19世紀末から20世紀はじめにアイルランドとイギリスの作家たちにより書かれた妖怪・幽霊譚を8つのセクションに、そして各セクションの留め石にジョイスの『ダブリナーズ』に収められた短編を配したアンソロジー。
読んだことのあるのは、ディケンズ「第一支線-信号手」とハーン「雪女」のみなので、大変なお得
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イェイツの”取替え子”の話から始まる。親がちょっと目を離した隙に可愛い子どもがいなくなってしまう。事故かもしれないし、さらわれてしまったのかもしれない。そんな悲しみが生んだ言い伝えなのだろうか。レ・ファニュの「妖精たちと行ってしまった子ども」を読むと、恐ろしさと悲しみが身に沁みてくる。
他の各編は玉石あるが、科学が進展しながらも心霊現象にスポットの当たったこの時代ならではの作品が多く、面白く読めた。
ジョイスの『ダブリナーズ』は読もう、読もうと思いながらずっと読まないままで来てしまったので、今回、全編ではないものの7+1(抄)の作品を読めて満足。ただ、『蔦の日に委員会室で』は当時の政治状況について、『恩恵』はアイルランドにおける宗教の問題についてそれなりの前提知識がないと、何が書かれているのかを理解すること自体難しいなと思った。