寺西のぶ子のレビュー一覧
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原題は『The Death of Democracy』. 1918年11月のドイツ革命から1934年8月の大統領ヒンデンブルク死去までのヴァイマル共和国からナチス政権初期までの通史本で、ヒトラーとナチスが権力を掌握するまでが書かれている。ヴァイマル共和国期のナチスの台頭を、ドイツを取り巻く経済状況とドイツの社会状況の両方からアプローチしているのが大きな特徴だ。
当時のドイツを取り巻く経済状況について。第一次世界大戦終結後の英米中心の戦後体制は、賠償金と債務の支払い、金本位制への復帰といった緊縮財政と、安定した民主主義が一体となったリベラル資本主義だった。緊縮に反対する人々はリベラル民主主義に -
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とても良い本で、今の世の中にも大きな示唆を持つ。元々はトランプ大統領が選ばれて議会占拠に至るような混乱が起こっていることを理解するために読んでみたのだが、ヒトラーが民主的プロセスにより選ばれていることだけでも日本では分からない社会的政治的背景がとてもクリアになり、歴史をきちんと学ぶという意味でも有益な読書になった。第一次大戦後の時代背景では、現代よりも差別が当たり前であり、暴力が容認されていたという違いがあるが、それだけに今の社会的環境は貴重なものであると痛感し、納得した。ヒトラーの危険性を皆が分かっていながら妥協するのも分かる部分があり、現代の我々が当たり前と思っている普遍的な価値観の尊さが
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ネタバレこの一冊を読めば1918年から1945年までのドイツの内部での動き、(題名の通り)なぜドイツ国民はヒトラーを選んだのか80%位は理解出来るかなと踏んでいたが、分からなくなったというのが正直なところ。
当初は、ヒトラーがナチスを作りユダヤ人が嫌いだから差別します。くらい分かり易い構図だと思っていたが、そうは問屋が卸さなかった。
あとがきの部分で「小さな成長で変化に気づかないけど、気がついたら頭の高さを超えていた」という引用があったがまさにその通りで、一人一人が隣人はいなくなったけど自分は大丈夫だという精神が乗数的に重なり、ナチ党、ヒトラーという大木を生み出したと捉えられるが、国民を責めること -
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当時の政治家や市民の行動を詳細に追っているので、だんだん自分もその場にいるような感じになってくる。結末をしっていることなのだが、「そっちに行ってはいけない」「戻らないと危ない」とじりじりするものを感じながら読んだ。
ドイツ国民がヒトラーとナチ党を選んだ理由は単純ではないことを学んだ。敗戦の賠償やグローバリゼーションだけではなく、多くのことが関係している。
自分たちの受け皿となり守ってくれる政党がない、という面もあった。資本主義と社会主義、資本家と労働者など、多くの対立軸もあった。いろいろなところにナチ党が付け入るすきがあった。
当時ヒトラーが国民に訴える社会の苦しい状況は、驚くほど現在と -
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前世紀の末からTVを見なくなり、もう長い時間が過ぎた。特に近年、民法のTVを見て呆れさせられるのは、日本を礼賛する番組の存在である。こうした番組では、たいてい諸外国と日本を比較することによって、日本がどれだけ素晴らしい国であるかを示そうとしている。
10年前にもなる「英国一家、日本を食べる」で英国人特有のシニカルさと、その食に関する異常な熱情で、稀代のフードジャーナリストとしての立場を確立させた著者が、2016年の3回に渡る日本全国の取材に基づき、現代の日本の食文化を書き綴ったエッセイが本書となる。その紹介にあたり、なぜ冒頭の低俗なTV番組の話をしたか。それは、著者の日本食に関するスタンスが -
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原題は『FALLOUT(放射性降下物)』だそうです
( ´Д`)=3
なんでこういうお馬鹿な邦題を付けるかな〜
ちょっともう恥ずかしいよ
そして自分もまんまと騙されて悔しいです大佐!(誰?)
はい、「キューバ危機」を描いたノンフィクションであります
もちろんスパイの暗躍も絡めて紐解いてはいるんですが、基本的には冷戦下の二つの超大国の指導者ケネディとフルシチョフの決断についての描写がメインです
「核戦争に最も近づいた日」と副題にありますが、それはイコール人類滅亡に最も近づいた日でもあるわけですね
恐っ
で今回あらためてこういう本が出版されたということは(詳しくは分かりませんが)何かしら -
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ナチ党の活動は、第一次大戦後に英米が押し進める国際協調、経済的にはグローバリゼーションに対する抵抗だった。
戦後賠償だけがドイツを追い詰めたわけではない。ロシア革命などによる東方からの難民、共産主義への保守層の拒否感、社会の激しい分断、正規軍と準軍事組織の割拠、世界恐慌、「ヒトラーはコントロールできる」とするエリートたちの傲慢と誤算・・・アメリカを代表する研究者が描くヒトラーがドイツを掌握するまで。
今までナチの恐ろしさを題材にしたフィクションやノンフィクションはいくつか読んだけれど、人間ってこんな恐ろしいことでも平然とできてしまうんだなとしか思わなかった。でもその背景を知って、なぜこういう -
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原書のタイトルは邦訳の副題「民主主義が死ぬ日」だが、本書は邦訳タイトルの通り、なぜヒトラーが首相の座に就くことができたのかを、第一次世界大戦敗戦後のドイツの歴史を辿りながら考察したものである。
シュトレーゼマン等の活躍により安定期を迎えたヴァイマル体制だったが、1920年台の中盤から終盤にかけて、主に4つの反政府運動が起こり、民主主義を弱体化させようとしたとする。極端なナショナリズム運動、共産党、巨大企業と軍隊である。巨大企業は、高額な賃金妥結を嫌い、軍は社会民主党が軍事予算に賛成票を投じないことに怒っていて、国会の力を制限する権威主義的な体制を望んだ。そして、当時のドイツ社会は、階級、