あらすじ
分離戦争まっただなかのインド。サンジーヴの村にも戦火がおよぶ。アニメさながらの巨大ロボットの戦いに、子供も大人も大喝采。ロボット戦士にあこがれて、サンジーヴは都会へと向かうが……「サンジーヴとロボット戦士」、ダンサーのエシャは、レベル二・九という高い知性を持つAIの外交官A・J・ラオに 求婚される。怖ろしいまでに魅力的な彼に、エシャはすっかり夢中になるが……AIと人間との結婚が産みだす悲喜劇を描き、ヒューゴー賞、英国SF協会賞を受賞した「ジンの花嫁」など、猥雑で生命力あふれる近未来のインドを描く連作中短篇7篇を収録。ディック賞特別賞受賞。
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Posted by ブクログ
近未来のインドを舞台にしたSF連作短編集。
SFは、たまにしか読まないからこそ、脳みそをガツンとやられる。
舞台は2050年頃のインド。圧倒的に発達したナノテクノロジーやサイバー空間・AIなどにより驚異的な発展を見せる一方、政治的には8つの国に分裂し、気候変動による水不足が問題になり、遺伝子操作による男女構成比の崩壊が社会的なひずみを生んでいる。
そんな近未来的な設定が前面に出てくる一方で、カースト制度やヒンドゥー教的なエキゾチックな世界観もがっつり根付いている。
そんなSFと伝統が融合し、AIなどの超技術といかにも人間臭い登場人物たちの葛藤が融合しているところに、本書の魅力があると思う。
色んな意味で異世界への旅を体験できる、類まれな小説。
『サンジーブとロボット博士』はやや平凡な、少年の成長物語だが、『カイル、川へ行く』以降は本当にどの編も魅力たっぷり。
人種間、親子間、人間とAI、男と女、性別を超越した人間、人間を超越した知性の人間、ネオテニー・・・。
SF的な要素をふんだんに盛り込みつつも、根っこにあるのは異文化間理解の困難性という身近な感覚だからこそ、ここまで惹きつけられるのだろう。
とにかく面白かった。
Posted by ブクログ
いいね、この装丁、この紙質、この表紙。遠目に見たとき「あれ、またバチガルビ?」と思った。「新☆ハヤカワ・SF・シリーズ」はこれで統一しているんだね。近未来のインドを舞台にした日常をたんたんと描く。爆発的な面白さは無いけれど、設定と雰囲気で読ませる。SFの舞台設定として東南アジア流行ってるのか?この人の長編も読んでみたい。
Posted by ブクログ
面白かった!分割した未来のインドを舞台に超知性やAI、第三の性、ネットワークに存在する複数の人格AIを描く。7つの短編どれも面白かった。なかでも好みは「暗殺者」、敵対する二つの家、ロミオとジュリエットの過激版?と勘繰ったけど、題名がこれなので・・最後はなんとも
「小さき女神」神になった少女、ワイヤーから落ちて死んだ叔父を笑いながらみていたところから神の資質は・・・神ではなくなってからも面白い
「ジンの花嫁」「ヴィシュヌと猫のサーカス」も良いです。好きです。
Posted by ブクログ
2030~2050年代、近未来のインドのおはなし。カレーとITの国というイメージのインドをこうまでSF的に昇華させたところがすごい。AIの進化と、脅威、ホークとパーマーによるコミュニケート(まるでサイバースペースへのジャックイン!)それよりはもっとナチュラルか。散りばめられたガジェットはワクワクもの。ブラーミンはAKIRAに出てくる、あの子供大人たちを思い浮かべた。
Posted by ブクログ
「埠頭三角暗闇市場」のインドつながりで、積読状態だったのを読んでみる。
分裂戦争状態に入った近未来インドもやはり暑く混沌として、ガンジス川では沐浴も火葬も行われている中でAIも同居している世界。
最近ニュースや映画でも取り上げられているAIに恋するなんてエピソードもあり、近未来との地続き感も良好。
混沌としたアジアとしては内側からの視点として描かれた「埠頭三角暗闇市場」と違い、異なる文化の外側からの視点で描かれています。
様々なガジェットをミックスさせるのが得意な作者も、文化のミックスにきましたか。
2000年に入ってから日本では音沙汰がなかった作者で久しぶりなのですが、やはり悩み、放浪すると行き着く先はインドなのでしょうか?
あぢあぢの夏にぴったり。ナマステ。
Posted by ブクログ
ハイテクノロジーと土着的猥雑さが共存する近未来のインド。
分離戦争が勃発し、ドラック漬けのロボット戦士が進軍。遺伝子工学の発達が男女比率の偏りを生み、深刻な花嫁不足に。生神が身売りをし、魔神の代わりにAIが跳梁跋扈する。モンスーンは訪れず聖なる大河が枯渇し、生身を捨てた情報ネットワークの住人は新世界へと旅立つ。
欲望と信仰とテクノロジーの革新に翻弄されながら、それでも強かに逞しく生きる人々の物語です。
楽しめました。
Posted by ブクログ
これは今まで読んだ事のないタイプの作品。
だって、近未来のインドが舞台!なんだかとてつもなく新鮮でした(笑)
個人的なお気に入りは「暗殺者」。
敵対する名門一族の男女の恋。甘さと切なさのバランスが絶妙です。
「小さき女神」と「ジンの花嫁」も良かったな。
「シャンタラム」を読んだ時にも感じた事ですが、
インドには、猥雑さもあれば例えようのない美しさもあって。
混沌とした中にも、抑えられたパワーが満ち満ちています。
そこがこの本の魅力で、こんなにも惹きつけられるんでしょうね~。
Posted by ブクログ
未来のインドが舞台のSFというのが醸し出すアヤシゲな感じはいいのだが、それ以上の新鮮味が正直なかったな。前評判がいろいろよかったので期待が大きすぎたのかもしれない。
これまでになかった国を舞台にしたSFというのも、手法としてかなり使い古されてきた感あり。次は北朝鮮SFぐらいかしらん。
Posted by ブクログ
本当は★3.5くらい。
「Days」というだけあって、近未来、分裂後のインドの日々を描いています。共通するアイテムはパーマとホーク。
最初の数編は事件らしい事件は起きません。
『小さき女神』『ジンの花嫁』で盛り上がり、最後のいっぺんで近未来インドの歴史を俯瞰するという構成です。
大きな事件が起こるのを期待して読むと肩透かしですが、日常を描く佳品としてお勧めできます。
Posted by ブクログ
7 つの中短編からなる作品集。
眼で活字を追っているのだが、
なぜか脳に物語が定着せずにすべり落ちてしまう。
残念な思いをした。
「ジンの花嫁」
2006 年 英国SF協会賞短編部門受賞作品。
2007 年 ヒューゴー賞中編小説部門受賞作品。
Posted by ブクログ
東南アジアなSF→バチガルビっぽい。けど、熱気と匂いがあまりしない。リアリティはバチガルビに軍配
ロボットとか、未知の世界への憧れとか、男の子だねぇ~というお話。前半。
後半は結婚に関する話
AI 3.0とかが出てきて、賢さ別に管理する。将来的にありそうで、リアリティを感じる
話間で共通のガジェット多い
表現が耽美。薔薇を燃やした灰の匂い、なんてことがさらっと書いてある。すごいね
だが、記述がだらだらしているので退屈でもある
ナノテク、情報技術、AI、遺伝子工学、ロボットとSFネタは盛り沢山だが、アイディアは落ち着いていて、目から鱗程ではない
これで1,785円は高いと正直思う。前2作の新SFシリーズではそう思わなかった。