近未来のインドを舞台にしたSF連作短編集。
SFは、たまにしか読まないからこそ、脳みそをガツンとやられる。
舞台は2050年頃のインド。圧倒的に発達したナノテクノロジーやサイバー空間・AIなどにより驚異的な発展を見せる一方、政治的には8つの国に分裂し、気候変動による水不足が問題になり、遺伝子操作
...続きを読むによる男女構成比の崩壊が社会的なひずみを生んでいる。
そんな近未来的な設定が前面に出てくる一方で、カースト制度やヒンドゥー教的なエキゾチックな世界観もがっつり根付いている。
そんなSFと伝統が融合し、AIなどの超技術といかにも人間臭い登場人物たちの葛藤が融合しているところに、本書の魅力があると思う。
色んな意味で異世界への旅を体験できる、類まれな小説。
『サンジーブとロボット博士』はやや平凡な、少年の成長物語だが、『カイル、川へ行く』以降は本当にどの編も魅力たっぷり。
人種間、親子間、人間とAI、男と女、性別を超越した人間、人間を超越した知性の人間、ネオテニー・・・。
SF的な要素をふんだんに盛り込みつつも、根っこにあるのは異文化間理解の困難性という身近な感覚だからこそ、ここまで惹きつけられるのだろう。
とにかく面白かった。