018年に発表したSFミステリー。待望の邦訳ということで、氏の作品を初めて手に取ってみた。

    古書ディーラーのエメット・リーは、閉店する書店の在庫から『時ありて』というタイトルの古びた詩集を手にする。その詩集にはトムとベン、二人の男性が第二次世界大戦中に行っていた秘密のメッセージの遣り取り、その一通が挟まっていた。手紙に隠された真相を追求するエメットは、彼らの「時をかけた物語」を目の当たりにする―――。

    一冊の古書、一通の手紙から始まるタイムトラベル・ロマンス。話の大枠自体は捉えることが出来たが、それだけ。明かされる真相が、それまでの展開で読み手を

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    2023年05月05日